男女関係色々あります男と女がいれば、まあ、色々と起きるものなのです男女関係複雑ですルイズと才人、その関係まさに摩訶不思議なのです男女関係のもつれは…NiceBoat?刺されたり、首斬られたりは断じて勘弁なのですよ「高い所から学院を見下ろすのも、また乙なものなのですね。」「それは良いけど、ちゃんと着陸場所探してるか?」現在私達は学院の周辺に楽に着陸が出来る場所が無いか探しているのです。離陸時に酷い目に遭いましたから、着陸時にも同じ目に遭うのは勘弁なのですよ。「うーん、あの直線街道が丁度良いとは思うのですが…。」「ケティもそう思うか?」トリステインには大王ジュリオ・チェザーレ時代の街道がいくつか残っているのですが、学院の近くにもあるのですよね。「ただ少し、狭いのですね。」「ケティもそう思うか…。」きちんと舗装されているので、草原に不時着するよりはいいような気もするのですが側溝があるので、はまったら大惨事なのですよ。「やはり仕方がありません、学院の前の道に着陸しましょう。 多少起伏がありますが、草原に不時着するよりはましな筈なのです。 後でコルベール先生とオールド・オスマンに頼んで、平らな滑走路を造れば良いのです。」「仕方が無いな…ケティ、舌噛まないようにしっかり口閉じておけよ?」才人がそう言うと、蒼莱は緩やかに旋回しつつ速度を下げていくのでした。「学院の前にぴったりつけてやるぜ!」「別にそんなチャレンジをしなくても。」蒼莱は徐々に速度を落として行き、接地し…大きくバウンドしました!?「なんのおおおぉぉぉっ!」それでも才人は何とか態勢を立て直しますが、速度があり過ぎやしませんか!?「死んでも命がありますようにっ!?」「何の、根性!」プロペラピッチをリバースにしたのか、急激に速度は落ちていきます。「何とか…止まった。」「今度は何処の世界に生まれ変わるのかと、一瞬考えてしまったではないですか…。」…死ぬかと思ったのですよ。「風防を上げてください、そろそろ来るはずなのです。」「わかったけど、誰が?」そう言いながら、才人が風防を上げたのでした。「眩しい人に決まっているのですよ。」「眩しい人?」その時、学校の門の向こうがきらりと輝いたのでした。「…ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!」ズドドドドと擬音を響かせながらやってきたのは…。「うぉっ!眩しッ!?」「こここれは、これはいったい何なのですかな?」そう、『眩しい人』こと、コルベール先生なのでした。「目が、目がァ!?」「どーもどーも、コルベール先生、ただいま帰還いたしましたのです。」そう言いながら、もがく才人を尻目に蒼莱から降りたのでした。「目がああァァ!?」「おお、君は確か一年のミス・ロッタではないか。 これはいったい何なのですかな?」「これは蒼莱といって、才人の世界の空を飛ぶ乗り物なのです。 魔法をまったく使わずに、風竜よりも早く高く飛ぶ事が出来るのですよ。」私がそう言うと、コルベール先生は驚いたように目を見開いたのでした。「目がああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」「それは素晴らしい!? い、いったいどういう原理でそうなるのかね? 知っている限りでいいから教えてくれたまえ。」「はい、私の聞き知っている限りであれば。 …はい、なんですふぁ、さいひょ?」ちょんちょんと指で肩を突かれたので、振り返ってみると指がぷにっと頬に突き刺さったのでした。「なにふるのれふか?」「無視すんなよ。」ちょっぴり涙目で、才人が私を睨み付けていたのでした。「集まった他の連中に、可哀想なものを見る目で見られたじゃねえか。」「あれは無視するでしょう、常識的に考えて。」いくらコルベール先生の禿頭が眩しいとはいえ、もがき苦しむほどではないのですよ。「俺渾身のリアクションを完全スルーとか、悲し過ぎるだろ…?」「あんなベタなリアクションに、いちいち反応するのも癪だったのです。」「…そろそろ良いかね?」痺れを切らしたコルベール先生が話し始めたその時、視界にふわっと上品に広がったピンクブロンドが目に入りました。「ええ、才人の国の乗り物ですし、才人に聞けば答えてくれると思うのですよ。」「なるほど、確かにそうですな!」「ええっ、ちょ、ま、ケティ!?」才人の制止を無視して、私は先ほどピンクブロンドの髪が見えたところに向かって歩いていったのでした。「それでは早速聞きたいのだが…。」「ひええぇーっ!?」始祖に祈っておいてあげるので頑張れ、なのです。「あ、居ましたねルイズ。」「…才人と二人っきりだったの?」ルイズが自信なさげに私を見たのでした。「あなたに依頼された通り、才人が私を含めて女の子と妙な事にはならないようにしておきましたよ?」タルブでたらふくワインを飲んだ後、朝まで記憶が無いのですが、才人の様子を見るに誰とも何も無かったと思うのですよ。「…ほんと?」「ええ、この件に関して嘘は無いのですよ、始祖に誓って。」まあもっとも、私は始祖の事など欠片も信じてはいないのですが、今回は嘘偽り無いのですよ。「その割には、サイトとだけ一緒に来たみたいだけど…?」飽く迄も、そこをツッこむのですね、ルイズ。「あれは元々一人乗りなので、何とか席をでっち上げても二人が限界だったのですよ。」「ああ言えばこう言われる…何だか一生口で勝てる気がしないわ。」元々コミュニケーション下手なルイズが、《見た目は少女、記憶はヲタク(♂)、でも人格は少女…の筈》の私に口で勝とうなど、100年早いのですよ?「うう…心配が無いのはわかったけど、どうしよう?」そう言いながら、ルイズはコルベール先生に質問責めにあっている才人をチラ見しているのです。「気まずいのはわかりますが、恥ずかし紛れに肉体言語で語ったら完全に終わるのですよ? そうしたら、私の努力も全てパアなのです。」ここぞとばかりに攻勢をかけようとするシエスタを散々妨害したせいで、私は彼女に才人を巡るライバルだとすっかり勘違いされてしまったのですよ…。「う…わかってるけど、自信無いわ。」そう言って、ルイズは私の後ろにササッと隠れたのでした。「ゆ、ゆっくり、ゆっくり前進して。」「1つ言っておきますが、ルイズの髪の毛はとても綺麗で目立つのですよ?」横にふんわり広がってしまうので、私の体格で隠すのはどう考えても無理なのですよね。「それでもいいから、進んで。」「…意味が全く無いような気がするのですが、仕方が無いのですね。」私はそろりそろりと後ろにルイズを隠しながら才人に近づいて行ったのでした。「あ、ケティ、た…助けてくれ! こういうのケティの方が詳しいだろ!?」「ミス・ロッタが、何故…?」「………………。」そういう事を面と向かって言われると、滅茶苦茶困るので止めて欲しいのですよ。…はぁ、こういう私が制御しきれないうっかりが起きるから、才人には前世の事を教えるつもりは最初無かったのですが、仕方が無いのですね。「実は私の実家には、こういう《存在し得ない工芸品》に関する古い資料があるのですよ。 一般人に過ぎない才人よりも、きちんとした資料を読んだ人間のほうが詳しいのは道理なのです。」「そうそう、ケティはこういうのにくわし…いでーっ!?」「な、なるほど!それは是非一度読んでみたい…けど、無理ですな。 そ、そうだ、今度取り寄せて…。」偽の古文書とは言えど、書いてある事は全て本当なのですから、見せるわけには行かないのですよ。同時に才人の足を、《お願いだから黙っていて欲しい》という切なる願いを込めて、思い切り踏んづけてみたのです。「先生の好奇心には敬意を表しますが、取り寄せる事は出来ないのです。 当家の古書の多くは、ロマリアの焚書を免れた貴重な資料が多いもので。」「う…ううむ、そうかね、残念だ…本当に。」それに偽古文書だとばれるのは拙いですし、コルベール先生には悪いですが、持ってくるわけには行かないのですよ。「その代わり、この蒼莱に関する事で私の知り得る事は何なりとどうぞ。」「おお、本当かね!」「え、ええ、飽く迄も私の知り得る事だけなのですが。」顔を近づけ過ぎなのですよ、コルベール先生。事故ってキスにでもなったら、燃やしますよ?「そ、その前に才人、ルイズが仲直りしたいそうですよ?」「え!?ちょっと、ま、待って…。」待たないのです、とっとと和解しやがれなのです。「え、ええええええと、な、何してたの?」「宝探し。」いきなり現れたルイズにテンパったのか、才人も言葉少なめなのです。「そ、そう、無事で良かっ…じゃなくて、ご主人様に無断で出て行くとは、い、いい、ど、度胸じゃないの?」「俺、クビじゃなかったか?」「…うっ。」ルイズが泣きそうな顔になりました。…それじゃあ嫌そうにしか見えないのですよ、才人?「こ、ここで挫けちゃ駄目よ、ルイズ…。 ケティからあらかた話は聞いたわ、だから弁解の機会を与えてあげる。 聞いたけど才人から直接教えて、いったい何があったの?」「シエスタとは何もしてない、あれは不幸な偶然がいくつも重なった結果だよ…って、自分でも何であんなになったのか信じ難いんだが。」それこそが、ラブコメ主人公属性の為せる業なのですよね…時折巻き込まれる私はたまったものでは無いのですが。「本当に、何も無いのね?」「ああ誓うよ、シエスタとは何にも無い。 そもそもあの時だって、彼女来たの初めてだし、そんな事に早々なってたまるかよ。 だいたい、俺とルイズだってなんにも無いじゃねえのさ、何であんなに激怒すんだよ?」「ううぅっ…。」またルイズが泣きそうな顔に…いや、これは泣きますね、乙女の最終兵器《泣き落とし》なのです…まあ、これは本気で泣いているわけなのですが。この高等テクニック、後学の為に是非勉強せねば。「うっ…ぐすっ…ひっく。」「ちょ、そこで泣くのは卑怯だろ!?」案の定、才人は慌てふためき始めたのです。「だ…だって、あんな事言ったのはいいものの、本当に居なくなったらって思ったら不安になったんだもん。 貴方は使い魔で、わたしはご主人様なのにサイト全然私の言う事聞いてくれないし。 その癖ケティの言う事にはホイホイ従うし、そのせいでどう見てもわたしよりもケティのほうがご主人様に見えるし。 どうせ、わたしは言う事理不尽だし、本当は何を言いたいのかわからないし、怒りっぽいわよ、うぇーん!」「い、いやさ、わかってんなら直せよ…な? あと、いつの間にかあんまし関係の無い事まで言って無いか?」「直せるならとうの昔に直してるわよ、サイトのばかー!えーん!」おお、何というカオス。どう考えても悪いのはルイズなのに、全ての因果を通り越して悪いのは才人という空気が醸成されつつあるのですよ。「ああもう、わかったよ、何だかわからんけど俺が悪かったから、もう泣くなっての。」泣く娘と範馬勇次郎には勝てないといいますし、当然いえば当然の結果かもしれないのです。「やれやれ、二人とも仕方が無いのですね…ああ、すいませんミスタ・コルベール。 それでは質問にお答えしましょう。」「うむ、それではまず…。」この後数時間に渡って、コルベール先生の質問攻めは続いたのでした。取り敢えず、知っている事は全部言いましたが、あれで良かったのやら…。「才人、はい、スパナなのです。」「お、サンキュー。」現在私と才人は蒼莱のコックピットの中。才人と一緒に助手席をでっち上げたものから、きちんとしたものに変更している最中なのです。ベルトは紐で縛りつけるものから、革の4点式ベルトでがっちり固定できるものに変更しました。ベルトの留め金も、ギーシュに頼んで作ってもらったので完璧です。粘土で作った工具の原型を少々無理して鉄に錬金してもらったりもしましたし、何だか最近縁の下の力持ちとして大活躍なので、今度何かきちんとしたお返しをしなくてはいけないのですね。ギーシュの喜ぶもの…女の子?「しかし、ここまでがっちり作りこむ必要があったのか?」「助手席から誰かが吹っ飛んできて、一緒に墜落したいのですか? こちらの金属は大日本帝國時代の大量生産品に比べても冶金技術が遥かに劣るのですから、かなりがっちりしないと戦闘機動を行ったときに危ないのですよ。」原作でもルイズは戦闘機動を行う零戦の中で転げまわって傷だらけになっているのです。危ない事するなーとか思っていたので、しっかり覚えているようなのですよ。こんな所ばかりしっかり覚えているというのが、何とも軍オタの性というか何というか…。「戦闘機動…か、やっぱ戦争になるのか?」「レコン・キスタは革命をハルケギニア全土に広げようとしているのです。 ついでに言えば、連中にはこの世界の戦争における良識も常識もありません。 才人、アルビオン王党派が一気に押し込まれた原因を知っていますか?」ワルドはレコン・キスタを利用して、この国の腐敗部分を粛清しようとしていたようですが、この国の腐った連中ばかりがレコン・キスタに賛同しているというのが笑い話なのです。彼らは王権の縮小または排除と、それによる自らの権益拡大の事しか考えていません。わかりやすく言うと、この国がレコン・キスタに負けた場合、まともな貴族が一掃されて、腐った貴族だけが残る事になるのです。レコン・キスタにこの国が滅ぼされた場合、この国の腐敗ぶりは手の施しようの無いくらい酷くなるでしょう。「いや、知らないけど。」「休戦協定を結んで王党派が緩んだ直後に、協定を破って奇襲を仕掛けたのです。 レコン・キスタにはルールは守られるという前提があるからルール足りえるのだという事が、いまいち理解出来ていない人間が頂点にいるようなのです。 今度も我が国と休戦条約を結ぶとかいう話になっているようですが、たぶん彼らは莫迦の一つ覚えみたいに同じ策を使うでしょう。」実際、原作でも破られましたしね。「タイミングはたぶん姫様のお輿入れに合わせて。 アルビオンから親善の為の艦隊がやってくるそうですよ?」「その話、姫様にしたのか?」洒落にならない話を聞いて真剣な表情になった才人が、私の方を見たのでした。「いいえ、していないのです。 姫様伝いでばれると大変な事になりますし、チャンスでもありますから。」「チャンス?」才人が不思議そうな表情を浮かべたのでした。「ええ、奇襲というのは相手が知り得ないからこそ、奇襲になるのですよ。 そしてこれは、奇襲を仕掛けてきた相手にも言える事なのです。 奇襲を仕掛けて混乱する筈だった相手が平然と反撃してきたら、びっくりすると思いませんか?」「奇襲を仕掛けてきた相手を奇襲するってのか、えげつねー。」戦いとは正義が勝つものではなく、勝ったものが正義なのですよ。「この情報はモット伯の伝手を使って、トリステイン艦隊司令官のラメー伯だけに伝えてあるのです。 後はラメー伯が信じるか信じないか…なのですよ。」レキシントンは既に撃沈済みなので、新型砲をどの艦に積んだかは未知数なのですが、トリステインも艦載砲を最新式のカルバリン砲に切り替えたので、事前の情報さえあれば全滅はしないと信じたいのです。8.8cm.Flak(アハトアハト)をロマリアから借りてこられればトリプルベース火薬も手に入って最高なのですが、まあ贅沢言ってもしょうがありませんし。「信じるかね?」「信じなければピンチなのですよ、タルブが。」シエスタの家にはお世話になりましたし、村の皆にも世話になったので、被害をなるべく減らすことが出来ればベターなのですよ。「たっ、タルブがピンチってどういう事だよ!?」「タルブ周辺は開けた草原が多くて、陣地の構築が容易なのです。 加えて交通の要衝でもありますから、アルビオンが攻めてくる場合、タルブ一帯を確保してくるのは確実なのですよ。」さらっと言っておきます、さらっと。そうすれば…。「何でその事をシエスタに教えてやらないんだよ!」ほら、乗って来たのです。「飽く迄も私の予測に過ぎないからなのですよ。 領民が大量に逃げだしたら、領主は追手を差し向けます。 そうなったら、事態はカオス化してもう無茶苦茶なのです。」「だからって! タルブの皆を見捨てるのかよ!」才人が、私の肩を力いっぱい握りしめたのでした。「痛いのです…離して…。」「ケティは見捨てるつもりなのか!?」最近才人はデルフリンガーで素振りをやっているせいか、どんどん筋肉がついてきているのですよね。それを考えると、少しだけドキドキします。「見捨てるなんて冗談ではありません。 タルブを破壊されたら美味しいワインが飲めなくなってしまいます。」「茶化すな!」うーん…少々怒らせすぎましたか?「だからこそ、この蒼莱の整備をきちんと行うのですよ。 蒼莱であれば、この世界の航空戦力など物の数ではないのですよ、おそらく軍艦も。 ガソリンの増産体制も整えたので、あとは滑走路だけなのです。」モンモランシーを中心にして、学院の水メイジにお小遣い稼ぎ感覚でガソリンを増産してもらっているのです。お金の出所はモンスター退治で儲けたお金からなのです。モンモランシー以外はお金に疎いので、ちょろいものなのですよ、うふふふふ。「弾薬も複製して見せますから、期待しておいて欲しいのです。」「うーん、よくわからんけど、ケティが何とかするし、俺が何とか出来るって事か?」この蒼莱は試作機なのか何なのかは知りませんが、57㎜機関砲が電気発火式で、しかも薬莢回収機構まで着いていたのですよ。たぶん、薬莢回収機構がある理由はA-10と同じだとは思うのですが、電気発火式とは何というハルケギニアに優しい設計。薬莢をリロードする時に傷などを修復してあげれば、発火機構が壊れない限り、事実上半永久的に使えるのです。必要なのは弾頭とダブルベース火薬だけで、空飛ぶヘビ君涙目。味皇様はとんでもない機関砲を置いていきましたといった感じなのでした。さすが紺碧世界の兵器…これなんてチート?なのです。「ええ、私達に出来るのは蒼莱をきっちり飛べるように整える事なのですよ。 あとで飛行場の造成を学院長に陳情しに行ってくるのです。 期待しておいてください。」そう言って、かなり久しぶりのVサインを才人に見せてみたのでした。「…はぁ、またなの?」「私たちの中で一番色っぽい人に色仕掛けを頼むのは当然だと思うのです。 シエスタは使用人なので論外ですし、モンモランシーやジゼル姉さまでは、そこの起伏が足りませんし。」そう言いながら、やる気の無さそうなキュルケの胸を指差したのでした。ええ、また学院長室の前なのです。あれから二日ほど経ち、滑走路を作る為のお願いをする為に学院長室まで来たのでした。「ケティもやりなさいよ、あんたそこそこあるでしょ?」「キュルケと並ぶと、哀れなものなのです。」キュルケのは、まさに大迫力なのです。「持てる者は持たざる者に施すのが筋というものなのですよ。」「あんたは間違いなく持てる者の側に入るわよ。 …と、言うわけで、さあ脱ぎ脱ぎしましょうねー♪」そう言いながら、キュルケが私のブラウスのボタンに手を伸ばし始めました。「や、やめてくださいキュルケ、よりにもよって学院長室の前で。」「踊るのは私がやってあげても良いけど、せめて谷間くらいは出しなさい。 じゃないと不公平でしょうがっ!? あんた火メイジの癖に服装がきちんとし過ぎなのよ、もっと情熱的に、扇情的にっ!」あっという間に私のブラウスは、キュルケみたいな着崩しスタイルに早変わりしてしまったのでした…。「こここれは…扇情的に過ぎ…って、何やっているのですか、キュルケ?」「んー?前から思っていたけど、貴方のスカート長過ぎるのよ。 あのルイズですら結構短くしているのに。」そう言いながら、キュルケは針と糸を器用に使って、私のスカートの裾をあっという間に短くしていくのです。「何という以外な特技…。」「何時如何なる場合でも、お洒落には手を抜かないのが私の信条なの。」…っと、感心している場合ではないのですよっ!?「こんなに短くしたらパンツが見えてしまうのですよ! こここんな短いスカートは未だかつて履いた事が無いのですっ!」「パンツ見えるのを気にしないで、メイドを助けに行った娘が何を今更。 女は度胸よ。」こんな事に度胸を使いたくないのですよ。「それにね、普段冷静な娘が恥らう姿はとても良いものなのよ?」「それならば、タバサでも良いのでは?」タバサの方が、私よりも余程クール系なのですが。「ケティ…それは犯罪よ?」「一応、ああ見えて彼女は私よりも1つ年上なのですよ…?」キュルケの言いたい事には、全く同意なのですが。「タバサには悪いけど、学院長の好みは出ているところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいる娘だわ。」「喜ぶべき事なのやら、悲しむべき事なのやら…。」まあ、次期ガリア女王にセクシーダンスとかさせるのは後々問題になりそうな気がするので、喜ぶべき事なのですよね。「…で、では、行きましょうか。」こんな姿を衆目に曝すのは勘弁なのですよ、学院長に見せるのも嫌ですが。「失礼します。」「何かn…ぬおおおぉぉっ!?」学院長が私の姿を見て、びっくり仰天しているのです。ええ、ええ、そうでしょうとも、普段は徹底的に肌を出さないようにしているのに、胸元は思い切り開いてブラが覗いていますし、サイハイソックスを履いているのに絶対領域が出来るくらいスカートが短くなったのですから。「な、何でしょうか?」「い、いや、その姿は…。」私を見て鼻の下を伸ばすな、なのです。「き、気にしないでください。 それよりも、学院長にお願いがあって参ったのです。」「学院長、私達のお願い、聞いて下さるわよね?」「むほほほ、良い良い何でも言いなさい。」とっとと用件を済ませて元の姿に戻らないと、羞恥心で死ねます…。「先日私達が持ってきた飛行機の滑走路を造っていただきたいのです。 魔法実習の課外授業として、出来る限り速やかに。」「滑走路…?それは何じゃ?」「こんなのよ。」そう言って、キュルケが羊皮紙に書かれたイメージ画と、その仕様を手渡したのでした。「幅10メイル長さ500メイルの表面を錬金で石に変えて舗装した平坦な広場に、ガソリンを入れるタンクと、飛行機を入れる格納庫とな?」「ええ、あの蒼莱を安全に離着陸させる為には必要なのです。」自分で言うのもなんですが、かなり無茶振りなのです。「確かに学院の生徒を総動員すれば、作る事は不可能ではないがのう…。」「お願いしますわ学院長。」そう言って、キュルケが学院長の腕に自分の腕を絡めて、流し目を送りながら胸を押しつけたのでした…って、キュルケが目で何かを促していますが、ひょっとして私にもやれと?「お…お願いします学院長、貴方だけが頼りなのです。」いきなりこれはハードル高いのですよ…と言う事で、腕を掴むだけで済ませるのです。「う、うむ、皆で何かをするというのは教育上良い事じゃしのう。 許可するぞい、後で教師を招集するから、その時に話そう。」「あ、ありが…ぅひゃう!?」お…お尻を触られたのですよ。キュルケのほうがいい形をしているのですから、あっちだけにしておいて欲しかったのです。自分達で色仕掛けしておいてなんなのですが、この性犯罪者を何時までも学院長としてのさばらせて良いものかと少々考えてしまうのですよ。「で、でででは、これで失礼するのです。 それでは学院長、滑走路の件よろしくなのです!」「あ、ちょ、ちょっと待ってケティ!?」私は逃げ出すように学院長室を後にしたのでした。「うううぅぅ、お尻触られたのです…ぐすっ。」まさか、あんな怖気が走る感覚とは、思ってもいなかったのですよ。才人に押し倒された時とかは、もっと広い範囲を触られたのに特にそんな感覚はなかったのですが…って、何考えているのですか、私は!?「やれやれ、あの変態学院長にも困ったもんだわね…って、あらケティ、泣いてるの?」「ぐすぐす…今回でわかったのです、この手段は多用すべきでは無いと。 効果が劇的だからといって、多用したら貞操の危機なのですよ。」まさに性の切り売り、女の最後の手段、ハイリスクハイリターンなのですよ。「そうそう、手段は選びなさいよね。」「…申し訳ないのです、キュルケ。」これは嫌がって当然なのですね。「わかったんならいいわ。 今後はこういうのは勘弁してよね?」「ええ、私もこりごりなのですよ。」学院長には悪いのですが、当分顔も見たくないのです。「でもこれで取り敢えず、飛行場の目処は立ったのですね。」「ダーリンと二人きりでソウライ乗る為なら、エンヤコラってね。 すごく早く高く飛ぶのをタルブで見てから、あれにどうしても乗ってみたくてしょうがないのよ。」話を聞く限りでは、才人よりも蒼莱が気になっているようなのです。キュルケは新しいものとか、珍しいものとかに目が無いので、当たり前といえば当たり前かもしれないのですね。「最初は、ルイズと才人なのですよ?」「一番最初に颯爽と乗り込んだ人が何を仰るのやら?」ははーんとキュルケが鼻で笑ったのです。「あれは移動の為だったので、数えなくて良いのですよ。」私は輸送ついでに、取り付けた複座が安全に使えるかどうかを試しただけなのですよ。本音を言えば、ただの趣味ですが。「…不思議よねえ、何であんたって好きな男を他の女とくっつけようと努力するの? ギーシュしかり、ダーリンしかり…。」「なななっ!?」確かに私はギーシュの事がちょっと好きかも知れませんが、何で才人まで!?「と・く・に、ダーリンと仲いいわよねえ、最近? 二人一緒にソウライの狭い操縦席で何やっているのかしらぁ?」「複座の固定だけではなく、怪我をしないように複座の周辺を色々といじっていたのですよ。 才人はあれの構造を把握しているので、参考にする為に呼んでいたのです。」「…それは私も常々聞きたい事だったのよね。」…と、急に廊下の影からルイズがにゅるっと出てきたのです。「本当のところを正直に話して、才人と…その…変な事していても、貴方をどうこうしようとは思わないから。」「…ルイズ、もう少し才人を信用してあげて欲しいのです。 才人は無節操に女の子に手を出せるような男では無いのですよ。」そう、才人はルイズ一筋、多少の浮気心はあれども、何時だって何処だってルイズが一番なのですよ。「私襲われたけど、ケティも押し倒されたでしょ?」「うっ…ま、まあ、才人も思春期の男の子ですし、時々不用意に男としてのほとばしる本能に突き動かされる事はあるのではないかなと思うのですよ?」「うーん…ルイズやケティにそういう事をしておいて、私にしないというのは不愉快だわ。」こんなの、張り合う事ではないのですよ、キュルケ。「まあ何にせよ、学院長室の近くで立ち話もなんですし、お茶でもしながら話しましょうか? 苺のショートケーキ(ガトー・オ・フレーズ)をマルトーさんに作ってもらったのですよ。」「そうね、確かに立ち話する場所じゃあないし、立ち話でする話じゃあないわ…で、苺のショートケーキって何?」苺のお菓子に食いつきますね、ルイズ。「スポンジケーキの間に半分に切った苺と甘い生クリームを挟んで、それを更に生クリームで覆ってから、苺で飾り付けたケーキなのです。 見た目はおとなしめですが、すごくふわふわして甘酸っぱくて美味しいのですよ。」「わ、わ、それ美味しそう、早く行きましょ、早く食べたいわ。」ルイズの目がめっちゃ輝いているのですよ、ひょっとして才人の事はどうでも良くなっていたりしませんか?「ル、ルイズ、そんなに引っ張らなくても…。」「苺のショートケーキが私を待っているのよ、留まる事など許されないのだわ。」そう言いながら、私はルイズにずりずりと引き摺られて行くのでした。「…ルイズはまだ色気より食い気なのかしらねえ?」そんな、キュルケの呟きが聞こえるのです。取り敢えず、今この時は色気よりも食い気が勝っているのは間違いないのですね。「おいしい♪ 水臭いわよケティ、まさかこんな美味しいケーキを知っていただなんて。 うにゅー、幸せー♪」ルイズは食べ始めてから、たれルイズと化しました。「これは確かに…とても美味しいわね。」キュルケも、ルイズほどではありませんが幸せそうな笑顔なのです。「ん。」うっすらと幸せそうな笑みを浮かべつつ、パクリと食べてコクコク頷く…って、貴方は何処の騎士王ですか、タバサ?現在私達はヴェストリの広場の一角にテーブルを並べて、ケーキとお茶を楽しんで居るのです。ちなみに、途中でふらりと現れたタバサと、給仕をしてくれているシエスタの合わせて五人なのです。「おいしそう…って、なんで視線を合わせてくれないのよ、ケティ? まさか、私に分ける気ないの?」「色々とごちそうさまな人に、食べさせるケーキは無いのです。」ああ、ちなみに私達が食べているケーキを隣のテーブルでギーシュと見せつけるようにいちゃついていたモンモランシーがもの欲しそうに見ていますが、無視なのです、無視。赤貧貴族はシュガーポットの角砂糖でも嘗めていやがれなのです。貴方はギーシュと甘い雰囲気を思う存分楽しんでいるのですから、それでお腹いっぱいでしょう、ふんっ!「ギーシュはとりあえずここに放っておいてそっちに行くから、ケーキ分けてよ。」「駄目ったら駄目なのです。」「けちー、私も食べたい食べたいー!」駄々っ子ですか、貴方は。「仕方がありませんね…シエスタ、準備してあげて欲しいのです。 出来ればギーシュ様にも。」「はい、ミス・ロッタ。」そう言って、シエスタはケーキを切り分けて皿に盛り始めたのでした。「わぁ、甘い香り、おいしそう…ぱく。 んー、生クリームの甘味とイチゴのほのかな酸味がマッチしてすごく美味しい。 ああ、幸せ。」「ケーキに、完膚なきまでに負けたのかね…僕は。 ぱく、むぐむぐ…確かにこれはとても美味しいが、美味しいがしかし。」ギーシュが盛大に落ちているのですが、放っておいていいのですか、モンモランシー?「ミス・ロッタ、お茶のお代わりはいりませんか?」「ありがとう、頂きます。」そう言うと、シエスタは私のカップにお茶を注いでくれたのでした。「そういえばシエスタ、貴方はタルブで休暇中だったような気がするのですが?」「確かにマルトー料理長は休みを取っても良いと言って下さいましたけれども、即帰ってきましたの。 才人さんとミス・ロッタが一緒に居るのに私がタルブにいたんじゃあ、不安でおちおち眠る事も出来ませんわ。」だから、それはシエスタの勘違いなのですよ。張り合うなら、ケーキの甘味のせいですっかりたれているピンクの人と張り合って欲しいのです。「あなたが張り合うべき人は私などではなくて、このピンクなのです。」「ケーキ、おいしー♪」ふんにゃり弛んだルイズの顔面に浮かぶ恍惚の表情。もう8個目なのですよ、タバサと張り合う気なのですか、ルイズ?「またまた、御冗談を。」「冗談など、言ってはいないのですよ。」まあ確かに、このルイズを見たら冗談と勘違いされても仕方が無いような気はするのですが。「才人が好きなのはこのピンク色のワカメであって、私ではないのです。」「おいしぃ~♪」「うーん、でもサイトさんって、ミス・ヴァリエールよりもミス・ロッタの方を頼りにしているように見えるんですけど。」その一言で、ルイズの動きが止まったのでした。「…ふ、ふははははは、ついにメイドにまで言われてしまったわ。」そしてそのまま突っ伏したのでした。 「実際ね、私が何でケティの事を信頼しつつも危惧しているかと言うと、それが一番大きいのよね。 ケティとサイトの関係ってね、私が思い描いていたご主人様と使い魔なのよ。」ルイズはそういって私を見たのでした。「二人の関係については、取り敢えず置いておいて。 教えてケティ、サイトと仲良くするコツって何?」「コツ…なのですか?」さてはて、何といえばいいものやら。まさか、才人が来た世界に近い平行世界の人間の生まれ変わりですなどというわけにも行きませんし。「ええと、ヒステリーを起さない。」「無理ね。」「話をよく聞いてあげる」「かなり苦手だわ。」「あまり高飛車に接しない。」「果てしなく困難だわ。」「自分の思っている事を素直に伝える。」「生まれ変わらなきゃ不可能だわね。」「なるべく悪い方に物事を考えないようにする。」「人間誰しも出来ない事の一つや二つはあるものよ。」えー…と。「…諦めてください。」「何でよっ!?」やれやれ、年上にこんな事をするのは気が憚られるのですが。ルイズのこめかみにギュッと握った拳を押し付けて、ぐりぐり回し始めたのでした。「人どうしが普通に仲良くする為に必要な事を何一つ出来そうも無いって、どんだけなのですかっ!?」「あだだだだだだっ!? だ、だってっ、私っ、昔からっ、家族以外にはっ、姫様くらいとしかっ、まともにっ、話した事無いのよぉっ!」いやまあ、ルイズの境遇から言ってそんな感じの人生だったのはわかりますが。…ちょっぴりぐりぐりを強めてみるとしますか。「いだだだだだだっ!なんか、なんか強くなったっ!?」「せめて一つくらい改善しないと、仲良くなるなんて先の先の話になってしまうのですよっ!」メイジとしての今までの境遇には同情しますが、、これからもそのままでは人格が歪んだままなのですよ。そんな人にはウメボシぐりぐりの刑なのですっ!「わわ、わかったわ、何とかする、何とかやってみるから、やめて、ぐりぐりやめて!」「…で、具体的にどこを矯正しますか?」「ぴ~ひょろ~♪」そう言うと、ルイズは目を逸らして口笛を吹き始めました。「なるほど、つまりもう一度この拳骨が唸る…というわけなのですね?」「や、やめて、拳骨嫌、痛いのもう嫌。 エレオノール姉さま並みにおっかないわ、今のケティ…。」表情をなるべくツンと冷淡にし、見下ろすように睨んでみたら、効果てきめんなのでした。「うー…話をよく聞く事なら、何とかなりそう。」「では、まずはその方向で頑張ってみれば良いと思うのですよ。 それが才人と仲良くなる第一歩なのです。」ルイズの歪みは一つずつ直して行った方が良いと思うのですよね、人として。まあ、実はあまり自信は無いのですが。数日後、生徒総出で始めた滑走路整備が、何とか終わったのでした。皆疲れただの、何であんなもんの為に俺たちがだのとブーたれていますが、知ったこっちゃないのですよ。ふはははは、主に私の趣味とついでに国家の為に働け愚民ども、なのです。心の声なので、本音丸出しなのですよ。「…また何の悪だくみしてるのよ?」「悪巧みなどしてはいないのですよ、モンモランシー? 私を腹黒いと決めつけるのはいかがなものかと思うのです。」私はちょっぴり企み事が好きなだけの、純情可憐な乙女なのですよ?「私以外の水メイジを二束三文でこき使ったくせに。」「どうせ、彼ら彼女らは実家から仕送りをたっぷりもらっているのですよ。 実家が極めつけにド貧乏なのはモンモランシーだけなのです。」「ド貧乏…。」極めつけが抜けているのですよ、モンモランシー?「正直、私だけこっそり多く貰っているというのは心苦しいのよね。」「そのぶん一番沢山働いてくれているではありませんか?」「まあ、それはそうなんだけどね。」モンモランシー以外の生徒は金儲けを舐めているのか、働きがいまいちなのですよね。数で補っているから、問題は無いのですが。「働いている人間には多く出すのですよ、これは経済の基本なのです。」「うーん、良いのかなぁ?」「良いのですよ。」「良いのかなぁ?」「良いのですよ。」「良いのかなぁ? …まあ、良いか。」そうそう、一杯貰っているのに文句を言ってはいけないのです。「ああそうだった、報告に来たのよ、私。 ガソリンは貯蔵タンクいっぱいになったわよ。」「これで完璧、なのですね。」かかってきやがれアルビオン、なのです。「でもあのソウライって、本当にアルビオンの竜騎士よりも強いの?」「竜騎士は手も足も出ないでしょうね。 ただの空飛ぶ的になるのがオチなのです。」近代兵器の凄まじさは、生まれ変わってからの方がより理解できたような気がします。蒼莱にしても、紺碧世界の兵器だという事を引いてもなお、無茶苦茶なのですよ。「大変、大変よーっ!」キュルケが学院から走って来ました。…滑走路の造成、さぼっていたのですね、わかります。「どうしたのですか、キュルケ?」「トリステインの艦隊と、アルビオンの艦隊が交戦を始めたって、今使者が!」姫様の腰入れが近いので、そろそろだとは思っていましたが、とうとう来たのですね。「才人ーっ!」私は才人の方に駆け出しながら、大声で才人を読んだのでした。「何だーっ?」蒼莱の整備をしていた才人が、大声で呼び返してきました。「アルビオンが攻めて来たのです!」「来るもんがとうとう来たか…よし、乗ってくれ。」私が乗ってもしょうがないのですよ、才人。「いいえ、乗るのは私では無いのですよ。 ルイズ、助手席に乗っていますね?」「え?う、うん、詔を考える為にいい場所だったから…。」コックピットからルイズの声が聞こえて来たのでした。「…というわけで、ルイズと一緒にタルブに飛んでください才人。」「何で?」才人の頭の上にでっかいハテナマークが浮かんでいるのが見えるようなのです。「使い魔が戦いに赴くなら、主人が一緒なのが道理なのですよ。」「それは確かにそうね。」キュルケがうんうんと頷いているのです。「そうなの?」「そうなのです。」私もこくりと頷いて見せました。「なあタバサ、そうなのか?」「ん、常識。 逆はそうでもない。」使い魔だけを矢面に立たせたりしたら、家名の名折れなのです。「…で、なぜわざわざタバサに?」「んー、タバサならたぶん騙さないような気がするし。」がーん、がーん、がーん…少々言葉のマジックを使い過ぎましたか、私?「え?あ?も、もちろん、ケティが俺の事を騙そうとキュルケと組んだんじゃないかと思ったわけじゃなくて。」「もういいのですよ、ふーんだ。」いくら私でも拗ねますよ、これは。「じゃ、じゃあ行ってくる…な。」「ハイハイ、ゴブウンヲー。」「棒読みかよ…いや、正直スマンカッタ。」そう言って、才人はキャノピーを閉じたのでした。「レビテーション。」例のアレンジ版レビテーションでプロペラを回すと、爆音を放ってエンジンが回り始めたのでした。学院の横に造成された1000メイルの滑走路を、蒼莱が滑走していきます。機首が持ち上がり、ふわっと浮いて、蒼莱は青い空に溶け込んでいったのでした。「それでは、私達も行きましょうか。」「どこに?」キュルケが不思議そうに問い返して来たのでした。「もちろん、タルブに。 お世話になりましたし、人命救助くらいはやってのけましょう。」「なるほどね、じゃあ行きましょうか。」「ん。」キュルケとタバサが頷いてくれたのでした。「僕も行くよ、めっちゃ怖いけどね。」「はいはい、回復役は必要だものね。」冷や汗を流すギーシュと、しょうが無いと言った感じのモンモランシーも同意してくれたのでした。「それじゃ、しゅっぱーつ!」ああ、私の科白がキュルケに…。