「あー…、んじゃあ恒例になりつつあるお昼からの模擬戦いきまーすぅ」
「父さん…あからさまにやる気ないね…」
「ねえよ!なんで昼から外のはずの副隊長がいるんだよ!ああもうただでさえエリオとキャロのコンビの仮想敵ってだけで疲れる予定なのに…くそう、彼奴め、はやくもアップ始めてやがる…ッ!」
「なんでもね?シグナムがはやてちゃんに今日の訓練計画伝えたらザフィーラと交代したらしいの」
「ぐあぁぁ…あの子狸…帰ってきたら泣かす…!いないと思ったから模擬戦に俺も参加することにしたのに…!」
「うん、それはいいんだけどね、父さん、一つ聞きたいんだけど」
「あ?なんだ?父さんは今拷m…いや相互理解の方法を考えるので忙しいんだが、子狸専用の」
「今ちょっと聞き逃せない単語が半分出掛かっててたように聞こえたけど、それはスルーして聞きたいんだけど」
「とりあえずヤツの飲み物にサッカリンぶち込んでやる…あとははやて家の体重計を2キロ増える細工…まて、そのまえに入隊のときの健康診断表を盗み出してスリーサイズをアングラに公表とかどうか…これはばれると命に関わるか…?」
「父さん、ちょっと真剣に聞きたいんだけど、あと女の子として言うけど最後のはやめてあげて?本気で泣くから」
「…ん?ああすまんな、ちょっと集中しすぎた。でなんだフェイト」
「うん、嘘だとおもうんだけど、昨日シグナムと一晩過ごしたりしてないよね?」
――――父は模擬戦で憂鬱――――
「「すいませんでした」」
「うん、お仕事で一緒になっただけだもんね、父さん昨日疲れてたし、仕事ならしょうがないよね?」
うん、でもお前のバリアジャケットの露出はしょうがなくないよね?エリキャロの教育に悪いから戻しなさい。
「あ…ああそうだぞテスタロッサ!やむ終えない事態でな?ヤマモトは途中から寝てしまったし、夜も遅かったから仕方なくだ!」
私は悪くない、悪くないと今まで体を温めていた我が隊の副隊長は必死で弁解していた、今では別の汗でびっしょりである…やなアップだな…
「で、本当に何もなかったのね?」
「イエスッサー!!」
「マムよ」
「イエスマムッ!!」
声が小さいわね聞こえないわよ腹の底から答えなさい額でタバコを吸うコツを教えてあげるわよこの雌猫など私には聞こえない、うんウチの娘は上品に育ってるはずだもんな。
あとエリオ、そろそろ慣れろーキャロはまだしもお前はもう慣れていいはずだ。てか慣れないと10台から胃薬手放せなくなるぞボーイ。
「まあ…真相も突き止めたことですし、父さん、模擬戦始めましょうか」
うう…やっと説得に応じてくれた…今なら名ネゴシエーターになれる気がする…世の中のネゴシアンには怒られるだろうけど。
「あァそウですネ」
いかん。普通に声裏返った、俺もまだ修行がたりぬな。
「うし、んじゃあエリオとキャロ、近接での戦いを想定するぞ。エリオはキャロを守りつつ俺にやられないように、勿論キャロも狙うから気をぬくなよ?」
「「はい」」
「うし、んじゃあとりあえず今日は『練習』だからそのつもりで、そっちもちゃんと隙があったら俺倒すようにー」
「「はい!」」
うんいい返事、まあ練習っていったからな、まあ余裕だとおもってるんだろうなあ…
ちなみにいうと、訓練風景は 俺 無 双 でした。…いやだって流石に負けたらかっこ悪いじゃん?結構本気ですよ?
んじゃまあ、ではここから二時間ダイジェストで説明すると。
突っ込んでくるエリオを下がりつつこっそりバインドあとキャロボコる
高機動に任せて飛び回るエリオをよけて、キャロがフリードと一緒にいるところに格闘戦に持ち込んでキャロと見せかけてフリードボコる
キャロと俺との斜線上にエリオを誘導してから魔力刃をエセブラスタービットモードまで使って砲撃。普通の直線砲撃の数多いだけだけど、次々絶え間なく打ち込めるんでエリオ動けず、そのままフルボッコ
ちなみになんで一人倒したら終わりかというと。倒したやつを人質にした!
まさに 俺 無 双 !!
…あれ?なんか反応悪いな…
「さて、計画通りなわけですが、今回の反省会を行いたいと思いマース」
…あれ?まばらな拍手、てかフェイトしかしてねえし、よしあとで愛娘には頭なでなでしてやろう。
「撫でてくれるって本当ですか!父さん!」
「アイコンタクトでどんだけ読めるんだよ!」
「愛コンタクトですよ?どこまででも、です!」
「なにか違和感あるんだが相互理解って難しいよね?言語同じでもここまで違う、戦争は根絶しないはずだよ」
「やりきったか?二人とも」
「「やりきりました」」
…よし、山本家ショートコントはともかくとして。
「で、今回の反省点だけどーエリオ判るか?ちなみに『タダシさん本気だったじゃないですか』っていうのはなしな?技量以前の問題点な」
「あ…その…キャロと連携できてなかったことですか?」
「んーまあ70点、てとこだけど。基本的に模擬戦二日目で出来る訳無いじゃん、ぶっちゃけ」
「ぶっちゃけないでくださいよ、それじゃあなにが悪かったんですか?」
「今日の訓練はエリオたちの力を測ることと、『戦うのが上手いヤツとの戦闘』ってのを身をもって感じてもらおうと思ってな」
と言って地面に1.と書き出す。
エリオがやる気だしまくってたんで、押してると思わせて下がってバインド
「明らかに読まれてるよな?そしてエリオが足止めされたらキャロとフリードだけで持たせるのは無理だって言ったよな?現実にそうなったわけだが」
「で…でも、私のプロテクションを抜いたのはタダシさんのレアスキルで魔力を圧縮させて貫通させただけで…」
「普通はもう少し持つと?それは墓の中でいうつもりか?キャロ。いいか?相手が決まってないんだ、なにがあるかわからないんだ、あの時だって防御より回避を選んでたらもしかしたらエリオが復帰できたかもしれないんだぞ?まあ…ランニングを始めて二日目でそこまでは無理だが。片隅にでいいから考えておけ」
んで、二回戦目。
「これは混戦になったところを離れてブレス?火の玉?を吐いてたフリードを即効で落としたわけだが、キャロ。心細いかもしれんが、こういうときはもっとフリードを離して砲撃かさせるのが無難だ」
もしくはフリードをおとりにして離脱するか、だ。
「どちらにせよ突くのが。特にチャージが基本のエリオのは混戦が苦手だと判ったろ?バックスであるキャロもその辺を覚えろよ?」
最後、と
「これは判りやすいよな、昨日も座学で言ったと思うけど。射線はいつでも注意しとくこと、エリオは足を止めないように、最初の一発くらいならキャロは防ぐか避けれると信じろ」
「はい…」
「とはいえ、お互いを庇うのは悪くはないし、エリオはちゃんとキャロの位置を把握してた証明でもあるし。まあこの場合前にでてるエリオよりキャロが注意するように、できるだけ前の負担を減らすのが後衛だ」
かなり動き回るエリオ追いかけるのは難しいけど、キャロならできると思うぞ、俺が意識してエリオを誘導するまでちゃんと被らない様にしてたしな?
「ってわけで、残り時間はそれを意識しつつ、フェイトを仮想敵にして再開!俺は3時用にドリンクでも貰ってくるよ、シグナム、ちょっと飲み物持つの手伝ってくれ」
「…本気でやる気ないんだな…まあよかろう」
「当たり前だ、ちなみに3時休憩終わったら俺事務だからな?また事後報告頼むぞ。4時半な」
「「はい!」」
「で?感触としてはどうだ?あの二人は」
「馬鹿みてえに才能あるな」
なんだよあのエリオの飛び込みの速さと思い切り、馬鹿じゃねえの?何度ヒヤッとしたと思うんだ。
キャロはキャロでアホ見たいにスムーズなブースト、てか召喚できるだけで戦力倍じゃん。
本人の戦力が低いかもしれんが、フリードの火力は及第点だし、本人のシューティングレイだっけあの射撃魔法?あれも回転速くなれば一流っていえる、プロテクションだって及第点。
ぶっちゃけ六課の基準がおかしいだけで、普通に一人前だっちゅうねん。
…てか、3戦でまともにエリオ接近戦で落としてないあたりが俺素敵過ぎ。
そこ、卑怯とか思わない!凡人は少しでも有利なフィールドで戦うものなのだ、まだガチでも勝てるだろうけど…一皮剥ければわからんなぁ…それでもガチでしないのが俺だけど。
「まあ…やっぱり思ったとおり、戦い方教えるだけだなあー…基礎能力は後回しでもなんとかなりそう」
「なのは達とは逆だな、長期の教導の基本を抑えていっているようだぞ」
「そりゃあ…現場でそれなりにもまれた人材だからじゃね?基本的な連携もできてるっぽいし、てか4つも年上だぞ、スターズ」
詳しくは知らないけどな、もうライトニングだけで手一杯ですよ…
「しかし、若いうちから基本的なことを教えたほうが伸びるのではないか?いまからこじんまりとさせるのは…」
「…シグナム、ぶっちゃけるとな」
「うん?」
「んーーーなこといまさら言うならこんな部隊つくんじゃねえよ!ああ?なんだよこの部隊!はっきり言ってやりたいなら隊長たちだけでやりゃあいんだよ!エリキャロティアナスバルとの差がどんだけあると思ってんだ!?巻き込むなよ!んで挙句の果てに基礎からだと…!言うに事欠いてか!!そんなに基礎から伸ばしたいならちゃんと長期の訓練校入れろ!」
「…ッ!」
「あ?なんだよ、どうせ理由あんだろ?しょうがなかったんだろ?判るよ、判るからこうやって出来るだけ手は貸すさ、皆知り合いだし言い奴らだと思ってる、会ったばかりでもティアナもスバルのいいやつだと思ってるよ、だがな!」
ああくそ
「…ここは訓練校じゃねぇんだ、今この瞬間に出動要請が出て、殺意を持った敵と相対せにゃならんのだ!10やそこらのやつらがだぞ!」
「…それは…すまん、浅慮だった…」
「…いや、俺も言いすぎた…でもな、シグナム、現場出るのがいつかわからん以上、俺はこの方針を変えるつもりはない。これは覚えておいてくれ」
「理解した…私もまだ甘かったようだ」
「正直、俺程度の敵は腐るほどいる、今日の戦法を思いつくヤツだっているだろうよ。レアスキル、洞察力や技術は自分でもそこそこ高いとはおもっている、同じことをするのは他人には無理かもしれんが、相手が二人三人になる確率は間違いなくある」
エリオが誰かに飛び込んだときに他のヤツがバインドを使えば?キャロに他のヤツが絡まれることは?多数にライトニングのだれかが狙い打ちされるのは定石じゃないか?
そうなったら詰み、だ。今日のままではな。
「…私は本当に甘かったのだな。将失格だ」
「馬鹿、有能な騎士を纏めてるんだ、そういう考えになるのは当然なんだよ」
こんなのは凡人の思考なんだ、天才には要らない、逆境に落ちても才能でカバー出来るだろう,エリオ達もそうかもしれないが。
「ていうか、俺もかなり甘いよ?人質とったら降参したろ?あいつら、でも俺。それを叱ったか?」
「あ」
「…甘いけどさ、どんなことがあってもあいつ等を殺すわけには行かないんだ、こっちがなんとかフォローして生かして帰してやりたいし」
「ああ…判っている、あの年で平然と仲間を見捨てるような考えにはしたくない、それには賛同する」
本当はいけないことだが、な。まあ戦力偏りすぎてる分、多少は守ってやっても何とかなるだろう…非殺傷とかを犯罪者も使うのが普通だし…いや強盗でも、強盗殺人と強盗傷害は地球でもそうだけど、ミッドだと更に刑罰違うし…これまた甘い考えだけど。
「…たのむぜ、副隊長」
「ああ、騎士の誇りとこの剣にかけて」
「騎士なら切腹じゃなくなにやるんだよ。まあんなもんみたくもないが」
ま、エリオたちもろくでもない任地に飛ばされたが回りだけには恵まれてるよな。
…せめてそうでも思わないとやるせなさを感じる二人だった…
…あと地味に今日もシグナム戦を回避できて嬉しいおっさんだった。