イ ゼ ル ロ ー ン 要 塞 陥 落 !!
この報せに『魔術師ヤン!』『ミラクルヤン!!』と同盟プレイヤーは歓喜の声をあげる
無謀な戦争イベントを起こし、多くの人々にデスペナを強いた悪の帝国に勝利し
『アスターテ』で喫した大敗北の雪辱を果たしたのだから
そして、この勝利に浮かれた同盟プレイヤー達は一度の勝利に満足することなく
利己心と復讐心を更に満たすため、新たな『戦争イベント』を求めるようになっていく
敗北した帝国軍プレイヤー達がかつての自分達と同じように
怒りと悲しみに満ちた復讐心に猛り狂っているなどとは露ほども思わずに
■帰るべき場所■
『三人揃い踏みとは、皆さん存外暇人のようですね』
何時もの相談所から突然『召集』によって姿を消した少女の
帰還を出迎えたのは二人の男とそっぽを向いた少女の三人組みだった
『相変わらずのようで安心しましたよ。お嬢お帰りなさい』
「相変わらず無愛想と言うかなんとうか、まぁ、無事で良かったよ」
『別に暇だったから来た訳じゃない。一応、知り合いだから・・・』
各々からかけられた言葉から三人が自分の帰還を喜んでくれている事を感じ取った義眼は
一瞬だけ表情を綻ばせると言う普段の彼女らしくない失態を侵してしまうが
それを指摘するような無粋な人間は幸いにも誰一人居なかった
■
彼らと同じように仲間の無事を喜ぶ光景は
帝国と同盟を問わず彼方此方で見ることができた
急に居なくなった親しい人の無事を祈る想いは同じなのだ
そして、動かなくなった人を抱きしめる者の悲しみも変わらない
また、明日が来ないかもしれぬという恐怖と突然訪れるかもしれない別れの可能性は
プレイヤーの感情を大きく揺さぶり、人々により強い繋がりを求めさせるようになり
心の充足を得たいと渇望するプレイヤーを巷で溢れさせる
■買物へ行こう♪■
まぁ、今回は無事に義眼が帰ってこれてホントよかったわ
知り合いが何時もの場所で動かなくなってるなんて寝覚めが悪いしな
しかし、ちょっと安心し過ぎたせいか昨日は飲み過ぎだったな
ゲーム内でまさか二日酔いの苦しみを味わう事になるとはねぇ
『ヘイン、大丈夫か?水でも持って来きたほうが良いか』
「悪い頼む、ちょっと頭ガンガンして動く気起きないわ」
しかし、こんなダメな呑んだくれを甲斐甲斐しく介抱してくれるなんて・・・
ちょっとぶっ飛んでる所もあるけど、食詰めもいい子なんだなよな
『ほら、水分を取れば少しは楽になるだろ?塩も少しだけ入れておいた
お前が望むなら口移しで飲ましてやっても私は構わないが、どうする?』
「馬鹿なこといって年上をからかうな!!痛っ・・、普通にコップで飲むからくれ
まぁ、水持ってきてくれたのはありがとな助かる。あと世話掛けさせて悪いな」
『気にしなくていい。好きでやっている事だから礼を言う必要もないさ』
気にするなって言われても、やっぱり親切にされたら御礼は言わないとな
実際、礼は良いとか言いながら、このお嬢さん滅茶苦茶嬉しそう顔してるし
やっぱ、他人同士が上手く付き合って行くには
ちゃんと伝えるべき事は伝えなくちゃいけないだよな
それに生活費は全部こっち持ちだけど
コイツには炊事に掃除、洗濯やら家事全般においてお世話になりっ放しだし
お礼を言うだけでなく、偶には形のあるお礼をするとしようかね
「食詰め、今日のお礼でおっちゃんが何でもこうたる、遠慮せんでいいぞ
もちろん・・・、もうちょっと二日酔いの頭痛が治まってからだけどな・・・」
■
急に大声を出したヘインは直後に襲う頭痛で蹲ることになったが
続いて発したお礼と見返りを約束する言葉で
かわいいおんなの子の眼を輝かせることには成功する
もちろん、彼女が喜んだのはモノを買えることではなく
買物に付き合うヘインと一日を過ごせる事の方である
こうして、一気にテンションがあがってきた食詰めの行動は
神速を尊ぶ名将といって良い動きの速さであった
ヘインが二日酔いから醒めるまでの間に
髪を整え、少し気合の入った化粧をし終えるとお出かけ用の服に装備を変える
ちなみに、この『レンネンカンプ』の世界では装備品としての防具以外にも
高価であるという難点はあるものの外装を楽しむための衣装がたくさん用意されており
ヘインのように資金に余裕のあるプレイヤーは現実以上に
たくさんの衣服や装飾品を所持し、オサレを楽しむことが可能であった
『ヘイン、私も人の事を言えるようなセンスはしていないが
もう少し、気合の入った格好をしてくれると嬉しいのだが?』
「へぇ?別に近所に買物に行くだけなのに張り切ってどうするんだ?」
もちろん、ヘインのように生きるか死ぬかの状況の中
オサレを楽しむ感性とは無縁の人たちも多かったので
普段から防具を装備しながら生活する場合も多々あったが
この場合のヘインは別の意味でなっていなかったので
少し、機嫌を悪くした食詰めに散々引っ張りまわされ
この日は永延と買物に付き合わされることになってしまうのだが
根性無しのヘインは情けない事に
食詰めの隙を突いて近くの公園に逃亡してしまう
■公園へ行こう!■
もう、家に帰りたいです・・・
足が棒のようになって動きません
何度も試着を繰り返してそのたびに違った感想を求められます
いちいち喰ったものが美味しいかどうか確認されます
疲れたので『疲れた』と正直に言ったりしたら
多分、恐ろしい事になるのが分かっているので何もいえませんでした
『う~ん、初デートの嬉しさで完全に舞い上がってますね
良かったじゃないですか、ヘインさん愛されてますよ♪』
良かったじゃないですかじゃね~よ!!
こちとら朝一からいつにも増してぶっ飛んだ食詰めの相手してるんだぞ!!
ようやく隙見つけて逃げ出したけど、いつ見付かるか分からんし
『ちょっとダメじゃないですか!デート中に女の子置いて逃げちゃうなんて!!
直ぐに戻って謝ってきてください。心細くなって泣いてるかも知れないですよ』
やっぱ、戻んなきゃダメか?『ダメです♪戻ってあげてください』
満面の笑顔で即答ですか・・・
それにしても、職安で仕事もしないでこんな所で油売ってていいのかよ?
はっきり言って顔も見たくないNPCランキング堂々の1位の
お前とは話もしたくなかったんだけど?
『話を逸らしつつキッツイこと言いますね!!私は特別なNPCだから
神出鬼没なんです。別に就職ラッシュが一段落したから契約を切られて
公園でブラブラしてる訳じゃないですからね!お腹だって減ってないです!』
うん、さっき食べようと思って買った鯛焼きを一個きみに進呈しよう
『いいんですか?』
いいから食え食え、子供が腹減らしてたらオヤツをやるのが大人って奴だろ?
それを遠慮しないのも子供の特権だから気にせず食べればいいよ
『ヘインさんって、馬鹿が付くほどのお人よしってやつですね♪』
馬鹿で悪かったね!!そんなこという子は鯛焼きもう一匹やらないぞ!
『あぁっーん!!冗談ですよ♪私はヘインさんのそういうところも良いな~なんてね!』
調子の良いこと言いやがって、これ袋ごと全部やるからささっと帰れ
これから俺はまた本当の地獄ってやつに付き合わされに
行かなきゃなんないんから忙しいんだよ?畜生、戻らなきゃダメなんだよなぁ・・・
『じゃ、今日はここでお別れですね。鯛焼きありがとうございます♪
そうそう、御礼にこのペアペンダントをあげます。ファーさんに
謝る時に一緒に渡してくださいね!きっと許してくれると思いますよ』
いいのか?悪いね助かるわ。膨れちゃったアイツの機嫌取るのも大変でね
まぁ、それが嫌なら逃げるなって話なんだろうけど
距離をあんまり近づけたくない事情ってのがあってね
『動かなくなった自分を見たことで悲しませたくないからですか?
それただの自分勝手ですよ。全然、優しさなんかじゃありません』
■
ヘインは少女からの最後の糾弾に近い問い掛けに答えることなく
不安一杯の顔で自分のことを探し回る別の少女の元へと戻る
『急にいなくなるなんて酷いじゃないか!卿の事を私がどれだけ探したと・・・』
文句と共に抱きついてくる食詰めに弁明と共にお詫びの印を渡して
機嫌を必死にとらなければならなかった
どんな理由があっても、置き去りはいけないことなので
ヘインは徹底して平身低頭で謝罪を続けるのは当然であったが
『ふむ、これを私に渡すために外していたというなら仕方がないか
一言声を掛けてくれなかったのは頂けないが、まぁ、良いだろう』
何だかんだで渡された物が恋人登録している者達でさえ恥かしがる
ペアアイテムだったので機嫌は上々のヘブンへブン状態に一瞬で到達する
ちなみに、ペアアイテムという物は二人で装備する事によって
通常の効果より高い能力補正がされたり、特殊な機能などが付いている場合もある
また、結構なレアアイテムで売れば非常に高価なものであるのだが
一方だけが勝手に売ったりして店に流れたものが、もう一方に見付かると
他人・フレンド・恋人・結婚といった登録関係に応じて修羅場イベントが発生し
最悪、二人で素敵な小船に乗って大海原に旅立つ強制イベントを起こす事になるため
非常に有用なモノが多かったのだが、装備頻度はそれほど高くはなかった
ただ、逆に考えると恥かしさやそのリスクを恐れないという
強い想いを相手に示す事でもあるため、想い人からそれを渡される事は
最高にハッピーなことで『レンネンカンプ』世界の夢見る乙女が望む
最高のドリームイベントの一つとして有名になっていた
食詰めはこの事を当然知っていたため最高にヘブンってやつ!!になり
一方、ヘインは男の子なのでナニソレ?クエンノ?状態で
二人はいつものように非常に高い温度差を生み出すことになる
なかなか噛み合わない二人の道はまだまだ長くなりそうであった
■冒険者ギルド■
イゼルローン攻略戦後、ヘインと食詰めがキャッキャウフフしている間に
どんどん『レンネンカンプ』攻略は進んでいた
その一つが、『ギルド』の巨大化であろう
『レンネンカンプ』世界における『ギルド』は他のVRPGと大差ないもので
ギルド専用の屯所や資金、道具箱等々の便利機能に
ギルド専用チャットや位置確認が可能になり、ダンジョン攻略等が一気に楽になる
もちろん共同で狩等も行うのでより安全にレベルを効率的に上げることが出来る
また、ギルドに所属する『支援者』に優先的に仕事や材料を回す事によって
より多くの資金や開発アイテムを手に入れるなど大きな成果を得る事になる
こうしたメリットの非常に大きい『ギルド』と呼ばれる組織は
当然、三国を問わず次々と設立されながら、統廃合を繰り返し
大手ギルドと呼ばれるものがいくつも生まれていくことになる
帝国の有名所では『槍使い』が中心となって出来た
ビッテンフェルト中将がギルマスを勤める『黒色槍騎兵』
このギルドは帝国最強の攻撃集団を謳って積極的にダンジョン攻略に挑んでいる
また、『鉄壁騎士団』はミュラー中将がギルマスを勤め
商人職の護衛や生産職の採取の補助や代行を請け負うなど
『支援者』の強い見方としてその声望を高めていた。
もちろんこれら以外にも多くのギルドが存在し
口下手なプレイヤーが集まった『沈黙のギルド』と呼ばれる弱小ギルドから
門閥貴族階級とその配下を中心とした多くのギルドを傘下に置く
二つの『元帥府』ギルドを統合した巨大ギルド『リップシュタットの盟約』まである
ちなみにヘインはアスターテ戦以後、ある者達の強引な勧誘によって
『ローエングラム元帥府』と称される巨大ギルドに所属しているが
まったく会合に参加する事のない幽霊ギルド員まっしぐらで
つい最近になって義眼が同じギルドに所属していたことを知るなど
完全に登録だけのギルドメンバーで、『ギルド』の存在を軽視していた
だが、この『ギルド』システムは体制を引っくり返すための『内乱イベント』や
政府や軍高官に対する『暗殺イベント』を起こすのには必須の組織であり
この組織を軽視したことをヘインは少なからず、後悔する事になる
■■
『閣下は元帥府の会合に余り参加していないようですが
何かギルドを忌避するような理由でもあるのですか?』
ギルドねぇ~、俺ってさ昔から部活とかサークルのノリがなんかダメなんだよね
別にそういうのが悪いとか思ってるわけじゃないんだけど
面倒だとどうしても思えてきて、気が付いたら幽霊になってるんだよね~
『これは意外ですね。閣下は集団生活とか得意そうに見えましたが』
出来ないこともないけど、得意じゃないし、敢えてする気もないかな
フェルナーだってギルドの方には殆ど行ってないんだろ?
『そう言われるとそうですね。まぁ、かなり太っ腹なギルドなので
園遊会など盛大に開かれる時は食事と酒だけ頂きに参加してますが』
へぇ~、ギルドってそんな親睦会みたいなこともやってるんだ
飯や酒飲んでどんちゃん騒ぎするだけなら行っても良いな
現実のサークルも飲み会だけだったら毎日参加するんだけど
俺の大学の飲みサーの幹部は俺が入る前に
みんな塀の中の別講堂に強制的に通うことになってなくなちゃったんだよな
『例の超フリーダム事件ですか。確か主犯の大和容疑者は
色眼鏡の友人の婚約者まで手を出す鬼畜ぶりだったとか』
『閣下、楽だけしかない組織が崩壊するのは決まっているようなものです
その組織に入れなかった事を嘆くより、崩壊に巻き込まれなかった事を
喜ぶべきかと、人は組織によっていとも簡単に変えられてしまいますから』
たしかに、下手な組織に入って流されて変に道を踏み外す位だったら
最初から入らない方が良いよな。組織の都合とかで自由に行動できなくなったりするし
まぁ、組織の物量といった面での強みがないのもちょっと痛いけど
『一応、私はギルドの会合等に多めに参加しているので物量ではダメですが
情報面ではギルドの組織力を有効に利用できると思います。物量については
閣下のスキルによる資金があれば、攻略には十分すぎる物を揃える事が可能かと』
『あとは人的資源ですが、閣下とその相棒のお嬢さんに
私とお嬢がいれば高レベル揃いのそん所そこらのギルドじゃ
太刀打ちできない強力パーティになりますから問題ないでしょう』
そう考えると俺ら四人で連携を高めて行けばボス戦とかも結構行けそうだな
人手が足りないんだったら、どっかで目ぼしいヤツ二、三人スカウトするだけだし
同ギルドってだけの碌に知らない奴等と組むよりは
よっぽど四人で行動したほうが安心できるし、戦闘も上手く行きそうだな
『さて、閣下の結論も出たようですから、もう一名の御婦人を誘って
今日と明日を生き抜くため、血と危険が待つ狩りへと参りましょうか』
■
義眼たちとの会話でとりあえずは四人で攻略進めることを決めたヘインは
フェルナーの提案を容れ、食詰めを呼んで再び狩りを四人で行う事にする
もっとも、今回四人が行う狩は前回の馴れる為の狩とは異なり
より強い敵に挑みレベル上げを目的とする攻略を目指した本気の狩となる
そのため、彼等は激しい戦闘に長時間挑み続ける事になり
街に戻ってくる頃には疲労困憊の満身創痍の状態になってしまう
だが、帰ってきた彼等の顔は晴れ晴れとしていた
そう、苦労した分だけ一歩、この腐った『レンネンカンプ』の世界から
脱出する日が近づいているのだから
それに、今回は三人の連携の中にちゃんと入れて貰った食詰めは
終始ご機嫌で通常の三割り増しで敵モンスターを殲滅する大活躍で
自身を含めたパーティーメンバーのレベルを大きく上昇させるのに一役買っていた
更に、この突撃前衛タイプの魔法剣士と遠距離後衛の魔法剣士に
強襲タイプの盗賊に広域支援の踊り子を加えた四人組のパーティは
偶然ではあるが、なかなかバランスの良い組み合わせだったようで
彼等は狩で順調にレベルを上げて行くことでトップレベルの戦闘力を持った
周囲からも一目置かれるパーティへと大きく成長していく事になる
こうして、彼らがしっかりとした手応えを掴んでいくなか
目標となる丁度いい倒すべき敵が姿を現すことになる
そう『大魔王レンネンカンプ』の両腕と呼ばれる
二人の『中ボス』と呼ばれる大幹部がその姿をついに見せたのである
最悪のクソゲーは新たなる段階に進もうとしていた
■鎮まらぬ片腕■
全プレイヤーに誇示するかのように巨大な立体フォログラムで姿を現したのは
『大魔王レンネンカンプ』とその両腕ともいえる二人の幹部であった
大魔王レンネンカンプは生き残ったプレイヤーに嫌味とも思える賛辞を贈り終えると
『私の素晴らしい部下を紹介しよう』と述べ、両脇に立つ二人の紹介を始める
もちろん、そこまでの前口上がかなり長かったので
大半のプレイヤーはさっさと終わって死ねよと思っていたが
レベル530,000の大魔王に勝つ自信は流石に無かったので大人しくしていた
■■
「 では、まず予の美しい左腕とも言えるメア・リースを紹介しよう!
彼女はこの世界で最も美しく巨大な力を持つ大魔道師でもある
そんな、気高く美しい彼女はガイエスブルクの塔の最上階で
君達の挑戦を待っている!!吾こそはと思う者は彼女に挑戦したまえ! 」
大魔王の悦に入った紹介が終わると思わず息を呑むような
金髪の美しい少女が一歩前に進み出るとほんの少し上気した顔で
なんとも甘ったるいかわいらしい声で挨拶を始める
『 うふっ♪皆さんの心の恋人メアが本気で相手をしてあ・げ・る・わ・☆
いつでも塔の最上階の扉はアナタのために開いているからキ・テ・ネ・♪
でも、覗きとかエッチなことしたらオ・シ・オ・キ・ヨ・!うふっ♪ 』
メアァッアァアア!!メアァアッアッ!!メアッメァッ!!と
意味不明の叫び声をあげ始めるプレイヤーも若干居るには居たが
『なにアイツ?』『頭おかしくね?』『腐ってやがる・・これが妄想の力か!?』『BLか?』
引いたり、嫌悪や拒否反応を示すプレイヤーが殆どであったが
また、極一部の女性プレイヤーが急に枕に顔を押し付けながら足をジタバタしたり
首をいやんいやんって感じで振るなどの奇怪な行動を始めたりもしていた
「 では、続いてこの大魔王である予ですら制御できぬ右腕を紹介しよう
彼は闇に祝福された復讐の堕天使とも言える存在で、その心は哀しみに
捕らわれている。その心を解き放つ覚悟を持つ者は進むがいい!!
彼はイゼルローン巨大地下迷宮で君達の挑戦を静かに待ち続けている!! 」
レンネンカンプを半ば突き飛ばすような形で前に進んだ青年は
銀髪に血のような赤い片目を持つ女性と見紛うような美しい顔をしていた
『 俺の名はジャッキー・ガン・・・、ただの準2級ガンナーだ・・・
一つだけ言っておく、俺をあまり怒らせるな・・・、この右腕に銃を持ち替えた時
俺ですら防ぐ事の出来ない悲劇が舞い降りることになる・・・
俺は・・・もう戦いたくないんだ!!この呪われた右腕と第三の眼を開かせるな・・・
煉獄より生み出された漆黒の炎の力は・・・三界の神に封印されるべき力・・・
それでも、俺と戦おうというなら止めはしない・・・死の刻印を刻むだけだ・・・ 』
右腕を必死に押さえながらぺらぺらと喋る青年の姿を見た多くのプレイヤーは
完全に見てはいけないものを見たポカーン状態にさせられていた
ただ、その一方で壁や柱などにひたすら頭を打ち付けながら
奇妙な雄叫びを上げ続けるプレイヤーも何名かいたが・・・
「 どうだね?予の腹心の恐るべき力の前に言葉を失ってしまったかな?
だが、この二人を倒さない限り君たちは予の下に辿り着く事は出来ない
この大魔王の居城『レンネンカンプ城』への道を切り開きたくば
予の右腕と左腕を見事討ち果たし、この大魔王に力を示して見せよ!!
この閉ざされた世界を開放したくば、死にもの狂いに足掻いて見るがいい! 」
■
この、どうみても今まで一人で必死になって作ってただろ?という感じの
やっつけ仕事の中ボス二人を『大魔王レンネンカンプ』から紹介された
『レンネンカンプ』世界に捕らわれたプレイヤー達の多くは
改めてあの口髭を殺そうと決意し、ゲームクリアに大きな闘志を燃やすことになる
もちろん、その気持ちはヘインを含んだ四人組も同じで
彼等は中ボス妥当のため、巨大ダンジョン攻略に挑んでいく事になるのだが
その攻略への道は決して平坦な物ではなく、多くの困難が待ち受けているに違いない
だが彼等は決してへこたれる事はない!!そう彼等に熱い想いがあるのだ!!
『 口 髭 ぶ っ 殺 す ! 』
この明確な殺意と言う名の熱い想いが彼等の歩みを止める事を許さない!!!
・・・ヘイン・フォン・ブジン侯爵・・・電子の小物はレベル256・・・・・
~END~