暗闇の中。
暗闇の中で私は埋もれていく。
埋もれてゆく、侵されてゆく、包まれてゆく――――
―――おっぱいに、埋もれてゆく。
「うぇへ、えへへへぇ…」
「主…おいたわしや…」
目の前で銀髪のええ乳を持った女性が私を見て悲しんでいた。
すまんなぁ、頭ではアカンって理解出来とるんやけど、こう、胸に包まれてると安らかに気持ちになれてしまうんや。
あかんなぁ、ほんまにあかん。
「主、目を覚ましてください!まだ間に合います!」
間に合うん?
そっか、まだ間に合うんか。
ならもう少しだけこのままでも大丈夫やな。
「あるじぃ…正気に戻って下さいよぉ…」
ああっと、泣き始めてしもた。
流石に可哀想やから、慰めてあげなあかんな。
「って、なんで私の胸に飛び込んできてるんですかぁ!?」
いや、違うで。
これはあれや、抱き締めてるだけや。
たまたま身長差とかで顔が胸に当たっとるけど、たまたまなんやで?
「うぅ…もういいです、どうせ無理だったんです…常識人なんて無力だったんです」
常識人が、無力?
「だって主はもう目覚める気無いですし、外でもみんな劣勢ですしぃ…」
それは、あかんなぁ…私だけならともかく、皆にまで迷惑かけるのはあかん。
常識人の絆は、胸なんかよりも尊いんや!
「あ、主?」
確かに胸は気持ちええ。包まれたり揉んだりすると幸せな気分になる。
多分、両親がいないせいもあるやろなぁ。
ほら、胸は母性の塊みたいなもんやし。
せやけどそれは、ただの胸や。
ただそこにあるだけの胸はただ柔らかくて気持ち良いだけ。
血の通った人間の、大好きな相手の胸でこそ本当に幸せになれるんや。
…まぁこんなんじゃあ、常識人とは言えへんかもしれんけどな。
「大丈夫です!少しくらいなら、きっと!」
そか、ありがとな。
そやな…よし、名前をあげる。
もう病みの書とか言わせへんよ。
今から貴女の名前は、歪んだ世界に秩序を運ぶ祝福の風―――リインフォースや。
「リインフォース…ありがとうございます!」
よし、行くで!リイン!