「くぅ~ん……きゅぅ~ん……」「……見てない見てない。俺は何も見てない」『……ええ。その・通り・です』「―――!(何かに気付いた様子) きゃんっ! きゃんきゃんっ!!」「……きこえないなぁ。な~んにも聞こえない」『き、聞こえ・ませんね。なに・ひとつ』「ひぅん……(耳を垂れ、落胆した様子)……くぅ~ん、くぅ~ん……」「……ぬぉぉお……っ!」『……も、もう・むりぽ』「あああああああ~!!! 何で見つけちゃったの俺ー!!! どうすんだよマジで!!」『……どう・しますか?』ホント、どうしよう。子犬、見つけちゃった。朝のお散歩なんてするもんじゃねぇよ、畜生め。08/~犬~「はぁ、なんなんだよマジで……。何で俺を見たとたんにダンボールから出て来るんだよ」『何か・同じ匂いを・感じとったの・では?』「それは、どういう意味で言っているのかな? 俺は犬と同じ匂いがするのかな?」『ええ。雨に濡れた・犬くさい・です』「マジ自殺もんですよそれ!?」拾ったのはいいけどねぇ……。はやてのとこは無理だろ。ヴォルケンが出てきてればよかったんだろうけど、今はな。流石に世話がきついよね。フェイトのとこも、てかそんな状況じゃねーか。犬なんて飼ってる暇ねーよなぁ……。「あぁもう、お前状況分かってる? なぁ犬。おい犬」「……? ひゃん! ひゃんひゃん!!」犬は元気に鳴いた。バタバタ尻尾まで振って。そうだよね。分かるわけないよね。ごめんね。俺がお金持ってればよかったんだけどね。文無し宿無しにくわえ命にしては風前の灯。へ、へへ……俺にお前は救ってやれねぇよ。「―――シェル。プランθで行こう」『……?』「アリサの家に放り投げてくる。ヤツは なのはの友達だ。犬の一匹くらいその寛大な心で養ってくれるはず」『……と・なると・実行は・夜・ですか?』「ああ。いいか犬。お前は一応今日の夜まで俺が預かる。しかし勘違いするなよ。お前のご主人様じゃないからな?」「ひゃんひゃん!」「……はぁ」まぁとりあえず、(おーい、アルフー。おーい、聞こえるかー?)念話開始。俺の場合あんまり遠いと繋がらないけど、海鳴から出てないならどうとでもなるわな。(おーい。聞こえてるんだろー? シカトかぁ? まさかのシカトかぁ? おいおいおいおいおーい!?)『最高に・うざいですね』「いいんだよ。アルフだし」(ん~? さ、きからぅるさ、いねぇ。……しか、も、この捕らえどこ、ろのなさ。ディフェ、トかい?)(うん。おはよ。ドッグフード欲しいんだけど、ちょっとくれないか?)(ん。おは、よ。やる、のはいいけ……ど何……使うの、さ? まさか、食、べるのか、い?)くわねーよ。もうドッグフードはいいよ。アレは人が食っちゃだめだよ。完全にやばい味したよ。けど缶詰はちょっとうまかったよ。(食うかよ。ちょいと入用でさ、お前のおすすめのヤツ少しでいいから頂戴)(……わか、た。今か……ら? フェイト、起こそ、うか?)(いやいや。寝てるんならそっとしといてやって。お前だけでいいよ)(わ、わかった。い、今、すぐ、行くから)どうしたアルフ。なんかやけに焦ってたように聞こえたんだが。俺の念話のせいか? 俺の念話は大分だめだな。むしろ俺はもうだめだな。(あいよー。×××で待ってるから~)(は、はいっ!!)なんで敬語w俺はアルフとの回線を閉じながら犬に視線を合わせる。くりくりとした瞳。何も分かってなさそうな、何も疑ってなさそうな綺麗な瞳だった。か、可愛いじゃねぇか。……いやだめだ! 騙されるな。コレは、この目はわかっているからこそ出来る目なんだ。コイツは俺を養ってくれるぜへっへっへ、って考えてるんだそうに違いない!!「ぅおお……っ、俺は騙されねぇぜぇええ!!」『ならば・すごい勢いで・頭を撫でるのは・やめた方が・いいのでは? 煙が・でてますよ?』「こ、これは俺じゃない。お前が操ってるんだろ?」―――シャカシャカシャカシャカシャカシャカ!!!!なんだこの現象は!?腕が、右腕が勝手に動きやがるぜ!! 勝手に犬の頭を撫でていやがる!!『遂に・現実からも・目を背けますか……』「……私はお前を凄く初期化したい気分に駆られましたよ」『マスターの・頭が・パーになっても・よいのなら』「……お前、そういう驚愕の事実をギャグパートで伝えるのはどうかな?」『仕方なくね?』。。。。。「あ、ディフェクト。ご、ごめん、待ったかい?」「おお、全然んなこと―――」……おやおや?え、えと……、「お、お前、アルフ……ですよね?」「う、うん。やっぱりおかしいかい、このカッコ……?」言いながらもアルフ(?)は少し誇らしげに胸を張った。そのときに揺れるのがもう……。てか、なんか可愛くね?いやいやいや、可愛いのは前から分かってたよもちろん。しかししかし、今日のアルフは可愛すぎんだろ。なんだこれ夢か。今日は何か特別な日なのか? そうなのか?なんで薄く化粧なんかしちゃってるの? なんか良い匂いするんですけど。なんでいつもの挑発的な服じゃなくてちょっと貞淑そうな感じなの? 半端ないんですけど。そのワンピ超似合うんですけど。どうなんですかその辺。おまけに髪の毛まで。お前いつもは適当に流してるだけじゃん。なんで緩く結んでるの? 耳ばれないようにね。「……どうしたお前。可愛すぎるぞ。ホントどうしたお前」「か、かわいい? ホントかい?」「ああ。今日はギャップにやられたな。まずいぜ、アルフ萌えだぜ」「あ、あり、ありありがと……」もぢもぢと。な、なんなんだコイツの反応は。驚異的じゃないか。まさしく、これは、脅威だぜ。通常の三倍はやばいぞ。まさかの展開だぜ。「それで、ドッグフード……持って来たよ?」「おお、サンキュ。いや実はさ、こんなの拾っちゃいまして……」ヒョイ、とフードに入れていた犬を取り出した。大きさとしては片手で掴めるくらい。ちょっと痩せてるなーなんて思ってね。アルフにご飯を貰おうかと。プランθを実行するにしても夜までは面倒見てやらなきゃいけないわけで、まぁ、かわゆいしね。犬を出し、またもその頭を俺の右手が勝手に撫でる。しかし瞬間、アルフの目の色が変わった。「……そうなんだ……」「……? どうした、なんか不機嫌そうじゃないか。いや、悪かったって、そりゃこんな朝早く起こして用件がコレじゃ怒るのも無理ないけどさ」「そうなんだ。アンタは、あたしより、そんな小娘のほうが良いんだねぇ……」あん?何を言ってらっしゃるのかなアルフさん。僕は貴女の言いたいことがさっぱりなのですが。「いやいや、おかしいとは思ってたんだよ。フェイトや はやてには『挨拶』するくせに、あたしにはしないもんね」ホントどうしたお前。熱でもあるのか……?お前に『挨拶』しないのは、やっちゃったら行くとこまでイっちゃいそうだからであって、そんな他意はないんだよ?さすがに最後まで行くのはどうかと思っているのですよ。俺、脱チェリー9歳何だぜ? とかどんだけ武勇伝だよ。「あの、アルフ?」「ディフェクト……あんたロリコンだったんだね!? そんな、そんな小娘が良いなんて!! あたしゃビックリだよ!! まだ生まれて二、三ヶ月じゃないかい!! そんな、そんな雌犬が良いなんてっ……!」そうか。コイツ雌だったのか。てかアルフや、『―――ぷ。もちつけ』「確かに」うわぁぁんとか何とか言いながらアルフはポカポカ俺を殴ってきた。はっはっは。かゆいかゆ、い? ……いや痛い。凄く痛いです!! ちょ、ま! アルフ待って! イタイイタイ!!しっかり腰を入れて殴らないでください! アンタいったいどんな力してんですか!?「いた、ちょ、アルフさん!! 痛いですよ!?」「せっかくっ、せっかくおめかしして来たのにぃぃぃいいいい!!!! このこのこのぉ!!!」「ぶるぅぁぁああああ!! マジで! ちょ!!」『ここで・死んで・物語は・終了。良い・終わり方・です』そんな終わりはいやです。やばいです。俺の顔面の形が変わっていってます。ごしゃ、ごしゃっ!あ、ああ、意識が……。目が覚めるとアルフが一生懸命治癒をかけてくれていました。泣きながら治癒してくれていました。ここぞとばかりに俺の萌えポイントを付いてくるこの犬娘はホント、なんでこんな……可愛いのぅ。「分かりましたか? こいつは、ついさっき見つけた唯の子犬です。僕の愛人なんかじゃありません。ちなみに僕はロリコンじゃな、な、ない、はずです」「ご、ごめんよ。てっきりソッチの人だからあたしに反応しないんだとばかり…」「いや、あのね、そりゃアルフは可愛いよ、凄く。でもさ……」「でも……?」いや、だからアレだよ。やばいじゃん。はやてやフェイトはまだ大丈夫なんだけど……アルフはね。プツっていってワシャーってなってスパチコーン!ってかましちゃいそうじゃん?「……でも、なにさ?」ずい、とアルフは中腰になり身を乗り出してきた。その瞳に宿る光は、多分感づいてる。俺の、今の想いに、感情に。いたずらっ子のような、そんな色。「いやいや、だから、その……」「だから、その?」またも、接近。その際にふぅ、と耳に吐息を一つ吹きかけてきた。ぴく、と反射で身体が反応する。や、やばい。俺 今、超ドキドキしてるんですけど。やばいよねこの状況?「えと……えぇと」「ふふ。そのどもり方、ホントにフェイトみたいだねぇ」耳元で囁くようにして言われた。うわ、うわっ! ぞくぞくする!この身体になって以来、俺 耳元に弱いんだよ。美容室のシャンプーとかドライヤーで感じちゃうようなヤツなんだよ!?「……かわい」ぱくり。そしてアルフは俺の耳を口に含んだ。じゅるりと耳穴に舌を滑り込ませてくる。「う、ひゃ……!」ちょ、待ってアルフ。やだやだここじゃヤダ!しかし俺のそんな思いは知ったことかといわんばかりにアルフはさらに舌で俺の耳をこねくり回す。「きもひいい、よね? フェイトも好きなんらよ。コレ」「わ、わかった! わかったから!!」俺はどうにも攻められると弱い。こっちからガンガンいかないとペースを完全に握られてしまう。じゅるり、じゅるりと。アルフの舌は止まらない。それどころか動きをさらに激しくさせ、俺の感覚を刺激する。も、もうやめて! 腰が砕けちゃいそうだってばっ!「―――はぁ、すごい。ディフェクト、アンタ本当に……」「ぅぅ、な、なんざんしょ……?」アルフの瞳にまた、嗜虐の光が宿った。捕食するときとは違う。ただ、獲物をいたぶって、自らの子供に狩を教え込む時のような。「たまんない、かも…」「お、俺のライフポイントはもうゼ―――」俺の後頭部に手をやったアルフはそのまま髪の毛を掴み、やや強引に俺の首筋をひらけさせた。そしてまた、「―――うわ、うわっ! タンマタンマ! ちょっと待ってアル、っふぅ!」べろりと首筋に舌が這い回る。どうにもこうにも身体に力が入らず、俺は思わずアルフの身体にしがみついた。すると中腰の姿勢のアルフは何を勘違いしたのか、そのまま俺をホールディングし、ぐいと直立。まるで抱っこされているような体勢。地に足が着かない。昔の人はすごいことを言ったもんだ。このことだったんですね?(馬鹿)「ディフェクト。あたしにも『挨拶』してくれるよね?」「ちょ、まって、ホント、ウルトラマンの制限時間だけでもいいから、タイムアウトを―――」言い終わる前にするりと服の中にアルフの左手が滑り込んできた。つ、つ、つと触れるか触れないかの距離を保ち、背筋の中央を指が通る。予想通りに身体は反応してしまい、ビクゥと痙攣をひとつ。さらに不安定な状況でのコレ。後ろに倒れてしまいそうになり、俺はさらに強くアルフにしがみつく羽目になった。「あたしにも、『挨拶』……してくれるよね?」「い、いやだからね……」こんな状況になっちゃうからしなかったんだよ? いやいや、俺もまさかこんなにやられるとは思いませんでしたけどね!?アルフの顔が、ゆっくり接近する。吐息のかかる距離。鼻先は触れ合い、アルフの視線は俺の唇へ。はぁ、はぁとアルフの感情までも察知できる。お互いに、瞳は閉じていなかった。「……して、くれるよね?」「……はい、負けましたぁ……」ゆっくり瞳を閉じる。途端にバクリとアルフは唇に食いついてきた。唇同士を合わせるような単純なものでなく、完全に俺の口を、口で食べてしまうかのような。べろべろと、アルフの口内に収まってしまっている俺の唇は、犬のような彼女の舌の動きにせっつかれる様にその防壁を開く。「―――むっ…うぁ、るふ、ちょ、ま」「はぁ……ん……だぁめ……」俺の口内に、完全に侵入してきた。アルフの舌が。これはまた……。長い。アルフの舌は、長い。まるで犬の舌のように、奥に奥にその威力を発揮してくる。いつもの『挨拶』で感じないようなところまで、しっかりと届いた。「んぅ……も、もう、あるふ」「んん、もう、ひょっとらけ……ちゅ……」やばいんだって! ほんとに!しかしアルフは知ったことではないとばかりに俺を蹂躙する。ちらりと瞼を開けてみれば、そこには薄く開かれたアルフの瞳。にこり。瞳だけでアルフは笑って見せた。そして鼻先をぐりぐりと押し付けてくる。あぁもう……こんちくしょうめ。かわいいなぁおい!!俺は抱きつくようにして背中に回していた手を離し、アルフの顔に添えた。ぴく、とアルフが震えるのがまた可愛い。「……、はぁ……ちゅ」「でぃふぇ、くとぉ…」アルフの舌を自分の舌で、唇で、優しく刺激する。よだれが端から零れ落ちていくが気にならない。さっきまで良いように扱ってくれたお礼を、ね。。。。。。なんかいつの間にか夜。いったい何があったのか。どっかの誰かさんのスタンドで時間が飛んだのか?ち、畜生、誰も覚えていないのか? 結果か? 結果だけが残ったのか!?「それで、その犬どうするんだい?」「ん、まぁ……これから知り合うことは無いかもしれない人に家に投げ込んでくる」アルフが持ってきたドッグフードをむしゃむしゃ食ってる犬。生後二、三ヶ月って言ってたけど、そんなに食って大丈夫か?こいつはこれからアリサん家に行くのだ。これから先、お前もお世話になるかもしれないんだからちゃんと家の場所憶えて置くんだよ? プレシアにやられてやばかったらそこにいけよ?「誰だい? 知り合いじゃないんだろ?」「なんかデカイ家でバカみたいに犬を飼ってる道楽貴族風の女の子」「ふぅ~ん。また、女の子かい」「な、なんだよ。別に知り合いじゃないって言ってるだろ?」「ふぅ~ん……ふぅ~ん?」「げふんげふんっ!」なんだこいつ。やけに絡むじゃないか。さっきまであんなに可愛かったくせに。それは良いとして、どうしようかな。まさか本当に放り投げるわけにもいくまいし、手足縛って家の前に放置しておけば拾ってくれるかな……?少しだけ鬼畜なことを考えながら犬を。つぶらな瞳は俺を打ち抜いて、「くぅ~ん?」で、できねぇ。俺には出来ねぇ!こんな瞳で見つめてくるヤツを無碍に扱うなんて!こいつはきっとわかってるんだ。自分はまた捨てられると……。だから懸命に自分の可愛さをアピールしてるんだ。それしか自分には武器はないから。たったそれだけの武器でこいつは戦ってるんだ!!そんなコイツを、おれは……おれはぁああ!!!「『バカそうな人間だなぁ』……だってさ」「―――きっさまぁぁぁあああ!!!!」さて、犬が考えていることは分かりました。しかし優しい優しいディフェクト君は手足を縛るなんてそんなこと……。そして手足を縛りつけ猿轡をかませた犬をフードの中にいれ、「いいか、この家は『レギュラー』18だ。気を付けるんだぞ…!」「わかってる。『ミッシン』で行く。犬のタイミングはそっちに任せたよ」―――こそこそ、こそこそ。結局ピンポンダッシュで行くことにしました。門にもピンポンは付いてるんだけどそれを押しても本物のピンポンダッシャーにはなれない。やっぱモノホンは玄関。それだけを狙う。「ストップ。そこ……『ロクヨン』があるよ。あたしのハナは誤魔化せない」「……サンキュー。あぶねぇぜ、さすが金持ち。庭にこんなもの仕掛けるなんてな」ちょっとした草木の間から顔を覗かせている機械。おそらく赤外線を利用した侵入者察知の罠。俺はそれをゆっくりまたいだ。それにしてもアルフ。すげぇぜ。お前とだったらトップを目指すことが出来る。お前の嗅覚は赤外線が出すオゾン臭まで嗅ぎ分けるのか!?またもゆっくりと進みだした。アルフが後衛。俺が前衛なわけだが変わったほうがいいのかもしれん。そのとき、俺の視界にちらりと何かが動くのが見えた。ま、まずい…アレは!?「―――っ!!」「―――ひゃっ!」俺はアルフに覆いかぶさるようにして姿勢を限界まで低くする。まずい……『ロクヨン』があるくらいだ、『ハタチ』が居てもおかしくなかった。気付くな……気付くな……。限界まで息を殺し気配を殺し、フードの中では犬がちょっと暴れているが、(さっさといけ……)懐中電灯をもった男が二人。俺たちの前をゆっくり、通り過ぎていく。―――っほ……。よかった、危なかったぜ。現実にコンテニューは無いからな。「おいアルフ、赤外線に気付いてアレに気付かないのはどういう了見だ?」「ご、ごめんよぅ……こっちが風上なもんでにおいが……」「まぁいい、行くぞ」「はいっ」「ここから先は完全に『ジョシコウ』の範囲内だな……」「……どうするんだい? ピンポンが押せないよ?」茂みから顔だけを出し、玄関を確認する。カメラが二台。随分遠回りしてきたおかげで結構な時間を食ったのだが、まぁ……楽しいのだ。「くくく…こういう時はな、これだ」ごそごそと懐から取り出したるは、「……パチンコ玉?」「そう。これでピンポンをな」「この距離でかい?」「もち」ピンポンまでの距離は目算で7m。普通だったら絶対に無理だが、何を隠そう俺は魔道師。「ナノマシンシェルブリット……15%限定起動、承認」『そんな機能・ありません』ですよねー。俺はこそこそっとファーストフォームを展開した。左手にパチンコ玉を乗せ、「狙い撃つぜぇ……!」びしぃ、と中指で弾き飛ばす。それは狙いを違わずピンポンに―――ズゴメキョゴゥ!!!当たらなかった。それどころか隣にある玄関のドアを完全に破壊しまくった。お、おかしいな。当たると思ったんだけど。途端に鳴り出す警報。わらわらと出てくる執事服を着つつも何処か陰のある人たち。―――ぷぷぷ。やらかしてもーた!「な、何やってんだいバカ!」「わはははは!! いーのいーの! よし、逃げるぞ!!」「―――そこに誰かいるのか!?」もうメタルギアごっこは終わったよ。これからは逃げの一手!そこな執事! よく見とけ!!「―――ふはははは! 私は天より使わされた事も二、三度ある宇宙人のような地球内生命体だ!! 今日は諸君らにお土産を持ってきた! コイツは唯の犬のように見えるだろうが唯の犬だ!」「ば、ばかばか!! 早く逃げるよ!」「誰かあのバカを捕まえろ!!」「ふは、ふはは…ふふぁーっはっはっは☆ コイツはちゃんとアリサにやっとけよ!! ンじゃそゆことで、―――フィスト!」『―――explosion―――』ずどぅん! という爆発音。同時に俺はアルフを引っつかみ跳躍した。拳の爆発で飛ぶ。「―――ふは、はーははははははははは☆」「本物のバカかい!? こんなとこで魔法使ったら―――」「ああもう、うるさいうるさいうるさーい!!! こんな夜中に誰よ!?」「くぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅうううう!!!!」『くぎゅぅぅぅぅぅぅっぅぅうううう!!!!』「ちょ、いったいどうしたんだよぅ!?」。。。。。アルフと別れ、一人で八神家へと帰る道のり。今日は随分はっちゃけたぜ☆「あー、楽しかったなぁシェル」『あの・緊張感。あれは・校長の・デバイスに・落書きをしに・行った時・以来・でしたね』「おお、それそれ! ばれない様にめっちゃ変装したもんな。……く、くくく思い出したら腹が…。いやいや今日はホントに楽しかった。」『まぁ・それも……』「おう、―――ここまで、だな」そして俺は振り向いた。「……」二対の瞳。ここ最近はやての家の周りをうろついている猫。じ、とこちらを何も言わずに見つめているだけなのだが、「―――分かってるって。こういうのは今日でお終い。俺もそろそろ潮時かなぁなんて思ってたとこ」「……」「んだよ、文句あんのか? 俺は俺のしたいようにするだけだ」「……」ふい、と俺に興味を失ったように猫たちは踵を返した。長い尻尾をふりふり、ゆっくりと去って行く。「さて、と……、そろそろ冗談じゃなく頑張っちゃおうか?」『マスターは・冗談で・生きたほうが・長生き・できますよ・きっと』「なんだよそりゃ……」まったくね。きぶんわりーよ。げほっげほ……。