爆発しました使い魔召喚の儀の翌日、教室が吹き飛びました爆発するのは、不満とかもありますよね?でもやつあたりは無様だと思うのですよ爆発した後って、すっきりしますよねでも、まだ不発弾は残っていたりするのですよ自業自得とはいえ、酔っ払ったギーシュに押し倒されそうになってから数週間が経ちました。彼は酔っ払った時の事も覚えているタイプらしく、私を見ると顔を真っ赤にして走り去っていきます。女の子に慣れていると思っていたのですが、案外初心なんですね…いや、私も気まずいのは同じなのですが。「ケティ、ケティ?」昨日は春の使い魔召喚の儀式があったのです。まあ昨日がその日とは知らずとも、あれだけ爆発音が学校中に響き渡れば自ずとわかりますけれども。「貴方、またボーっとしているわね、ケティ。」ジゼル姉さまが、私を半目で睨んでいます。「ケティは時々ぽやーっと考え込むのよねえ。」三年生のエトワール姉さまが、微笑みながら私を見ています。「…で、何の話でしたか?」「見なさい! この子が私の使い魔、バグベアーのアレンよ。」姉さまの横にバグベアーがふわふわ浮かんでいます。これが《このロリコンどもめが!》で有名な、バックベアード様の元ネタなのですか。「可愛いでしょ、ね?可愛いでしょ? このつぶらな瞳といい、もさっとしたこのふもふももさもさ感といい、最高のバグベアーをあたしは当てたのよ!」つぶらというには目がでかすぎますし、ちょっぴり血走ってますし、全身黒すぎてどう見ても不気味なのですが…まあ、ジゼル姉さまが気に入っているようですし、これはこれで良いのでしょう。「まあ可愛い、私も触ってもいいかしら? あらあら、随分毛が柔らかいのねえ。」…エトワール姉さまは物怖じするとかそういう感覚がない人ですから、気にしたら負けです。「ほらほら、ケティも触ってみなさいな。」エトワール姉さまに促されて触ってみましたが。「これは、なんというもこもこ感。」…確かに癖になりそうな手触りです。「私のルナも連れてきたかったのだけれども、あのコ体が大きいから。」ルナというのはエトワール姉さまの使い魔で、ロックと呼ばれる全長20メイル近くにもなる巨大な鳥なのです。見た目はすごく大きくてカラフルなオウムに見えます。もちろんオウムですから言葉の真似もします。最近よく話すのは『ルナチャンカワイイ!』ですが、どう見ても可愛いというよりは怖いのです。「ケティが召喚するのは、どんな使い魔になるのかしらねえ?」「このこと同じ火のトライアングルのミス・ツェルプストーはサラマンダーを呼んでいたわね。 変り種だと、平民の男の子を召喚したミス・ヴァリエールなんてのもいるけど。」サイトはきっちり召喚されたようですね。「平民なんて高等な生き物をよく呼べましたね。 ミス・ヴァリエールはすごい方なのですね。」「へ、なんで? 平民ならそこらへんにいくらでもいるじゃない。」ジゼル姉さまも平民が呼ばれた事の凄さに気づきませんか…。「言葉を話せる召喚生物なんて、そういるものではないのです。 韻竜などの高等幻獣くらいですよ、言葉を話せるだなんて。 つまり会話が交わせるということは、とても高い知性を持った生き物だということなのですよ。 それを召喚できたミス・ヴァリエールは凄いのですよ。」「なるほど、そういう考え方もあるのねえ。」エトワール姉さまは何でも受け入れすぎな気もします。「むむむ…あのゼロのルイズが凄いとケティに評価されてる。 私だってまだそんなこと言われたことないのに…ずるい。」ジゼル姉さまみたいに受け入れた上で、対抗心燃やすのもどうかと思いますが。「おおその香水は、もしやモンモランシーのものじゃないか?」「そうだ!その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のために調合している香水だぞ!」おや、とうとう始まりましたか、二股イベント。アップが必要かなと思い、軽く背伸びをします。「そいつがギーシュ、お前のポケットから落ちてきたという事は、つまりお前は今モンモランシーと付き合っている、そうだな?」「ち、違う!それは大いなる誤解だ!」…あー、まあ、私と目が合いましたからね。それは焦りますよね、うんうんわかります。ギーシュを挟んで向かい側にはモンモランシーもいますしね。「いいかい、彼女の名誉のために言っておくが僕は…ケ、ケティ!?」「ギーシュ様、その香水があなたのポケットから落ちてきたと、今私は聞きましたが…事実ですか?」顔を伏せて肩を震わせながら問い詰める、我ながら迫真の演技なのです。恨まないでくださいね、貴方には原作どおり才人覚醒の為の礎となってもらいます。「酷いですギーシュ様、私に森の中であんな事をしておいて、ミス・モンモランシとも付き合ってらっしゃったなんて!」「…ギーシュ、どういうことかしら?」…って、何でジゼル姉さまが私の肩に手を置きながら問い詰めに加わっているのでしょう?「じ、ジゼル?」ギーシュの声にものすごい焦りの色が…はて?「あなた、去年も私とエトワール姉さまに二股かけようとしたんだけど、覚えているかしら?」何…だと…?「あらあら、ギーシュ君久しぶりねえ。」エトワール姉さまの口調は変わらないのに、何か凄く黒いオーラを感じるのは何故なのでしょう?「あたしにエトワール姉さま、そしてケティ。 ラ・ロッタの女がそんなに好きかしら、ギーシュ?」「確かにおっとりお姉さま系にお転婆系に天然系とジャンルに富んでいて良いなって気はするけど、いや違うそういうことではなく、僕は、僕はだねえ!」本音が駄々漏れですよ、ギーシュ。あと、天然系って私の事ですか?「僕は何かしら、ギーシュ?」ギーシュの背後に金髪縦ロールが迫ります。ついに真打ち、モンモランシーが来たのですよ。「モンモランシー!? 違うんだ誤解なんだ誤解なんだよ大いなる誤解で誤解なんだ。 遠乗りに行ったり酔っ払って押し倒したりしたけど未遂だったんだ誤解なんだよなあわかってくれよモンモランシー!」どう見ても浮気です。本当にありがとうございました。「嘘つきいいいいぃぃぃぃぃぃぃっ!」「ぶぺらば!」ズドム!とかいう凄まじい音ともに、モンモランシーの掌底がギーシュの腹に突き刺さりました。モンモランシーは、「く」の字に曲がったまま動かなくなったギーシュの横のテーブルにあった、ワインのビンを握ります。「この、浮気ものおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」「ばぺらっ!」そしてそのまま振り上げてから一気に後頭部に振り下ろし、ギーシュを地面に叩きつけました。「ふんっ!そこの三姉妹とせいぜい御幸せにっ!」そのまま振り返りもせずに、彼女は立ち去っていきました。惨殺死体を残して…。「悪は滅びたわ…。 あたしたち何もしていないけれども。」「私たちも帰りましょうか、姉さまたち。」これ以上攻撃を加えたら死んでしまいそうな気もしますし。「今後ケティに手を出したら、焚刑に処すわよ、ギーシュ君。」なんか、エトワール姉さまが怖い事を言っていますが、聞かない事にします。「ではギーシュ様、ごきげんよう。」問題はアレですね、果たして彼は決闘出来るのでしょうか?《才人視点》「…ええと、頭大丈夫か?」モンモランシーとか呼ばれていた金髪縦ロールに見事なコンボ決められてダウンしたギーシュとかいうやつに、恐る恐る声をかけてみる。俺が香水渡したのが原因だから流石に気まずいというか、浮気した奴が悪いには決まっているけど、やられ方が凄惨すぎた。「ふっ…。」そいつは緩慢な動きで立ち上がって、汚れた顔を拭い始めた。「あのレディたちは、薔薇の存在の意味というものをまだ理解していなかったようだね。」「そんな事より、足が生まれたての小鹿みたいにプルプル震えているけど、頭大丈夫か?」薔薇がどうたらはどうでもいいが、あれだけの勢いでぶん殴られたら頭が心配になる。血も出てるし。「君が軽率にもあの瓶を拾い上げたりするからだろう。」「いやまあ、確かにあんなになるとは思わなかったけど、それより頭大丈夫か?」まさかなあ、あれだけの女の子を引っ掛けている男がいるとは思わなかったんだよ。なかなかいるものじゃないだろ、常識的に考えて。「君のせいでモンモランシーとケティだけではなく、ジゼルとエトワールの名誉にまで傷がついた。 僕という薔薇に群がる蝶たちに恥をかかせたこの落とし前、いったいどうしてくれるのかね?」「いやそれは、そんなしょっちゅう二股やる奴が悪いだろ。 それよりも頭大丈夫か?」なんか、結構出血しているんだが。「そうだ、その平民の言うとおり!」「お前が一番悪いというか、可愛い女の子を独り占めしようとするような奴は地獄に落ちろ。」ですよねー…じゃなくて、友達が頭から血を出してふらついているんだから誰か助けてやれよ。「良いかい給仕君、僕は君が香水の瓶をテーブルに置いたとき、知らない振りをしていたじゃあないか。 話を合わせる機転ぐらい、利かしてくれたっていいだろうに。」「ンな事知るか、俺は給仕じゃないし。 そもそも二股なんか、こんな狭い場所でやっていたらたちどころにばれるっつーの、馬鹿かお前は? それはそれとして、頭大丈夫なのか?」町から離れた生徒数百人の学校なんて、うわさが広まったらあっという間だろ、常識的に考えて。「給仕ではない…? ああ君はゼロのルイズに召喚された平民か。 平民に機転を望むのも無茶な話ではあるか…無駄な時間だったな、行きたまえ。」「薔薇銜えながらしゃべるなんて間抜けな事している奴に、見下されるいわれはねーよ。 気障なつもりなのかも知れないけど、傍から見てるとただの馬鹿だってことに気づけ、装飾過剰なんだよ、ボケ。 あと、本当に頭大丈夫かお前、血がだくだく垂れてきているぞ?」何かフラフラしているけど、本当に大丈夫かな、こいつ?「…君は貴族への礼儀というものを知らないようだね。」「あいにく俺の国の貴族制は半世紀以上前に廃止されたんでね、貴族への礼儀なんて知るわけねえよ。 それよりも、頭大丈夫か、気が遠くなってきていないか?」今思い切りよろけたんだが、早く医務室に連れて行った方が良いんじゃないだろうか?「君のような無礼者には、貴族である僕が直々に礼儀というものを手ほどきしてあげなければ駄目だろう。」そう言いながら、ギーシュは俺の顔に手袋を投げつけてきた。「決闘だ!君に決闘を申し込む!」「いやいいけど、その前に医務室行ってこいよ、な?」決闘どころじゃねえだろ、その状況…。「貴族の食卓を血で穢すわけにはいかない、ヴェストリの広場で待っているから、そこまで来給え。 逃げたりしないようにな。」「おう、わかったから、決闘でも何でも受けてやるから早く医務室行けよ。 怖いんだよ今のその状態。 そのヴェストリの広場で待っていてやるから、早く医務室に行ってくれ、お願いだから。」顔真っ青なんだよ、気づけよ自分で!「わかった、医務室には行ってやろう。 逃げるんじゃないぞ、平民。」今回の件でわかった事が今のところ一つある。貴族のプライドってのは大事なんだなって事だ。あんなぶっ倒れそうになりながらでかい態度続けるとか、マジあり得ねえと思う。貴族だけには絶対になりたくないな。