「で、説得ミッション完遂の御褒美の休日に、なんでこんなに元職場の知り合いが回りにいるのか…」
「しっかし日本中の電力を!とか…なんか燃えるな!」
「聞けよ、騎士様よ」
まぁ、昔見たアニメが劇場版になるというので久しぶりに映画館に来たわけだが…映画館がアメリカナイズされててビビッた…いやそれはいいけど。
「騎士としては期待とかやっぱあったほうが燃えるか。俺なんか謹んでご辞退させてもらうが」
両手にパンフとキャラメルのかかったポップコーン(最近は塩だけじゃないんだなぁ)。という実に堪能された感じの騎士様と、執拗に、執拗に腕を絡めて胸部装甲を当ててくる娘と歩いているわけですが
「でも実際にあったら、なのは一人でも出来そうな気がするけどね」
だから挟むなフェイト、もはやおまえ真横に歩いてるぞ
「フェイト、それをいっちゃお仕舞いだ。てか魔法であのフェイールドを超えれるのか?」
「なのはなら…なのはならやってくれるよ!」
キャーナノハサーン!
うわ、勇気と根性でやれそうだ…というかあの砲撃食らった身としては確定で出来るといいきれる…気がする
「…それより敵のほうがなのはに見えちまったんだけどよー…」
魔砲少女ラミエルなのは、始まります!なの!!
…初号機勝てるのかなぁ…
「…色々怖いな、色々」
「とりあえず父さん、そろそろ少女はどうなのかなぁ…」
「というか、ぜーいんなのはが使徒でも違和感かんじてねーのな…」
うん、というかこのメンツでいうと全員模擬戦でSLBくらってるしな…あれは死ねる。蒸発するんじゃねーかと思ったぜ?気がついた時、目の前にアリシアお姉ちゃんが居ないのが不思議でしょうがなかったよ?と言う両脇からの感想を聞きながら帰ったわけですが
「あれ?連絡入ってる?はやて…じゃない、チンクか」
「父さん何時の間にアドレス教えたの?」
「成功報酬でドーマンセーマン歌わせた時。ナンバーズ全員で」
ナイス琴姫だったぞ、チンク
「?」
「いやまぁとりあえずここでは見れんな…車にいこう」
「あー空間ディスプレイはマズいよな」
地球ではなぁ…そういえばこの前思わず魔法つかっちまってヤバかったな…
いやまぁ地球で久々の飲み会。知り合いの結婚式だったのだが、朝まで痛飲というのは久々だったのでちょっとハメを外しすぎた気がする帰り道
「お…おい、大丈夫か?」
「いや大丈夫だ」
「ちょ、救急車呼ぼうぜ!思いっきり頭からいったろ!?」
まぁ、酔っ払ってる友人にちょっと押されて橋から落ちて、俺が頭を打っただけなのだが(6m位落下したけど)
「いや本当に大丈夫だって」
「そういう問題じゃない距離おちたろうが!酔いが一発で醒めたわ!いいから医者だ!」
…思わず地球とはいえ一瞬バリアジャケット使った俺は悪くない…と思うんだが、どうか?いや見られては無かったけど
「大丈夫だって、ほら俺ってG属性の人だから、な?」
「Gってなんだよ?!」
「ジャイアント・○ボ属性」
「そこはギャグ属性だろう?!」
「その属性はむしろ地味に死にやすくなってるー?!」
どう考えても少年が勝てる要素ないよな、あのアニメ…敵に孔明とか。どうでもいいけど
そのまま誤魔化し続けた地球での一幕でした
…凄く苦労したけどね…
「複数の文化に触れてるからなぁ…出来るだけミッドでも地球の風習は出したくないし」
「そーいいつつ年齢とかにうるせーじゃねーか」
「若いやつらを守るのが大人だろ?これはどの世界に行っても常識だと思ってるからな」
「…たまーにかっこいい事言うよな」
「父さんは何時もかっこいいよ?」
やれやれ、我が娘の目にはどんなフィルターがかかってるんだか?とりあえず自分の軽四に乗り込んでこっそりとデバイスからメールの内容を確認する
「はいはい…で、なんだろ…緊急じゃない感じだけど…お。証言を引き出せたらしいな、これはお礼の文か」
どうもあのあとチンクと回ったウーノも証言をしてくれるようになったらしい、とある。やっぱりメガネとトーレ、セッテは無理か…あいつ等はもうスカリエッティに盲従じゃないしな、ある意味『自分だけの理由』が出来てきたのかもしれんが…厄介かもしれないなぁ
「ふむ…ウーノには司法取引の可能性もあり…か。まぁスカリエッティが許可すればどうでもいいんだろうなぁ、そんな感じだったし」
一番自己が薄い感じだったもんな、戦闘や姉妹との接触も少なかったようだし、そういうのが成型されにくかったか?もしくはオットーに近い作られ方をしてる…のか?精神的に
「まぁとりあえず証言はある程度引き出せたし、お役御免でいいだろ。残りはしらん」
「父さん切り捨てるの早いね…もうちょっとその…残りの人もなんとかならない?」
スバルも心配してたし、私もその…ちょっと人事じゃないし、と言われてもなぁ
「まぁ人工的に…という部分ではヴィータも同じ考えかもしれんが、逆に同情するのも失礼だろう?なぁヴィータ」
「あ?当たり前だ、そりゃ生まれが悪かったってのはあるけどよー…それでもあいつ等がやったんだから、それなりに罪は償わなきゃいけねーし、自分で決めたんなら好きにするのが当然だろ?その責任までは他人がやるこっちゃねーよ」
「まぁ、フェイトのもヴィータのもある意味同じだけどな、エゴと言う意味では…ようは『自分が納得する』かどうかなんだけど。とりあえずあいつらは馬鹿じゃないんだし、不都合とかもまぁ許容出来るんだろうよ。わからんけど」
牢の中とか俺嫌だけど、そっちのほうがいいんだろうな…というかまぁ各自の理由もふるってるからなぁ…つっか更生プログラム食らったお前がいうと重みがあると言うか、無いというか…いいけど
ちなみにその理由は、トーレとセッテは『敗者の矜持がある』…お前ら生まれる時代と場所間違えてるだろ…暴れん坊将軍のDVD送ると喜ぶかもしれんな
メガネ…クァットロは『どうして貴方たちに便宜をはかる必要があるんです?』と真顔で言われた…なんというか、ここまでくると凄いとしか言えないよな…似たようなスカリエッティは『自分の欲を満たせそうだから』と言う理由で釣れたが、アイツにはそういうのもないしな…というかアイツの今したいことってなんだろ?謎だ…
「まぁとりあえずこれで終わりかな?後日はない…だろう」
なにせ二名からの証言だし、信憑性は高い。捜査的には十分だろうしな、コレ以降はもう心情的な話になるから、はやてとかも手を引くだろうし…やっぱコレで終了というところだろう
「まぁ今日は仕事の話はなしでいこーぜ?久しぶりに集まれたんだしよ」
「そうだね、お父さんも資料課で忙しいし」
「週一で休みがあるし、普通なんだけど。つっかお前らが不規則すぎ」
「しょーがねーだろ?どっちも海で、特にフェイトは執務官だしな」
むすっとした顔でばりばりポップコーンを食いながらヴィータはぼやくが…キーを回し、ココッとギアを入れ駐車場から車をゆっくり発進させる。軽には珍しいチェンジだけど、ディーラーに無理いって取り寄せてもらった一品だ。
というか、この車種でミッションは初とか言われたよ…いいけど…
「んじゃこの後どうするよ?家でごろごろするか?」
「あーそーだな、G級手伝ってくれねーか?フェイトでもいーけどよ」
「いいよ?でも久しぶりだから腕鈍ってるかも」
「なのはがいりゃー楽勝なんだけどなー…最近山本がしねーし」
「つっか俺弱いし、片手剣は火力ないしなぁ…他も使えるけどやっぱ弱いし」
ぐりぐりと頭を押さえてくるヴィータをどこ吹く風と無視しつつ、車を軽やかに走らせつつ
「あれ?もう一通メール来てるな」
「あ、本当だ。運転中だし私見ておこうか?」
「頼む、外から見えないようにな?」
乗る前のジャンケンで勝ったフェイトが腰をかがめながら、メールを確認するというかその格好だとうなじとか、腕につぶされる胸とかがエロイなぁ、我が娘ながら良い成長をしている…などと横目でみつつ
「あ、シャーリーからだ。過去の父さんの戦闘記録を見せてもいいかって」
「んー?知り合いにならいいけど。つっか知り合いは殆ど見てるだろうけどなぁ」
知り合いだよ?というフェイトの言葉を聴きながらどの戦闘記録か思い出すが…まぁ数えれるくらいだし。なんせ俺はまともな戦闘記録がないからな!げはは!…うんもうちょっと真面目にするようにするわ…
「んーんじゃフェイトとヴィータは家にいるんなら、ウチこれれば俺説明しようか?どの戦闘記録かしらないけど」
「あ!それはいいかも。というか父さんの戦いって説明ないとちょっと…」
「すんごく独特だからなー…山本の」
うん、人と同じ普通の思考で動くと普通に負けるからね!
…と言うか周りが高レベル過ぎるって誰か気がついて!そろそろ!…つっかゲンヤさんとこでも間違いなくランク上か複数とか…ありえない!
「あーでもいいのかなぁ。呼んでも。あ、大丈夫っぽい」
「ん?呼ぶの誰?」
「父さんお気に入りのチンクさん」
…別に知らないうちにアドレス教えたくらいで、地味に毒をこめなくてもいいと思うのだが…
「おいおい、守護騎士ってのはこの程度でなれるのか?あーやっぱその胸でなったのかよ?雌牛。主には大層気に入ってもらえたようだな?」
「違う!私は騎士として存在している!そのような雑言を主に向けるなッ!」
ぐるりと砂だけが広がる知らない惑星。その上で俺は目の前の『敵』とへらへらと会話を続ける
「何言ってやがる、お前にいってんだよ、まぁ俺は頼まれてもお前らみたいな化け物となんかやりたくねぇがな!守護騎士プログラム?寄生虫ってルビ振れよこの無能」
「貴様…!その口を閉じろッ!」
円を描くように二本のデバイス、ファーストをかざし僅かにシグナムの太刀を逸らす。そう、僅かに
「あ?馬鹿か?敵になに命令してんの?あーそっか、命令出来る雑魚しか相手してないからか。そりゃあ『ベルカの騎士』は負けないとかどーとかぬかせるわけだ」
実際は『一対一なら』と付くらしいがね、どっちにせよ俺には妄言にしか聞こえないが
「…っ!騎士を愚弄するか!」
「殺し合いに騎士も聖者もあるかよ。ばーか」
恐ろしい程の勢いで真っ直ぐ打ち込まれるシグナムの太刀。その速度は明らかにフェイトと戦っていた時より速い。だが
…その分どこに来るか、馬鹿でも分かるぜ?
確かに早い。だが狙いはシグナムの目が声高に叫び、打ち込まれる瞬間は、数瞬前から肩の強張りがべらべら喋る。はっきり言ってこんなのケンカやったことあれば誰でも防げるぜ?まぁ
「どうした騎士様?こんな砂漠は苦手かい?ああ、お座敷以外は無理ですかー?」
「ッ!黙れと言っているだろうがッ!」
あの形相に恐怖せず、この威力を受け流せるだけの肝があれば、だけど
チッ
「惜しい惜しい、俺の首はここだけど、まぁ毛くらいは騎士様でも切れるんだ?床屋が似合うかもな?くっくっく…」
額の先ぎりぎり、それを表にまったく出さずに更に火に油を注ぐ。ここまで頭にくればシグナムの仲間が来ても撤退しないんじゃね?まぁそれも狙いだが。とはいえ…
「うぉぉぉぉぉっ!」
そして『毛が切られた』。これはついに目の前の騎士も『殺傷指定』に、つまり俺と同じ土俵に上がったことを示している
「おいおい、牛じゃねぇんなら唸ってないで当ててくださいねー?おー惜しい、でも意味無し」
ついにバリアジャケットも切り裂かれ、胸に一筋の赤い傷が現れる。だがこんなのかみそりでも出来る程度の傷だ、こんなものでシグナムの怒りが収まるわけもない
ガシュン!
またもやベルカ式独特のカードリッジリロード。常時全力で振り回していたせいで落ちてきていたプレッシャー、つまり魔力が甦るのが分かる。だがそれは諸刃の剣だと分かっているか?繰り返し使うたびに次のリロードまでの時間が減っていることを、そして残弾をその茹った頭で覚えているか?
プログラムの存在だからといって、いやプログラムだからこそ、確実に短時間で過剰な魔力のブーストは負荷がかかるのは当然だ。なぜなら、負荷がかからないなら、『常時その魔力に設定していればいい』のだから。それが出来ないから、一時的に増やしているんだろう?
ここまでは俺の計算通り。だが仕上げをするにはまだ相手に余力がありすぎる、出来るならもっと時間をかけるか、負荷が大きければいいのだが…そろそろ俺の体力が厳しい、想定していたよりこっちの消耗が激しいようだ。そりゃあ馬鹿にしながらというのは思うより消耗が激しかったが…まぁこんなあからさまな格上となんだから当然とはいえるが
…だが、次にまわすという選択肢は無い
これがはったおされた新顔の娘、今さっき倒されたフェイトの敵討ちというのもある、だがそれでも怒りで沸騰しそうな氷の頭がそれだけじゃない、と呟く
まず、シグナムがフェイトからの連戦で疲労があること、そしてクロノのお陰であの予想外の戦力、仮面の男から引き離せたこと、そしてここが見渡しやすい砂漠であること
以外かもしれないが、接近戦では障害物というのは防御側にも不利に働くことが多い。そりゃあ当然だ。特に今、俺は剣、相手は太刀と微妙に違っても似た武器なのだから、相手が邪魔ならこっちも邪魔だ。しかも木の根っことかは下がってる時に引っかかるかもしれないわけで、押されていて下がる場合も多い防御側がきついのは当然だしな
「は、偉大なるベルカの騎士様の腕前はこの程度、ね。そりゃあ滅びるわな」
「騎士の、誇りを…愚弄するなぁぁぁぁぁ!」
まぁ、俺は防御オンリーで、しかもシグナムは頭に血が上ってて連戦で、それでも俺は相手に一太刀も与えてないのにこっちはかすり傷とはいえ受けている。実際の腕の差はこんなに大きいわけですがね
しかし、そろそろ本気で限界だ、これで俺が息を切らせたらそれで冷静になられるかもしれない。喋りながらそれでも息を整えるってのはかなり厳しい、しかもこっちは模擬戦じゃない初めての魔法での殺し合い。これが限度か…
そう最終判断をつけ、ベストよりベターよりワーストに近い作戦に切り替える。しかしこの腕の差は思っていた以上だな、よくフェイトもあんだけもったものだよ、いやほんと
「誇り誇りうるせぇなぁ…馬鹿じゃねえの?なぁ騎士様、一つ聞くんだけどさ」
そろそろ受けすぎて危うい点滅をしだしたデバイスを放り投げ、同じ規格、同じ形状のファーストを腰から抜き、二刀を維持しつつ最後の策に出る
渾身の、首を狙った一撃をまさに首の皮一枚で避けると同時に
「殺人者の従者を持つ主って、どうよ?」
その言葉が口から出るのに前後して、返すシグナムの太刀に左手を差し出す。そう、白刃に、だ
それなりに剣を振るえば分かるけど、振りかぶる時、返す時、いくらか力は抜ける。いくら怒りが全身を染め上げていてもそれを忘れるようなシグナムではない、そして『当たらないはず』の攻撃が当たった衝撃。
普通に手を振りかざせばなんの感情も湧かず手ごと真っ二つだろう、だが『返し』の途中にあたるなど、そして左手を『切り落とせる』など…想定外にも程があるだろう。そして止めの『主』の一言、今まで騎士。つまり自分のことしか考えていなかったシグナムの頭により大きな存在が復権する。どうしてもプログラムである以上、主第一であるのは間違いないと聞いているそこを突いた一言
思わぬ行動と結果、吹き出る血、手に残る肉の感触、主。
それらが一瞬、戦士たるシグナムの思考を一瞬だけ白く染める
これだけの好条件で左腕を犠牲にして、それでも一瞬だけの隙間。それだけの完成度を誇る戦士なのだ、この目の前の女性。シグナムという存在は
…そして、振り下ろされる、唯一残った俺の右からの一撃。値千金のこの一瞬を逃さずに打ち出された、俺の唯一の攻撃は
「カハッ!」
「ぐっ…浅い…ッ!」
残った二本のストレージデバイスが、揃ってバイタルチェックから治癒の必要性を訴えるが無視。そんな暇は後だ、後。馬鹿か、今しかこいつを殺すチャンスはないんだぞ!
確かに殺すには浅かった。だがそれでも人間ならショックで死んでもおかしくない一撃だった、それが証拠にあの烈火の如くせめて来ていたシグナムは今、俺の足元で恨めしげに見つめながら小鹿のように立とうと震えている
どくどくと流れる両者の血。だがそれは乾いた沙漠に吸い込まれ、どこか違和感を感じるほどに大地に吸い込まれていく
「…死ね」
今まで侮辱し、蔑み、思いつく限りを吐いてきた口は最後の最後でそんな簡単な一言しか出なかった
だがそういうものかもしれない。人を殺すというのとは少し違うかもしれないが、それなりに命を懸けた戦いの終局を飾るには、何もかも足りない一言しか出なかった
「シグナムッ!」
それでも状況が変われば、そのまま雑言がでるがね
「はっ、やっぱりもう一人いたか…騎士様らしい戦いですなぁ」
「貴様……!」
「シグナム!いったん引くわよ!クラールヴィント!」
とどめを重力というアトラス神の助力で加速された再びの一撃は、どこかで『居るだろう』と思っていたもう一人によって防がれた
つまり、シグナムの後ろに現れた緑の輪の中に、シグナムは吸い込まれ、俺の一撃はからぶった、というわけなのだが…
賭けには負けたか…正直あの瞬間に殺せなかっただけで、仲間がいる可能性の中では唯一に近いチャンスだったんだがな…やっぱり左手の激痛のせいで力が入りきらなかった、か…てか
「…そろそろ仲間が来てもおかしくはないと思ってはいたが…切られるまで見ていたか…思ったより冷静なやつがいるようだな」
あの罵詈雑言を当然聞いていたはずだ。それでも参戦してこなかった、それは戦闘向けじゃないのか、それとも参謀的な性格なのか、もしくは両方なのか…
ぐるりと回りを見渡す、だがそこには俺とシグナムの血と激闘の跡しかない
「…多分、両方だな。かなりの遠隔地からやってやがる…」
多分、サポート向けの能力と性格なんだろうな。激しく動き回っていた俺達に干渉するのをさけたんだろう
「…ったく…一人ぶった切るのに左腕一本かよ…割りにあわねぇ…あぁ…血ぃたりねぇ」
脳裏に浮かぶのはフェイトとの約束
『待ってろ、父さんが仇は取る。絶対にだ』
…嘘吐きになっちまったな…こりゃ帰ったらアースラで正座して謝るしかないか?
慣れてきたマルチタクスで警戒しながら、砂だらけの左手を右手で拾う
「…繋がるかな?これは」
くらりとした眩暈に従ってどすん、と自然に尻餅をつく。ああ、こりゃだめだ、本気で限界。目が霞む…
それでも閉じそうな目に必死に抵抗しながら、打ち合わせ通りにクロノへ通信を送る
『すまん、逃がした』
ただ、それだけを
「父さん!!」
「うぉ?!…おやフェイト、いつのまにヴィヴィオ並みの成長を…?レリックは胸に二つ?」
「何言ってるの?父さんほら、寝ぼけてないで」
「ん、あぁ…寝てたのか…」
気が付くと砂漠ではなく、自宅のソファー。目の前には殺意を叩きつけたシグナムではなく、現実のフェイトがいた。
…おお、あれがこう成長するのか…すげぇな!胸とか色々と!…いや全体的に凄いけど
「どうしたの?汗かいてるよ…?」
「ああ、どうも昔のやんちゃを思い出して冷や汗をな」
「さっきまでチンクさんに過去の戦闘説明してたから?」
「だろうなぁ…ふぁ…よく寝たっと。お、そろそろ夕飯作るか」
外を見ると薄暗い、そういえば晩御飯はなんだっけか、などととぼけたことを言うとフェイトは困ったような顔をして私が作るからこのまま寝てて、とソファーに再び寝かされる。そしてフェイトはぱたぱたとキッチンに向かって行った。ついでに聞こえるテレビの音からヴィータはリビングか、とあたりを付ける。いやまぁ死神が出るアニメとかアイツか俺くらいしか見ないしな
「しかしなんでフェイトは俺を…うお!顔色悪いな」
ガラステーブルの上の手鏡を覗き込んで自分でびっくり。あぁ…夢見が悪かったからか。そりゃ人生最大級の怪我だったしな、血の気が引くのもしょうがないか…
「フェイトには心配かけてるからなぁ…」
なのはの治療の後も、しばらくは寝たり起きたりだったし、そのあと無限書庫でも結構無理してたし…いや本当に悪い父親だな…などとちょっと感傷に浸るというか、ブルー入ってたら
「おい山本!」
「ん?G級終ったか?」
「…お前…」
ヴィータが入ってくるなり、難しい顔でこちらを見るが
「いや、夢見が悪かっただけだよ。すぐ直るし」
「…本当か?お前すぐに誤魔化しやがるからな…」
「信用ないね、どした?俺の寝顔でも見に来たか?」
「違う、フェイトが見て来いってさ」
あー、大丈夫だろうとは思っても誰か側に置いておきたかったのか。マジ親離れできてないなぁ…フェイト
「なんでもないって、よし。アニメ見に行こうぜ?久々に俺も見たいし」
そういって立ち上がり、がしがしとヴィータの頭を撫でると凄い勢いでその手を払われた
ガッデム、俺にはナデポの才能はやはりないようだ…残念!
「乱れるだろーが!この頭をいじくっていーのははやてだけだ!」
「悪い悪い、んじゃまリビングにいこうぜ?飯ももうすぐだろ?…あぁそういやアニメどうなってる?」
「刀がヒトガタになる不具合が」
「どこの二次小説か」
この世界でいうなら、いまにレイハさんが歩き出しそうな展開にちょっと驚く、そんなよくある日常だった
あとがき
うん、らっちさんが読んでみたい!とおっしゃられたのでちょっとだけ過去を入れてみた。いやマジで構想がねぇ…おもいつかぬ。他の作品ならまだね、終った作品の終った後とか厳しいなぁ。大体のことは原作部で書いてるしなぁ…難しい。
PS さて、とりあえずここで二回目の完結と相成りましたが!まぁこれ以上書くのは野暮かと思いますしこっちはこれで終了かな?これ以上はもっと大人の領域、つまり政治とかそのへんくらいしかかけませんし、そうなると明るくしようと思っても多少黒くなるから多分裏になるだろうしなぁ。まぁこの先はご想像に任せます
PS2 こっちは別にハーレムというよりその前段階。キャラによっては自覚がイマイチなヤツまでいますから、これからどうなるかは不明です。特になのはあたりは普通に忘れ去る可能性も…フェイトに気兼ねもするしね!そしてフェイトも父親に似た人とかみっけて幸せになるかもしれません。というか年齢離れすぎで、しかも十代とかだから移り気でしょうしね!つっか原作男性陣もっとがんばれよ…!w
PS3 まぁどっちにせよこっちは恋愛要素は皆様が思っているより薄め(外伝除く)と思っていただければ正解かと。ぶっちゃけあんまり原作キャラとオリキャラが結ばれるのって…個人的には違和感があったり…書いたけど!裏とか凄いことになってるけど!w嫌いじゃないんですが違和感が、とういう感じがどうしてもね。まぁ必要ならかかねばならないので、よい練習になりましたが!本当に皆さんのお陰です…いやまじ本当に
PS4 次あるとしたらなに書くかなぁ…りりかるなのはを選んだのは面白いのと、突っ込み要素が多いのと皆さんの目に止まりやすいジャンルだった、というのがあるのですが(どういう風に書けばいいか助言が欲しかったんですよ)まぁ読みきり的なネタでいくか、気に入った作品をつらつら書くかぐらいですねぇ。とはいえどうしても原作再構成とか私ではムリですし、どっちにせよオリキャラは入るんでしょうが!(どこかに何かの要素を入れてそこからドミノ倒しに原作改造、というのは先まで読む技量と、あまり突っ込めないということで難しい)そして最強系は…書いてみたんですよ、他の作品で、そしたら何故かギャグキャラになる不具合が!!…誰かいい脳外科の紹介を…orz そして短編のネタも書いてみるとこれまたギャグに…orz 意図せずこれは死ねる。というか私はギャグ系作家なんだろうなぁ…替え歌とか好きだし。一撃必殺 二千回抹殺 チ・ャ・ー・ジ・す・る~♪とか色々自作するのも好きですし
PS5 でもまぁ、なのはの魔導師というのは使いやすい設定ですね。細かい設定がない分想像が膨らみますし、結構ムリなキャラもだせるし、もしかしたら御大もそういう自由度を求めてあえて詳しくしてないのかも?まぁどちらにせよ二次作家としては嬉しいですね、逆に大好きなfateはもう…方程式を解く如く綿密でないといけませんからムリはさせれないんですよねー…一度トライして、キャラの強さ設定でムリと悟りましたw
PS6 とりあえず、現段階では終了です、今まで見てくださった方々、感想を下さった読者の方々、特に添削、意見を出して下さった人に感謝させて貰います。
ありがとうございました!