「うし…今日はこれでお終い、教導のほうはまあ大体方向掴めたし、また問題でるまでは大丈夫だな…やれやれ。初日に大体抑えておいてよかった…ユーノんとこいくの明日か明後日にしよう、いつ現場でるかわからんし」
「ぐ…ム…」
「さて、明日の申請はこれで…間違いないな、6時だけど、ちゃんと4時半にエリオたち来てくれたから助かる。ああ、カードリッジの申請…げ、フェイトと規格違う…?いや併用できるのか…?会社だけ違うのか?」
「…く…なぜできん…!」
「なあ…なんで一本指でキーボード押すのさ…てか、何時もの報告書とかどうしてたんだよ…」
「…主がやるか、紙媒体だ、おぉ…そういえば紙でだせばいいじゃないか」
「こんな申請書類をかさ張る紙なんかで毎回だせるかっ!てか本局書庫まで手で一々運ぶとかありえねぇ…」
「いやしかしやって見なければわからんだろう?よし、とりあえずヤマモト。プリントアウトしてくれ」
「殺しますよ?」
――――父の退社後は憂鬱――――
「ああ――――終わった…いやもうシグナムはほんとどんだけなんだか…」
現場主義といえばいいのか…後のことが抜けすぎ…それでも有能な指揮と戦闘力持ちじゃなかったらマジで小一時間説教ではすまさんとこだぞ
…いや説教はしたけど、そのあと二人がかりで終わらせたけど…
「アレはあれでいんだろうけど……っと独り言増えたなぁ…年だなぁ…」
あとは定期に企画してるスターズとの合同訓練の打ち合わせと明日の退社を早める理由作るとして、残りそうな書類作っといて明日はそれでシグナム絡んで来るのから逃げて。
今日は酒飲んで寝よう―――などと考えていたらまだ他の部屋に残っているヤツがロングアーチ以外でいた。
部隊設立直後でアーチはマジ死にそうな忙しさだからな…ちょっと誰残ってるか見てみるか。
「もう8時ですよー?って…なのは?」
「あ、ヤマモト陸士」
レイハさんと一緒にちまちまと書類作成しているエースオブエースがいた。
「何こんな夜遅くまでいるんだ?体力仕事だし、出動かかる可能性あるんだからちゃんと休めよ?まあまだ機能してないから他の課が基本的に出るだろうけど」
「う、うん今日の模擬戦での魔力放出の数値割り出してるのが終われば終わりだから」
…すげぇ…専用機器なしで割り出すのかよ…しかも隣の書類からすると一週間刻みの変動表…予測で?
「…すげぇな…なんていうか力入りすぎじゃないか…?」
「え?でも長期で初期からの教導は初めてだから。ヴィータちゃんと色々試してるとこだし、二人には強くなってもらいたいしね」
うわぁ…眩しいッ曇りなく輝くその顔を正面から見れない…ッ!こっちはいかにシグナムから模擬戦断るかとか考えてるのに…
「なんていうか、細かいなぁ。うわっこっちは技術書?格闘の」
「うん、ヴィータちゃんもそうだけど、私もシューティングアーツとか判らないし、ティアナの方も何か覚えてもらおうかと…」
「シューティングアーツねえ…また砲撃射撃全盛の時代に魔導師で格闘か…まあ見た目からしてっぽいけど…ああ、これがシューティングアーツの本と…戦闘記録か」
クイント模擬戦記録…中身見てないけど有名なシューティングアーツ使いなんだろう…こっちはナイフ術か、で…ガン・カt…?
実在したのか雷電ッ!
「どうしました?陸士」
「いや、目の錯覚だと思う、そういやふたりにはもう開始してるよな、新しいデバイス作るの」
「ええ、エリオのストラーダと同じくらいのインテリジェンスデバイスになるはずです、もっともストラーダはアームドに分類されるけど」
「辞令でてすぐ開発開始したんだって?シャーリーが目を光らせながら作ってたぞ」
特にブーツ型のは力入ってたな『違うッこうじゃないのッ!もっとこうエレガントにかつパワフル!どうしてこう術式が滑らかに走らないのッ!』って珍しく暴れてたな。
…うっかりその現場を見てしまってかなり気まずかったけど…
「でも二人ともデバイス自作と親御さんからもらったのあるんじゃない?それの後継機つくるなら本人にも開発に絡めたら?」
「ううん、現行機のほぼアップグレード版にするだけだし、機能はほぼ同じにするから」
だから消費魔力とか、形状は勿論。重量とかも推測される最適値を下回って現行機に合わせて作ってる、慣れたら変えていくつもりで、とのこと。
「んー俺だったらサプライズとか考えないでとっとと教えてさっさと組んで完熟訓練開始させるけどなぁ…」
「無理なの、どっちにせよスバルの方はまだ時間掛かるっていってたし、今は訓練に集中してほしいの」
「うわ懐かしいなその狙ってるかのようななのなの口調…俺が聖祥の先生だったころ以来か?あのころはなのなのいってたなぁ…」
「うう…ちょっと恥ずかしい…」
「やたらとそれが耳に残ってて、ナノマシンにやたら興味を惹かれたもんだ…」
昔、フェイトとアルフと三人で飯食ってて、テレビから聞こえてきてふいた思い出が…
「…それは正直どうかとおもうの」
「いやいや、もし量産の暁には全職員をなのマシンにしてだな」
真面目ななのはをモチーフにしてるんだし、戦力としてはばっちりだろう、テロリストとかも非殺傷あるし、まあ殺しはしないから理想的だよな…
『ちょっとお話するなの!』by取調室
…だめだ…全職員は駄目な気がする…
「ええっと…ヤマモト陸士の方はどうなっています?教導は」
「ん…?ああ手探りもいいとこだよ、そっちと違って心構えからだもの、基礎的なことを叩き込みたいけど俺じゃ無理だし。殆ど訓練学校でたてだもん、二人とも死なないようにするのが精一杯だねぇ、というか教導だとこっちが生徒だぞ?」
「でも、私にとってはいつまでも先生ですし…」
「一時期はタダシって呼んでたくせに」
「あ!あれは…」
「いや、タダシでいいぞ?あのときもいったけど、正直いってPT事件以降俺教職退いたしな」
うん、ただいまさらそんな呼び方するとフェイトが怖いかもしれんが、そういや二人また一緒に住んでるらしいけど…そんなに誤解されたいんだろうか…
「うんそうだな、陸士とか誰も使わないし、いい機会だ、呼び捨てでいこう」
「うえぇ?!い・いまさら無理ですよ…呼び捨てになんか…せめて先生で…」
「お前、教え子の前で部下に先生はまずいだろ…まあせめてさん付けで」
「え・う・その…あの…じゃあその…い、いいますよ!」
「うん、ドンとこい!」
「や・山本さんッ」
…なんだろ…この青臭さ香る感じ…高校生か?青春なのか!?いや俺もなのはも高校生活とか無縁だったけど…
なのはは中卒だし、俺高認とって大学入ったけど。
・・・よく考えるとエースオブエース、地球だと高校すらでてないんだよなぁ、フェイトもそうだが、ミッドの常識だが魔法から離れたら潰しきかんよなぁ…
「ああ、いいね山本さん、なにがいいって正さんになったらフェイトがまた金色夜叉にジョグレス進化するところだった」
「うん…最近特にひどいよ…写真がたくさんあるのはいいんだけど…抱き枕は流石に止めたよ…私が間違えて抱きついても悪いし…」
てかいまだに同じベットかよ…
「で、でも余計な力が抜けたっていうか、昔のフェイトちゃんだったらエリオやキャロを引き取っても今みたいに接してなかったとおもうよ!」
「あー…昔は酷かったよなあ…俺が言ったこと全部やろうとしてたもんなあ…プレシアに捨てられて、なんかこう…この世の終わりみたいな感じだった」
「うん…縋り付くみたいに山本さんと一緒だったもんね」
「ああ、あれは失敗だったと思っているよ、いまだにね。きっとほっとけばちゃんと自力で立ち直ったとおもうよ、なのはや皆もいたしね…」
「そんなことないよ、少なくともフェイトちゃんはずっとあの時のことを大切に思っているよ」
「ああまあ…そうだな、きっともう一度あの場面に戻れても、同じことすると思う」
それにしてもあの頃は…酷かったなぁ
「ああ…あのころは俺に捨てられるとか考えてたらしくて、それが怖くて怖くて本気で奴隷の如くだったよな…」
「あ…あはははは…おかげでありさちゃんにすごい怒られたよね、誤解されて」
「ああ、あのツンデレ大富豪な、あれは怒るとかいうレベルじゃねえよ、フルボッコだよ!しまいには金の力にものいわせて社会的に抹殺されるとこだったぞ」
「うん…でもすずかちゃんもきつかったらしいけど、なに言われたの?」
「笑い顔で一言だけいわれた」
『死ねばいいのに』
「…」
「…お前…あのもの静かな顔で言われるとしゃれにならんぞ、心臓止まるかと思った。てか現実で聞きたくない台詞ベスト5を吐かれるとはおもわなんだよ」
「…結構きついね…すずかちゃんも…」
ちなみに第一位は『できちゃった☆』だ。
「まあ類は友を呼ぶっていうし、納得してるんだが」
「地味に突っ込みきれないよ…」
「ああ、突っ込んだら他の例をいやになるくらい出すところだったよ」
フェイトとかシグナムとかはやてとかはやてとか。
「まあ…昔話はいいけど、帰るなら送っていくぞ?どうする?」
「え?近いからいいですよ、もう少しで終わりますから」
「あいよ、んじゃお先ー。だけどお前も早めに寝ろよ?体調管理も仕事だぞ?」
「先生だって…フェイトちゃんに聞きましたよ、ブラスタービット使ったんですって?」
「お前のとちがってリミットブレイクの機能ないからな、ありゃあ多数の魔法が撃てるのと、ファンネルビットごっこが出来るだけだ、お前こそつかうなよ?」
まあスターズはノータッチだけど、本気で初めての教導だから余裕ないしな。
…そういや俺資格ないけどどうなってるんだろとおもったら、書類上は戦技教官とか持ってるなのはが両方教えてることになってたな…ヴィータのは補佐で入ってたけど同じく両方だった。
ちなみにスターズ、ライトニング両方を纏めるのはシグナムだったっけ?はやての大隊指揮?中隊指揮持ってるのは一人だったけど。
んじゃ、と声かけて作業開始してるのを横目にしばらく廊下を歩いているとふと思い出した。
あの模擬戦のデータに書いてあったクイントって…
「あ、クイントってぜスト隊の人だ!昔雑誌でかいてあった…ってたしかクイント・ナカジマ…親御さんか?」
あー…そうかあ、対テロの…それのお下がりだからかスバルのは作りがいいのかぁ。
でもぜスト隊は…そうか、亡くなってるんだな…まああまり立ち入らないほうがいいか…
「…とはいえ、元教え子のやるきに触発されてシューティングアーツの記録をちょっと借りて見てみたくなったり」
べ・べつにスバルあたりに負けたらかっこ悪いからとか考えてないんだからねッ!
いや、珍しい武術っぽいから個人的にも興味わいただけなんだけどね、どっちにせよ2小隊での連携もあるし、知っといて邪魔にはなるまい。
アリサを久しぶりに思い出したせいでもないぞ?
さて、ちょっくら借りてくるか…
「…山本先生…」
うお!こっそり入ってびびらそうと思ったのに気づかれた?!
夜二十歳の女性の部屋に息を殺して入ろうとする35歳男性(独身)…
うん、死ねる。
って独り言…?セーフ、セーフだよね!?
ってレイハさんとおしゃべりか?びびった…
「いつもどおりだったね、レイジングハート」
「Yes,my master」(はい、マスター)
「あんなことあって…それでもあんなに声かけてくれて…許してくれてるのかな?考えすぎなのかな?」
「It`s so」(そうですね)
「うん、でも…考えすぎだと思うけど、いまだに思い出すんだ。あの事故から目を覚まして、皆から山本先生が治療してくれて、倒れて目を覚まさないって…」
「…背中からすごく冷たくなって、手ががたがた震えだして…フェイトちゃんの私を見る目がすごく怖くて…皆の目も冷たく感じて…」
「…」
「ねえ、レイジングハート、先生が目を覚ましたとき、本当に嬉しかったの、昔のフェイトちゃんの気持ちがちょっとだけ判るくらい、それくらい先生になにかしなきゃって思ったの」
「Yes」(はい)
「でもね、それって先生に謝りたかったんじゃないの。私ね、皆から嫌われたくなかっただけなの…」
「…だから必死だった、前みたいに皆に見て欲しかった、でも…結局何も出来なかった。フェイトちゃんと仲直りできたのも先生のお陰だし」
「Don`t worry」(気にしないで)
「そうだね…今おもうとそう思うよ、きっと自分で解決してたら、また繰り返してたと思う。それに先生って大人だし、頼るのが普通だよね」
「Yes,my master」(はい)
「うん、私もスバルたちあの年の子を教導してるとそう思うよ、きっとこれは正しいんだって。だから、そう信じていいよね?」
「I believe master」(私はマスターを信じています)
「ありがとう、レイジングハート…」
その声は微かに震えていた。
ずっとずっと、誰にも話せず。
12歳からずっと思い続けていた、いやいまだに問いかけ続けているんだろう。
なのはは昔から病的に友情や愛情に敏感だった気がする、正義感に隠れて見にくいが、それも二次的に出来たかもしれない。
「…いやマジになにやってんだよ管理局…ご自慢のエースオブエースが泣いてるぞ…」
ああくそ、どうせエースなんぞを悩みないとか馬鹿にしてるんだろう…これだからミッド嫌いなんだよ…
畜生、今日の酒はまた苦くなりそうだなぁ…