「ねぇ…ティアナ執務官補佐」
「なんです?フェイトさん…あらたまって」
「ねえ…父さんのこと…どう思う?」
「?いい師匠だと思いますけど」
「…それだけ?」
「それだけって…この三ヶ月で3キロ減ですよ?!心から尊敬してます!」
「…ねぇ…この三ヶ月で…それだけ?いえ、父さんに会ってからでいいけど」
「そういわれましても…師匠関係では三ヶ月前からフェイトさんのお宅に泊めてもらっている事くらいですよ?それで一緒に住んでますが…フェイトさんも一緒ですし」
「…本気で?」
「はぁ…それがなにか?」
「…いい…でも…でも…」
「…?」
「…もう一度…ここ三ヶ月を振り返って見て…答えはまた今度でいいから、ね?」
「はぁ?…わかりました」
――――旦那ぁ?と補佐官の憂鬱――――ティアナルート
「なんだったんだろう…フェイトさん…」
「どうした?ティアナ」
「ええ、ここ三ヶ月を振り返ってみろって…主に師匠関係で」
「?って…ティアナが寮追い出されてここに来たくらいだろ?」
ですよねえ?って弟子が答えるが…なんだろ?
「いえまぁ、フェイトさんに誘われたとはいえ、ほいほい付いてきちゃった私もどうかとは思いますが」
まあ…寮の改築だろ?んで執務官はどうしても出張が多いから、新しく借りるのが勿体無いから来てるだけだし
「言い出したのフェイトだし、なんか問題あるんだろうか?」
そういって二人はリビングでお茶を啜る…腕を上げたな、ティアナ
「ふむ」
「ありがとうございます」
そういって俺の前の今日の試作品を食べる、自分でもいい出来だったらしくて頬がわずかに緩むのが分かった
「ん…」
しかし、お茶と違ってこちらはまだまだ甘いな。みたらし団子のキモは触感だと個人的には思うのだが、わずかに不ぞろいだ。そのせいで少しだが違いがでている
「はい」
そういってティアナはこちらに、俺の作ったみたらしを差し出して口直しを進めてくる
「やはり、な」
この十年で俺はフェイトやアルフに数限りないお菓子を作ってきた、そのせいでわずかな違いが分かるようになったが…まだそこまで弟子はいたってないか
「そうだな…」
一口食った団子をティアナに差し出す
「…むぅ」
いわずとも味に拘り過ぎて、個々の分量をないがしろにしたことに気がついてくれたようだ。この弟子は向上心が高く、自分に厳しいので教えるのが楽でいい
そして完食するとお茶を俺の湯呑を満たしてくれた
うむ、食後に熱めのお茶とは…好みが分かっているな。しかも最後の一滴を俺の湯のみに入れるとは、中々だ。最近はお茶の係りがフェイトからティアナに自然移行したが…このままでいいな
そしてそのまま二人でゆっくりと余韻を楽しむ。ミッドの風習ではないが、やはり日本のお菓子を習う以上譲れないところだろう
そしていつの間にか空になった湯呑を持って、ティアナはキッチンに消え、その背中ををぼんやりと眺めていると…
「…父さん」
「ん?帰ってたのかフェイト」
「…30分くらい前に」
「そうか、ゆっくりしすぎてたか…まあこっちに座れば?」
そういうとしぶしぶとフェイトは俺の横に座ると同時に、フェイトの前に水滴のついたグラスが差し出された
「どうぞ、フェイトさん」
「…どうも…」
なにか納得してない顔のフェイト。だが何が気に障ったのだろう?ティアナを見ると同じように首をちょっとかしげて分からない、と答えてくれた
「…」
なんなんだろう…?この雰囲気…そっと手を伸ばすと俺の分のグラス。フェイトのと色が違うことを考えるに…
「…まぁいいけど、ここお前の家なんだから、もっと気分を落ち着けなさい」
うむ、やはり昨日からの水出し紅茶か。フェイトには好物のコーヒー、何故か喉の渇きを感じた俺には飲みやすい紅茶とは…地味に筋いいなぁティアナ
そしてここは本気でお前の買った家なんだから遠慮はいらんだろ?同居をねだられた時はちょっと考えたが…まあティアナが来てくれて助かった感もあるな
そして選択の正しかったことをちらりとティアナを見ることで告げてあげる
「…」
「はい」
そう目で褒めてやるとちょっと嬉しそうに微笑んで簡潔に返事が返ってきた
「ううううう…」
「いや、俺も金だしたけど、基本お前の家なのは間違いないんだし。なんでさらに不機嫌になるかなぁ…」
ううむ…なんでなんだ…さらに二口ほど紅茶を飲み、喉の渇きが直ったらまたティアナが少し残っている俺のグラスを下げてくれた
「フェイトさん、もう一杯どうです?」
「…紅茶を、喉渇いてるから」
「ええっと…そうでしたか…すいません」
「ううん…いいの」
まあ、普通分からないよなぁ…だからティアナに『気にしなくていいよ』と、強情な弟子は顔色を変えずに後悔してるのを目で慰めると、目で『修行が足りませんね』と返してきた
「…ううう…」
「いや、本気でどうした?段々機嫌悪くなってるけど…」
「はぁ…なんでもない…」
さらにぐったりとする娘、仕事は…ティアナに聞いてるしなぁ。問題ないらしいし
なんだろう…もう一度ティアナに目で問いかけると思いつかない顔をされたが…基本的にフェイトは単純だし…あとは…まさか恋愛関係か?!
「まさかフェイト。なにか恋愛で…?」
「そ・そうなの父さん!」
…うぇぇぇぇぇえええぇぇぇ?!まさか…ティアナは『私知らないですよ?!』と首を激しく振っていたがまぁ…フェイトも年頃だし、彼氏の一人や二人は…
…許さんけど
「…けどまぁ…娘とはいえフェイトの人生だけどな…だが一度俺の前につれて来いよ?」
うん、ここで物分りのいい父とか演じとこう…
そのときの為にラストオーダーの完全メンテナンスをシャーリーに頼んどこう。うん、ティアナも一緒にメンテ出してくれるそうだ。雰囲気で分かった
「…その…私のじゃないけど」
「あん?」
あれ?…いやそうか、そうだよな、フェイトにはまだ早いか!ふはははははは
なんか気分よくなったのでおもむろに立ち上がり、ティアナから俺のエプロンを手渡してもらうとキッチンに入る
「うん、なんか気分いいし。今日はいいもん食わせてやるよ、ティアナ、あれ」
「はいはい」
そういてフェイトとティアナが出張中に買ってた酒粕と、値段のわりに程度がかなりよかった鮭を出してくれる
「で、師匠これで何を?」
「…ティアナったら分からずに出すって…しかもあの酒粕。私も知らない…」
まあ、ティアナはお前と二人で料理する以外にも俺とお菓子作ってるしな。置き方で俺がこれを大事にしてるの分かったんだろう
「わ・私も手伝うよ!」
「いいから座っとけって、お前も帰ってきたばっかりだし」
「…ティアナだって、私と二時間も帰宅変わらなかったのに…私だけ気遣い…」
「なんかいったか?」
「…ううん…書類の最後の判子は私の責任だけど…毎回後から帰るのは…」
ぶつぶついうフェイトの視線を背中に感じながら調理を始める
「ん」
「はい」
包丁を使い野菜を切る、それと同時にティアナに出汁を取ってもらう
「頼む」
「濃い目でいいですね」
くるくるとキッチンでの位置を変えて担当を目まぐるしく変わるがもう二人とも慣れたものだ、合図もなく動いても体に触れることもない
まあ、今回はティアナの知らない料理だからな、どうしても下準備しかさせれないし。そうしていると
「あ、違うぞ」
「え?あっ!」
蒟蒻を包丁で一口大に切ろうとしていたティアナが、いきなり注意されたせいで指をちょっと切ってしまっていた。この料理の蒟蒻は手で千切って沁み込み易くするのだが
「大丈夫か?」
「あ…」
指を掴んで血を吸い出してやる、もし何か傷口から入っていたら困るしな、ティアナはちょっと驚いていたがそんなの無視して水でさらに洗う
「すまないな、俺が注意したせいで…」
二人ともこれくらいのアクシデントは慣れている。お互い顔も赤らめないよ?
「いいえ、私の怪我ですし…気にしないで下さい」
「いやそうもいかんだろ、絆創膏を貼って座ってろ」
「いえ、これくらい大丈夫ですよ」
「いいから俺の言うこと聞けよ?」
「駄目です、師匠の技を盗みたいですし」
初めての料理なんですから、と譲る気配が無い
「…しかし、預かってる子なんだから怪我とかにはだな」
「いやです」
ぷう、と頬を少し膨らませて断固拒否の構え。この家に寝泊りするようになってから気がついた癖だったな
「…じゃあ、こっちで鍋見てろ。ったく…頑固な所は執務官の適正としてどうなんだよ」
「きっと必要だと思いますよ」
しょうがない、俺の方が譲歩して場所を確保してやる。『つん』とおでこを付いてから一つ苦笑い
そして材料を鍋に入れてことこと…二人で肩を寄り添って鍋を穏やかに見詰め合う
「…ぶるあぁぁぁぁぁあぁ!」
フェイトが何故か謎の奇声を上げるまでは…
「「どうした(んですか)フェイト(さん)」」
「ぶるあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
いやだから、理由を述べよ我が愛娘…ほら、ティアナも小首をかしげてこちらに目で聞いてきてるだろうが
とはいえまあ・・・無言ではあるがフェイトも俺の料理を気に入ってくれたようだし。まあいいか、と二人でもくもくと口も聞かないで鮭と野菜を食べる娘を、優しく見守りつつ食べ、ちょっと笑いあった
「…うん…もう無理かもしれない…てか無理!ごめんなのは…何日か泊めてくれない?…うん…うん…でももうなんか…熟年の息というか域なの!?」
その夜、なぜかいきなりフェイトはなのはに電話をかけ、『ちょっと泊まってくる』と理由も述べずに出て行った
どう考えても一日二日じゃない量の衣服とかと共に
「…師匠、フェイトさんはどうして?」
「しらん…しかしかなり切羽詰っていたが…ん」
「あ、みかんですね」
ふむ…予期せず二人きりになってしまったが…まあいつか帰るだろうし、フェイトもしばらくはなのはの所で羽を伸ばすのもいいか。切羽詰ってるようだったし
「…しかし、キャロ、特にエリオが顔も出さなくなったのはどうしてでしょうね?」
「思春期かなぁ?」
「そうですねぇ…あ、すいません」
そういって剥いたみかんを半分、お礼に渡す
「「なにがあったんだろう?」」
最近何故か重なるようになったティアナと呟き、もくもくと揃ってみかんを食べながら揃って首をかしげてしまった
あとがき
うん、ティアナとの関係はこんな感じ。ここからどうなるかは脳内で。
PS たばこで指怪我しましたよ…まあ軽いやけどですから冷やせば良いけど…しかし中指と薬指でたばこ挟む人って私だけなのか…?
PS2 ちょっと皆様の協力を求む!詳しくは感想に…どうしてもキャラ掴みやすい常連さんが選びやすいけど。奇特な人カマン!
PS3 あ。私の事情でカリムはIFエンド無くなりました、理由?…うんまあ、あれだ…うん、察してくれると助かる…w
PS4 いや。これ以上文章を伸ばすのは無理…本気で文才が欲しい…