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No.7187の一覧
[0] のび太 VS ゴルゴ13[かるめん ](2009/03/14 12:42)
[1] のび太 VS ゴルゴ13 ACT2[かるめん ](2009/03/14 12:44)
[2] のび太 VS ゴルゴ13 ACT3[かるめん ](2009/03/26 23:25)
[3] のび太 VS ゴルゴ13 ACT4[かるめん ](2009/03/26 23:28)
[4] のび太 VS ゴルゴ13 ACT5[かるめん ](2009/03/26 23:24)
[5] のび太 VS ゴルゴ13 ACT6[かるめん ](2009/03/30 01:22)
[6] のび太 VS ゴルゴ13 ACT7[かるめん ](2009/04/06 01:48)
[7] のび太 VS ゴルゴ13 ACT8[かるめん ](2009/04/14 00:27)
[8] のび太 VS ゴルゴ13 ACT9[かるめん ](2009/04/24 01:18)
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[7187] のび太 VS ゴルゴ13 ACT2
Name: かるめん ◆6f070b47 ID:53a6a4cf 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/14 12:44
日曜日でごった返す繁華街を三人の男たちが、切り裂くように歩いていく。
三人が三人とも、見事な凶相持ちであった。
ケダモノじみた暴力の気配が、強烈な体臭のようにその体から滲みだしている。
血に飢えた狂犬のごとき男たち。
しかし、彼らは同時に野に放たれた猟犬でもあった。

男たちは、今朝からずっと、一人の標的のあとを付け回していた。
しかし、その獲物、第四の男は、彼を尾行している人の形をした犬たちよりも、遥かに複雑な存在だった。
彼の内面を表現するのは至難ゆえ、まずはその外見から語っていこう。

まず、彼は背の高い人間だった。
身長はかるく180センチを超え、完璧に鍛え上げられた肉体は、スーツ越しでもはっきりとその存在を主張している。
黒い髪は短く切りそろえられ、顔立ちは日本人離れして彫りが深い

いったい、どれほどの悲劇を目にし、どれほどの惨劇を乗り越えてきたのか。
男の顔には、ナイフで刻んだような深い皺が走っていた。
そしてその眼、彼はアルプスの頂上で輝く氷のような眼をもっていた。
人を怯えさせるほど冷たい光を放ちながら、不思議と澄み切った眼であった。

この男を言い表すために、動物を使うのは適当ではない。
オオカミでは役不足、獣の王であるトラやライオンさえ男の前で見劣りする。
生物ではなく、命を持たない鉱物こそ、この男の存在を表現するのにもっともふさわしいだろう。
想像を絶する熱と圧力の果てに、有り触れた元素である炭素から生まれた宝石の王者。
ゴルゴ13は、まさに炭の中で光り輝くダイヤモンドのような男であった。



  のび太 VS ゴルゴ13

   ACT2「引き金」


ゴルゴは、とっくの昔に追跡者たちの存在に気づいていた。
ついでに言うのなら、男たちの素性も大体、想像がついている。
ゴルゴ13は最近、この国で依頼を受け、ジャパニーズマフィアの幹部の一人を射殺していた。

仇討ちにやってきた幹部の舎弟たちか、それとも暗殺者の口を塞ぐために贈られた刺客か。
もし、前者ならば、どうやって自分が仇だと知ったのかを問い正さなければならない。
もし、後者ならば、ルールを破った依頼人に制裁を加えなければならない。
いずれにせよ、まずは追跡者たちを捕え、尋問をする必要があった。

ゴルゴは、最新の東京都の地図をまるで写真のように鮮明に記憶している。
目指すは、現在建築中のホテル・ギャラクシーの新築ビル。
そこに、追跡者たちを誘い込み、罠にかけ、彼らに尋問をする場所まで連れて行く。
すでに、ゴルゴの脳裏には、反撃から逃走へとつながる詳細な手順が出来上がっていた。

しかし、このとき、彼はまだ気づいていなかった。
運命が、その手札の中に予測不可能な鬼札(ジョーカー)を仕込んでいることに。



■  ■  ■



ちょうど、その頃……。
ドラえもんから秘密道具を無断で拝借したのび太は、ホテル・ギャラクシーの工事現場までやってきた。

「スネ夫たちをギャフン、と言わせる前にまず、この道具を試しておかないとね。飛び出した宇宙怪獣を見て、気を失ったら、またあいつらに笑われちゃうからな」

予測したとおり、日曜日で現場には人っ子ひとりいない。
興奮に口元がにやけるのを感じながら、のび太は建設中のビルの中にこっそり侵入した。
天井の鉄骨がむき出しのままの通路の中ほどに立ち、リストバンドの形をした機械をズボンのポケットから取り出す。

ドラえもんのところから、持ちだしたときに詳しい説明は聞いていなかったが、のび太は大して気にしていなかった。
秘密道具に関しては、のび太は自分がドラえもんに次ぐ専門家だと自負している。
それに未来の道具は、今の携帯電話と違ってたいてい、のび太のような落ちこぼれでも使いこなせるような親切な設計をしているのだ。

適当に電源と思しき青いボタンを押した。
そのとたん、リストボタンから幾何学模様の立体映像が立ち上がり、若い女性の声が通路に木霊する。

【おはようございます、マスター。ご要望の入力をお願いします】
「うわ、わ、わああ、君だれぇっ!!」

虚空から湧き出した声に、腰を抜かすほど驚くのび太。
若い女性の声は、平然とのび太の質問に答えた。

【私は、デンジャーシミュレーターのサポートAIです。断じて、電車シミュレーターではありませんので、お間違いのないように気を付けてください】
「き、機械のくせに細かいやつだな……」
【機械だから、細かいことにこだわるのです。再びお尋ねしますが、ご要望はなんですか?】
「うん……じゃあ、なんでもいいから猛獣を出してよ」

のび太の適当すぎる要求に、AIは戸惑った声音で、

【なんでもいい、というのは一番対応に困るご要望なのですが。具体的には、どのような生物をご希望なされているのでしょうか?】
「だから、獰猛で怖いやつだったらなんでも良いんだって」
【……それでは、さっきとあまり変わりがありません。そうですね。私の五百万を超える危険生物カタログの中でも、常に上位にくるのが完全生物として名高い『ゼノモーフ』と光化学迷彩を使う未知の異星人、通称『狩猟民族』です】
「へえ、格好良さそうな名前だね。そいつらってどのぐらい危険なの?」
【かの「銀河のはてのなぞの惑星探検記」で有名な、第十三探検隊を全滅させた怪獣XをデンジャークラスのAクラスとして……この二種類はそれよりも二つの上のSSクラス。とくに『狩猟民族』は定期的に、怪獣Xをハンティングしている痕跡が発見されています。鴨撃ちの鴨みたいなものですね】
「あ、あの怪獣をカモみたいに狩っているって言うの!?」

のび太のまぶたの裏に、かつて体験した第十三探検隊の惨劇がよみがえる。
山みたいな巨体、レーザー銃を跳ね返す外皮、頑丈な宇宙服を紙みたいに引き裂いて、隊員を次々に食べた怪獣Xが鴨撃ちの標的と同じだってっ!
『狩猟民族』ってやつらは、一体どれだけ……。

「ぶるるるぅ、冗談じゃない! そいつは怖い、怖すぎるから、パスパス! もう一つの『ゼノモーフ』ってどんな生きものなの?」
【『ゼノモーフ』は、『狩猟民族』とは対照的に知能は低いですが、強靭な肉体と強酸性の体液、比類のない生存本能で有名な生物です。その生態の中でもユニークなのが、別の生物の中に自分の遺伝因子を埋め込んで繁殖するところですね。サンプルに、ノストロ号で記録された画像をお見せいたしましょう】

幾何学模様の立体映像が砕けて虹色の破片に変わる。
渦巻く破片はやがて、空間に30センチ四方のスクリーンを形造った。
スクリーンに映っているのは、宇宙船の中で食事をとっている男女の姿。
突然、その中の一人が苦しみだした。
仲間たちは慌てて抑え込もうとするが、苦しんでいる男はさらに悶え、暴れ続ける。
その胸元で布を引き裂くような音が響き……。

「ひ、ひえええっ!!」

とんでもない光景を見ようとしていることを悟ったのび太が、慌てて目を覆った。
それでも、容赦なく耳に飛び込んでくる、体を内側から食いちぎる音。
生きながら、食い殺される男の断末魔。
そして、聞いたこともないようなおぞましい雄たけび!

『キィシャアアアアア!!』
「やややや、やめて! お願いだから、もうやめてっ!」

のび太が涙交じりの叫び声をあげたとたん、立体映像は砕け散り、幾何学模様に戻った。
地面にひざまずいて、息もできないのび太に、どこか楽しそうなサポートAIの声が聞いた。

【どうでしょう? 完璧なまでに獰猛で危険でしょう? 私なら、『ゼノモーフ』の巣穴の中まで再現できます。巣穴の中には、巨大な『ゼノモーフ・クィーン』もいますよ】
「こんなのだめに決まっているじゃないか! しずちゃんがこいつらを見たら、気絶しちゃうよ!」

と、今にも失神しそうな声でのび太が言った。

「ドラえもんがこの秘密道具の中には、見るだけで危険な記録があるって言っていたけど。本当だったんだな。君の中に、もっと大人しい猛獣はないの?」
【また無茶な要求を……大人しかったら、猛獣って言わないじゃないですか?】

まったく、これだから炭素脳は、非論理的で、理解しがたい。
電子のため息を漏らしながら、サポートAIはとりあえずデータベースの中に納まっている宇宙生物のカタログを片っ端からのび太に見せることにした。
空中に次々と映し出される地球上の生き物とは、似ても似つかない奇怪な生き物たち。
おっかなびっくり、目の前で流れていく映像を眺めていたのび太が、ふいに歓声を上げた。

「待って! さっきのやつをもう一回映して! そいつじゃなくて、もうひとつ前の! あ、これこれ! この黒豹みたいな生きものはなんて言うの?」
【ああ、これはお目が高い。今、お選びになったのは宇宙船「ビーグル号」が発見したクァール猫。またの名をケアルと言いです】
「綺麗な生き物だね。これも危険な宇宙生物なの?」
【肉体の強さでは、怪獣Xに及びませんが、宇宙船も操縦できる知能の高さから、デンジャーランクは、一つ上のSランクに定義されております。改造された個体の中には、犯罪トラブルコンサルタントで働いているものもいますが、野生状態のクァール猫は、文句なしの危険生物です】
「決めた! こいつにしよう! ライオンにちょっと似ているのが気にいった! このクァール猫を出してよ」
【了解しました。どこに出現させましょう】
「そりゃ、いまここで……あ、ちょっと待って」

のび太の頭上で、ろくでもないアイディアを思いついた時に浮かぶ架空の電球がぴかりと光を放った。

「こいつを、この建物のどこか、僕の知らないところに出現させてよ。そっちの方が、ハンティングのスリルを味わえるからね」
【ご要望うけたまわりました。では、シミュレーターON!】

でも、ゼノモーフの幼生を見ただけで気絶しそうになっていた人が、クァール猫の不意打ちを受けても大丈夫なのかな?
幾分かの不安を感じながら、サポートAIはその再現機能を作動させた。



■  ■  ■



無数の鉄骨が縦横無尽に走り、太古の生物の化石にも似た建築現場。
そのいずこかで、黒い雲のようなものが生まれた。
雲はしばらく空中を漂った後、空間の一点を目指して凝縮し始めた。

巨大なネコ科の生物のごとき体を作る。
ビロードのように滑らか黒い毛皮を作る。
肩から吸盤を備えた二本の触手を生え、頭からは耳の代わりとなる巻きひげピンと立つ。
その頭蓋骨の中で、餓えた残酷な知性が芽生えた時、獣は黄金色の瞳を見開き、低く喉を鳴らした。
求めるのは獲物の悲鳴、その体に宿る温かい血、血の中に含まれた新鮮なカリウム!

未来において、宇宙船「ビーグル号」の中に侵入し、二桁の隊員を引き裂いた殺戮者。
『黒の破壊者』の異名をとる魔獣が、今地球の大気の下に解き放たれた!



■  ■  ■



自分が追跡者から獲物になり下がったことにも気づかぬ男たちをひきつれてホテル・ギャラクシーの中に入ったとき、ゴルゴは奇妙な違和感にとらわれた。
意識の中に紛れ込んだ雑音の正体を探るために、人間離れした鋭敏な感覚を総動員する。

なんだ、これは?
獣臭か、トラやライオンに似ているが、どちらでもない。
嗅いだ記憶のない匂いだった。

一瞬、引き返そうかという考えが頭に浮かんだ。
しかし、ゴルゴは思いついてすぐに、そのアイディアを否定した。
獲物たちをまだ十分に引き付けていない。
このまま引き返そうとすれば、不信感を与えて一人ぐらい逃がしてしまうかもしれない。

それよりは、すばやく仕事を済ませてこの場を離れた方が良い。
後ろから付いてくる男たちを脅えさせないように拳銃を胸のホルスターに収めたまま、ゴルゴは早足で歩きだした。
そのスピードに追い付こうと、男たちもペースを上げて、ホテル・ギャラクシーの闇の奥へ入り込んでいった。

古代の賢人の中には、運命を引力に例えたものがいる。
劉備玄徳に対する曹操猛徳のように。
織田信長に対する羽柴秀吉のように。
並はずれた運気を持った者は重力のような力でお互いを引き寄せるという。

その言葉は真実かどうか確認するすべはない。
しかし、今、この薄闇に包まれた建築現場で、賢人の言葉は現実になろうとしていた。

……ぴちゃん。
天井の鉄骨にたまった水滴が落ちる音がする。
のび太は未だに見ぬ猛獣に思いをはせながら、気配を殺して歩く。

……ぴちゃん。
天井の鉄骨にたまった水滴が落ちる音がする。
ゴルゴは後を追いかけてくる相手の速さと距離を確かめながら、奇襲の機会を図る。

さだめの縦糸と横糸に導かれるままに、
一人は獲物を探して通路を曲がり、
一人は獲物を罠にはめるために通路を直進し、

世界を幾度も救った少年(えいゆう)と、
世界を畏怖で震わせてきた男(しにがみ)が、


―――ついに出会った。



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