「ぐぬぬぬぬ…」
「ぎぎぎぎぎ…」
「主、顔近すぎです」
「そしてヤマモト、30過ぎて子供すぎるぞー」
「ヴィータ、お前に言われたくはない、そして子狸に顔近づけても気にならない、なぜなら狸だからだ」
「もう…久しぶりに会ったからって、はしゃぎすぎよ、二人とも、まじめに話ししないなら」
「シャマル、いいんや、ちょっとこの不良中年にお灸すえるだけなんやから」
シャマルはしょうがないわね、とため息を付き、伝家の宝刀を抜くことにした。
「いい加減にしないと、顔が接近中を撮影したこの写真をフェイトちゃんに送るわ」
「「すいませんっしたー!!」」
即座に額を押し付けあって威嚇していた俺らは、恒例となった地球文化の結晶、土下座っていた。
いや、我が家をヤンデレ御殿にしたくはないのだ、エリオまた泣くし、家長としての義務である。
――――父と部隊長の憂鬱――――
こうなったらスマブラで勝負をつけようやないか、せめて格ゲーだ、などと再戦をちかいつつとりあえずこれからのことを話しておかなければならないだろう
娘のこともあるし、娘の息子と娘にも直接関係あることなのだし。
孫とは呼ばない、それが30台クオリティー
「まあ・・・今日は準備期間で休み貰ってきてるんだけどさ。とりあえず部隊編制、とくにフェイトの小隊、それとこの部隊全体の目的についてだが」
「あーあーきーこーえーなーいー」
「こいつ…!」
「はやてちゃん…」
いくら今は休暇中扱いとはいえここまで話しない気か…!ならしょうがない。
「ところでシグナム、フェイトと小隊同じらしいな?」
「ああ、そうだな」
これで小隊については聞けるな。
「…教導はどうすんだよ?エリオとキャロだぞ?」
「ああ、それなんだが、フェイトとお前に任せるつもりだ。悪いんだがな、自分を高めるのはともかく教導には私には向いてない」
こいつ、スラっとかっこよく言い切ったが、適正ないとか真顔でいいきりやがった…
これだからヴォルケンズは…!
「いやそこはそれなりに努力しろよ…ここ稼動する前に時間あったろ?なのはに習うとか、ヴィータはちゃんとうけたらしいじゃんか」
「いや受けたのだがな…向いてないことがはっきりしただけで…」
「一度で止めるのかよ?ベルカの騎士」
「お前がいったことだぞ、”お前らが出来ないと思ったことは、やるだけ無駄だ”と」
「ああ・・・まあお前らプログラムだもんな、基本は」
そう気負いもなくぼやくと、騎士たちは苦笑しつつも笑って頷いていた。
あの”闇の書”事件以降、色々とあってヴォルケンズとは絡むことが暫くあったのだが其の度に
『おまえらは人間じゃない、プログラムから派生していることを忘れるな』
とえんえんと言い続けたのだ。
そりゃあ最初はえらい剣幕で殴られたし、泣かれた
とくにはやての猛攻はすごかったのものだがそれでも説得し続けた。関わったものとしてこの物語を悲劇にしたくなかったから、娘も、その親友のなのはも手伝ってくれた
お陰で誤解無くやっと理解してくれたのだ。
『プログラムであるがゆえの限界は必ずある、それを悲観するな、プログラムゆえの人を超える部分もあるのだから』と
例えば全体的なものでは、成長、これはゆっくりとではあるがしているそうだがそれでも人である主はやてと必ずずれる
逆に言えば老いる事もすくなく、主を守れる。
個人的にいえば各々の騎士としての火力、これはなのはと比べればよく判る
あのエースは10台で完全に花開かせたが、ヴォルケンズはほぼ横ばいだ
技術的に多少上がっても大きくは変動しない、これはしっかりした戦闘スタイルと技術が確立しているせいでもある。少なくともなのはは砲撃の火力が高すぎた事例には事欠かない。
まさに魔王。
「でも、プログラムだから、こうしてはやてへの忠誠はまよわねーし、間違いなく誇っていられるぜ」
もちろん、人の身で在ったとしても変わるとは思っていませんが、とヴィータが答え、シグナムが続けた。
「お前には其の事でもいくら礼をいっても足りないくらいだ、揺るがない心をお前は教えてくれた」
「よしてくれ、遅かれ早かれ判ることだ」
それに、少しずつだが人間に近づいている、とフェイト経由で聞いているしな、と繋げるとはやて一家のホームドクターシャマル先生がはい、と肯定してくれた。
てか、毎回思うのだがこいつらやなのは、フェイトの周りに心理的な大人が少ないのだ
まあ、「異世界からきた若きエース」「可哀相な生まれに屈しない有能な執務官」「ミッド有数の悲劇を終わらせた少女」なぞのフェイルターが掛かってるミッドの人にはしょうがないのかもしれないけど
色眼鏡でみると、早熟だとは思うが10台の少女なんだからさ?もうちょっとフォローしろよな?おかげでやけに俺が頼られるわけだ、常識人がいれば普通に教えてくれるだろうに。
まあそれはともかく、どうも闇の書から独立した時点で個別に変化していっているらしい、これはプログラムとしては劣化だが、はやて達はこれを心から喜んでいた。
「それでも、だ。それに心無い言葉にも胸を張って聞き流せるようになった」
「ま、ヴォルケンリッターを物扱いする奴にはあとでえらいめに遭ってもらうつもりやけどな」
「他人、特に俺とフェイト達を巻き込まないならやれやれもっとやれ」
家族であることと、人でないことは矛盾しない
それはこのはやて一家を理解すればわかる。はっきり言えば絆は血や人種ではないんだろう、と。
「あーそれでな、話戻すが。おめーにとりあえずライトニング小隊、フェイト、シグナム、特にエリオとキャロを預けたいんだ」
「ヴィータ…お前やれよ」
「やだね、なのはとスターズ小隊で忙しーいんだよ」
「てか思うんだが、
フェイト 執務官として捜査と事務
シグナム あきらかにニート侍です本当に(ry
って布陣だと俺の負担でかくね!?」
「まて、ニートとはなんだ、侍とは心踊る響きだが」
響くな、そして自覚しろ。
「いや…私も事務には回るし、主の護衛もあってな。後方からの2小隊の現場指揮や遊撃をやることが多くなりそうなのだ、故に連携演習くらいしか予定しては訓練に参加しにくい」
「ああ、基本盾の守護獣たる私がつくが、外出時はシグナムとの交代で行う予定でな。特に今は主には敵が多い」
「相変わらず過保護だと思うが…わからんでもないしな、まあいいさ、とりあえず俺流だからあとでどうなってもしらんぞ?」
「それくらいの信用はある、むしろそういった方面しかないんやけどなー」
「うんわかったはやて、ちょっとお話しようか、なのは的に」
「へへん、はやて一家勢ぞろいやで?勝てると思ってるん?…ってどこに連絡」
「ああ、フェイト、どうもはやてが我が山本一家を馬鹿にしてるようなんだ…アルフを…うん”本気”でいいよ?」
「ぐ…し、しかしやな、まだわが軍は圧倒的…」
「んでさ、フェイト、今回の商品は俺の名前の入った婚姻届d」
「「「「「すいませんっしたー!」」」」」
「わかればいい」
素晴らしい一家の絆を見せ付ける土下座だ、…てかそこまでうちの娘怖いのか…判るけど、骨身に沁みて判るけどっ
無論、通信してるように見せてただけだ、本当に婚姻届とか口にすると最近トンデモ方面にトンデモ加速中なフェイトがしゃれにならん。
…空戦S+…どこまで飛ぶんだ…
そして5人の土下座は素晴らしい、特にシグナム辺りは熟練の域だな。
…平時はなにしてるんだ?シグシグ…
などとちょっと隊長クラスの不安を感じつつとりあえずヴィータに教導のテキストをコピってもらう約束を取り付けた。
「なのはにもらやあいいじゃねーか」
「勘弁してくれ、あれ以来腫れ物扱いだぞ?」
知ってていうんじゃねえよ、あれから何年たっても相変わらず、なのはは俺を避ける、というか微妙な感じなのだ。
「あれも頑固だからな、勿論悪くは無いのだが…」
「8年ですものね…なのはちゃんもそれなりに消化出来ているんでしょうけど…」
ちら、っとシャマルが目を向けるが気が付かない振りをしつつ。
「なあ?なのはは俺くるの知ってるんだろうな?」
「勿論や、友達には嘘はつかないええ子やからな、私」
そこはかとなく周りから埋められていかれた俺はともだちやないんよ?と脳内変換しといた、いつか泣かす。
「はぁ…まあいいけどさ、てか若いのばっかだなあ…ミッドだと多いけど」
「まだいっとんの?まあ判るけどな私も地球出身やし」
「とはいえ35だしなあ、ふた周りとか違うと…」
「どの面さげていうねん!どうみても20台前半やで?下手すると10台後半、てか段々若返るってどんだけ!」
「きっと無限書庫でのリンディ茶だな、もしくはあそこで日を見ない地獄勤務するとか」
色は白くなるぞ、少なくともな!
「ああ…そういやなのはちゃんの事故のあと、一時期無限書庫に勤務やったなたしか事務ってことで」
てかアレ愛飲してたってほんまか?糖分足りないからとりあえず甘いもんもしくなるんだよ、勉強してて頭痛くなったりするのは糖分不足を疑えよ?
「病み上がりだったからさ、徹夜するとユーノが飛んできて止められたなあ」
大丈夫だっていうのに…
「まあ、ユーノ君もそうやけど、なのはちゃんもきてたやろ?」
「ほとんど書庫の前までだけだったらしいけどな、弁当は美味かったよ、少なくともあの頃のフェイトよりはね?」
任務に隙があると食べ物とか差し入れしてくれるんだよな…それでも基本的に休み取らないで無限書庫にきてるのがなのはクオリティ。
「たまにフェイトとなのはが喧嘩してた後。すぐによりをもどしていたが、あれもヤマモトが何かしたのか?」
「別になにも?てかあの頃は特になのはとは会話してないしな」
「その分フェイトと話し合ったんだろ?」
シグナム、その判っているぞ的な顔は止めろ、おっさんハズかしいんだ。
「ま、娘だからな、先達としては迷ってるなら手を貸すのは当たり前だよ、経験くらいしか今のフェイトやお前らに勝てるもんはない」
「ふん、あの時の一撃は今度こそかえすぞ」
「そういって何度模擬戦したよ?こっちの勝率2割きってるっちゅうねん」
「へ、そういいつついつも奥の手隠しやがって、生意気なんだよ、ヤマモトのくせに」
でた、ヴィータイズム、いいかげんこのゲボ子も精神だけでも成長しろよ、趣味だけ老成しやがって。
趣味:ゲートボールってなんだよ
やったら普通に面白かったけどさ!てか、このへんから連携とかに興味沸いたらしく、なのはのこともあってヴィータ、教導のほうにいったけど!いまだにゲートボール誘われるけど!
「聞いているぞ、地上だからわからないと思っていたのか?暇を見つけては鍛錬を絶やさないそうではないか」
やめてシグナム、目が戦闘部族だ。バトルジャンキーは大の苦手なんだよ!
「ふぅ…いらない藪突付きそうだから、とりあえず今日はかえるわ、着任は明後日だから明日は引越しに費やすんで呼ぶなよ?」
まあ、大体つかめた、情報は相変わらず足りないが、”足りない”ということが判った
これは収穫だろう、そこさえ埋めれば概要はつかめるはずだ。まあ着任したら教えてくれるだろうし、はやても半分はもったいぶっているだけなんだろうし。
そう、『部隊の目的』に付いてだけはやては喋らなかった、小隊については惜しげもなく話しておいて。
これはちょっとばかし警戒度を上げておくべきだろう、少なくとも六課の全員以外にも大きくかかわるクラスの事件の為だけに設立させたんだろうし
でなければあっさり話す筈だ、この前のフェイトにも詳しくは話してないようだったしな…はやては周りが思うより身内に甘い。
多分運用し始めて誰かになにかあったらそいつを交代するつもりなんだろう…少なくとも新規の4人の隊員は、だから巻き込まないようにしている
深入りする前に…これが一番可能性が高いな。
まあ、そんな役にも立たないことを考えつつ、部隊長室をでて、まっすぐ六課を出ようとしたら出会ってしまった。
「あ…ただ…山本…先生…」
やたら過去と書類を抱え込んだエースオブエース
元教え子、高町なのはに。