正直な話、同じような日々を繰り返すのに飽きていたのは確かだ。
大学とバイト。それだけで一日が終わってしまう……そんな生活にウンザリしていた。
だからこそ、刺激を求めていた。
…求めていたよ。……求めていたさ。けどさ、何で? 何でなの?
「何で牢屋なんかに入れられてるんだよー!!」
「僕の生きる道」
ちきしょう、落ち着け、落ち着くんだ俺。叫んだ所でこの状況がかわるわけじゃない。
あれだ、こんな時こそ深呼吸だ! 目を閉じて、ゆっくりと深呼吸するんだ!
「スゥーハァースゥーハァー」
よく考えれば分かることじゃないか。
「スゥーハァースゥーハァー」
牢屋=犯罪を犯した人がいる所。
「スゥーハァースゥーハァー」
俺=小心者+自称善人=牢屋とは無縁。
「スゥーハァースゥーハァー」
結論、今見たのは夢。そう、牢屋なんて夢だ!
よし、夢だと分かったらだんだん落ち着いてきたぞ。
最近疲れてたからなー それが原因で変な夢を見ちゃったんだな。
夢と分かれば怖いものなし! 大丈夫、目を開けば少し散らかってる自分の部屋のはず!
という訳で、 両目オープン。
…
……
………
まず目に入ったのは鉄格子。少し錆びてる所がいい感じたね。
その次、隅にあるトイレ。うん。薄汚れた感じか哀愁をただよわせるね。
そして、壁にある蝋燭。 この薄暗い部屋を、暖かな火で照らしてくれてるね。
薄暗い部屋+鉄格子+部屋に備え付けのトイレ=俺が考えてる牢屋に該当する物。
結論
「弁護士を呼んでくれー!」
その叫び声は、今まで生きてきた中で一番の叫びだった…
弁護士を呼んでみて、二時間くらいたったのかもしれない……結局誰もこなかったが。
さすがに、それだけの時間が立てば少しは冷静に考えれるようになった。
最初はまだ夢だと信じ、頬をつねったりしてみたが痛いだけだった。
自分の異変に気づいたのはトイレに向かう時だった。何故か視点を低く感じるのである。
まさか、某名探偵みたいに薬を飲まされて子供になり、挙句に拉致られた? なんて馬鹿なことも考えた。
だけど、その馬鹿な考えは若干であるが当たっていた。
「な、なんじゃこりゃー!!」
無いのである…
大切な物を守るジャングルが…
生まれたときから共に成長してきたアレも悲しいことに…
「ウソだ…ウソだと言ってくれ! 何でお前そんな姿に!?」
自分のアレに向かって叫ぶ人間。これでは唯の変態だな~
…って、そんな冷静に考えてる場合じゃない!
手とかも小さくなってるし、背も低くなってる。
「ちきしょう、どうなってんだよ。マジで薬飲まされたとか?」
考えても考えても分からない事だらけだった。
「まぁ。手でも洗っておくか…」
言いたくは無いが、小さくなった体に戸惑いを隠せない俺は、少し手に掛かけてしまったのであった。
トイレの横に備え付けられている洗面台。ありがたい事に多少割れているが鏡もある。
自分がどうなっているか確認できるな~と思っていたが、鏡を見てまた悩みの種が増えることになった
「誰?」
見た目は五、六歳だと思う。
髪は白いし、眉間のあたりに赤いアザみたいな丸が二つある。
自分の子供の頃とは違いが多すぎる。というか他人だ。
この時点で、薬を飲まされて子供になったっていうありえない可能性は否定された。
いろいろ考えてみたが、やっぱり分からない事だらけだ。
牢屋にいるし、知らない子供になってる俺……もしかして、ドッキリ? いや、牢屋だけならまだしも、知らない子供って言う時点でドッキリじゃないな。
まさか異世界憑依系の小説みたいな感じだったりして?
それはそれで、面白そうだなぁ~なんて考えてた。
「君麻呂」
声が聞こえた方を見ると、格子の外から俺の方を見て話してる男がいた。
いつの間に来たんだ? 足音とかしなかったけど……待てッ! そんな事に驚いてる場合じゃない!
「お前か拉致犯は! 俺を早く元に戻せ!」
「出ろ。標的は水の国だ」
知らない男はそう言いながら格子の鍵を開けてどっかに行ってしまった。
…
……
………はい。見事に無視されました。
これでもか! というぐらいの無視ッぷりに脱帽だね。拍手、パチパチパチパチ……って違う! 拍手してる場合でもない!
「おじさん、カムバッーク!」
…叫んではみたものの、戻ってくる気配は無かった。
さて、どうしよう? とりあえず外には出られるようになったけど…
そういえばあの男、俺に向かって「君麻呂」って言ったよな。
君麻呂ってあれだよな? NARUTOに出てきたキャラじゃなかったっけ? 「霧隠れの里」とかも言ってたし。
な~んだ。NARUTOの世界か…それで、俺は君麻呂に憑依してるわけか…
「そんな簡単に納得できるかぁぁぁ!!」
神様、もしかして俺のこと嫌いですか?
あとがき
初めてのSS、初めての投稿です。
変なところとかあるかもしれませんが、よろしくお願いします。