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No.7187の一覧
[0] のび太 VS ゴルゴ13[かるめん ](2009/03/14 12:42)
[1] のび太 VS ゴルゴ13 ACT2[かるめん ](2009/03/14 12:44)
[2] のび太 VS ゴルゴ13 ACT3[かるめん ](2009/03/26 23:25)
[3] のび太 VS ゴルゴ13 ACT4[かるめん ](2009/03/26 23:28)
[4] のび太 VS ゴルゴ13 ACT5[かるめん ](2009/03/26 23:24)
[5] のび太 VS ゴルゴ13 ACT6[かるめん ](2009/03/30 01:22)
[6] のび太 VS ゴルゴ13 ACT7[かるめん ](2009/04/06 01:48)
[7] のび太 VS ゴルゴ13 ACT8[かるめん ](2009/04/14 00:27)
[8] のび太 VS ゴルゴ13 ACT9[かるめん ](2009/04/24 01:18)
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[7187] のび太 VS ゴルゴ13
Name: かるめん ◆6f070b47 ID:53a6a4cf 次を表示する
Date: 2009/03/14 12:42
砕け散る立体映像のかけらは、太陽の光を浴びて虹色に渦巻く。
肉体を貫く灼熱の痛みを通して、男は自分が撃たれたことを悟った。
傾いていく世界、倒れていく身体、空から降り注ぐ陽光が目を眩ませる。
真っ白に染まっていく脳裏で、思い出の歯車は過去へとさかのぼる。
氷のような眼をした『あの男』と初めて出会い、彼のすべてを変えたあの日へと……。
ああ、そうだ。
あのころ、自分のそばにはいつも、かけがえのない友達がいた。


  のび太 VS ゴルゴ13

    ACT1「装弾」


子守用ネコ型ロボット、ドラえもんには三つ、人に自慢できることがある。
一つ、ドラ焼き大食いコンテストの優勝したこと。
二つ、丸くて、テカテカと光る大きな頭。
三つ、その頭に納まっているピカピカに冴えた電子頭脳。

今、ドラえもんは本を読みながら、その自慢の電子頭脳で正確に時間を計っていた。
あと1分29秒、1分28秒、1分27秒、1分26秒……。
残り時間が30秒を切ったとき、ドラえもんは読んでいた漫画本をたたんだ。
いつも座っている定位置から立ち上がり、1メートルほど横に移動する。
そして、カウントがゼロになったとき、

「ド・ラ・え・も・んっ―――!!!」

だめ少年、野比のび太が顔を涙と鼻水まみれにしながら、部屋の中に飛び込んできた。
子供部屋の扉をくぐるなり、ドラえもんに抱きつこうとする。
しかし、いつも友人がいるべき場所には誰もいなかったので、

「ぶぎゃっ!!」

のび太の腕は空を切り、体は畳に激突、ずりずりと数センチ滑った後に沈黙した。
それを見たドラえもんは、

「お帰りなさい。のび太くん」

一言あいさつをしただけで、何事もなかったかのようにまた本を読み始めた。
倒れていたのび太は跳ね起きるなり、ドラえもんの体にしがみついた。
泣いていた上に畳で擦ったものだから、その顔はもう凄いことになっていた。

「ひ、ひどいじゃないか、ドラえもん! なんでそんなに冷たいのさっ!」
「それは、君がいつもいつも、いっつも! くだらないことで僕を頼ろうとするからじゃないか!」
「僕がまだ何も言っていないのに、何で下らないことだってわかるんだよ」
「わかるとも」

再び本をおいて、立ち上がるドラえもん。
何時にない迫力にたじろいだのび太は、思わずドラえもんをつかんでいた手を離し、後ろに下がった。

「あてて見せようか。君は今日、ジャイアンやしずちゃんと一緒にスネ夫の家に遊びに行った」
「そうだよ……」
「先週、家族でアフリカ旅行に行ったスネ夫は、君たちに自慢するために、旅行の時に撮ったビデオを見せた。そうだね?」
「うん、そうだけど……」
「見栄っ張りのスネ夫のことだから、車でゾウの群れに近づいたり、麻酔で眠らせたライオンを触っているところを見せたんだろ?」
「そう……」
「で、その場面を見たジャイアンが『すげーな、スネ夫』と言ったり、しずちゃんが『スネ夫さんは勇気があるのね』とか言って感心したわけだ」
「そうそう、スネ夫のやつ、自分でライオンを眠らせたわけじゃないのに、すっかりいい気になっちゃって!!」
「……『その内、君たちもアフリカ旅行に連れて行ってやるよ』、と言った。でも、その後こう言ったんだろ。『どうせ、のび太はライオンやカバを見ただけで気絶するから、連れて行ってやらないけどな』って」
「そうだよ! ひどいだろ! いくら僕でもカバを見たぐらいじゃ気絶しないよ!」

ライオンは危ないって自覚しているあたり、自分のことがよく分かっているじゃないか。
心の中でそっと呟きながら、ドラえもんは続けて言った。

「そして、君はスネ夫をギャフンッと言わせるために、僕の道具の力を借りてアフリカへ猛獣狩りに出かけようと思いついたんだろ?」
「そのとおーり! さすがぁ、ドラえもん! 僕の考えていることが全部わかっているじゃないか。じゃ、早速、どこでもドアを貸してよ! アフリカへライオンを打ちに行こう! ライオンを!」

ドラえもんはタライがまるまる入るぐらい大きな口をあけて、ふかぶかとため息をついた。
また、しがみつこうとするのび太を、心を鬼にしてぐいっと押しのける。

「だめだよ」
「えっ、なんで?」
「だめに決まっているじゃないか。あのね、のび太くん。雑草という名前の草がないように、猛獣なんて名前の動物はいないんだよ。どんな動物だって、この地球上でかけがえのない大切な役割を果たしているんだ。それをスネ夫を見返したいというだけの理由で殺すことなんかできないだろ。僕は情けないよ。昔、ぴー助を助けたり、人間の勝手な都合で絶滅した動物たちを孤島へ移住させて、助けたようとした優しい君は一体どこへ行ったんだい!」

ジャブ、ジャブ、ボディブローからの右フック!
鋭い言葉のパンチが次々にのび太の心に突き刺さる。
自分のコンビネーションが的確にダメージを与えたのを見て取ると、ドラえもんはいよいよ必殺のアッパーカットを繰り出した。

「それに想像してごらん。君が得意げに罪のない動物たちをいじめているのをみて、しずちゃんがどう思う? 間違いなく君に失望して、ぜっっったいに結婚しようなんて思わないね!」

クリティカルヒット!
未来の花嫁の名前は、ドラえもんの予想通りのび太の脳を激しく揺さぶり、彼を畳の上に叩き伏せた。
テンカウントを待つまでもなく、ドラえもんはのび太に背を向けるとまた本を手に取った。
これで、この件は片付いたと思っていたのだが、しばらくすると部屋の隅から、ぐずぐずと湿っぽい泣き声が聞こえ始めた。

「ブツブツ……ひどいよ、ドラえもん……ブツブツ……人が珍しくやる気を出しているのに水を差して……ひょっとしたら、将来、働くときにハンティングの経験が役に立つかもしれないじゃないか。それなのに……ブツブツブツブツ」

しずちゃんの名前を出しても収まらないなんて、これはそうとう重症だな……。
読書のふりをして、様子をうかがっていたドラえもんは観念して、本をポケットにしまった。
畳に丸い手をついて、座ったまま、のび太の方へくるりと回転する。

「じゃあ、聞くけどさ。のび太くんは将来、どんな仕事につきたいと思っているんだい?」
「そりゃ、もちろん……正義のガンマン! 二丁拳銃を使って、悪ものをばったばったとやっつけるんだ!!」

世の中には、ガンマンなんて職業はないんだけどね……。
天井のあたりに視線をさまよわせながら、呆れるドラえもん。
しかし、のび太が言っていたのは別に根拠のない絵空事でもなかった。
ドラえもんは詳しく知らないことだが、のび太は西部開拓時代のモルグシティで30人あまりの無法者を一人も殺さずに鎮圧したことがある。
さらに、22世紀の射撃ゲームで前人未到の記録を出すなど、こと射撃に関してのび太という少年は、人類的に稀有な素質の持ち主であることは間違いない。

「まあ、何にしても。君がやる気を出してくれるのは良いことだ。子供のやる気をそぐよりも、生かすように育てるべきだって、さっき読んでいた育児本にも書いてあったし……」
「ああ、やっと力を貸してくれる気になったんだね。もう、いつも気を持たせるんだからぁ。ねえねえ、何を貸してくれる! 教えてよ、ドラえもん!」
「ちょっと、待っててよ、のび太くん」

ドラえもんが、お腹にあるトレードマークとも言うべき四次元ポケットに手を突っ込んだ。
ときにはトラブルを起こすこともあったけど、いつも夢と冒険をもたらしてくれた秘密のポケット。
今度は一体、どんな秘密道具が飛び出すのか。
見守るのび太の心臓はドラムのようになり響き、そのテンポが最高潮に達した時、

『デンジャーシミュレーターとショックガン!!』

ドラえもんがリストバンドのような機械とプラスチックの玩具みたいな銃を取り出した。
横文字は苦手を通り越して、壊滅状態ののび太はしかめっ面でドラえもんが口にした言葉を復唱する。

「でんしゃしゅみれーたーって何さ。アフリカは電車じゃいけないよ」
「電車シュミレーターじゃなくて、デンジャーシミュレーター。これは、宇宙飛行士たちが未知の惑星へ行く前に、訓練をするために作られたものなんだ。彼らはこの機械を使って、その星の環境をあらかじめ経験して、そこで起こる危険(デンジャー)に対応できるようにするんだ。たとえば、危険な宇宙生物なんかをね」
「そ、それって、あの、あの録験機に記録されていた『銀河のはてのなぞの惑星探検記』のようなものなの!」

録験機とは、過去に経験したことを記録し、またそれをほかの人間が再生して体験を味わうことができる秘密道具のこと。
のび太は以前、宇宙怪獣に襲われて全滅した探検隊の記録を見てしまい、そのあまりの強烈な体験に卒倒したことがあった。
今も、録験機の名前を口にしただけで、当時の記憶がよみがえり、のび太は顔を真っ青にしてまた気絶しそうになった。

「アア、部隊ハ全滅。イキノコッタノハ、ヒトリダケ、ヒトリダケ、ヒトリダケ……」
「落ち着いてよ。このデンジャーシミュレーターは、全滅した探検隊の悲劇を繰り返さないために作られたんだ。録験機は昔の経験を再現することしかできなかったたけど、デンジャーシミュレーターで自由に行動を選択することができるんだ。のび太くん、バーチャルリアリティって知っているかい?」

のび太は胸を張って、自信満々に答えた。

「そんなの僕が知っているわけないじゃないか!」
「そんなこったろう、と思ったよ。要するに、ものすごくリアルな立体映像だと思ってくれれば良いよ。立体映像機で映し出せるのは、目で見える映像だけだけど、このデンジャーシミュレーターは音やにおい、触覚まで完璧に再現することができるんだ」
「そ、それじゃ、また録験機みたいに痛かったり、怖い思いをしたりするの?」
「使う者にとって危険な痛みや不快感はカットできるよ。これを使うことで、未来の宇宙飛行士たちは安全かつ安価に異星の環境を体験できるようになったのさ。しかも、このデンジャーシミュレーターには、何百ものの惑星の数え切れない生き物が記録されているんだ。その中には、シーリアのコヒョウやヴァガボンドのヒイログマみたいな、ライオンとは比べ物にならないほどどう猛で危険なやつらもいる」
「すごいじゃないか! じゃあ、さっそくこれでスネ夫たちをギャフンと言わせ、ぎゃふっ!」

いきなりデンジャーシミュレーターに手を伸ばそうとしたのび太の顔を、ドラえもんのぺったりハンドが遮った。
そのまま、ぐいっと押しのけると、怖い顔でのび太を見下ろして言った。

「ちょっと待った。デンジャーシミュレーターは、デリケートな道具だから、おっちょこちょいな君に使わせると、またとんでもないことになるかもしれない。だから、これを貸す前に、まずは僕の説明をしっかり聞いてもらうよ」

大きな頭とおなじ半径129.3センチの腰に手を当てて、道具の説明を始めるドラえもん。
長年の付き合いのおかげで、ドラえもんが説教まじりに道具の説明をするのが好きなことを知っているのび太は、早くもうんざりな顔をした。

「まず、最初に言っておくけど、このデンジャーシミュレーターは、中古品なんだ。本当は、つけている人間以外、疑似体験は見えないようになっているんだけど、この装置は範囲内にいるもの全員をバーチャルリアリティに巻き込んでしまうんだ。だから、使うときは必ず周りに関係のない人がいないことを確認してから、使うように」
「ふーん……」
「それから、痛い思いをしないとはいえ、デンジャーシミュレーターには見たり、聞いたりしただけで使用者の精神に悪い影響を与えるような記録も入っているんだ。とくに、この慰労用ソフトは君みたいな小学生には早すぎるから、僕の方で全部ブロックさせてもらうよ」
「へえ……」
「それから、忘れちゃいけないのが……」

上の空でドラえもんの言葉を聞いてたのび太は、ふとデンジャーシミュレーターが目の前に落ちていることに気づいた。
ちらっと演説をしているドラえもんの方を見る。
ドラえもんは自分の言葉に酔っているのか、のび太と畳の上の秘密道具にまったく意識を向けていない。
そろり、そろりと、のび太は音をたてないように気をつけながら、少しずつデンジャーシミュレーターとショックガンの方へ這い寄った。

「デンジャーシミュレーターには、付属の武器がついているんだけど、それは高くて買えなかった。だから、今回はショックガンを代わりに使うことにした。ショックガンの説明はいらないよね。わかっていると思うけど、ショックガンを人に向けちゃいけないよ。いくら死なないとはいえ、打たれたショックが脳に悪い影響を与えることもあるんだ。これで、説明は終わりだけど、何か分からないことはある、のび太くん?」

ドラえもんが得意満面で説明を終えて、振り返った時、

「……あれ、のび太くん?」

のび太と秘密道具はもはや影も形もなかった。



***


あとがきのやうなもの


てな、わけで……。
ええっと、やっちゃいました。
前々からやりたいと思っていたことを、ついに我慢できずに!!

人生の聖書とも言うべき『ドラえもん』。
一生の教科書である『ゴルゴ13』。
この二つの神作品を使って、二次創作がやりたい!
という欲望はつねにありました。
プロットも書きました。

でもでも、あまりに有名、あまりに多くのファンがいるこの二作品。
一つ間違えようものなら、世界中合計20億人のファンから叩かれることは見えています。

我慢に我慢を重ねました。
でもこの間、「のび太の宇宙開拓史」がリニューアルされると知って、
ついに我慢がきかなくなり、筆(というかパソ)を手に取り、今日ここに至ったというわけです。
かくなるうえは、かならず完結できるように頑張りますので、
どうぞ目くじらをたてずに、見守ってくださるよう、よろしくお願いいたします。

なお、普通にのび太をゴルゴぶつけると、瞬殺されるのは目に見えているので、
今回は、ゴルゴにいろいろとハンデを背負ってもらうことにしました。
ちょっとウルトラCな設定を使うこともありますが、
その点はゴルゴが強すぎるせいだと思って、どうか容赦してください。


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