「シンをギャフンと言わせたい!!!」
時を遡ること今より5日。
ルナマリアはそれぞれ黒とピンクのパジャマを着て自分の部屋に集まったセツコとステラを前に、声を大にして叫んだ。
「シン君を、ギャフンと?」
「なんで?」
ポリポリとベッドの上でポッキーを食べながら顔を見合わせる2人。現在彼女たちはパジャマパーティーもかねたセルス会議の真っ最中である。
此処で説明しよう。セルス会議とはその名の通り総勢3人のセツルナステラが集まって行われる会議の事である。
議題の大半はシン関連ばかりであとは雑談、真面目な話が行われる回数は一割に満たず、会議の終了の際にはセツコ主催によるキャンディーの掴み取り大会が行われる。
ちなみにそのとき必ず主催者によってシンを意識し始めた例の飴玉イベントについて数十分以上強制的に聞かされるため、ステラとルナには評判は良くない。
モデルに売名行為に使われた芸人がほぼ100円ショップでよくやるランキングの様なものである。
「だってシンのやつ、初めて私たちと体を重ねてから昨日までずっと、エッチが自分本位すぎるのよ!!
立ちバックや駅弁ならいざ知らず、最近はお尻叩いたり言葉責めもデフォでしてくるし。……そりゃあ私だってワイルドなシンは嫌いじゃないけど、でも!!」
「好きなら良いじゃないですか。どうせ優しくされたら優しくされたで物足りなく感じて、後でおかわりをおねだりしちゃうんでしょう?」
「うん。………いやうんじゃなくて!! 物事には限度ってもんがあるでしょう!?
そ、それに一昨日なんかあの馬鹿、私の中に濃いのを6発も出しやがったのよ!? 6発も!! 昨日も抜かずの3発だし―――少しは遠慮しろってのよぉ!!!」
「………」
「………」
熱を帯びていくルナマリアの言葉とは対照的に、そんな彼女をじとー、冷たく睨む2人。
なんだろうこの感じ。いつもならこんな自分のテンションにも 「まあまあ」 とか言いながらある程度あわせてくれる友人たちなのだが。
「それは何ですか勝ち誇ってるんですかそんなアグレッシブビーストモードな体位を毎回やっちゃったって自慢ですか肌ツヤツヤで羨ましいですねって言って欲しいんですか」
「ステラ、この10日間くらい、ごぶさた………」
む、そうだった。
昨日まで数日間彼女たちは半舷休息であり、ファやフォウたちと一緒に泊りがけの観光に行っていたのだ。自然とシンの相手は休息日が一緒の自分一択となる。
そして自分もとある理由によってシンと寝るのは一週間ほどご無沙汰だったため、ああは言いつつも一昨日・昨日と非常に燃えたのは事実だった。
身体が夜泣きしている彼女たちがのろけを聞かされて気分を害した件については、間違いなく自分が悪いだろう。
だがステラはともかくセツコにはそんな事を言われたくは無いのだが。
「確かに2人の事を考えてなかったのは悪かったですけど、セツコさんには謝りませんから」
「ど、どうしてですか!!」
声を大にして抗議するセツコ。こんにゃろあれを忘れたってのか。
「どうしても何も……私たちが1週間身体を夜泣きさせる破目になったのは、誰のせいだと思ってるんですか!? 忘れたとは言わせませんよ!?」
「そ、それは……」
ルナマリアの声に思わず視線を落とすセツコ。痛いところを突かれたと言わんばかりに顔を顰める。
そう、1週間ご無沙汰なのは彼女の自業自得だったのだ。
事の発端はセツコの 「シン君は私のチアガール姿を凄く喜んでくれている」 という言葉から始まった。
喧嘩ばかりしているカミーユハーレムを例に挙げるまでも無く、本来ならばこんな自慢話じみた言葉は反感を買うのが常だろう。
しかし丁度最近は3人ともこの関係に慣れ落ち着いてきていた為揉めること無く、逆にそれなら誰が一番シンのポイントを稼げるか勝負しようじゃないかという話になったのである。
当の本人であるシンの都合は完全に無視して。
ちなみにこのとき勝負を公平に行う為、そして3人共テレビなどで見る普通の学園生活とやらに憧れていた面もあった為、 『コスプレは学園生活の範囲内で』 というルールが制定された。
「シン、ステラに保険のべんきょうをおしえて」
まずは1番手。シャープペンを咥えながらノートと教科書を持って行ったセーラー服着用のステラは多大な戦果を挙げ、その日は彼女にとって未知の領域である5回の大台に突入し
「こらアスカ、あんたは居残りよ。放課後、私と一緒に体力測定をすること」
ルナマリアは赤いジャージとホイッスルを着用して体育教師に扮し、シンを使われていない倉庫に引き摺り込んで2人きりの体力測定を行った。
当然ジャージの下に装備したのはタンクトップとスパッツであり、こちらもこうかはばつぐんだったようだ。
「100点満点って言われた」 「最高。通信簿は5で問題無しね」 とつやつやした顔で嬉しそうに報告するステラとルナマリアに当然の如く対抗心を燃やす3番手セツコ。
彼女が準備していたシチュエーションは眼鏡美人な教育実習生。このまま行けば他の2人同様多大な戦果を挙げていたのは間違いなかったのだが、
このコスプレではルナマリアのやった体育教師と教師というポジが被ってしまうのではと弱気の目が出てしまったセツコは仕方なくこれを取り下げてしまう。
本来スーツを着た眼鏡美人と運動しやすい格好の体育教師は十分住み分けが可能なジャンルなのだが、そのあたりの機微がわからないセツコは断念することに抵抗がなかったようだ。
そして代わりの案を一生懸命考えたものの何も思い浮かばなかったので、エロアニメに出演経験のあるグランナイツのミヅキに助言を貰ってみたのだが こ れ が い け な か っ た
シスコンのシンには妹キャラで攻めろ、まだステラは妹キャラを生かしきれていないのでやるならヤツが目覚めていない今しかないというアドバイスと共にミヅキがセツコに勧めたのは、
よりにもよってシンの実の妹であるマユの服。
「お兄ちゃん、お弁当忘れてたでしょ。持って来たよ」
セツコ曰く 「弁当を学校に届けに来た妹」 のコスプレらしい。
お前を食べるのが先だと自分に襲い掛かるシンを妄想し必勝を確信したセツコだったが、そんな彼女に対するシンの反応は微妙だった。
それもそのはず、マユの服を着たセツコの姿はなんとなくマユが大人になったらこんな感じだろうかと想像してしまう程度には似ていたのだ。
溺愛こそしていたものの性的な意味でのシスコンではなかったシンがそんな彼女の姿にぐずつくのも無理は無い。
当然セツコはそんな事に気付けるわけもなく、焦った彼女は 「早く押し倒して、ベッドはそこだよ」 といつもより20%増しでフェロモンを放出しながらシンに迫る。
胸板にツンツンと服越しに行われるあててんのよに陥落し、彼女を押し倒したシンを誰が責められようか。
そんな逆境の中でもなんとかして服を脱がせ普通に楽しもうとしたシンだったが、自分の妹キャラとしての素養を何とかしてシンに認識させたいセツコはなんだかんだでこれをはぐらかし続け、
そして最後 (3度目) の絶頂の際の
「セツコイッちゃう!!! だめぇぇぇ、お兄ちゃぁぁぁぁん!!!!!!!」
という叫び + 脚を大きく開いたまま白濁液を服や顔、太ももに浴び失神した妹 (の格好をしたセツコ) の姿を見たシンは自己嫌悪からくる精神崩壊を起こし、
「すいません。俺、シン・アスカにはなりきれませんでした。セツコさん……いつかどこかで、本当のシン君に会えるといいですね」
「し、シン君!?」
そして1週間、廃人の様に部屋に閉じこもっていたのだった。
「正直スマンカッタ」
2人に向かって土下座するセツコ。その頭を気にするなと言わんばかりにステラが撫でる。ええ子や、この子はほんまええ子や。
謝罪に満足したのかやれやれといった顔で2人を見ながらルナマリアは話を続けた。
「まああの件で1番悪いのはエロ孔明のミヅキさんだし、今回は私にも悪いところがあったからそれは良いとして。
そういうわけだから2人にも協力して欲しいの。今のシンには、どうあがいても私1人じゃ勝てないから」
かつての姉貴分をエロ孔明扱いしてバッサリとぶった切るルナマリア。
さもありなん、わざわざエロアニメに出演して赤バニー着て乳までさらして男に襲い掛かられたにもかかわらず
結局嫌がってそれを拒んだ彼女をルナマリアは雌豹とか大人のオンナだと認めていない。普段の言動なら襲い掛かった男を襲い返すくらいのことをしても良かった筈なのだ。
そもそも逃げるくらいなら出なきゃいいわけだし。原作でもアヤカとのレズ疑惑はあったけど、男関係は皆無だったし。
「ギャフンと言わせたいって言われても、私は今までので十分満足してますし……むしろ何かアクションを起こして今までと変わってしまうのも怖いし」
「言いたいことはわかりますよ。
でも想像してみてくださいよ、受身になって私たちに良い様にされるシンの姿を。辛そうに喘ぐシンに馬乗りしたいとは思わないですか?」
「………え?」
喘ぐシン君に馬乗り? それって……。
――――あはっ、枯れちゃえ。
――――くぅっ、ああ、セツコさん……俺もう…勘弁して……。
――――駄目だよシン君、これくらいじゃ寝かせてあげないんだから。紅い瞳の赤ちゃんができるまで、何回でも、何日でも続くんだから。
――――セツコさん、セツコさん………愛してる、愛してるから……!! だから、これ以上は……っ!!
――――もっと、もっと言ってシン君!!
「やります。――――私が乗ります!!」
逃げちゃダメだ。数十秒の妄想の後、気合の入った表情でバベルの塔攻略を決めルナマリアに向き直るセツコ。
1名様入られましたー。
「ステラは、いつもと同じの方が良いけどなぁ……」
渋っているのはステラのみ。彼女は2人のように体力の限界ギリギリまでドッグファイトするタイプではない。1回だけのときも結構ある。
シンとのSEXも十分楽しむが、ステラはそのあとでいちゃいちゃしながらビロートークするのが大好きだった。そしてルナマリアに協力するということはシンとの夜の際に何か注文をつけられる可能性がある。
何かやるのならそっちで勝手にやってくれ。勿論ステラはそんな事を思ってはいないが、彼女の心境にはその言葉が1番近かった。
「たまにはよ、たまには。ちょっと皆で楽しんだら、すぐに元に戻すから……ね? ステラの協力もいるのよ」
「まあ、いいけど……」
両手を合わせてお願いするルナマリア。そんな彼女を見てステラは仕方ないなという顔をして諦めた。ルナマリアとセツコも好きな人だし、まあ期間限定なら手伝ってもいいかな。そんな感じ。
こうしてセツルナステラ対シン・アスカの対戦カードが決定した。
「………でも基本的にどうすれば良いのか、さっぱり考えが纏まらないんだけどね」
仲間が増えたのは良いが、今度は次の難問にぶち当たってしまった。どうやってシンを倒せばよいのだろう。
当初こそ数の力で圧倒していた3人だったが、最近では戦いを繰り返すうちにサイヤ人ばりに上がっていくシンの爆発的な成長についていけなくなったのだ。
単純計算でもシンが手に入れるPPは3人分であることだし。
尤も彼女たちの方がシンによってMに開発されてしまったのではという可能性については誰も口にしなかった。わかっていても触れてはいけないこともある。
「夜のシンって、すごいもんね……」
「それについては、私に考えがあります」
不安そうなステラとルナマリアに対し、任せろと言わんばかりに胸を張ったセツコが眼鏡をかけた。軍師モード発動。
最近は連敗続きだが、セツルナステラにおける作戦立案は彼女の担当である。
「考えって何か作戦でも考えたんですか? でもシンには私たちの合体技 “ぬらりひょん” も通用しなかったのに」
ここで再び説明しよう。“ぬらりひょん”とは生まれたばかりの姿になった3人がそのまま窒息するくらいシンの体に纏わりつく技のことである。
ルナがたまたま 「このスーツ着たらシン喜んでくれるかな……」 と読んでた雑誌の漫画と自分たちの戦友シルヴィアが合体した際の感想からヒントを得たものだ。
「念心!!」「合体!!」 「GO!! ぬらりひょん!!」 の掛け声とともにシンもろとも合体し、すてらぬらりひょん・ぬらりひょんるな・ぬらりひょんせつこといった3種類のフォーメーションを駆使。
シンには自分たちの体で包むというシチュエーションとその肢体の感触によって興奮させつつ、彼の動きを封じながら一方的な攻撃を仕掛けるという反則クラスの大技だった。
だがこのまま為すすべなくイカされるという未来を拒否するためにたった一人の最終決戦を挑んだシンが何故かフリーザにキレながら放ったパルマフィオキーナによって脱出され、
最終的にはシンのGANTZソードによって3人は沈黙させられている。
「最近じゃ3人で行っても、いつも負けるもん……」
「それに関してはルナマリアの暴走が多分に含まれていると思うけどね。いつも背後から隙を突いてくるし」
「皆だってたまには1対1でして欲しくなるでしょ。私は余っちゃった人と時間を潰してるだけよ」
「私が言いたいのはそれが原因でシン君への残機を減らしては意味が無いということです」
「ぐっ……2人だっていつも凄く感じてるくせに」
「私はシン君にイカされたいんです!!!」
なんか凄いことを大声で言ってしまった。ルナマリアとステラがによによと小悪魔的な笑みを浮かべていく。
赤くなる自分の顔をこほんとわざとらしく咳をすることでごまかしてから、セツコは作戦を語りだした。
「ま、まずは夜のお情けを当番制にします。今日はステラ、明日は私、明後日はルナマリア、以降はローテーションをキープ。
乱入などの例外は認めません。担当以外はしっかり休息を取って、自分の出番に備えること。
そして当番の者は必ず、いつもしている回数よりも多くこなしてください。目標は1日の回数、最低4回」
「ええ、4回!? 最低で!? ステラ、それちょっときびしいかも……」
「回数の問題もあるけど、それ以外の日にはシンとしちゃダメなんですか? 私たちあいつの彼女なわけだし、こう、なんとなく火が点いた時とか。」
それぞれベクトルこそ違うものの不満を述べるCEコンビ。確かにSEXできるのは3日中1日だけ、だけどその日は4ラウンドこなせというのは極端すぎるだろう。
そんな抗議を予期していたのか、セツコは涼しい顔で言葉を続ける。
「勘違いしないでください、当番制なのはあくまで夜だけです。別に担当が4回しなくちゃならないわけじゃないです。
たとえばステラの援護の為に、前日担当のルナマリアが朝お口で何回かしておくとか」
トーナメントにおける敵対者潰しのようなものである。捨て駒がガードを固めつつ淡々とローを蹴り続ける。真打ちは体力を温存・回復させ動きが落ちたところを倒す。
今のシンには個人で行った所で勝ち目はゼロだ。主戦力たるルナマリアとセツコもチームに尽くさねばなるまい。
「その辺りは臨機応変で行くわけか。次の日の夜担当は極力無理をしない方向でいった方が良いでしょうね」
「じゃ、じゃあステラはいつも通りでいいの?」
「否定はしないけど、なるべく頑張るのよステラ。ちなみに止めへのGOサインはいつ出すの?」
「それはルナマリアの判断にお任せします。その時は3人で一気に」
「――――狩る。なるほどね、乗ったわその作戦」
作戦を受諾、2人が頷く。セツコは勇ましい表情で高らかに声を上げた。
「これより本作戦を、『ナガシノ作戦』 と命名します!! 各員速やかに作戦通りに動いてください!!」
「いいんですか? 後戻りはできませんよ?」
「私はセツルナステラ最年長、セツコ・オハラです!!」
第9話、 女の戦い。
それからなんやかんやで順調にナガシノ作戦は進んでいき。
シンが食堂で悩んでいた日から2日後、セツコの部屋にはセツルナステラの3人が集まっていた。今は出陣前の決起集会、リーダールナマリアによる演説の真っ最中である。
「よくぞ生き残った、我が精鋭たちよ!!」
「テンション高いなぁ。でもなんでルナマリア、こんなに濃い声を出してるんだろう?」
「よくわかんない。でもジブラルタル海峡は熱かった。それだけはまちがいない」
ステラ古いの知ってんのな。
まあそれはともかく、ルナマリアのGOサインが出たため3人は今出撃前なのである。身体はしっかり洗ったし、服装や化粧も完璧、今夜は特別に鰻を食べた。
あとは覚悟を決めて突貫するだけ。
「決戦のときが来たわね。今のシン相手なら必ず勝利を掴めるはず」
「でもだいじょうぶかな? いくら疲れてても、シンのデスティニーってすごく強いし。じっさい今日までみんな勝てなかったわけだし」
「何弱気なこと言ってんの、デスティニーなんて大したことないわよ。無双じゃジェリド中尉の黒いMK-2に修正される程度のレベルなんだから」
「いや、あのシナリオの中尉は実質JERIDOだったから、ある意味仕方ないんじゃ」
今日までの戦いで全員全敗しているため2人が心配そうな表情をしているが、おそらくは大丈夫だろうとルナマリアは思う。
今のシンの充填率はかなり低いし、今回はひさしぶりの3人がかり。あのパルマフィオキーナで誤魔化されることさえなければ、敗れる要素はまず見当たらない。
しいて心配するならばダメージを与えすぎて消化不良のまま戦闘終了といった事態だが、それにも既に手は打ってある。
というのも今の3人の格好は、前回のセツルナステラのそれと同じではない。
赤いミニスカチャイナのルナマリア・ナース服のステラ・黒と白のメイド服に白いガーターのセツコと、それぞれが黄金聖衣を纏っているのだ。しかもちょっとキツめでぱっつんぱっつん。
それをパーフェクトジオング以上に完璧なスタイルを誇る自分たちが着ているのだから、男であればどんな劣勢であってもアロンダイトを構え、獣のように自分たちに襲い掛かってくるだろう。
例えその先に、逃れられない敗北が待っているとしても。
「完璧ね」
これならばいける。
疲れているシンを押し倒し両手を押さえつけ、馬乗りになって腰を叩きつけつつ恥ずかしい言葉を叫ばせて服従させるといういつも自分がされている事の反撃が出来る。
「今宵、シンを討つ!! セツルナステラぁぁぁ、えいっえいっおーーーっっ!!」」
「おーーっ!!」
「おーーっ!!」
条件は全てクリアした。
今こそシンに見せるのだ。戦略と戦術の違いというものを!!
「ザフトレッド!!」
「ファントムピンク!!」
「グローリーブラック!!」
「3人揃って!!」
「「「ZEUTH戦隊、セツルナステラ参上!!!」」」
数時間後の勝利を信じ、シンの部屋に飛び込んでアテナエクスクラメーションの構えをとった3人。さしずめ担当は乙女と双子と獅子あたりだろう。
明かりを点けていないのか真っ暗な部屋の中。誰もいないわけではない。ターゲットは目の前にいる。
良かった、これでシンが不在だったらどうしようかと思っていたところだ。他のクルーにこの格好をしたまま部屋に入るところをしっかり見られているので、空振りだった場合ちょっとかっこ悪いし。
だがセツルナステラによる派手な登場にもかかわらず、シンはベッドの上で座ったまま微動だにしない。うすうす自分たちの企みに気が付いていたのだろうか。
どちらにせよ、このタイミングではもう遅いが。
「さて、観念しなさいシン。いつも私たちを恥ずかしい目に合わせている報いを、今こそ受けるときよ!! ……それとも、ごめんなさいしちゃう?」
「………俺はかまわん」
静かな声、意外と動揺している様子は無い。
「シンが2人にあやまればおしおきなんてせずに、あとはいつも通り4人でなかよくできるとおもうんだけど。このままじゃシン疲れるだろうし」
「俺はかまわん」
少し不気味だ。
なんだろうこの感覚。津波が来る前の、潮が一瞬引いた海岸にいるような感覚は。
「あ、謝らないって言うのなら、今夜のシン君は一晩中私たちの相手をしてもらう事になるんだよ? 降参してもやめてあげないんだよ?」
「俺は一向にかまわんッッッ!!!」
セツコの説得を遮り赤服のボタンを外すシン。中の身体を見せるかのように服を開く。
「裏コード。 『THE BEAST』 !!!!!」
シンの纏う気配が猛獣のオーラと形容すべき絶対的捕食者のそれへと著しく変わる。
服の内側にはなんかいろんなものがぶら下がっていた。3人の脳がそれが何をするものかを理解した瞬間、それぞれの目が驚愕で見開かれる。
ピンクローター(多数)。手錠。目隠し。バイブ。ハンディー型電動マッサージ機。
「な……」
「貴様はデスティニーを嘗めたッッッ!!!!」
どっかのツンデレ海王のように雄雄しく叫ぶシン。その覇気を浴びた瞬間3人は思わず動きを止めてしまう。
1度BEASTを体験したルナはともかく、初体験のステラやルナは先ほどまでの勝利への自信はとうに吹き飛んでしまっている。
今の自分たちは猛獣を仕留めるハンターなどではなく、銃を家に忘れてきてしまった哀れなエサだった。そう思えた。
(これは……選択を間違っちゃったかも……)
自分の判断ミスを後悔するルナマリア。シンはその様子に構わず言葉を続ける。
どうやら今までのルナマリアたちの行動を3股かけて好き勝手やってた自分のせいだと後悔していたらしく、ずっとこれからのことを考えていたのだとか。
「お金とかの生活については勿論、家族サービスや夜のお勤めは皆が十分満足できるものにしようって頑張っていたわけです。
今の俺は3人と一緒にいるっていうこれ以上無い幸運に恵まれてるので、それぐらいの甲斐性は見せたかったから。
それをいつも受けだから攻めに回りたいって理由だけで、こんなことするなんて。俺は皆を相手に出来る資格はないんじゃないだろうかって、今までずっと悩んでたってのに。
どうすればいいのかって考え続けてたのに。それをおしおきだなんだって………。
行っておきますけど、皆が嫌いになったわけじゃないです。ただ」
シンの手の中でカチリと音がしたかと思うと、それぞれが不気味な音を奏で出す。まあ具体的に描写するとヴヴヴ…とかウインウインという音なわけだが。
「………やりすぎてしまうかもしれん」
「「「――――――――ッッッ!!!」」」
3人の間に再び戦慄が奔る。やべえ今のシンはドSモードだ。
「落ち着いてシン君!! 確かにルナマリアはシン君を襲おうとしてたけど、それは全て私たちのより良い生活の為に」
流石は年上というべきか、3人の中でいち早く理性を取り戻したセツコがシンを止めるべく説得する。なんか全ての責任を自分に押し付けている感もあるが、そこは気にしないでおこう。
ここは唯一の20代で弁も立つセツコに少しでも怒りをやわらげて貰うのが吉だ。
「俺たちの、より良い生活のため?」
「そうです。だから今日はルナマリアへのおしおきとかは抜きにして、みんなで楽しい時間を」
「……なんか他人事ですね、セツコさん」
なんとか誤魔化そうと頑張るセツコ。だがシンは妖しい瞳のまま彼女の頬に手を添える。
唇を撫でられるうち、段々と女の貌になってきたセツコを見てルナマリアたちは思った。あ、これもう数分で堕ちるなこの人。
「言っておきますけど、今日のセツコさんには凄いおしおきをさせて貰いますよ。丁度メイドさんの格好だし、誰が自分の御主人様か教えてあげないと……」
「す、凄いおしおき? …………されちゃうんだ。シン君に、おしおきされちゃうんだ」
「はい、おしおきです。いけないメイドさんに凄く恥ずかしいことをさせて、恥ずかしい言葉を言わせて、意識がもたないくらい気持ち良くしてあげます。……良いよね、セツコ?」
「ああ……」
頬を紅く染めて身悶えするセツコ。シンはそんな彼女を抱きしめるとそのこめかみに優しいキスを落とし、耳元で小さく呟いた。
「セツコ、返事は?」
「はい、御主人様……。いっぱい、いっぱいセツコにおしおきしてください……」
うわ堕ちるの早っっっ!!! 数分どころか秒殺じゃんセツコさん!!!
「ちょ、セツコさんしっかりしてくださいよぅ!! このまんまじゃほんとに私たち穴だらけに……ダメだ、この人は置いていこう。ステラ、一旦退くわよ!!」
「うん。いまのシン、ちょっとこわい。早く逃げ―――――ドアが開かない、なんで?」
しないな。ああ、しない。――――勝てる気がしない。そんなアイコンタクトを一瞬で交わし、逃げ出そうとドアに手をかけるSEED勢。
だが扉は開かない。馬鹿な、中から外に出れないなんてありえないだろう普通。
惚けた表情のセツコをツンと指先でベッドに倒したシンが、ゆっくりと少女らに近付いてくる。待ちたまえ、いい子だから。
「知らなかったのか? デスティニーからは逃げられない」
ちくしょう、原作以上のラスボスオーラ出しやがって。
思わず格闘の構えを取る2人。滅びの呪文や竜の紋章、ましてや注射器を持った薬物中毒者のお兄さんもいないこの状況。
後ろにも下がれないなら前に出るしかない。
「覚悟を決めなさいステラ。どうせ最初の計画じゃ戦うつもりだったんだから。シンのダメージが消えたわけじゃないし、一気に決めるわよ!!」
「うん!! 2人ならシンに届く、2人ならシンを超える!!」
「窮鼠猫を噛む、か」
こうなったら最後の手段。ここにオチを持ってきて打ち切りエンドにするしかない。『次の日、痙攣したままベッドから起き上がれない3人が発見された』 的な。
胸元のボタンを幾つか外し、シンに向かって飛びかかる2人。
「私の実力、見せてあげるわ!!」
「うぇーーい!!!」
「「本当の戦いは、これからだぁぁぁぁっっっ!!!」」
よっしゃあああッ!!! THE ENDォオ!!!
なんてことはなく。
「せんせい……もう、ステラおくすりはいらない。おちゅうしゃ、やぁ……」
「はぁ、くっ、ああご主人様それ以上はダメ、噴いちゃう、また噴いちゃいますから!!」
「て、店長、もうこのマッサージ機止めて……お尻のローターでも、いいからぁ………」
しっかり連載は継続されているのであった。
「「あああ~~~~~っっっ!!!」」
正常位でステラを本日2回目の絶頂に導くと同時に、シンは右隣で四つん這いになっているセツコを自らの指でイカせる。
セツコの弱点やどうすれば一番感じてくれるかは既に身体に染み込んでいるので、彼女さえその気になればこれくらいは難しいことではない。シンはステラから自分のものを引き抜きつつ2人の様子を伺う。
顔を真っ赤にしたまま息を弾ませるステラ。お尻だけ高く上げたまま未だにシーツを握り締めているセツコ。
そんな2人の姿にシンは一瞬だけ正気に戻り思わず優しくしたくなった。しかし今夜の自分は御主人様で先生で店長なのである。引き返すことはできない。
だから淫らな姿勢もそのままにシンの股間をみつめてくるセツコに、御主人様として声をかけた。
「セツコは、これが欲しいのか?」
「………!! そ、それは」
「どうして欲しいか言わないと俺にはわかんないな。この硬くなってるやつの処理は、もう1回看護婦さんにお願いしようかな?」
「そ、そんな!!」
自分へは指ばかりで、これまでずっとナースなステラを責め続けていたシン。それも終わって当然次は自分の番だと思っていたメイドセツコだったが、それに対する御主人様の答えは言葉責めだった。
何をどうして欲しいか口に出さないと要望に答えてはもらえないらしい。いつもならば恥らいつつもそれに答えるセツコだったが、今回は1対1ではなくまわりに2人がいるのだ。
ここまできたんだからやることはやってほしい。しかし変な事を口走ったら明日彼女たちにどんな顔をすればいいかわからない。
いろいろ考えた末にセツコが出した答えは――――
「わ、私はぁっ………!!」
セツコが凄く恥ずかしいことを叫んでいるのでしばらくお待ちください。
「わ、私何てことを……。恥ずかしくて死にそう……」
「!! 死ぬ!? 死ぬのは…………これもういいや。だるい」
「……よく言えたね。それじゃセツコ、入れる準備して貰っていいかな?」
正気に戻って落ち込むセツコの前に自分のものを突き出すシン。その隣ではステラがブロックワードを再発していたが、あっさりとシンの愛の力 (多分違う) によって克服していた。
メイドはよほど溜まっていたのか口に含んだかと思うと、頬にくっ付いた髪をかき上げつつ勢い良く顔を前後させる。
「ん~、ふむ、んぅン、んんんぅーーっっ!!!」
「すげっ、バキューム……っ」
流石はライトスタッフ (素質ある者) 、追い詰められ覚醒したセツコのその愛撫にシンのアロンダイトが瞬く間に硬さを増した。
いや、ここはシンの持久力も評価するところだろう。原作では不評な脚本のせいで実質忘れ去られていたハイパーデューテリオンだったが、今のシンの中には確かにその力が宿っていた。
じゅぽんと音を立てて引き抜かれたシンの大剣。セツコの唇との間に糸を引いている。
「欲しいんだ? でもその前に言う事があるよね。……俺が今から入れるところは誰専用?」
「は、はい!!! 私は、私の身体はぜんぶ御主人様のものです!!だから――――――」
セツコが洒落にならん事を叫んでいるのでしばらくお待ちください。
「良く言ったセツコ。これはごほうびだ」
「ごしゅじん、さ、まぁぁ!! ひーっ、あっ、せつなかったぁ!! せつなかったよぉ!! ずっとほしかったのにぃ、セツコ、せつなかったぁぁ!!」
叫んだ言葉に満足し、挿入を開始する御主人様。
マゾメイドは両手両足をシンに巻きつけ、できる限り密着しようと力を込める。つかセツコってばノリすぎ。
「うん。だから今から好きなだけ突いてあげる。もういいって言うまで……!!」
「2度と離しません……!! ずっと、ずっとセツコを突いてくださいぃぃぃ!!!」
愛するメイドにマッハ叩きを連続で叩き込むシン。その声を聞いて我慢できなくなった3人目が切ない叫び声をあげる。
「ちょ、シン!! いつまで私を焦らすのよぉ!! やらないならやらないで、少し休ませて……」
叫んだのは目隠しと手錠をされ、両乳首や股間の突起、お尻にローターを着けられているチャイナドレスの少女。ルナマリアがベッドの左サイドで悶えていた。
先ほどまで行われていたマッサージ機での責めは終わったものの、未だシンには指1本触れられていない。
そこへ来て他の2人が快楽に溺れる声を延々聞かされていたため、彼女はもう我慢の限界だった。
「ごしゅじんさま、ごしゅじんさまぁ……!! セツコはもうダメです!!」
「いいよ、好きなだけ。絶対離さないし、何回でもイカせてあげるから」
「そんな!! もう、てんちょぉぉう!! はやくして、私にもはやく来てぇ!!!」
「ホーク君は後で。大丈夫、俺まだまだ残機あるから。……そんなに言うならローターを強にしとくな」
「馬鹿ぁぁぁぁぁっっっ!!!」
シンは歓喜していた。五体に刻まれたこれまでの戦いによる成長。
繰り出す責めの全てが彼女たちの弱点を捉えた。
目の前にいる3人の美女は確かに強敵だろう。しかしその彼女たちの力もBEASTの力の前では分が悪い。
「成った」
目の前で自分の思うがままに乱れている3人に対し、もはや怒りの感情は無い。
今は愛する彼女たちに自分の全力をぶつける。それだけでいい。
シン・アスカ 16歳の夏 ――――――――
灼熱の時間 (とき) !!
「きゅう」
「ん……すごかったぁ……」
「ハァ、ハァ。こんな……こんなの……レベル違いすぎ……」
しばらくの後。ルナマリアはシンの身体に布団のように覆いかぶさったまま、彼の身体の上で息を荒げていた。シンへの謝罪を繰り返しながら、それ以上の回数でその唇を貪っている。
2人の両隣には力無く倒れたステラとセツコ。3人とも既に黄金聖衣は装着しておらず、その白い身体を惜しげもなく晒している。
戦闘は終了。どっちが勝ったなんて言うまでもない。
「ごめんね、シン。心配させるつもりは無かったの」
「いや俺の方こそごめん、ちょっとやりすぎた。結局俺が突っ走ってただけなわけだし、そもそもの原因も俺にあるし」
仲直りタイムに入り、上に乗った彼女の赤い髪を優しく撫でるシンの掌。ルナマリアはそれを目を細めながら受け入れる。
やはり彼女もおんなのこ。あまあまな時間は嫌いではない。
「皆が本気で嫌がることってしたくないし、今度からは不満があったら遠慮なく口に出して言って欲しいんだ。
別にどっか連れてってとか一緒にいる上での希望でも構わない。俺は……その、彼氏なわけだしさ」
「なんでもって。じゃ、じゃあもし次機会があったら、今度は私たちがシンを苛めてもいいの?」
「苛め? ……ってそっち!? ま、まあ、あんまり変なことをやらなければ」
シンの言葉を聞いた途端彼女の瞳が輝き始める。ルナマリア・ホーク再起動開始します。
「2人とも、聞いた!?」
「うん!!!」
「勿論です!!」
がばりと体を起こし、寝転んだままのシンに身を寄せてくるステラとセツコ。お前ら生きとったんかい。しかも元気あるし。
にやにやと笑みを浮かべる彼女たちの背中と尻に黒い羽と尻尾が見えたような気がした。
「女王様と奴隷、いや上司と部下……まあそのあたりは後の楽しみに取っておいて。さしあたっては弟プレイからいってみようか」
弟プレイ。それを俺にやれと。いや確かにさっきまで3人はコスチュームに応じた演技してたけどさ。
今度はこっちがやる番だと言われればやるしかないけど……ん~、でもアレ俺が強制したわけじゃないんだが。
「こら。黙ってないで何かリアクションしなさいよ。ほらシン、ルナねえがオンナについて教えてあげるわよ?」
ああもう、仕方ねえ。これもサービスだと思ってやってやるか。
「る、ルナねえ……優しくして………ってやっぱこれ流石に恥ずかしいって。勘弁してくんない?」
「ふふっ。だ~め、男の子なら自分の言った言葉に責任を持たなきゃね? だから今はルナねえを喜ばせてくれないと駄目よ。……やっべ、楽しい。
ほらシン、次はセツコさんを呼んであげないと。セツコ姉さんはシン君に何て言って欲しいんですか?」
「ん~? 私はね……シン君、耳貸して」
ごにょごにょと耳元で囁いてくるセツコ姉さん。え、それを言うんですか?
毒を食らわば皿までにも限度があるんですが。
「セツコ姉さん、俺頑張って100点取るから。だからその時は俺とデートして」
「な、何か私ときめいてきた!!」
俺はちっともときめきません。
母性溢れる大人の女性ならそういうシチュエーションも想像しやすいんだけど、流石に同年代の彼女たちにそんな言葉を使っても言わされてる感が大きすぎる。興奮なんてできやしない。
「あと1人。呼び方は被らないように、残ったステラにGO!!」
ステラにも言えってのか。彼女は自分よりも童顔だから、正直姉呼ばわりは他の2人より抵抗があるんだが……。
「ス、ステラおねえちゃん……?」
「!!!」
シンの言葉に一瞬目を見開いたステラ。その後俯きしばらくぶるぶると震えていたかと思いきや、
「ステラの時代がキターーーーーッッッ!!!」
柔らかく重い衝撃にシンはベッドに倒れる。原因はステラによるフライングバストプレス。
どうやら先ほどの一言はジャストミートだったようです。その一撃を皮切りに、3人は集団で狩りを行うハイエナの如くシンの体に群がった。
「ふふふ、私の可愛い弟。もっといい男に育てて将来の旦那様にするためにも、ここはたっぷりオンナの良さを教えてやらないとね……」
「テストを頑張ったシン君にはご褒美をあげちゃうね。大人の階段、セツコ姉さんといっしょに登ろう?」
「おねえちゃん……ステラはシンのおねえちゃん……!! 地球に生まれてヨカッターーーーッッッ!!!」
それぞれの脳内設定を妄想しながら目を爛々と輝かせてシンに迫る3人。せめて設定を統一して欲しい。ステラなんか壊れちゃったし。
というかなんだ彼女たちのこの力は。さっきまであんなにいっぱいいっぱいだったってのに。体力ゲージが4分の1を切れば奥義使用可能。そんなのはゲームの世界だけの筈……ってこれゲームの世界だった。
ええい、今はそんなことを言っている場合ではない、BEASTが使えないなら他の戦力を確保しなくてはならないのだ。それも早急に。
援軍の当てはあるにはあるが、その力はあんまり当てにはならない。しかし今は猫の手も借りたいほどである。
襲い掛かる3人を映す自分の目を閉じ、シンは小さな声で呟いた。――――卍解。
次の瞬間、網膜に感じる黒い闇を吹き荒れる炎が紅く照らした。目の前には跪いた自分の愛機。響き渡る声は池田ボイス。
――――久しぶりだな。呼んだか?
数話ぶりに登場。前回セツルナステラに完敗を喫し宿主を置いてとっとと逃げた、シンの体に宿るデスティニーガンダムである。
どうやらシンの中で一部始終を見ていたらしい。呆れたように溜息を吐く。
――――馬鹿者め。怒りの力は一度外されると脆いと教えていたはずだ
嘘つけ、そんなカメハメみたいな教えはお前から教わってねえよ。それよか力貸せ。
お前の力がいるんだ。デュランダル議長から託された、運命の力が。
――――おお、それは私を頼りにしているということか。あのBEASTってやつが出張ってからというもの、お前の中での私の地位がどんどん低くなって……。
愚痴るな、そして懐くな。そんなん言ってる暇があるならとっとと力を解放しやがれ。
別にこいつを心から頼りにしているわけではない。この前途中で逃げやがったし。
虚化が使えないなら卍解。志望校に落ちたら滑り止め。BEASTが駄目なら運命の力。ただそれだけのことである。BLEACHだって今じゃ斬月 (本体) のこと覚えてる奴なんていないしな。
斬魄刀アロンダイトに力が宿る。何はともあれ戦闘準備は整った。後は目の前のエスパーダたちを倒すだけ。
勢いには乗っている3人だが、先ほどまでのダメージは相当な筈。ならば後は精神力の勝負である。
「「「後半まいりましょう後半スタート!!!」」」
――――いくぞ相棒
勝手に呼ぶな。
次の日の朝。目を覚ましたけれど、体に何かされている様子は無い。シンは頭を掻きながらほっと溜息をつく。
夢から醒めた。首の皮1枚の差だったけれど、勝敗は決した。
「もう醒めていい……もう解けていい……。もう出すものはない……」
間に合った。立っているのは――――俺だ。
ようやく手に入れることができた普通の目覚め。あの雪崩の様に流され続けたピンク色の生活に未練は無いと言えば嘘になるが、それを実感するのはもっと月日が立った時の事だろう。
だって昨日のハッスル具合とそこに到るまでのダメージで、シンは初めて朝勃ちをしていない朝を迎えたのだから。
「あ~さっぱりした。シン君はもう起きたのかな?」
「赤いのがここにもある……やだ、シンはステラのこんなところにまでキスしてたの?」
「こらステラ、まだ髪濡れてるわよ。こっちに来なさい、拭いてあげるから」
ベッドには一緒に力尽きたはずの3人の姿は無い。その代わりバスルームから楽しそうにじゃれ合う声が聞こえてくる。
後で俺も浴びようかなとシンが考えていると、部屋にタオルを巻いた3人が戻ってきた。そのつやつやにこにこした顔はすっげー幸せそう。
「あらシン、起きたんだ。じゃあこれ」
「ありがと」
蒸しタオルを受け取り顔を拭く。頭の中にかかっていたもやが晴れ、意識が急激にクリアになった。
ぱっちり開いた両目に、張りのある頬。シン・アスカ再起動完了である。
「おはようみんな、昨日はごめんな」
「そんなの気にしてないわよ。恋人同士ならあれくらい普通でしょ」
戦いが終わればノーサイド。そう笑顔を見せてくれる3人の姿はとても美しい。
彼女たちのために生きよう。この笑顔をずっと守っていこう。シンは心の底からそう思った。
「俺、今日から3人のためになんだって……ん?」
はらり。次の瞬間、シンの言葉を遮るように3枚のタオルが床に落ちた。美しく張りのある肢体を惜しげもなくさらすステルナコンビ。両手で自分の恥ずかしいところを隠すセツコ。
何だろう、この展開見覚えがあるんだけど。たしか1話くらいで。
「ど、どったの……?」
「ごめんねシン。私たち昨日のことを思い出してたら、なんだか疼いてきちゃって……。今からも、お願いしたいんだ」
「ステラ、きのうのでいろいろ目覚めちゃったかも」
「うん……シン君、お願い」
なんですって!?
昨日の夜は戦いの中に身を置いた自分の人生の中で、トップ3に入るほどの死闘だった。フリーダムとの一騎打ちや傷を負ったままの状態での御大将とのタイマンに並ぶくらいといっても過言ではない。
そしてその全身全霊を込めた死闘の末、やっと手に入れた確かな勝利。なのに―――
「「「ねえ~~、シン (君) ~~」」」
彼女たちはもう回復しつつある。
ベッドに手をつき、四足歩行の前傾姿勢で近づいてくる3人。それぞれの美巨乳が美味しそうに揺れている。
「私たちのこと愛してるなら、してくれるよね……?」
その発言は卑怯やセツコさん。疲れたとか言って逃げられないじゃないか。
しかし3人ともなんというタフさ。完全に満足させるのも、昔ほど容易ではなくなってきたと感じてはいたが。
――――残念なことに……ここまでお前がやったこと。 『何1つ間違えていない』。当たり前の事が当たり前に起こっている、ただそれだけだ
胸の中に響くデスティニーの声。3人の強さにデスティニーも驚きを隠せていない。
だが驚いている暇なんて無い。肝心なのは 「なんで」 と疑問に感じることではなく、 「どうするか」 ということだ。
無論、答えは決まっているのだが。
「やはり最後は」
もうBEASTは使えない。だが深淵喰いのように距離を詰めてくる今の彼女たちに、小手先の技では通じまい。
覚悟を決めたシンの心に再び炎が宿る。すまんがデスティニーよ、もう少しだけ俺に付き合ってくれ。
決意と共にそそり立つ大剣。最後に縋るは自身の強さの象徴、かつて3人を幾度と無くベッドに沈めてきたアロンダイト。
「大剣 (これ) に尽きるか」
来い。今度こそ満足させてみせる。
戦闘開始。
「ずっと私のターン!!!」
「見せてやるぜ、飛鳥風風拳」
1時間経過。
「ずっとステラのターン!!!」
「獣王激烈掌が……足止めにもならんとはっっ!!」
2時間経過。
「神様……初めて貴方にお願いします………。どうか………どうか私に勝――――」
「シン君もう限界が近いのかな。それじゃあ今度はシン君のターン……」
「セツコさん……」
「と見せかけて私のターン!!!」
「あんたって人はぁぁぁぁっっ!!!!」
そして3時間後。
今は、起き上がることすらできない。
シンの顔の上に顔面騎乗して舌での愛撫を受けつつ、目の前のセツコと両手の指を絡ませながらディープキスをしているステラ。
自分の恥部をシンの腹筋に擦りつけ、背後のルナマリアに胸を攻められながらステラと舌を絡ませているセツコ。
セツコの胸を背後から揉みしだく一方でシンと繋がった腰を激しく動かし、快楽を貪っているルナマリア。
まるでクライシスコアのラストバトルくらいに一方的な展開に、少年の体から力が抜けていく。
「く……うお………」
顔に恥部を押し付けられながら、シン・アスカは辛そうな声を上げた。その声は誰がどう贔屓目に見ても敗北者のそれである。
ターニングポイントはおそらく仲直り後の弟プレイだろう。あれで完全に流れをもって行かれた。
逆転の予兆を感じていたにも係わらず、目先の勝利に驕った自分が間抜けだったのだ。僅かな勝利一つで猫が獅子に変わることもある、その事を忘れていた己が。
もう、自分では逆立ちしても3人には勝てないだろう。
「あぁん!! もっと、もっと突き上げてシン!! 私をめちゃくちゃにしてぇ!!」
「んちゅ、ぷぁ、はやくイッてルナマリア!! こっちは身体が凄く疼いて、どうにかなっちゃいそう」
「そのつぎは、ステラ……」
(俺は……負けるんだな……決定的に………)
シンはいともすんなりそれを受け入れた
恐怖はなかった (出し過ぎによる) 痛みもなかった
『ヤるだけヤったんだからな』
そう思った
圧倒的な3人の前にあるのは氷のように冷たい冷静な、失神していく自分を見る目だけだった
(…………)
デスティニーも同じだった 動けなかった
デスティニーは生きながらヘビにのまれるカエルの気持ちを理解したと思った!!
(カミーユ……エイジ……ロラン……。お前たちは、何を手に入れた? オレは…………)
「この気配はなんだ? 誰か僕の大切な人の光が、消えていくような……」
「ローラ、起きたのですね? 丁度良かった、朝の奉仕をお願いします」
「いや、ちょっともう無理……」
「よしなに」
「………はい」
「この、感覚は……」
「おはようございますエイジ様。でもまだ起床時間には早、あっ、駄目ですこんな時間からなんて。でもどうしてもと仰るなら………エイジ様?」
「すまねえクッキー、俺やっぱりまだガキだわ。……このまま胸を貸しててくれ。少し泣く」
「………?」
「魂を同じくする俺にはわかるんだ」
「胸を揉まれながら言われても……んっ、あっ、そんなところに手を入れられては……っ!!」
「一つの時代が終わったか……」
「どうしたの、カミーユ」
「なんでもないんだ、サラ。なんでもない。……ほら、体が冷えちゃうからこっちに寄って」
「え~? またするつもりでしょ。もういい加減寝させ、ちょ、こらぁ♪」
(あと……1回ずつくらいイカせれば……主導権を確保できる筈だったんだけどな………)
抵抗する気すらなくしてエンディング一直線だったのに、まだ戦いは終わらない。いや、それはもう戦いとすら呼べない一方的な捕食であった。
シンはぼんやりとした頭で過去の記憶を探る。
「あぁ!! あぁん!! やっぱシンのすごいわよもう、んっ、んっ、はぁ、私の弱いとこに……いい感じに擦れてっっ!!」
いつからだろう。
押し寄せる波のように連続で挑んでくる彼女らを、撃退した後に安堵するようになったのは。
「ちゅ、れろ、ちゅぱ、んんっ!! だめ、ステラたまんない。そこの、きもちいいところ、もっと吸って、シン」
おかしいな。
初めは彼女たちの笑顔を見るだけで、自分は幸せだったはずなのに……
「シン君、つぎ……次は私だから………もうがまんできないから、早くルナマリアをイカせて……!!」
いつの間にか彼女たちが快楽に流される様を見ながら、3人を攻めることに喜びを覚える自分自身に気がついた……
「「「ねえ~~~、もっとぉ~~~~!!!」」」
負けたくないなぁ……
かりそめの楽園の……全てはいつか壊れる幻想だったとしても……少しでも長く……
ほんの少しでも長く、あのままでいたかった……
部屋に響き渡る嬌声。3人は幸せそうに愛する少年と体を絡み合わせ、もたらされる快楽に身を委ねる。
淫靡な宴は終わる素振りを未だに見せない。
そして朝っぱらからサカっていた友たちの予感は間違っておらず、彼女たちの下では一人の少年の生命の光がくすんでいき。
この日、一つの巨星が落ちた。