「で、エリオは射線をかわすように逃げる、ただしキャロの位置がこっちだった場合は・・・っとありゃ、そろそろ時間か?フェイト」
「うん、外回りは取り合えずすんだから、そろそろ食事だしいいかな、って」
「うし、エリオ、キャロ、とりあえず午前中に教えたことを思い出しつつ、昼からはフェイト執務官と実地と確認を含めて簡単な模擬戦だ、フェイト、そんときにバルディッシュに映像記録頼む、仮想敵からの視点での映像が欲しいから」
「あれ?タダシさんは参加しないんですか?」
「ああ、これからシャマルんとこで検査がな、昔の事故で神経質なんだよ、あいつ」
「そうですか・・・」
「ていうか、俺の戦いはあんまりいいもんじゃないからな、ちゃんと正規のものを覚えればいいさ、まあ・・・こんな戦い方をされるかも、って意味ではいいかもな」
「父さん、本気で容赦ないからね・・・」
「ああ、勝てるときは基本的になにやっても勝つ!てのが基本だもんな・・・ていうかキャロ、大丈夫か?」
「大丈夫です・・・ちょっと座ってたら筋肉がつり出してるだけです・・・」
「まあ・・・朝から訓練場をひたすら走らせたからな、全速力で・・・コンパスが違うしきついわな」
「大丈夫です・・・エリオ君は私が守ります!」
「・・・これはどう突っ込めばいいのか・・・おいフェイト、いいから婚姻届はしまいなさい、気が早い、ってか俺の名前書くなよ!」
----父と医者の憂鬱----
「ああだりぃ・・・もうおきていいか?シャマル」
「はい、いいですよ、この採血でおしまいです、あとはセンターで機器を使って調べるだけです」
「すまんな、本当なら送って終わりでいいのに、手間をかける」
「いいですよ・・・あの時何も出来なかったんですから」
ふ、と顔を曇らせるが、それは間違いのはずだ。
「いや、あれはそのままでもきっと直ったと思うよ、それに結局なのはの体に傷が残らなかったのはシャマルのおかげだし」
「でも・・・あなたがリンカーコアを、自らのリンカーコアを使用して治療したせいでもあります、コアが治れば治癒力にも影響がでますし・・・」
そう、俺のレアスキルは魔力、じゃなく正確には『リンカーコアに直接干渉できる』ものらしい、どうも魔力の変質はそれの副産物だろうと予想されているが、なにせコアの研究がすすんでないので正直どうなのか詳しくは判らないのだ。
・・・とゆうか、それが判ったのはなのはの事故のあとなんだ、もうレアスキルは変質で登録してたし・・・いやね?魔力に直接触れるのが俺的には普通だからさ。リンカーコア触れるのも普通だと思ってたのよ、目の前のシャマルはコア抉り出すし。
「まあ、それはいいんだけどさ、この後遺症、どうなんだ?」
「一応、薬の効果もあって、『若返り』はほぼ終わっています、でも原因が解明されてない現象ですし・・・」
「ああ・・・正直『出来そうだな?』って思ってぶっつけ本番でやったからなあ・・・何度も言うけど、シンクロ?させる感じで無理やり俺のを活性化させてみたんだけど・・・」
「もう一度やらせるわけにもいきませんし・・・とりあえず現状維持で、それと」
「判ってる、二度とやらんよ、副作用がでかすぎる『若返り』とか勘弁してくれ」
あのなのはの事故で、俺はせめてコアだけでも、と思い独自に治療をしてみたのだ、結果はまあ、成功、なのはのコアは落ち着きを取り戻したのだが、俺のほうは思わぬ事態になってしまった。
「ええ、若返るのも問題ではありますが・・・細胞に負担を恐ろしく掛けています、テロメアにも・・・」
「ああ、判ってる、寿命減少や癌になりやすい、だろ?無限書庫とかでも調べたけど、その辺りはしょうがないさ、むしろこの程度に抑えれたことが奇跡だな」
だからこその退院後の無限書庫勤務、このことを知っているのはシャマルと本人の俺だけ、シャマルが勤務するわけにも行かないので無理をいって入ったのだ。
てか、寿命とかぶっちゃけあんま気にしてないし・・・まぁ、お金持ちとかかなり余裕ある生活でもしてないと気にしないよなあ・・・60とかになって考え直すかもだが・・・
このまえ22の一般事務局員と話してたら『俺、40くらいで死んでいいッス』とかそれは流石に早くね?的なこといってたし。
「はぁ・・・あのときは本当に困りましたよ、出来るだけ規則正しい生活を、といっているのに睡眠不足で栄養はブロックフード、糖分ばかり補給してて・・・」
「いやまあ、仕事はちゃんとそれなりにこなさないとさぁ・・・あそこ2徹3徹が普通だぞ?それを横目に『定時ッス』とかいえないしさぁ・・・」
「まあ・・・隠す気持ちはわかりますが・・・管理局からも隠せ、と言われた時はどうしようかと・・・」
はぁ、とコーヒーメーカーのスイッチを入れると香ばしいかおりが漂ってくる。
「まあ若返り、だからね・・・管理局がどうとかっていうんじゃなく、組織が信用できないんだよね」
私たちやアルフにはちょっと判りにくい所ですね、といいながら慣れた手つきでコーヒーを俺の分まで入れてくれた。
「お、うまいなコレ、どこの?」
話しを変えるのにちょうどいいかな?と思ってたコーヒーが思いがけずに美味い、シャマルの味覚からするとこのレベルはおかしい・・・最近はまだマシになってるそうだが、間違いなくこれはもらい物だろう、前に飲んだのはモカがやたらきつくって酸っぱくてひどかった・・・どんなブレンドだったんだよ・・・
「ええ、12管理世界のカリムさんのところにいったときのはやてちゃんからのお土産です、もっともカリム自身は紅茶党らしいのですが」
へえ・・・お偉いさんだよな?カリムって人・・・カリムカリム・・・
「?どうしました?俯いて」
・・・カリム・グラシア少将じゃねえか・・・・!黒だよ!真っ黒だよ!多分その辺関連だよ!向こうに行ってお土産もらうような仲で、このコーヒーの残量からして貰ったのは最近だろう?このくそ忙しいときにはやてが12管理世界までわざわざいって?カリム少将が本局までくるのまてばいいのに?いくらなんでも時期が合いすぎてる・・・てか、紅茶党がコーヒー送るってことはよっぽどはやてが嫌いか、余り物送っても気分が害されないくらい親しい友人!そして彼女は・・・
機動六課最大の後見人・・・!
可笑しいんだよ・・・聖堂関係のロストギアねらいで六課設立するなら信仰がっちがちの、少なくとも管理局で少将なんかなってる場合じゃない奴が後見人になるのが流れだ、そして確か、彼女のレアスキルは・・・フロフェーティン・シュリフテン・・・予言だ!
「・・最悪・・・ああくそ、推測が当たっててもどうしようもできねえ・・・」
流石に予言の細かい内容やどう解釈して六課設立したかまでは機密だ、これ以上ははやてが話すのを待つか・・・ほかの推測をしてみるかだな・・・まあ、いいか、はやてのことだ、悪いようにはしないだろ・・・どっちにせよここまで、だな。
「?たしかにこのコーヒーはいまいちですが・・・もっと個性があっていいと思いますよね?はやてちゃんたらそれ聞いてすごくいやな顔するんですよ?」
「あー・・・いや俺も今度からコレ余ってたら淹れてくれ」
「ひどっ!私の味覚がおかしいとでも?!」
「そろそろ理解しないとザフィーラあたりがまた泣くぞ?」
シャマル料理での残飯整理とかにたまに呼びだされるらしいのだ、前に「かくまってくれ!」とウチのミッドの家にまできたザフィーラに泣きつかれたときはどうしようかと・・・理由きいてさらにどうしようかと。
「うう・・・最近は食堂で済ませるんで料理してないですけど・・・」
うん、それが正解だ、一生それでいてくれ頼む、とは喉までで止めれる俺って大人だな・・・
「あーあー、今度料理教えるから、簡単な奴、そゆことで帰りますよ?」
「あ、料理は嬉しいですけど、ほんとに教えてくださいね!はいいんですがわかってますよね?」
「ん?」
「・・・次は無い、と思ってください、現状で推測ですが身体年齢20歳前後、実際には35歳なのにです、乱暴にいえば15年若返ってる、ともいえます、年々徐々にしか変化してませんが・・・もし14歳から12歳以下まで戻るようなことがあれば・・・」
「エリオに身長で負けるか?」
「真面目に聞いてください、骨格は変わりません、逆に伸びるかもしれませんし、それもバランス的にはまずいですが・・・そこまで戻ると、脳に異常をきたすかもしれません」
「・・・そうか、脳が発達とかだっけ、か・・・」
「ええ、前例がないのでどうともいえませんが、その可能性は、あります・・・」
はぁ・・・まあ、もう二度とやる気はないけどさ・・・いやもうなのは治療してから死ぬほど胸がいたかったもんな・・・特になのはやフェイトの前で顔にだせねえし・・・
「あんなこと頼まれても二度とごめんだね、知らないだろうけど、死ぬほどいたいんだぜ?」
「頼まれないからするくせに・・・」
「なんかいった?」
「いえ、馬鹿につける薬はない、といっただけです」
「ああ、そんな新薬でたらまずはやてだもんな」
「ははははは・・・抉りますよ?」
「やめて!まじでデバイス起動しないで!?」
がたん!と音を立ててから医務室からでると、一息いれつつ一分程そこに佇む、いつものことだ、そしてゆっくりと歩き出す。
「ったく・・・いつまでなのはの主医師のつもりなんだか、今じゃ六課の、だろうが・・・知られてない・・・ってわけでもないんだろうけど、な」
多分、俺が知ってることを知っているだろう、彼女は騎士達を知略で支える参謀なのだから。
・・・そう、俺は知っている。
俺が出た後、俺の出た扉に向かって日本式に一分近く頭を下げていることを、あの時の医者としての自分の無力を救ってくれたと思って。
「・・・ったく・・・35のおっさんにそんなにひょいひょい弱み見せるなってんだ・・・ホテルにでも誘うぞコラ」
などとぼやきつつもふといいことを考え付いた。
ホテル目指すにしてもなんにしても、とりあえず今度飲みにでも誘うとしよう・・・あの味覚が笑える世界最高の六課の医師を、だ。