「…で、なんでこうなるか…」
「ふ、油断したな?」
「いや…この六課引越しとか事後処理とか…くそ忙しいときにシグナムの手が空いてるとはおもわなんだ」
「甘いな、私はこれでも隙は無いほうでな?」
「…ぶっちゃけろ、書類整理苦手だから逃げてきた、と」
「なんのことだか…わからんな」
「この!開き直りやがったな!」
「まあいいではないか、それよりこの施設が使えるのも暫くは無理だそうだ」
「そりゃあ…こんだけ壊れたしなぁ…まあ教導だけはまだここでするだろうけど」
「アースラでするのも限度があるしな」
「そこで、最後というわけなのか?」
「そういうことだ」
「…もう泣きそう…なんでこの忙しい時に模擬戦なんか…」
「ふふふ、ヴィータとだけなど、ゆるさぬぞ」
「死ねばいいのに、シグシグ」
――――父と未来への憂鬱――――
「いでで…」
「大丈夫?父さん」
「ん、ああ、ちょっと胸が痛むだけだ」
「本当?父さんったらすぐ無理するから」
「それはなのはに言え」
砂糖に酢を入れてよくかき混ぜる、ちょっと調味料をいれてすし酢の出来上がり
「エリオ、飯冷めたー?」
「もうちょっとです」
「ん、ちゃんと切るように混ぜろよ?潰れちまう」
今日はスバルも退院したので快気祝いだ、山本家総出で食事を作っている
「ふぁぁ…いい匂い、久しぶりです!御寿司とか!」
「まあ…ミッドはあんましないよな…ちなみにいうとこれバラ寿司だからな」
「薔薇?ですか?」
いやティアナ違う、花じゃない
「ま、みてれば分かるよ。キャロ、卵剥いてくれ」
「はい!」
キャロは手馴れた手つきで水につけて殻を剥いていく。さすが自然児、慣れてる
「…これで味付けが大雑把じゃ無ければなあ…っとフェイト、お澄ましのほう見といてくれ」
なんでイギリス風に大雑把なんだろ?まあ…味とか二の次な生活だったのかもだけど
ってか、これくらい総出でかからなくてもいいんだが…本来は
「たっのしみ!たっのしみ!」
この万年欠食児童がいるからな、まあエリオで慣れてるけど
「ちょっとスバル、遠慮しなさいよ?」
「だってぇ病院のご飯おいしくなかったんだもん」
「美味いとまた来ようとか思われるからじゃね?あの味はそうとしかいえないよな」
まあ、塩分少な目だし、バランス考えるとそうなるのかなぁ?
でっかい桶の中にご飯を入れてすし酢を流し込み手早く混ぜていく
「いい匂いですね…」
「だろ?昔よく作ったもんだ」
本当にフェイトって食が細くてさぁ…お酢とかつかって少しでも食べてもらおうと考えたもんだ
「それにしても…シグナム副隊長との模擬戦、どうなったんですか?」
「んー、まあ久々に本気でやったら俺死にそうになった」
なんていうか、すごかったぞ?俺嘔吐してた!あはははは
「…ちょっと隊長間の話し合いに行ってくる」
「フェイト?いや合意の上だからな?てか食事なんだから黒くなるな?」
いや本気で止めて!見ろ!スバルなんか一気に沈んだぞ!?
「…父さんがそういうなら…」
「まあ、たまには真面目にやろうかなあ、と思ってなぁ…」
まあ、色々と思うことあるしな
「美味しい!すごい!海老とかぷりぷりだし!」
「コツは乗っける具材にもちゃんと味つけとくことだな」
バラ寿司だと具だけ食べるときもあるし、な
「へぇ。サラダみたいですね、これが主食になるなんて」
「地球でも日本とか以外は米ってサラダ感覚だぞ?野菜扱いだよね」
「懐かしいなあ、うちのおばあちゃんが作ってくれたことあるんですよ」
「そうかぁ…ナカジマっていうから日本からきてるのか」
「らしいですよ」
「そういえばヤマモトさん所だとナカジマって苗字多いんですか?」
「まあ、ポピュラーかな?」
「うん、おかわり!」
「…本気で10合近く炊いたのに…空になるな」
お前は相撲取りか
「あ、ヤマモトさん、僕も…」
エリオ…お前はよく食べろ、うん。お父さんが許すぞ
「なんか差別されてませんか?」
「してないよ?ほらティアナ、もっと食べろ」
うんしてないよ?ちょっと癒しが欲しいとか思ってないよ?
「…父さん…私も」
「フェイトも構わずお皿出しなさい、よそってあげるから」
だがスバル、てめーは3杯で終わりだ、てかお客でどんぶり三杯ってどういう了見だ
「えー今日は私主役じゃないんですか?」
黙れ、退院明けで食いすぎだ、もっとそっと出しなさい…ああもうおかわりしてあげるから、なんか涙目で見上げない!しゅんとしない!
…おれってやっぱりあまいのかなぁ?
「しかし…このオハシってすごいですね…切ったり出来ますし」
「あれ?ティアナってお箸初体験?」
「ええ…見た事は結構多いんですが、使うことなかったですね」
一人だけ、スプーンで食べてたティアナ、途中から興味ありそうだったんで食後ちょっと渡してみたら、結構器用に使ってる
「うまいもんだな、フェイトとかも最初はぎこちなかったんだがなあ」
「う…言わないでよ父さん」
まあ、10歳くらいのときだしなあ…こう握り締めてさ…ご飯を無理やりかっこんでたなぁ
「うう…いわないでってば…」
「フェイトさんもそんな時があったんですね」
「最初からなんでも出来たように思ってましたけど…」
んなわけあるか
「そうか…それでは仕方ない…お待たせいたしました!皆様!これより山本家の過去を一つ」
「ちょ!父さん!?」
「ふふふ…フェイトよ、愛娘よ。ここは一つ、上司のありのままの姿をだな」
「やーめーてー!」
うふふ、私は時にしか情け容赦しない男、さて、取りいだしたるは一冊の変哲のないアルバム
「やーーーめーーーーてーーー!!」
おや?こんなところに半裸でアルフに抱きついてる愛娘の写真が
「うわああああん!」
「お騒がせしましたー!」
「すいません、色々と…」
「いいっていいって、まあ寮じゃあこんな馬鹿騒ぎしにくいし、たまにはいいだろ」
「すっごく美味しかったです!あのデザートのぜんざいとかも…」
「うむ、昔に京都でアルバイトしてた時に教えてもらった味だからな、プロの味だぞ」
大量に煮込むのがコツだそうだ、まあ今回も余ったが…のこりは愛しのユーノにおすそ分けしとこう。あそこって飢えたヤツ多いからな
「うう…お嫁にいけない…」
「いや何言ってるんだフェイト…ただの成長記録じゃないか」
うん、可愛い娘の記録をみて愛でてただけだぞー?
「…最後のおねしょの話までしなくてもいいと思うの…」
うふふ、とことんやる男なのだよ、俺は
「まあ、フェイトもそろそろ帰れよ?」
「…泊めて?」
「…いいけど…おーい、エリオ、お前俺とソファーな」
「あ、はい、いいですよ」
「エリオとキャロくらいならベットで一緒に寝れるよ?」
「…お前はそろそろ俺と寝るのはやめなさい、てか女の子はベット、俺らはソファーだ」
これは決まりだ、反論は聞かない
「ぶーぶー」
「いいからさっさとお風呂に入ってきなさい、キャロー!」
「はい、それじゃあ一緒に入りましょう、フェイトさん」
「ん、じゃあエリオも入ろうか」
「うええ?!」
止めろってば、フェイト
「ん…父さん?」
「あ?なんだ…」
「お酒?だめじゃない、あんまりご飯食べなかったのに」
「ああ、まあそのせいでお腹へってな、まあつまみはあるしね」
サラミの薄切りに塩を乗せてレモン汁をかける、そんだけだけなんだけど、これが旨い
「また…そんなの食べて」
下着にシャツだけの格好で出てくる娘、どうでもいいけど黒かよ?…いいけどさぁ
「まあ、明日は仕事だし寝なさい」
「父さんもそうでしょ?もう寝ないと…」
「そういうなよ、エリオが起きちまう」
リクライニングしたソファーで毛布を纏ったエリオをちらりと見る、熟睡してるな。ウチに来たすぐの頃は結構緊張してて物音一つで起きたもんだが
「…うん…ねえ、私もいいかな?」
「ん?少しだけだぞ?」
ちょっとまってろ、ワインあるから
フェイトはワインのような軽めで香りっていうか味わいを楽しむものが好きだったよな…たしかあったはず
「ほら、あとチーズは自分で切れよ」
「うん、父さんもそんな塩分多いのじゃなくてこっち」
「ん…」
バーボンには合わないんだけどなぁ…味薄いと…まあいいか
「…ねえ、父さん」
「ん?」
薄暗くした照明の中で、妖艶な香りを出しながらフェイトはぽつりと呟く
「今日の模擬戦…無理した?」
ちびり、とワインを傾ける
「ん…いつでも無理しないとシグナムとかに追いつけもしないよ」
レアスキルでなんとかダメージを出してるだけの俺では、どこを取っても勝てない相手だ、無理しないとそりゃねえ?
「しなくてもいいよ?今度は私がいるから」
「あーまあ、それなりに親の意地ってのがあってな」
「…あのね?また倒れられたり…う…腕とか取れたりしたときは…」
思い出したのか、酒が入っているのに青くなるフェイト、まあグロいよなあ…
ああ…そういやあれ以降心許してくれた気がするよな、フェイトって。やっぱ行動で見せないと分かってもらえないもんだよな
「…本当に、本当に心配したんだよ?なのはの時だって…」
ん、まああれはなぁ…実際失敗したなぁ…正直寝込むとは思わなかったし
「まあ、もう無理しないって…」
「嘘、しなきゃいけなさそうだから、模擬戦したんでしょ」
断定かよ…まぁ、なぁ
「…ヴィヴィオな、なのはと約束しちまったし。フェイトママも心配だろ?」
「それは…そうだけど。でも父さんが無理しなくても」
「しなくていいなら、しないさ」
でも、きっとしなきゃ駄目だろうな。陸の動きが鈍すぎる、このままだと六課が前面にでないと対応できないだろう
「…もう、無理しちゃだめだから、ね?」
「はいはい」
くしゅりと金色の頭をなでて、そのまま指通りを楽しむ。まるで蜂蜜を流したかのような、官能的でさえある感触が楽しくて、ついついやってしまう俺の癖だ
「ん…」
ゆっくりとフェイトの体が揺れてこちらに倒れてくるのを肩で止めて、ぼんやりとこの空気から幸せを感じる
エリオがなんの疑問も持たずに熟睡して、フェイトはゆっくりと睡魔に身をゆだねている
…そうだなあ
「これが、幸せっていうものなのかもなあ」
そう、なのかもしれないな。そんなどうでもいいことを考えて。俺もゆっくりと酔いに身を任せることにした
「…で、朝おきると何故に俺脱がされてるんだろ?」
下だけだけど…いや下着は無事だけど…
フェイト…微妙に怖いな!いいから起きろ!ってそろそろ朝だってば!
「おふぁよう…父さん」
ああ!股間あたりで息かけるな!朝はお父さん微妙に危ないんだから!男なんだからっ!エリオ微妙な顔しない!またキャロがぶっ飛んだ間違いするだろうが!
あとがき
フェイトにめろめろか?ぱぱん危機一髪の巻でした!!
PS いや、やっちゃってはないですよ?くるぶしあたりまでズボン脱がされてましたが
PS2 それをセーフというかどうかは別ですが…うちのフェイトは天然だから作者もわからん
PS3 さて、とりあえずフラグはほぼ回収かな?
PS4 まだあいつが残ってる!って人は感想下さい、考えてみまするよ?
PS5 心の師匠、BIN様が一日一話とかスゲェペースなのが…私もがんばるか?でももうすぐ終わるけど…w