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No.6402の一覧
[0] アロンダイトで全体攻撃 (スパロボZ ・とりあえず完結)[ドダイ改](2011/01/16 11:06)
[1] VSステラ編[ドダイ改](2009/02/15 17:42)
[2] VSルナマリア編[ドダイ改](2009/02/26 00:20)
[3] VSセツコ編[ドダイ改](2009/03/04 01:30)
[4] 俺の未来・彼女たちの未来 前編 (オリルートなラストバトル)[ドダイ改](2009/09/19 20:14)
[5] 俺の未来・彼女たちの未来 中編[ドダイ改](2009/09/24 00:44)
[6] 俺の未来・彼女たちの未来 後編[ドダイ改](2009/10/06 00:58)
[7] シークレットエロローグ前編 「枯れ果てろ!!熱戦・烈戦・超激戦」[ドダイ改](2009/12/03 01:19)
[8] シークレットエロローグ後編 「女の戦い」[ドダイ改](2009/12/12 10:22)
[9] シークレットエピローグ 前編 「ハマーン・カーンの憂鬱」[ドダイ改](2010/04/24 01:41)
[10] シークレットエピローグ 中編 「スパロボZERO」[ドダイ改](2010/07/20 22:56)
[11] シークレットエピローグ 中編そのに 「スパロボZEROⅡ」[ドダイ改](2010/12/19 23:41)
[12] シークレットエピローグ 後編  「アクシズの空は青いか」[ドダイ改](2011/01/16 11:03)
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[6402] 俺の未来・彼女たちの未来 前編 (オリルートなラストバトル)
Name: ドダイ改◆33b9b899 ID:80d4a734 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/19 20:14






「身体中が痛いや」





全参戦作品の主人公格による議長への説得(+3人を喰ったシンへの制裁による一致団結)によってザフトとの戦いが回避され、タイミングよく現れたシロッコを皆でフルボッコしたメサイア決戦から数週間後。

身体をこきこきと鳴らしながら、シンはアーガマの居住区通路を歩いていた。



現在の時刻は当直以外ではまだ起きている者も少ない午前6時。

昨日の夜からつい先刻まで熱を出したステラの看病の為に医務室にいたのだが、温くなった氷嚢を変えたり汗を拭いてやったりしているうちに、いつの間にかベッドにもたれて寝てしまっていた。

今は熱が下がり目を覚ましたステラに「もう大丈夫だから休んで」と言われ部屋に戻るところである。

寝る時間はもう無いが起床時間にはまだ余裕があるので、シャワーぐらいなら浴びれるだろう。

寝不足ではあるし変な姿勢で寝てしまったので身体中が痛いのだが、ひさしぶりに夜の営みが無かったせいもあって肉体的には充実していた。


ここ数日、 「そうなんどもぬかれてたまるかーーー!!」 とか 「エネルギーが足りない、少しだけ足りない」 といった生活を送らされているシンとしては、何も無い夜というものは非常に貴重なのである。

まあレイやデュランダル議長との戦いに苦しんでいた以前に比べれば、この程度の悩みなんて可愛いものだろうけど。


「汗もかいてるし、とっとと部屋に戻ろ―――ん?」


「じゃあカードキー渡しておくから、来るときは連絡頂戴。またね」

「必ず来ますよ。それじゃ、また後で」


シャワー恋しさに足を速めた瞬間、エマさんの部屋から出てきたカミーユを見かけた。会話の内容や今の時間帯など突っ込み所は多いのだが、見ない振りでもした方が良かっただろうか。

道を変えるか悩んでいたシンだったが、そうこうしている間にカミーユと目が合ってしまった。

さわやかな笑顔で手を上げる彼に、仕方なくスルーすることを諦める。


「シンじゃないか。おはよう、今日は随分起きるのが早いな」

「ステラが熱出しちゃったから、ずっと看病してたんだよ。今は熱が下がったから部屋に戻ろうとしてただけだ。

 それよりここ、エマさんの部屋だよな。こんな朝早くからどうしたんだ」


「………フフ、見て分からないのか、シン? 俺はついにお前に並んだぞ」


これで3対3だと続けるカミーユ。やっぱ朝帰りか。つーか俺にそんな対抗心抱かれても困るんだが。

確かに自分の周りはちょっとおかしい事になってはいるが、別にプレイボーイ気取ってるわけじゃないんだけどなぁ。


「あんまり人の事は言えないけどさ。カミーユ、お前ファとかヘンケン艦長に刺されても知らないぞ?」

「そのあたりは大丈夫だ。それよりもシン、あとはレコアさんかサラを落とせば俺の勝ちだからな!!」


……その2人はやめておいた方が良いと思うけどな。 『パプテマス様よりはやーい』 とか言われたらショックだろうし。



「馬鹿だなぁシン。……その方が、燃えるじゃないか?」

「心を読むなバカ」




もう好きに生きたら良いよお前。









あの後カミーユとはすぐ別れて部屋に戻ってシャワーを浴びていたのだが、気が付けば鏡の前に立ち尽くしていた。どうやらいつの間にか意識が飛んでいたらしい。疲れだろうか。

明日はサッカー大会があることだし、今日の訓練は早めに切り上げて休んだ方が良いかなと思いながらベッドに戻ると、部屋の中には先客がいた。

Tシャツに短パン、赤い髪。ルナマリアだ。



「しーあわせはー、あーるいーてこーない、だーからあーるいーていーくんーだねー……」



机の上の写真立てをみつめながら、何処かで聞き覚えのある歌を口ずさんでいる。部屋の奥にいるシンには気付いていない。

それにしてもこの歌、本来はもっとノリの良い歌なんだけどなぁ。歌い手の心境からかどこか物悲しく聞こえる。

一体何があったのだろうか。


「前向きに歩いてはいるつもりなんだけどなぁ……。あの馬鹿シン、最近は私と過ごす時間減ってるし。

 そりゃ昨日はステラが熱出しちゃったから、看病でずっと一緒にいるっていうのは仕方がないんだけどさ」


俺のせいでした。

写真の中央部分をつつきながら愚痴るルナ。あの写真はリアルルートの皆で撮ったもので、自分や彼女の他に、セツコやカミーユ、鉄也などが写っている。

確か指先の位置には自分がいたっけ。盗み聞きする気は無いが、出ていくタイミングがわからない。

出そびれるシンを他所に彼女の独白は続く。



「一昨日とその前はセツコさん。戦闘、ステラ、3人、私、セツコさん、パトロール、3人、当直、ステラと私、セツコさん、セツ…あの人マジで自重しないかしら。

 ………なんだかなぁ。

 傷を舐めあうような近付き方だったのは否定しないし、2人も一緒なのを受け入れたのは私なんだから、自業自得と言えばそれまでなんだけどさ。でも」


ため息。


「私だけのものになってくれるって、思ってたのにな………」


マジで申し訳ない。それに関して自分は一切の言い訳が出来ない。

本来ならば謝りながら抱き締めるところなんだろうけど、今の自分にその資格はなかった。

実行に移したところで、ルナは同情されたと認識するだけだ。それでは何も救えない。むしろ彼女のプライドを傷つける事にしかならないだろう。


情けないな俺は。好きな女の子が自分のせいで落ち込んでいるのに、慰める事すらできないってのか。

男として最低な自分を、助走つけてぶん殴ってやりたい気分になる。



「んっ………シン……っ」



零れ落ちる吐息。写真立てを手にしたまま、ルナマリアの股間がシンの机に押し付けられた。



「………」



もう1回言う。

ルナマリアの股間がシンの机に押し付けられた。



「………何、だと?」



ルナの股間が机に。

股間が机に。

こかんがつくえに。

こか つく


(んっ………シン……っ)



「――――――――ッッッ!!!!」






自分の中の、何かがハジけた………






股間が!! (股間が!!)

机に!! (机に!!)

股間が!! (股間が!!)

机に!! (机に!!)



もろともに!!!



「裏コード、『THE BEAST』!!!!」




自分への怒りはどこへやら。獣の如き咆哮と共に部屋の奥から飛び出る。ルナは驚いているが、この内から燃え上がる炎は止められない。


「えっ、えええええ!!!? ちょ、シン、いたの?」

「いたの」



俺の部屋だからな。そらおるわ。



「………み、見てた?」

「最初っから最後までな」



そこまでやりおるとは、流石の余もヒヤリとしたわ。



「瞳孔が開いてるんだけど」

「SEEDってやつだ。気にするな」



気力MAXのイベントだったしね。



「そ、そのおっきいの、私の方に向いてない?」

「他に誰を狙えと」



狙い撃つぜ!!



「それから、えっと 「もういいだろ」 ってちょっと!! 私はそんな」



覆いかぶさるようにルナマリアを抱き締めるシン。細いウエストを両腕に感じる。豊かなバストが自分の胸板で形を変える。……むう、けしからん柔らかさだ。

シンは迷うことなく、そのまま彼女をベッドへ押し倒した。


「ちょっと待って、ね!?お願いだから!! 今は朝だし、誰か来るかもしれないでしょ!? 今夜は開けとくからそれまで 「待てない」 んんーーーッッッ!!!」


静止するルナマリアの声は華麗にスルー。我ながら最低野郎にしか見えないが、女誑しでもシン・マナカでも好きに呼べばいい。

彼女の頬を掌で優しく包み込み、映画俳優ばりの濃厚な口付け。たっぷり1分以上瑞々しい唇を味わってから、ようやく満足して顔を離す。

鼻が触れ合うくらいの近さで見つめ合う2人。その光景を誰かが見た場合、どう解釈しても恋人同士の甘い時間だと判断するだろう。

尤もスイッチが入ったシンと真っ赤な顔でそんな彼を咎めるルナマリア、お互いの心境には大きな差があるけれども。



「ルナ、今夜は寝かさない……!!」

「今は朝だってば!!」

「だから、今夜は寝かさない!!」

「ちょ、何よそれ!! もしかして、明日の朝までってこと!?嘘でしょ!?」



そんな文句を言いながらも拒絶はしないルナマリア。抵抗もせいぜいシンの胸板を軽く押しているくらいで、むしろ短パンを脱がされる際に脱ぎやすいよう腰を浮かせてみたり。

TPOをわきまえて欲しいが求められるのは嬉しいという、複雑な女心といったところか。否定されていない分こちらにとっては好都合だが。

指を絡めたり額へのキスをしてみるが、案の定拒まれない。ルナマリアにシンのN2航空誘導弾を打ち込むのは時間の問題か。最後の障害は黒い勝負下着である。



「あと、いちまい……ッッ!!」

「~~~ッッ!! もう、わかったわよ!! ヤればいいんでしょヤれば!!


シンの首に両腕を廻し、唇を貪り返すルナマリア。火が点いたというよりは、ヤケになったと言った方が正しいかもしれない。

唇を押し付け、舌を絡ませ、シンの身体を強く抱き締めながら愚痴る。


「ほんとに、んっ、馬鹿んぅっ、なんだから!! 私だって、ちゅむっ、私だってたまにはロマンチックなシチュエーションに持って行きたいのにぃ!! ん、んんっ」

「ルナ」

「何よ!!!」


シンの呼びかけに怒りながら応えるルナ。怒った顔がまた可愛い。

自然と口から愛の言葉が零れ落ちた。



「ルナ。君を―――― 一生、離さない」

「な!? ………こ、この…この……ば「始めるぞ」舐めるな、吸うな、噛む、な、きゃ、はぁぁぁぁーーーーっっっ!!!?」





裏コード「THE BEAST」が発動したシンにとって、最弱の拒絶タイプである今のルナマリアは敵ではなく。


次の日の夕方になるまで、シンの部屋のドアが開かれる事は無かった。


















みんな、頼もしい顔になったな。


目の前に並ぶ仲間たちを見ながら、アムロはそう思った。



現在の時刻は16時。

交流のためのサッカー大会も終わり、数時間後にUNにおいてエーデル准将との最後の戦いに臨むため、ZEUTH全員がアーガマのミーティングルームに集まったところだ。

皆の前に出ているのはアムロの他に、ゲッコーステイト代表のホランド、若いが役職の高いキラとアスラン、AW勢代表のジャミル、スーパーロボット勢のまとめ役であるサンドマン。

そして一躍ZEUTHの顔となったクワトロが、現在作戦内容を説明中である。


「ジエー博士の話によると、まず間違いなくエーデル・ベルナルは軍を率いてUNステーションを奪取しに来るとの事だ。

 その力は驚異であるしエウレカを一刻も早く救出したいが、時空修復の際に邪魔されても困る。つまりこの状況は後顧の憂いを断つという意味で我々にとっても都合が良い。

 よってフリーデンやアイアン・ギアーをUNステーションの守備に回し、アーガマ等はその間に大気圏離脱準備に入……む」


不意に言葉を止めるクワトロ。その視線の先では2人の男女が身体を預けあって眠っていた。

シンの肩に頭を預けているルナマリアとその彼女の頭に自分の頭をもたれさせているシン。机の下では指を絡めて手を繋いでいる。なるほど、2人してサッカーをサボっていた理由はこれか。

こういう状況でなければ微笑ましく思うところなのだろうが、今は決戦前の大事な時間だ。注意する必要があるな。

そう自分が動く前に、既にアスランが歩き出していた。止める気は無いが、どうも彼はシンやルナマリアに対して他人に任せずに自分が先輩ぶろうとする傾向がある。

実力はあるんだから黙って背中見せとけばいいのに。これでまた嫌われるんだろうな。

そう思いながら隣を見るとキラも苦笑していた。目と目が合い、通じ合う新旧ガンダムのエース2人。君もそう思うか?答えるまでも無いですね。



「こら、おま……クワトロ大尉?」

「また、この戦いで相対する敵は恐るべき力を秘めているだろう。

 よって火力に不安のある機体は旗艦の守備や後方からの援護に回すため、小隊メンバーの変更を行う。連絡は後ほど行うので間違えないように」



怒鳴ろうとしたアスランをクワトロは手で制し、説明を止めずに優しくシンの額を突付いた。揺れる頭。その僅かな衝撃で2人が目を覚ます。

焦った様子で頭を下げる2人を責めることなく、何事も無かったかのように説明を続行するクワトロ。

そんな彼の大人な対応に、見ていた者たちの好感度は間違いなくアップした事だろう。ハマーンなんか「これが私の元彼だ」みたいな感じのどや顔してるしな。

それにしてもこれは、彼らを怒鳴ろうとしていたアスランと比較する流れに持っていき、相乗効果も狙うという計算高い作戦か。

流石はシャア。女の子が絡んだ時の奴は一味違う。



「以上だ。まずはエーデル・ベルナルを討ち、全てに決着を付ける。そして宇宙へ上がりエウレカの救出。その後に時空崩壊を防ぐ。

 この戦いは人々の命を、そして未来を守る戦いだ。

 力持たぬ者の為。近くにいる大切な人の為。そして、誰もが迎える明日の為に!!」



周囲の空気にも流されず、盛り上がっていくクワトロの演説。緊張感が周囲に満ちる。

クワトロはサングラスを外しながら皆を見つめ、高らかに声を上げた。



「皆、私に力を貸してくれ!!!」



部屋全体が揺れたかと思うほど沸き立つミーティングルーム。燃えているのはスーパー系だけではない。いつもは冷静な人間はおろか、女子供まで咆哮をあげている。

実際、アムロも皆に流されて大声をあげるところだった。自分の立ち位置は知っていたので頼もしそうに彼らを見るだけに留めておいたが。




「やれやれ………まいったな、これは」



覚悟を決めたシャアはこれほどのものか。


ここまでみせつけられると、からかう気すら起きない。














皆の気持ちが一つになった最終ミーティングが終わり、皆それぞれの小隊に別れて最終的なチェックに入っていく。だが幾人かはその場に残る者もいた。

先程クワトロが小隊員変更を伝えた者たち。つまり欠員が出て補充待ちの人間たちだ。

その中には同じ隊だったカリスの代わりは誰なんだろうねと話しながらドリンクを飲んでいる、シンとステラの姿もあった。


「誰が来るのか少しドキドキするな。ステラは誰だったら嬉しい?」


腰を痛そうにポンポンと叩きながら、シンは隣の少女に話しかけた。まだルナマリアとのバトルのダメージは回復しきっていない。

エンドレスエイト→そのまま熟睡→寝起きに2人でシャワー→いつの間にか泡プレイ→ベッドでイチャイチャ→部屋の果物で食事→ついでにシンのバナナも→逆襲のルナ→両者KO と昨日は調子に乗り過ぎた。

一応何時間か眠る事が出来たとはいえミーティングでは2人揃って居眠りしてしまったし、こんなていたらくではステラを守るなんて胸を張って言えやしない。

今では少し反省している。こっからは真面目に行こう。


「ステラは、シンといっしょならだれでもいい」

「……そっか。ありがとう」


彼女がそう言ってくれるのは嬉しいが、流石にシンは誰でも良いと思えなかった。技量不足は隊の死活問題になるし、何よりステラを危険な目に遭わせたくない。

一体誰が来てくれるんだろうか。

隊長機であるシンのデスティニーの運用上彼らは最前線に突っ込む事が多いので、できれば移動力の高く沈みにくい機体が来て欲しいのだが。



「お待たせしました」

「いえ、こちらこそよろし……く……?」


やっと来たか。背後から声がかけられ振り向くシン。

だがその前に現れたのは、「リアルパイロットの底辺」「MR.いるだけ」の異名を持つあの男。……神様、そこまで俺が嫌いかオイ。


「今日からアスカ隊に所属になりました、アッシマー騎乗のカツ・コバヤシです」

「パイロットだけチェンジで」

「いやそんなんないから」


ステラひでえ。


「いいじゃん、格納庫で1人寂しくかく乱してろよ。かく乱の事をトランザムって呼んでいいからさ」

「それ何のフォローにもなってないから」


シンはもっとひどかった。


「大体そこまで拒否される理由がわからないよ。デスティニーもガイアも前に出るタイプなんだから、僕のアッシマーが後方から援護する形で行けば問題ないじゃないか。

 パーティーにはもう勇者と女戦士がいるんだ、ならその後ろに援護する魔法使いがいてもいいだろ」

「ねえシン、カツって魔法使いなの?」

「じゅもんは『アンキモ』しか使えないけどな」

「それはただの新聞社員だろーがァァァ!!!」



このネタどれだけの人間がわかるというのか。



まあそれはともかく、2人のカツに対する態度は厳しかった。無理も無いと言えば無理も無い。

なんせカリスからカツなのだ。全盛期の野茂のフォークに匹敵する落差に2人のテンションはだだ下がりである。

しかしいくら他人から見れば無理もない反応とはいえ、フフンとばかりにかっこつけて登場したカツとしては納得できないのだろう。

偶然近くを通りがかったブライトに近付き、シンたちの自分の扱いを訴える。


「いくらなんでもあんまりだろ!! ブライトさん、何とか言ってくださいよ」

「お前はいつまでアーガマにいるつもりだ、新しい文書を見ていないのか?

 ダイクやベローと一緒にさっさとラーディッシュに行って、フラれたヘンケン艦長でも慰めて来い」


助けを求めるカツの接近を冷たい瞳で拒絶し、さらりと苦情を流すブライト。この人もっと優しい人じゃなかったっけか。

てかやっぱりヘンケン艦長フラれちゃったんだな。カミーユ、お前やり過ぎだよ。


「ラーディッシュもこっちと合流するんですか?」

「ああ。それに伴って護衛のMSを寄こせとさっきからうるさいんだ。どうせ目当てはエマ中尉だろうが、それは本人が嫌がっているし」


それにいつも獣戦機隊やコンバトラーチームの様な主力を廻せると思ったら大間違いだと呟くブライト。つまり主戦力やエマ中尉を送りたくないから、余り者を送っとけということか。

それって目の前にいるカツに対しての実質的な戦力外通告なのだが、その事に気付いているのだろうかこの人。


「人って……信じられないのかな……」


カツは、突然世の中がイヤになってしまったようです。もう立てませんとばかりに力なく両膝をつく2軍。

立ち上がったばかりのクララの足をローキックでへし折ったらこうなるんじゃないかというくらい突き抜けた、見ていて気持ち良くなるほどの心の折り方だった。やるなブライト。


「けっきょく、誰なんだろうね……」

「振り出しに戻っちゃったな」


とりあえずシンもカツ参戦という最悪の事態は免れたのでほっと一息をつく。ステラと共に彼らから距離を取ると、先程までのように話し始めた。

もはやカツのことなど2人の頭にはない。

周囲を見渡すと他の小隊には皆新しい人員が来ているようだ。中には既に挨拶を終えて解散している班もあるのだが、シンたちには一向に来る気配がない。

ねえシン、ステラたちのひとはまだかな。きっともうすぐ来るさ。

くたびれてきたステラを宥めるが、なんだかシンも不安になってきた。クワトロ大尉に問い合わせた方が良いだろうか。

そう思って内線に近付くシンに、駆け寄ってくる人物が1人。


「待たせてすまない、小隊員として配属されたランスロー・ダーウェルだ。今回の戦いでは世話になる」

「ランスローさん、貴方が小隊員!? 隊長交代の間違いじゃ」


2人の前に現れたのはランスロー・ダーウェル。元宇宙革命軍の指揮官にして、ジャミル・ニートのライバルでもあった人だ。

シンが御大将にシャイニングフィンガーを食らった話のボスだと言えば分かる人もいるだろう。

余り物には福と言うが、来たのがこんな大物でしかも自分の部下だと言われると、流石に気後れしてしまう。


「デスティニーの能力はクラウダを遥かに凌駕している。それに今の私はただのパイロットだ。問題は無いさ」

「そんな……でも」


確かにクラウダは沈みにくい機体だし、ランスロー自身も加速を持っているため移動力も問題なく、小隊員としては文句の言いようも無い。つか欲しい。

だが技量といい戦闘経験といい、自分なんかよりも彼が隊長をやるべきだと思うのだが。

何といっても一軍の将だったほどの男だ。初陣から1年程度しか経っていないシンとでは経験に差がありすぎる。


「支援攻撃とサイズ補正無視も会得したし、クラウダにはブースターを着けた。君たちの足を引っ張る事は無いはずだ。

 だから、私も一緒に戦わせてくれないだろうか」

「引っ張るだなんて……本当に頼りにしてますから!! ランスローさんが来てくれるなら百人力です!!」

「良かったね、シン」

「ああ!!」


いえーいとばかりにハイタッチするシンとステラ。本気で喜ばれて悪い気がしなかったのか、ランスローの顔も僅かに綻ぶ。

そしてさっきから気になっていたのだがと前置きした後、背後を指差した。



「あれは、何かあったのか?」


「大きな星がついたり消えたりしている……。あはは、大きい。彗星かな。いや違う、違うな。彗星はもっとバーって動くもんな……」



指の先には体育座りでぶつぶつと呟いているカツ。まだいたのかお前。カミーユが劇場版仕様でそんな事しないからって、お前がやっても別に目立つ事はないだろ。

その美しくもない光景を見て思わず溜息を吐いたシンとステラ。ランスローが見ていたのを思い出し、2人は爽やかな笑顔で言葉を返す。



「いえ、大したことは何も」

「うん!!」

「………それならば良いのだが」





嘘です、いじめがありました。



























最後の戦いは、想像よりも異質なものとなった。



UNにてエーデル准将を打ち破り、乱入してきたアサキムはセツコが撃破。

そして援軍に来てくれた仲間たちに別れを告げ、エウレカ救出のために大量のコーラリアンの攻撃をかいくぐりながらレントンを司令クラスターに連れて行くことまでは上手くいった。


『この私は新世界の統治者、法と秩序の下に平穏をもたらす者だ!!その私に刃向かう者は全て粛清する!!』

「うるせえんだよ!!同じことばかり繰り返しやがって、お前は壊れた人形かよ!!」

『その通り。“そこ”の“それ”はただの壊れた人形です』


だがそんなシン達ZEUTHの前に立ちはだかったのは再び現れたエーデル准将と、漆黒の仮面を見に付けた男。

共に搭乗しているのは最強の機体と言われているレムレースだが、エーデル准将には男の正体に心当たりは無い様だ。


「黒のカリスマとエーデル・ベルナルが別人だっただと!?」

「アンタは一体何なんだ!!いい加減正体を現せ!!」

『クライマックスだからね。今こそ仮面を外そうか』


彼らは同一人物であるという予想が外れ動揺するZEUTH。

シンの叫びに応え男が仮面を外すと機体が光に包まれた。その後にはレムレースによく似た、いやそれ以上に禍々しくなった機体が現れる。

カオス・レムレース。目の前の美男子曰くこれがレムレースの完成形らしい。


『……救世の戦士……大極への旅人……法の守護騎士……因果律の番人……呪われし放浪者……。

 そう、ボクこそ全て!!!その名もジ・エーデル・ベルナルだよ!!!』


イケメンタイムを5秒で終了した、真のエーデルを名乗るこの男。

彼こそが真の黒幕だった。



『うつけが!!私と同じ名を持つ事が、既に私への反逆罪だ!!ZEUTHの前に貴様から……ッッ!!』


男の名に激昂し、もう片方のレムレースに襲い掛かるエーデル。彼女の意思を受けレムレースが右手のドリルを振り下ろそうとしたその時、



『アイラビュ~!!エーデル様、明日の天気を教えてよ』


『関東地方は午前中天気がぐずつく所も多いようですが、昼からは晴れ間が広がるでしょう。 ――――――ッッ!!?

 か、身体が勝手に動いたぞ?なんだこれは!?』



男の言葉通り、いきなり天気予報を始めるエーデル。本人も驚いているが此方もさっぱり状況がつかめない。

理解しているのは目の前でにやにや笑っているあの男だけだ。


『わからないかにゃ、エーデル様?バインド・スペルだよ。ボクがアイラビュ~と叫べば、必ずその後の命令に従うようになっているのさ。

 なんならもっと証明して見せようか?そこの君、何かリクエストを』

「お、俺?……じゃあ、黒○徹子のものまねを」


なんでそのチョイスなんだエイジ。つかもっと気付くとこあるだろ。喋り方があの変態博士に似てるとか。


『それ採用。アイラビュ~!!』

『ジ・エーデルさん、貴方面白いギャグを持ってるんですってね。本当に笑っちゃうらしいですね。ちょっとその面白いのやってみてくださる?攻撃を受けて3の倍数の時だけ絶頂する芸を』

『天・獄!!!!』


シークタイムゼロセコンドでジ・エーデルによるツッコミ(というよりは正当防衛)が入ったので、声色からそれが本当に徹○のものまねだったのか、はっきり確認をとる事は出来なかった。

もしかしたら友近かもしれんし。

だがハードルを極限まで上げた挙句ネタのオチをやる前にバラすという鬼のような無茶振り、これは世界広しと言えども黒柳○子しかいまい。

ということはヤツの言っている事は本当だと考えて良さそうだ。

しかしエーデル准将を操る事が出来るならば、殺す事はなかった筈だ。ヤツの狙いはなんなのか。



「エーデル准将を倒しちまいやがった……。わざわざこの場に来たのもそうだけど、こいつは何が目的なんだ? 世界の支配じゃないのか?」

『世界の支配? ハハハッッ、ボクも買い被られたもんだね。

 別に君たちの言う世界の支配なんてものには興味ないんだけどさ。税金に福祉に教育に軍事に経済……そんな面倒くさいものやってられないし。

 テキトーにやっててもその内起こるだろう反乱を気にしなきゃいけないし、何より楽しくないからね』


あまりにも子供じみた理由なので納得は出来ないが、ある程度の理解は出来なくも無い。

つかこいつラクスやアスハよりよっぽど優秀な政治家になりそうな気がする。あいつらそれを考えた事ないし。


「ふざけんな!! じゃあなんでエーデル准将を倒したんだ!?」

『壊れたオモチャは捨てるのが道理だろ? もともと彼女を造った理由は、おしおきしてもらうためだし』



今なんつった?



「すまん、後半よく聞こえなかった俺」

「奇遇だな、俺もだ」

「私もちょっと……」


幻聴か。そりゃそうだよな。

ドクロベエ様じゃあるまいし、これから最終決戦だっていうのにおしおきなんて変な言葉が聞こえるはずないじゃないか


『だからぁ、エーデル様におしおきしてもらうためだよ。ボクを嬲るエーデル様、歯を食いしばってそれに耐えるボク。

 世界の支配者だと偉そうにしていても、所詮お前なんかこのボクの創作物にすぎないくせに!!

 嗚呼、でも今のボクは醜い老人……そんなどうにもならないもどかしさが快楽への最高のスパイスになるのさ!!』


「い、いや 「へ、変態だぁーーーーっっ!!」 」


カツうるせぇよ。フェイの悲鳴聞きそびれたじゃないか。

だから格納庫でかく乱しとけって言ったのに。


『これでボクが支配に興味が無いってことに納得してくれたかな?

 それにボクはこの混沌とした世界がお気に入りなのさ。人々の欲望が渦巻く、今の世界がね。

 君たちが動けばこの世界がもっと引っ掻き回される。だから面白く見させてもらってたんだけど……時空修復なんて冗談じゃないからね。君たちの邪魔をさせて貰うよ。

 この醜くも素敵な混沌世界で、みんな仲良く生きていこうじゃないか』


まるで芝居のように声を張りながら問いかけるジ・エーデル。いや自分に酔っているだけか。

ZEUTHの前でそんな言葉を吐ける度胸だけは大したものだが、誰も味方がいないこの状況においてそれは、勇気ではなく無謀だ。


「んで?このメンツの前でそんな事を言うってことは、やられる覚悟を決めてるってことだよなぁ?」

「まさかここまでやっといて騙しちゃったゴメンで済むわけないしねぇ!?」


ガラの悪いAWの加速担当と狙撃担当が睨みを利かせながら毒づく。言葉こそ違えど他の者の気持ちも同じだった。

最後の最後に出てきたのがこんないい加減なヤツで、しかもこんな洒落の通じないタイミングでアクションを起こそうと言うのだ。

話を聞いてやっただけまだ譲歩した方だろう。


『怖いねえ。もちろんこのボクだって1人きりで戦う気は無いさ。だからボクはボクを呼ぶよ。カマン、マイブラザー!!』


マイブラザー? 疑問を声にする間もなく、宙域に幾つかの光が放たれた。思わず目を細めるシン。

そして光が止んだとき、目の前には3つの巨大な機体が現れた。



『助けに来たよ、ボク!! 楽しそうなことしてるじゃない!?』

『べ、べつにボクは君を助けに来たわけじゃないんだからねっ!!』

『ASK HIM エーッ!! テメエら俺だけ見てりゃいいんだよオラ!!』


「カオス・レムレースが3体も!?」

『ありがとう、別世界のボクたち!!来て早々なんだけど、ボクたちの最終決戦の邪魔者を排除しようか!!』


最後の黒のカリスマ違いは放っとくとして、今までいたジ・エーデル・ベルナルの他に別世界の彼を名乗る者たちが3人が揃う。

そして合わせて4機のカオス・レムレースの杖から光が放たれ、戦場に残っていたコーラリアンを全滅させた。


『見たかオラ、これがパワーだ!!』


お前は黙ってろ。首攻めるぞマジで。


「あれだけの数のコーラリアンが、一瞬で……!?」

『僕たちの力、驚いて貰えたかな? 伊達にラスボス張ってるわけじゃないんだよ。

 それに君たちの相手はカオス・レムレースだけじゃない。――――ほうら!! 懐かしの敵、大集合だ!!』


その声と共に虚空からカペルやレオーなどの機体の他に、デストロイやサイコガンダム、量産型アクエリオン、風見博士仕様のメガザウルス、ゼラヴィオンなどかつてZEUTHが苦しめられた敵たちが現れた。

それだけでも難敵だと言うのに、最後に出てきた機体にZEUTHの面々は凍りつく。


「あ、あれはプラネッタ!? ウンコ部長の機体じゃない!!」

「ってことはまたオーバースキルで心を読まれるんじゃ……?」


馬鹿な、ゲインさんにやられて死んだはずじゃなかったのか。いや、アサキムに連れて来られたグローリー・スターの2人の件もある。

別世界の生きているカシマルを呼んだという可能性も十分だ。


『その通り!! またオーバースキルで貴方たちの心を暴いてやるわ!!』


気持ち悪いオカマ声が耳に響く。間違いない、ヤツだ。

ZEUTHの面々は正面からのぶつかりあいでは無敵だが、内部工作や罠、精神攻撃などの搦め手には弱いものが多い。

ヤツの存在は少し面倒くさいことになりそうだった。


「なら、厄介な敵は早めに叩く!! 再生怪人は弱いってのがお約束なんだからさ!!」

「そうだな。恋愛少年団、例のやつをよろしく!! せっかくだ、俺たちもそれに続くから」


驚愕する周囲を他所に、深く気にしていないようなジロンの声。それにゲインが同意する。

そういえば彼はあの時暴露されたのが 「トカゲ食いたい」 だけでダメージが皆無だったので、心を読むオーバースキルの恐ろしさも他人事のような心境なのかもしれない。

だが今はその強さがありがたかった。ZEUTHは基本的に熱血系ばかりなので、1人でも根性出すと周りがすぐに同調するのだ。

現に今は動揺も収まり、ゲインの指名が入った少年恋愛団を軸に気勢を上げている。



「任せとけって!! レントン、ゲイナー、準備はいいか!?」

「ちょっと待ってガロード、ゲイナー兄さんが先走ってる!!」

「そうだ、どうせ聞こえるならまた聞かせてやるさ!! サラ」

「言 わ ん で い い !!!」

「この際だから俺も何か叫ぼうかな」

「YOU言っちゃいなYO!!」

「言ったり言わなかったり、はみ出したり浮かんだりグッときたりすればいいさ!! 特にはみ出せ!!」

「よっしゃ!! おいみんな、はみ出そうぜ!!」

「ふふふ……はみ出してやろうじゃねえか!!」



何をだ。



方向性が定まったからか、何だか生き生きとしてきた戦士たち。これを理由に思い切り叫んでストレス発散しようというのだろう。

まあジ・エーデルの登場でモチベーションを下げられた感はあるのでそれもいいのかもしれない。

それにプラネッタのオーバースキルは厄介だ。潰せるうちに潰すというのも間違いではないし。


「ルナ、例のやつってなに?」

「え? ああそうか、ステラは知らないのよね。要するに今自分が一番言いたいことを叫んじゃえってことよ。王様の耳はロバの耳~みたいな」


違うだろ。確かに前回は決意発表会になってたけどさ。


「叫ぶって………何でもいいの? ルナも言うの?」

「ええ、私もいろいろ鬱憤溜まってるしね。ステラも言うなら皆に合わせるのよ?」

「うん!!」


あきらかにあの2人は勘違いしているわけだが、いったい何を言うつもりなんだろう。碌な事じゃなさそうだけど、どうせ俺じゃ止められないし気にするだけ無駄かな。

そんな風に彼女たちに気をとられているうち、周囲もなんやかんやで叫ぶ腹を決めたようだ。

俺も叫ぼうか。彼女たちの事を叫ぶのはいろいろと問題があるので、今回も無難に平和の事を叫んだ方が良いかもしれない。


「ゲイナー、言っとくけどヘンな事叫んだら来週のデートをキャンセルするからね」

「みんなゴメン、ちょっと謝ってくる!!」



土壇場でゲイナーが脱落したが、ラストバトル前の今となってはZEUTH内にカップルはいくらでもいる。問題はあるまい。

ついに始まったレントンやガロードの愛の告白をバックに、他の面々も口々に叫んだ。




「何がキラキラコンビだ、誰がやるもんか!! そんなクロスオーバーするくらいなら、僕だってシンみたいに他作品の女の子といろいろできるルートを探すさ!! できればファサリナさんと」

「僕だってガンダムに乗りさえすれば、サラも振り向いてくれるんだ!!」

「カツ。君はホンコンまでに3機しか落としてなかったのに、よくそんな大言吐けるな。俺がスコアを稼がなきゃディジェ取り損ねてたんだぞ」

「セツコ、シンを独占するのは自重しろぉぉぉぉ!!!」

「そうよ!! な~にが 『シン君疲れてるみたいだからチアガールの格好で応援してあげるね』 よ!! 疲れさせてるの自分のくせにぃ!!!」

「言うなぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

「シャア、昔のように私を優しく抱き締めろぉぉぉっっ!!!」

「なあシン、正直エマさんの髪型って後ろから見たら卑猥じゃないか? 昨日なんか後ろから突いてる最中で萎えそうになってさ。髪を梳く振りして崩したから、その後はなんとかなったんだけど」

「俺に振るな」

「こいつらの世話するの、もう僕は…いやだぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

「正直カツへの感情は、僅かなライクであって決してラブではない。むしろ最近は彼氏気取りでかなりウザい。カツよりは最近よく話しかけてくれるカミーユの方が」




カミーユはマジで自重しろ。



プラネッタ対策とはいえ、おもいっきりぶっちゃけまくるZEUTHの面々。というかヤツの苦手なのは健全な青少年の交際なので、ハマーン以外は役に立ちそうも無い。

尤も前回みたいにやかましいから効果が無いこともないかもしれないけれど。

つかこれだけの若い面子が集まって、1番青春っぽい発言がアクシズ首領のハマーンというのはどうなのよ。




ちなみに大トリはこの人。



「そうだ!! どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ!!

 エマ中尉!! 好きだァー!! 中尉!! 愛しているんだ!! 中尉ぃーっ!!

 交渉に来たときから好きだったんだ!! 好きなんてもんじゃない!! 中尉の事はもっと知りたいんだ!! 君の事はみんな、ぜーんぶ知っておきたい!!

 君を抱き締めたいんだァ!! 潰してしまうくらい抱き締めたーい!!

 心の声は心の叫びでかき消してやる!! 中尉!! 好きだ!! 中尉ーーーっ!! 愛しているんだよ!!

 俺のこの心の内の叫びをきいてくれー!! 中尉!!

 エゥーゴを訪れてから、中尉を知ってから、俺は君の虜になってしまったんだ!! 愛してるってこと!! 好きだってこと!! 俺に振り向いて!!

 中尉が俺に振り向いてくれれば、俺はこんなに苦しまなくってすむんだ。 いつもはつれないけれど、優しい君ならきっと俺に応えてくれるだろう。

 俺は君を俺のものにしたいんだ!! その美しい心と美しい全てを!!

 誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!! 恋敵がいるなら、今すぐ出てこい!! 相手になってやる!!

 でもエマ中尉が俺の愛に応えてくれれば戦いはしない。

 俺は中尉を抱きしめるだけだ!! そして君の心の奥底にまでキスをする!!

 力一杯のキスを、どこにもここにもあんなとこにもしてみせる!!

 キスだけではない!! 心から君に尽くします!! それが俺の喜びなんだから

 喜びを分かち合えるのなら、もっと深いキスを、どこまでも、どこまでも、させてもらう!!

 中尉!! 君が宇宙に素っ裸で出ろというのなら、やってもみせる!! だから」


「ウザい」





全米が泣いた。




渾身の告白を3文字でぶった切られたヘンケンに幸あれ。

まあ丸パクリだし良い年齢した大人だし下心が見え隠れしてるしで仕方ないよね。エマさんカミーユと関係持ったばっかりだし。


本題に戻ろう。ヘンケンの告白は狙い通りの青臭いものだが、言ってる人が年齢いってるぶん効果はあてにならないかもしれない。

果たしてカシマルの判定は?



『ククッ』



笑っているということはアウトか?いや待て、カシマルがあれを聞いて笑ってるだと?仮に別次元のヤツだろうと、その性格上喜ぶか気持ち悪がって怒鳴るかどちらかの筈だ。

だとするとあれは洗脳されたか、それとも偽者……もしかしてそれか。

よく見るとあのプラネッタ、さっきから何か揺らいで見えるし。


「みんなちょっと待て、あのプラネッタどこかおかしい!! いやパイロットは元からおかしいけど」

「なんだと!?」

「本当かよシン!?」


シンの声に叫びを止め、プラネッタを見やるZEUTH。そのまま宇宙に静寂が満ちる。


『プッ……はは』

『………くすっ』


視線を集めたカシマルとその近くにいたジ・エーデルが、唇を噛みながら身体を震わせていた。

そのうち耐えきれなくなって口を開き



『ハーハッハッハッハッハッッ!! イヒヒヒヒヒヒヒ!!!』

『ふ、ぶふっ。もう駄目だ、ハハハハハハ!!』



笑い出す2人。どうやらまた自分たちは踊らされていたらしい。

目に涙さえ浮かべて笑いながら、2人はZEUTHに話しかける。


『アーハッハッハッハッハ、あ~おかしい。君たちってやっぱり期待を裏切らないから好きだよ』

『ププッ、ほんとほんと。……あのさぁ、これを見てくれる?』



ジ・エーデルが指を鳴らすとプラネッタがもやに包まれ、その後にカオス・レムレースが現れた。その手には杖ではなく何かを持っている。


「偽者だと!?」

「やっぱりそういうことか。姑息な真似しやがって、ワトソン中尉に化けたアサキムみたいに俺たちを騙したんだな。

 でもあの手にしてるやつ、杖じゃなくてプラカードにしか見えないんだけ……ど!?」


手にしているものを見た瞬間シンの動きが止まった。しまった、そういうことかという声が唇から零れ落ちる。

冷静になってこれまでを整理してみよう。素数を数えて落ち着くんだ俺。


先程仲間たちはえらいことを叫んでしまった。勿論ふざけていたわけではなく、そういう青春的なことが嫌いなカシマル対策としてだ。

でもそれが効果があるのは相手がカシマルの時だけで、もし他の相手だった場合は全く意味が無いわけで。いや、むしろ恥を周囲に晒すだけな訳で。



んで。



プラカードにはどう見ても『ドッキリ』としか書かれていないのだが。





「「「「「「 聞 い て な い よ !!! 」」」」」」



『いや、そりゃ今初めて言ったしね?』



嵌められた。こんな罠を仕掛けられたら、そりゃZEUTHの連中もびっくりするわ。自分が大したこと言ってないのがせめてもの救いか。

そう思いながらそっと背後を振り返る。目にしたのは予想通りの光景。


キラちょっとこちらにカミーユ覚悟中尉カミーユとってマジなのかきゃーセツコさんそれはイタいって言うなぁサラどういうこと言葉通りよハマーン先程の言葉はべ別に本音などではないのだからなっ


うん、超カオスだほんと。



「ああ………また不幸が」

「違うな、間違っているぞ麗花。前から言おうと思っていたが、周りからすれば君の不幸なんて大したものじゃない。せいぜい可哀想な自分に酔う程度のレベルだ」



斗牙煽るな。




『チャンス到来だねぇ。そーら、全軍攻撃開始!!』

「ちぃっ、こんな時に……ッッ!!!」



進軍を開始する敵AIたち。いささか間抜けな開幕ではあるものの、世界の行く末を決める最終決戦は開始された。

敵の策に嵌まり動揺する自軍へ、これ以上のチャンスはないとばかりに敵機体が襲い掛かってくる。

“団結”という最大の武器を封じられ、絶体絶命のピンチに追い込まれたZEUTH。………そこ、表面化しただけで元からそんなもの無かったとか言わないで。わかってるから。自業自得だって事は。

各員必死に反撃するものの、あきらかに押されている。開戦から数分しかたっていないのに、気付けばもう仲間に被害が出てきていた。



「ふぅ、死ぬかとおもっうわぁぁぁぁぁっ!! 」

「小林ぃぃぃぃぃ!!」

「エマ中尉、ラーディッシュを楯にするうわぁぁぁぁぁっ!!?」

「あ、やべ」



カツは戦闘中に隕石に衝突、せっかくのアッシマーなのに機体の名を叫ぶ事すら許されず戦線離脱。

ヘンケンのラーディッシュはエマのガンダムMK-2に良いところを見せる為に援護防御しようとして前に出たところ、ジャミルのサテライトキャノンの範囲に入ってしまいあえなく撃沈した。何やってんだニート。



「装甲の厚い機体かバリア持ちを前面に押し出して、中央突破を図れ。敵が分断・孤立したところをMS隊で撃破するんだ」

「カオス・レムレースにはなるべくスーパーロボットをぶつけろ。攻撃力が不足している者は生半可な攻撃をヤツに与えるより、周囲の雑魚の掃討に専念した方が良い。

 ――――ええい、俗物共が!!いつまで動揺しているつもりだ!!」



クワトロやハマーンが前線で指示を出すも、戦局を変えるまでには至らない。

多分、何かが必要なのだ。流れを変えるほどの大きな何かが。だが一体どうすれば良いのか。

シンは思わずアーガマに視線を向ける。戦火の届かない後方で冷静に判断できる、ブライト艦長ならば何か良い手を―――





「こうなったら私の究極奥義、『愛の核ミサイル』を繰り出すときが来たか………!!」


「……………」






今回はねえよ、そんなもん。












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