メムノンはほとんど勝利を確信していたと言ってよい。ヴラドがラドゥに対して甘い期待を抱いているのはわかっていた。心の髄まで洗脳をほどこしたラドゥであればヴラドを殺害することも決して夢ではない。少なくとも傷を負わせ、ヴラドが戦場に立てないだけでも戦いは終わるのだ。万が一ヴラドが無傷であったにせよ、もはや冷静な指揮を執ることはできないはずだった。「ワラキア公はアサッシンの手にかかったぞ!ワラキア軍恐るるに足らず!!」オスマンの兵は大きな歓呼とともにメムノンに応えた。それほどにワラキア公の存在はオスマンにとって重い心理的圧迫となっていたのだった。アドリアノーポリの城門が勢いよく開かれた。決壊寸前までたまった鬱憤を晴らすかのように、オスマン軍は怒涛の勢いでワラキア軍へと襲い掛かろうとしていた。ゲクランの命を受けて席をはずしたクラウスの目に、オスマンのおびただしい兵影が映っている。その数はおよそ十万弱といったところであった。おそらくはアドリアノーポリの駐留兵力の全軍を後先考えずに繰り出してきたと見ていいだろう。総力戦になるのは確実であった。「ちっ………シェフ殿の読みが大当たりだ!」慌ててクラウスは迎撃の準備に駆け出した。彼の上司が戻るまでにやっておかなくてはならないことが山のように残っていたからだった。「ワラキア公戦死!」「アサッシンに誉れあれ!」ほとんど狂騒状態に近いオスマンの強攻はワラキアの精強な常備歩兵にかつてないストレスを強いていた。オスマン軍の異常な士気の高さが、ワラキア公の死によるものだということがワラキア軍の動揺を誘っていたのである。指揮官たちが口々に否定の言葉を繰り返しても、これまで常に戦場にあったワラキア公の姿がないという事実は動かない以上不安の完全な払拭は不可能だった。甚大な損害にも怯まずに猛攻の最前線に立っていたのはオスマンの誇る常備歩兵イェニチェリ軍団であった。彼らはオスマン最精鋭の名に相応しく最新の装備で武装していた。急造ながら彼らだけに供給されたもののなかには、ワラキア軍がこれまで独占してきた手榴弾が含まれていた。「………敵に使われて見るとなんて厄介な武器だ!」ワラキアの誇る野戦陣地はこうした投擲武器との相性が悪い。数において劣る現状では特にそうだった。「ここから先に通すんじゃねえぞてめえら!銃先を揃えろ!散弾の一斉射撃が終わったら押し戻すぞ!!」第二線陣地にはようやくゲクランが間に合っていた。後年ぶどう弾と呼ばれることになる散弾が、前線に並べられた五十門近い大砲へと装填され、その凶悪な破壊を一斉に吐き出す。「突撃ィ!」散弾で穴だらけになったイェニチェリの戦列を槍先を揃えてワラキア銃兵が押し返す。しかしコンスタンティノポリスで苛烈な火力戦を経験したオスマン軍は凶悪な散弾の破壊力を目の当たりにしつつもなお士気を失いはしなかった。「悪魔に正義の鉄槌を!」「アラーの御名において復讐を!」温存されてきたスルタン直属の常備軍はさすがに士気も練度も最高な水準にあると言わざるをえない。突撃の衝力を失ったワラキア銃兵が、再び押し込まれ始める。戦いの勢いはいまだオスマンにあり、ゲクランの手腕をもってしてもその勢いを押しとどめるのは容易なことではなかったのだ。「漢を見せろ!一歩たりとも本陣に近づけるな!」さすがのゲクランが焦りの色を隠せなかった。ゲクランはこれまでの歴戦の経験からヴラドの負傷が決して軽くないことを知っている。内臓の傷つき方によっては死んでいてもおかしくない重傷なのは間違いなかった。できることならヴラドなしで決着をつけたいというのがゲクランの本音である。そもそも鎧を着ることも馬に乗ることも負傷者にとってはあまりに負担の大きな行動なのだった。「今こそ勇を奮え!忠勇なる神の戦士たちよ!ヴラドなきワラキア軍など相手にもならぬわ!」しかし現実問題としてヴラドの不在は確実にオスマン軍に力を与えていた。味方に数倍する損害をオスマン軍に強要しつつも、ワラキア軍はオスマン軍の勢いに後退を余儀なくされていたのであった。「シェフ殿、そろそろここもやばいですぜ」「押し込まれる前に第三線に下がらないと………」ゲクランにも退勢が覆しがたいことはわかっている。しかし第三線陣地とはすなわち本陣にほかならない。迂闊に退いてしまっては後がないのだ。「………仕方ねえ、クラウス、お前は一隊を率いてイェニチェリどもを例の罠に誘い込め、モーニ、お前は一足先に戻って迎撃の準備をしておくんだ。砲をありったけかき集めておけ。殿はオレがやる」そのころメフメト二世は会心の笑みを浮かべていた。………これまで幾度も煮え湯を飲まされてきたが、最後に勝つのは余のほうであったな。ワラキアの野戦陣地はあと本陣を残すのみとなった。それでもなおヴラドが出ないのは彼が死んだか深刻な重傷を負ったことの証であろう。全く愚かというほかはない。弟など最も最初に排除すべき政敵であろうにそんなものに固執するヴラドの気が知れなかった。傍らのメムノンもまたメフメト二世ほどではないにしろ勝利を確信している。イェニチェリの士気は高くいまだその余力は尽きてはいない。ワラキア軍二万五千に対しオスマン軍十万、コンスタンティノポリスでの戦いより戦力比は縮まっているがスルタン直属の親衛隊が戦線に加入した今投入された兵の士気と練度という意味ではむしろ戦力比は開いているといってよいのだ。両翼の軽騎兵は苦戦しているようだが、中央部の歩兵戦闘での優位が続く以上ワラキア軍の命運は風前の灯であった。歴史を創るのはやはりお前ではなかったようだな、ヴラド!クラウスに引きずられたイェニチェリが地雷原に誘い込まれる一幕があったものの、ワラキア軍は完全に本陣まで押し込まれていた。殿で奮戦するゲクランも焦りの色を禁じえない。このままではやばい。本陣の守りは強固だが、それでもこの勢いは止められるものではない!「………待たせたな」 ワラキアの本陣がその凶悪な火力をむき出しにしたのは、まさに最前線にヴラドが現れたときと同時であった。二十連装の多連装ロケットがほぼ一千に及ぶ盛大な火揃を打ち上げていく。一回だけの使いきりだが、その瞬間制圧火力は言語を絶する。たとえどの時代の兵士であろうとも一千に及ぶ地対地ロケットの斉射を受ければ壊乱は必死であろう。焼夷油脂を撒き散らしたロケットのあとには散弾の一斉射撃が待っていた。あるものは生きながら燃える松明と化し、またあるものは人のものとも思えぬ肉塊の一部と化した。ほんの一瞬にして発生したさながら煉獄のような情景は、当初から勢いづいていたオスマン軍の衝力を完全に停止させたのである。もとよりこれらの武器は本陣防御の切り札として用意されていたものだ。しかしオスマンの兵士にとってはとうていそうは受け取れぬものであった。彼らはワラキア公の出現にこそ、この惨状の理由があるとごく自然に受け取ったのである。ヴラドの出現にワラキア軍は沸き、オスマン軍は萎縮した。戦況は目に見えてワラキア軍に傾こうとしていた。まるで砂漠の魔神に出会ったように矛を鈍らせたオスマン軍の隙を、ゲクランたちが見逃すはずもない。逆に戦線を押し上げたワラキア常備歩兵軍は第二線陣地を瞬く間に奪回した。「……………おのれヴラド…………!!」なまじヴラドが当初不在であった分だけ、ヴラドに対する強迫観念にも似た畏怖が助長されてしまっている。先ほどまで押しに押していたイェニチェリ軍団が見る影もなく逃げ惑う様はメムノンの腹奥に重い圧迫を覚えさせずにはおかなかった。無事だったというのか?いや、それでは今まで隠していた理由が思い当たらない。もう少し遅ければワラキア軍の全面崩壊すらありえた。ということは出たくても出られなかったというのが正しいのに違いなかった。…………間違いなくヴラドは戦場に立つのも危険な重傷を負っている。重傷であるならば逃げるのも困難なのは自明の理だ。今度こそヴラドの息の根を止められる喜びにメムノンは鼻をならした。「督戦隊を投入しろ」幽鬼のような兵団が接近しているのにゲクランはいち早く気づいていた。ベクシタスの原野でワラキア軍を壊滅の一歩手前まで追い込み、近衛を犠牲にさせた部隊である。しかしその損耗ぶりは激しく、その数は二千にも届かない。「…………それで勝ったつもりかい?メムノンさんよ」ワラキア銃兵の後列から、ひときわ巨大な銃をふたりがかりで抱えた兵が進み出る。大鉄砲の装備部隊であった。ベクシタスの敗戦からヴラドが急いで取り寄せたもののひとつがこの大鉄砲だった。「ぶっぱなせっ!!」大鉄砲から放たれた巨大な鉛球がもたらした破壊はおそるべきものであった。胴体を直撃した弾はその巨体にふさわしい運動エネルギーによりおよそ三十センチ近い破口を開け、内臓を後方へと撒き散らす。足に当たれば足が飛び、胸に当たれば上半身が宙に舞った。いかに不死身をもってなる督戦隊であろうともこのおそるべき破壊には対抗する術がなかったのである。「………そんな馬鹿な………!」メムノンの顔から一気に血の気がひいた。自らが手塩にかけた不死身の軍団がごく普通の兵士に敗れるなど考えもしないことであったからだ。もしもゲクランがメムノンの動揺を目にしたならば、嘲笑とともに鼻を鳴らしたであろう。確かに痛みも恐怖も感じない兵士の存在は脅威である。しかし彼らの耐久力も所詮は普通の人間と変わらぬことがわかっていれば対策を用意することはやさしい。彼らに高度な戦術行動をとらせることは不可能だから、彼らは真っ正直に突っ込んでくるだけだ。ならば行動が不能になるだけのダメージを与えてしまえば容易に殲滅してしまえるはずであった。取り残しも落ち着いて顔を狙って討ち取ればいい。それでもこれが定員一杯の五千名であったならば大鉄砲の数から考えて対応は厳しかったであろう。ベルドが半ば以上をベクシタスで討ち果たしてくれたからこそ完璧な迎撃戦が行えたのだ。「ベルド………この戦の殊勲はお前さんのものだ……!」オスマン軍にとっては最悪なことに東西の両翼からワラキアの援軍が姿を現し始めていた。その数は実に六万を超える。いったいどこからこれほどの大軍が湧いて出たものかメムノンには想像もつかない。「悪魔(ドラクル)め!またわけのわからぬ魔術を………!」いくらなんでも両翼から迫る六万もの軍勢を放置しておくわけにはいかない。ワラキアの両翼で激闘を繰り広げていた軽騎兵部隊が急遽転進して正体不明の軍勢へと向かう。見れば軍列も整えきれぬ雑軍であるようであった。組織力のない歩兵など軽騎兵の敵ではないのは明らかである。雄たけびをあげて吶喊するオスマン軽騎兵の前に、巨大な炎の河が出現した。避けきれずに数百の騎兵が炎の柱となる。突如出現した炎の河の正体は火炎瓶の一斉投擲であった。ツポレフ子爵の組織したブルガリア・トラキアの対オスマン反抗組織が正体不明の援軍の正体である。もとより烏合の衆である彼らに一線の戦闘は託せない。そこでツポレフは素人でも簡単に量産できる火炎瓶を供給して、彼らにそれを投擲することだけを要求したのであった。六万の兵士が次々に投げ入れることでますます大きくなる炎はオスマン騎兵に恐慌をもたらした。今や絶対的物量をほしいままにしてきたオスマンの優位は失われ総兵力が拮抗したという事実は、オスマン兵士にとってショック以上の何かであったのである。事実上六万の援軍が戦力としては計算できないことをオスマン軍は知らない。ここで決して戦意が高いとはいえない軽騎兵部隊が壊乱した。炎から逃れるように戦場からの逃亡を開始したのである。実のところオスマン朝にあって戦意が高いのは常備軍のイェニチェリとスルタン親衛隊ぐらいなもので、辺境や属国から徴兵された兵士たちの多くは督戦するものがいなければ戦力化が難しいほどに戦意が低い。ここにきて通常彼らの督戦にあたっていたイェニチェリや督戦隊がワラキア軍と激戦の最中であることが災いしていた。逃亡を始める兵士を見たメムノンは決断した。「陛下、今こそご出陣を!」味方の士気がこれ以上落ちないうちに全兵力をもって攻勢に出るしかない。そして士気を一時的にせよ回復するためには指揮官が陣頭で指揮をとる必要があるのであった。しかしここでメフメト二世は逡巡した。個人的な武勇に自信のないことが、メフメト二世を躊躇させてしまっていた。そこで致命的な時間が出血してしまったことをメムノンは悟った。「おさらばです。スルタン様」スルタンに背を向け騎上の人となったメムノンは、わずかな側近とともにワラキア軍へ突撃を開始したのである。もはや彼がスルタンを振り返ることはその死にいたるまでなかったのだった。「悪魔め!悪魔め!この地上に貴様の住む場所などないということを教えてやる!」かろうじてゲクランの猛攻に耐えていたイェニチェリ軍団は宰相自らの出戦に奮起したが、ワラキアに傾きかけた流れを変えることはできなかった。驚くべきは馬に牽引された大砲が、歩兵の前進に追随しているという事実である。砲身の軽量化に成功したワラキア軍はこれにより速やかに近距離火力支援を受けることができるのだ。「弾種榴弾、縦射、斉射、撃て!」イェニチェリの縦深に容赦なく榴弾が降り注ぐ。さすがのイェニチェリも傭兵まで逃亡を始めたなかで士気を保つのは難しかった。「退くな!悪魔に凱歌をあげさせて神が見過ごしたまうと思うか?」「………貴様が神を語るな」一発の銃弾がメムノンの額を撃ち抜いた。狙撃手の姿すら見えないその恐るべき手腕にたちまち動揺が広がる。魔弾の射手に狙われて心穏やかにいられるものはそう多くはないのだ。「この射距離は新記録だな」マルティン・ロペスの神技は銃が変わろうともいささかも衰えぬばかりかさらに磨きがかかっているようであった。こうしてオスマン帝国宰相メムノン・パシャは自らがそれと気づくことなく戦場の露と消えたのである。どうにか統制を保っていたオスマン軍にとって宰相の死は決定打だった。完全に戦意を喪失した軍はわれ先に逃亡を開始する。期せずしてスルタンへの進撃路が無防備な姿をワラキア軍の前にさらしていた。メフメト二世は腹心の死に恐慌をきたしていた。これでは話が違うではないか!ワラキアを打倒する我らの策に間違いはなかったはずだ。それがいったいどうしたらこんな惨めな有様になってしまうのか!今やスルタンを守るのはわずか百名余の供回りだけになってしまっていた。親衛隊まで投入した総力戦の結果であった。こんな敗北は認められない。正義が敗北することなどあってはならない。自分こそは歴史に偉業を残すものだ。この地上に神の栄光をもたらし、イスラムの希望となるべき存在なのだ。間違っている。こんな現実は断じて間違っている!「…………存分に夢は見たか?」いつしかスルタンを重囲においたヴラドはあわれむように言った。「こんなことは認めぬ!余はこの地上の覇者となるべく生まれてきた男なのだ!」ヴラドの表情に怒りの色はない。むしろ悲しみを耐えるかのようにヴラドは首を振った。「夢を見たければ一人で見ているがいい。………オレという現実がお前の夢を蹂躙するそのときまで」………………この日オスマン帝国最後のスルタンがトラキアの大地へと還った。その後はほとんど地獄のように忙しい日々が続いた。傷が癒えるのを待つまもなくセルビアで独立闘争が始まり、時を同じくしてアナトリアの地でスルタンの甥を名乗るハサウェイという男がオスマン帝国の復興を企てたのである。しかし政治軍事の双方に横たわる巨大な戦力差は如何ともしがたいものであった。セルビアはゲクラン率いる常備軍によって一蹴され、ハサウェイはヴラドとウズン・ハサンに両雄に挟撃され木っ端微塵に打ち砕かれた。ヴラドはオスマン戦役後正式にルーマニア王に即位している。同時にヘレナとの結婚式も盛大に取りおこなわれた。もっとも側后が新婚早々ふたりもついてきていたのだが。盟友ヤン・イスクラもまた昨年スロヴァキア王に即位していた。最も彼にとってはいささか不本意な窮屈な生活を強いられているようで不平の便りが先ごろも届いている。そして昨年には側后フリデリカとヴラドの間に待望の第一子が誕生していた。母親の血を色濃く宿した姫で名をマリーカという。そのころからヴラドを衰弱死させるのではないか、というヘレナの奮起が始まるのだが、その甲斐あってヘレナの受胎が告げられたのが半年前。そして今、ルーマニア王正后の出産が佳境を迎えようとしている。すでにオスマン戦役から二年半が経過しようとしていた。身体の震えがとまらない。ヘレナはいまだ十六歳になったばかりである。それでなくともこの時代の出産は命がけなのだ。万が一にもヘレナを失うような事態には耐えられない。オレは無事に出産が終わることを信じて神に祈ることしか出来ずにいた。なにが万能の人だ。どこが明賢王なのだろう。人の身にできることなどたかがしれているというのに。現にヘレナの産みの苦しみにオレが出来ることなどなにひとつもないのである。夜半に始まった出産はすでに半日を経過して夜明けを迎えようとしていた。最愛の女よ、まだ見ぬわが子よ。どうか無事に…………!そのとき隣室から赤子の泣き声が響き渡った。「陛下!陛下!おめでとうございます!双子の男子でございます!」「そうか…………!」オレは無意識のうちにヘレナへと駆け寄っていた。「そんな泣きそうな顔をするな、我が君………」さすがに疲労の色は隠せないがいつもの強気の口調は健在だった。この女性には生涯かなわないであろうと心のどこかが告げていた。「ありがとうヘレナ……もう……ゆっくり休んでくれ」それ以上は言葉にならない。本当はもっといろいろな言葉をかけてやるつもりであったのだが。「見てくれ、生まれたときからなんとも仲のよいふたりだ」誇らしげに微笑んだヘレナに双子の息子を見せられた瞬間、オレは言葉を失って絶句した。人は誰しもが両の手を握り締めて生まれてくる。幼い力を振り絞って泣きながらその小さな手のひらを必死に握り締めて。それがこの子たちは違っていた。お互いの手を握り合っていたのだった。………いったいこれはなんの奇蹟だろうか?喜びでもなく、悲しみでもなく、ただ透明な涙が溢れた。胸を衝かれた想いの衝動はオレの記憶を過去へと運ぶ。もしこれが神の起こした奇蹟なら、オレは自分を許せるだろうか?そしてこの二人に偽りの夢でない本当の幸せを与えられるのだろうか?かつて見失った家族の絆を今度こそ固く結ぶことができるだろうか?この黒髪と金髪の愛すべき息子たちに…………「…………ヘレナ………もし許されることならこう名づけさせて欲しい…………」「…………ヴラドとラドゥと………………」 THE END