「よう、久しぶり、元気だったか?ってかフェイトからは聞いてるんだけど」
「あ、はい・・・」
「まあ、これからは同じ職場だし、顔見せることも多そうだけど」
「そう・・・ですね」
「で、今きいてきたんだけど、エリオとキャロは殆ど俺が教導することになりそうなんでな、山本先生再びってわけだ、今度は小学校じゃなくて、今度も小学生だけどな」
「そう・・・ですか」
「うん、それでな、教導の先達として色々聞くことがあると思うから」
「は、はい!何でも聞いてください!」
「うん、いい返事だ、昔からなのはは元気よかったもんな」
こんくらいのときからな?と腰くらいに右手をもっていって笑ってやる。
「そう・・・です・・・」
「はぁ・・・いやなのは、俺が嫌いとか苦手だったらいってくれればいいんだぞ?エリオたちのことも在るし、もう六課から抜けるのは無理だがそれなりに顔あわせるの減らせるし」
「ち、違います!嫌いでも苦手でもありません!だって、だって先生は、山本先生は・・・」
そしてぎゅっと拳をにぎりしめ、清掃直後なのだろう、ワックスの匂いの残る廊下を見つめつつエースオブエースは、呟いた。
「私の、命の、恩人、ですから」
ーーーー父とエ-スの憂鬱----
「はぁ・・・いやあれは俺が勝手にやったことだし、気にしなくていいって」
「そ!・・・でもお陰で私は!私がエースと呼ばれてるのは!先生のお陰です!」
「ほっといても直ったと思うよ、今思うとさ、いくらなんでも俺性急過ぎたし」
「でも・・・シャマル・・・」
「シャマルがどうした?何か言ってたか?あの鬼の手女医」
「鬼・・・い、いえ山本先生がいなかったら、ここまで回復するのは五分だっただろう、って」
「それでも五分で完治じゃないか、てか医者ってのは命に関わるから基本的に悲観した計算するしな」
だから成功率の低い手術が結構成功するのだ、神様はいつだっていらないくらい平等だ、成功率一割とか成功しないっちゅうねん、本当に一割だったらアクシデント一発で終わりだっちゅうねん。
「それでも・・・あのあと山本先生はレアスキルの過剰使用で半年近くも寝たきりだったじゃないですか!」
「ああ、魔力を加工できる程度の能力だっけ?」
なんか弾幕打ちそうなレアスキルだ。そして自分のスキルだろうが、嘘をつくなよ俺。
「魔力変質スキル、数少ないエネルギーではなく、他者のも含めて魔力を魔力形態で加工出来るスキル、でしたよね?」
うんそう、変換じゃなく変質、聞いたら結構そんなのは少ないらしい。
「ああ、あの事故以前には何度も模擬戦したし、知ってるだろ?接触した魔力の圧縮や物質化とかだよ」
「はい・・・何度かは、ですが」
「まあ、何度も言ったけど、なのはの傷ついたリンカーコアを個人判断で俺の魔力を使用して無理やり干渉したら、うっかり俺のリンカーコアがぼろぼろになったんだよな、うわ勝手に治療しといてかっこ悪いな、冷静に考えると」
「そんなことないです!本当に・・・あの時は・・・」
はぁ・・・8年、8年だぞ?もういい加減吹っ切れてもいいと思うんだが、この生真面目かつ頑固スキル持ちめ・・・!
「なんて相性の悪いスキル持ってんだなのは・・・」
「え?えぇ?私は収束系が得意なだけですよ?レアスキルなんてもってません!」
「ああ、気にするな委員長:スキルB」
「なんか可笑しなスキル持たされてる!」
スキルB 暴言による3小節以下の言いがかりを無効化する、大集団によるいいがかりによってしてもその行動を妨げるのは難しい
とか?
「スキルAに上がりたかったらみつ編みメガネになるんだな」
「しませんよ!私もう二十歳ですよ!?」
「ナイス突っ込みだ、なのは、もう教えることはない・・・・ッ!」
「倒れこまないでください?!」
手にいっぱいの紙媒体を持っておろおろするなのは、実にキュートだ、だが残念、15歳の差があると、もはや可愛さしか感じない。
・・・枯れてると呟いた貴様、あとで体育館裏だ。
「まあ、冗談だがさ、もう俺も元どうりだし、気にしないで欲しいんだよ、ほら、同じ職場な訳だし、ぎくしゃくしてても、ね」
はぁ・・・やむをえない、か、出来るだけしたくないんだけどなぁ。
「俺からの『お願い』なんだけど、前みたいとはいわないけど、フランクにいきたいんだ、『頼む』よ」
「あ・・・は、はい!判りました!」
「うん、では今日は非番だけど、明後日から俺も着任だから、そのときは頼みます、なのは一等空尉!」
「はい!判りましたええっと・・・」
「今回の出向によって、一等陸士となりました」
「では、山本一等陸士!あなたの着任を歓迎します!」
「ははは、まあ明後日なんだけどね?」
「あはは・・・フライングですね」
「うん、まあフェイトもいるし、いったとおりエリオ達をしごかないといけないからね、勤務中はそれなりに上下を、ね」
どうせあの子狸は上下関係気にせずやるんだろうけどー
「はい、では山本先生、よろしくお願いします」
「まさにこちらこそだけどね、先任?」
「せ・先生に教えることとか・・・」
「はは、俺は万能超人じゃないしな、勝手が判らないところも多いし、本気で頼むよ」
それに戦闘から離れて久しいしな、と喉まで出掛かったがまた落ち込ませるわけにいかないんでごくりと飲み込んどく、大人ってきびしいよなぁ。
そのあと二言三言話してから、仕事を邪魔するわけにはいかないし、ってんで分かれることにして、結構でかい玄関から抜け、最近ミッドではやってるちいさな二輪車に火を入れる。
「はぁ・・・どんだけあいつ、あのこと引きずってるんだか・・・」
そう、『お願い』や『命令』すればなのはは『どんな無理でも』俺の言うことを聞く、それが判ったのは入院中軽い気持ちで。
「暇で暇でさ、暇あったら出来るだけ食いもんとか差し入れして欲しいなあ」
って謝られるばかりで困った俺が『お願い』したら毎日デザートを持ってくるようになったのだ。
で、それ自体はいいんだ、が・・・問題が発生するわなこの流れでいくと。
1、先に退院してたなのは、教導部隊に戻って二日目から有給申請して毎日ケーキやデザート探しに翻弄、二週間目に同僚のヴィータが泣きついた。
「いや、元々やすまなかったからさ、アイツ、有給とるのはいいんだけどさぁ・・・戻って二日目から長期は・・・休まねーなのは知ってる隊員だけじゃねえし、不味いんだよ」
2、異世界という心躍る新環境に渡っても殆ど休まなかった若きエース、所属も海ってことでミッドとかには詳しくないわけで、本だけの知識に頼るわけもあの凝り性ななのはさんではなかった。
「なあ・・・せめて管理外からは検閲とかとかあるんやから、地球からのはそろそろ止めるように忠告しといてくれへんかな?ケーキとかだと時間かけて検閲させるのもアレやし、いくら故郷への転移はお目こぼしされてるとはいえ・・・最近は半分密輸入なんやで?」
そのまえに12歳とかで密輸入を手伝うな、子狸。
などといった猪突猛進な行動があったわけで、それ以降出来るだけ『お願い』などが絡まないように時間で解決しようと思っていたのだが・・・
タイムミリットだろう、同じ職場でぎすぎすしてるわけにもいかん、変な雰囲気をだして、隊員とかに影響があってもまずいしな。
「ってか・・・なんだよこの職場・・・高校生じゃねんだぞ、ギャルゲーでもこんな面倒ばっかのとことかありえねえだろぅ・・・」
35に絶対見えないとご近所で評判の3児のパパンは、ぼへぼへと締まらない音をたてるバイクを転がしながら黄昏ていた。
「あ、あと二名のこと聞き忘れた」