「んー…久しぶりだな」
「タダシ!」
「おお、ユーノ」
「久しぶりだね、タダシ。それにしても行き成り無限書庫に来るだなんて…どうしたの?」
「いやぁ。十年来の疑問をそろそろ解消しようかと」
「?ああ…まあ調べ物ならここは最適だけどね」
「そういうことだな、んじゃあゲストアカウントの発行頼むよ」
「はいはい、それにしても直接ここで調べるなんて…いつもは僕に頼るのに」
「クロノを馬鹿に出来なくなるからな、たまには自力で調べるさ。それに個人的な疑問だしね」
「そう…あ、それ差し入れ?」
「ああ、ホールで持ってきた。アイさんあたり呼んで切ってもらおうか」
「アイ…ああわかったよ。それじゃあ伝えとくよ」
「ああそれと俺はこのまま調べ物するから、俺の分はアイさんに持ってきてもらえる?」
「…地味にアイさんに頼るよね…」
「元恋人だぞ?かまうまい」
「サーニャさんは?」
「だから俺を鬼畜と思ってないか?人妻には手をださんって」
――――父と元恋人との憂鬱――――????ルート
「ここに居られましたか」
「アイさん久しぶり」
腰まである銀髪を揺らしながらこちらに現れる元恋人、どうでもいいけど管理局の制服よりメイド服の方が似合うと思うんだが…いや、それで来られても困るけど
「ふふ…相変わらずケーキ、美味しかったですよ」
「ありがとう、そこに置いといてくれるかな?」
「私が淹れたお茶は飲めませんか?」
その手に持ったお盆には俺のケーキと湯気の立つ紅茶。本当は飲食物持込禁止だけど誰も守らない、まあ激務だしね
「そうだね、熱いうちに頂こうか」
そういって二つあるカップの一つを持ち上げて、ゆっくりと飲み干す
「…砂糖多いね」
「そうでしたか?」
「ああ…そうか、ここで働いてた時はこれで良かったんだけどね。普通は5杯も6杯も入れないんだよ」
「そう…でしたか」
そういいながら自分も口にして香りを確かめる、淹れ方は完璧なんだけどねえ…
「それより調べ物とは…転生?ですか、なにかそれが必要な事が?前は若返りなどを調べておられましたが」
そういって俺の周りを浮いている本を見てくる、俺は口の中のケーキを咀嚼してから
「闇の書だよ。今更かもしれないけどね…いや今だからか、あの時はやては10歳前後だったからね。万が一転生されてるとしたらそろそろだろ?」
その単語を聞くとアイさんは細い眉を歪めて、「もう、転生はないのでは?」そう聞いてくるけど
「どうかな?たしかに管制人格のリインフォースは消えたけど…ねぇアイさん。それって毎回のことじゃないの?前回アルカシェエルでぶっ飛ばされても消えなかったのかな?そしてそこまで強固なプログラムだとしたら…どうして闇の書本体だけは耐え切れなかったんだろうね?そしてプログラムはいうなれば波だよ、絶対に媒介となるものが必要だ。海で言えば波を伝えるのは海水だよね?」
なのに、その波を追跡出来なくてはやての元に転生?管理局はアルカンシェルを打つときにそれなりに観測機器を用意してたはずだよ、なのに…つまり木っ端微塵になっても転生できるってことだ。それって可笑しくない?いや観測しにくい方法で移動したとしても…書自体は物質だよね?どこからそれが送られてきたんだろう?木っ端微塵なのに
「…それでお調べに?」
「いや?まあ再確認かな、どうせ魂とか見えもしないものが原因って思考停止が結論だし」
魂が何かとかかいてねえし、つっか転生のシステムに天国とか謎の宗教を入れられてもね…まぁあるかもしれないけど、科学で出来ているはずのものを考えると…
「俺は、バックアップがあったと考えるよ。それがきっと一番推測しやすい、端末である闇の書は収集するたびに本体になんらかの方法でデータを送り、破壊された場合本体から端末のコピーを送る。これならいくつかの疑問が解ける」
一つ、今回収集してないデアボリックエミッションをはやてが使えること、リインも調べたらいくつか被害者の使用出来ない魔法を使えた。まぁ魔獣が持ってたとかも考えれるけど…過去の魔法を使えると考えるべきだろう、つまり数百年の蓄積があるということ。それのどこがおかしいのかというと
『なら、なぜ魔法を収集出来るのか?』ということが浮かばないか?ぶっちゃけいくら集めても古い魔法とかぶるんじゃね?それになのはやフェイトから行うとかなりページが稼げたらしい。おかしいよな?フェイトはともかくなのはは魔法初心者だぜ?やっぱり魔法自体を覚えるのじゃなく、リンカーコアを収集してるんじゃない?それなら次の疑問が浮かぶ
「そう、ですね。ならば『何故コアの収集をしていたか』目的がわかりません」
「うん、今の正式な主のはやても持っている魔法が使えるだけだよな。コア関連のことは出来ない、レアスキルの広域攻撃は…はやての物だし」
そう、『持ち主』が使えない物を集めるのはおかしい。ならば『別の持ち主』がいて、それが利用するんじゃないか?たとえば『作ったやつ』が。勿論死んでるだろうけど、その最初の目的があってそれにそって動いているんじゃないか?
「んでその疑問も考えた、きっとリンカーコアを複製かなにかして利用するつもりなんだ、と。戦闘機人とかみたいな兵器でもいいし、ただ種の保存…例えば最終戦争とか起こって生物が消え去った後でもいくらか残らせるため、とか…もしくは研究かね?俺にはそれくらいしか思いつかないけど」
そして、保存ならば人目に付かないところに本体を置くんじゃないか?研究なら研究者の手の届くところに置くよな?ならばやっぱり本体は別じゃないか?
「それともう一つ、過去にプログラムを改竄されて強制的に暴走するようになったって聞いたけどさ。主になったはやてもやっぱりプログラムを決定的に書きかえれなかったよ、まぁはやての未熟もあったろうけど…でもそこまで深いところまで書きかえれる存在って誰なんだ?馬鹿みたいに長生きじゃなかったら作った本人じゃないとおもうが…このへんはわからん。ただ出来た当初はそんな機能無かったのは間違いないらしい」
だから、だれかが。書き換えた誰かが存在するのは間違いないはずだ。でもそれなら…そんなに闇の書に明るい人が同世代にいたなら名前出てもおかしくないよな?考古学か魔法かロストロギアか分からないけどそこまでの専門家なら…後世に残っててもいいと思う。だけど無限書庫で調べても一度も出ない、まぁ資料が散逸してる可能性もあるけど
「だから、こっちは強引だけど『本体』か『作ったやつかそれに準ずるやつ』が変えたと思うんだ」
それならあの暴走は暴走じゃなくなる。毎回ぶっとばされれば新しい主がまた集めれるわけだし効率いいよね?暴走しないなら主はずっと所持してるはずだもん、666ページ書き込まれた書を
「…すこし強引ですが、大体筋は通ってますね」
そういって銀の目を妖しく光らせて見つめてくるのを軽く避けながら、俺は最後の疑問を告げる
「そして本体はどこか?それが問題だけど…俺は無限書庫、ここだと思う。木を隠すなら森って諺あるけどさ、無限に等しいとまで言われるここはぴったりだろうね」
そういやここっていつ出来たかも分ってないらしいけど、もしかしたら闇の書とかを作ったやつの資料室とかだったりして?あんだけのロストロギアを作れるんだからありえない話じゃないよな、つか他にもロストロギアを残してる可能性が高いなぁ
「…それで、ここを調べるおつもりで?」
「しないね、そんなおっかないこと。俺は闇の書の事件が起きなければ良いなと思ってるだけだよ、被害者には悪いけどこれからが良ければそれでいい。もうちょっと詳しくいえば俺の周りが平穏ならそれでね」
そういって左手を胸に、右手で見ていた本を戻す。やれやれ、面倒だけどしょうがないか
「そういや関係ないけど。俺って暗示とか魔法的な物効かないんだ」
レアスキルのコア変質のせいでね、だから
「まぁ…少なくとも俺より長く一緒に居るやつとかに一瞬忘れられるくらい存在を薄れさせる魔法とかは…効かない」
8年近く前から居たのに司書長のユーノが…その人の印象が一瞬思い出せない、とかね
「そうですね…それについては『何故か』私も知っています」
「そう、そういやあ『操作出来ないやつ』にはどうすればいいと思う?」
「近くで監視するしかないでしょう。事を荒らげたくなければ」
「そうだよなー」
あー目が冷たいなぁ…銀色で綺麗なのになぁ…
「それで、アイさんはどう思う?また転生してると思う?」
「どうでしょう?あそこまで…防御プログラムを壊されて、管制人格に拒否されれば次回も巧くいくとは思えませんし。勿論コピーがあるとしても…今度は発動する前に葬られそうですし、本体が悟られるまで捜査されるのを恐れて、暫くは大人しくしていると思います」
「そっか…そういえばアイさんって俺来た時って名前違ってたよね?」
「ええ、『何故か』それを覚えている人は少ないですが」
「ナイさんだっけ?ナイトウィンドだから」
「ええ、フルネームは『アインス・ナイトウィンド』ですよ?元恋人の名前もお忘れですか?」
「すまんすまん…アインスを名乗りだしたのはたしか…リインフォースツヴァイが出来た後だっけ、丁度」
「ええ、丁度。それくらいから親しくさせてもらいだしましたし、苗字なのはおかしいかと」
「もしかして、ナイトウィンドってウィンドゥじゃないか?夜の窓って感じ」
「そうですね、切り取られた夜を示す窓。書物に書き表せる世界も丁度その程度でしょうね」
「そう、夜天の書みたいだね」
「そうですね」
そういって俺は最後の用事を口にだす
「そういや前から興味あったはやてとツヴァイ、元気にしてるよ」
「そうですか…歩くロストロギア…失礼。はやてさんにはここで働く者としては興味が尽きませんし、現代に蘇ったユニゾンデバイスにも…それとヴォルケンリッターの方々は?」
「ん、あっちはプログラムの劣化が始まってるな。魔力の供給とか、今のとこまだ不具合は出てないけど」
「そうですか…それも当然でしょうね。ここまで長い間動くように出来てないでしょうし…ではこれを。プログラミングされた人格を保護するための指導書です、私の手書きですが」
「アイさんそんなことも出来るの?助かるけど」
「いえ、暇なときに個人的趣味で書き写しただけです。元の本もどこに行ったのか…それに少々保護できる程度なので期待なさらないで下さい」
「いや助かるよ、少なくともはやては喜ぶと思うよ」
「そう、ですか…ですがこれは厳密にですが法にひっかかる研究です、私の名前は出さないようにお願いしますね」
「わかってるよ、人格を保存出来るとかは永遠の命に抵触するからね…それじゃあまた」
「はい、また外の事を教えてくださいね」
「ああ、勿論。俺はしつこい男だからね。振られてもアイさんみたいにいい女には嫌われてもお話するよ?」
「ふふふ…大変な人に好きになられてしまいましたね」
「ははは…んじゃまたね?」
そういって俺は元の古巣を後にした。名残惜しいがまた今度ってことで
まぁ…ただの世間話…みたいなものだし、思いがけずヴィータ達の延命の可能性が貰えたのは行幸だけど…しかし…
「…しかし…俺の周りのやつって…どうしてこうも…」
女運か?女難の相なのか?一度お払いとかしてもらったほうがいいのか?…まぁいいけどさ…諦めてるけど…
そんなことを考えながらやたらと流麗な文字を読んでいく、アイさんの字はいつも機械で書いたかのように綺麗だ、しかし…
「…プログラム部分が古代ベルカ…?カリムにどうやって誤魔化して聞くかなぁ…」
はぁ…解析に厄介ごとが増えたことを考えながら、これってアイさんの意地悪なんだろうか?と脳裏であの生真面目な顔を思い出すと、珍しくちょっと舌をだしてとぼけるアイさんを思い浮かべてどうでもいい事を考えていた
「…おちゃめなアイさんもちょっと惚れるなぁ…」
本当にどうでもいいことだった
あとがき
ビックリドッキリエネミー爆誕!いやぁオリジナル解釈なのでまあ許して!つっかなんでも魔法とかロストロギアで済ませるのは思考停止だと思うんですよ
PS このあとよりを戻したかどうかは内緒
PS2 そしてアイさんが何者かも内緒
PS3 サーニャさんは出ませんけど!そこ、人妻イイとか言わない
PS4 これで暫くはお休みかな?つか前回あたりで終わってもよかったんですが…