「ど、どうし…もが。」アイーシャの突然の発言にヨシアが思わず大声で叫ぼうとしたのを、ケティが手で塞いで止めた。「タバサ、この部屋から音が漏れないように出来ますか?」「ん、窓閉めて。」ケティが窓を閉めると、タバサが呪文を唱えた。「遮音…ん。」そして発動ワードを言い、コクリと頷いた。これで遮音はばっちりらしい。「ヨシア、もうびっくりしても良いですよ…およ?」「あう…あう。」ケティはヨシアが暴れないように押さえつけていたのだが、そのせいでヨシアの頭は思い切りケティの胸に押し付けられている。「ヨシア、やっぱり同じ人間の方が良いのね…呪うわ。」暗い表情になって、アイーシャはボソリと呟いた。「大丈夫、大丈夫、貴方はオンカミ○リュー族並みにいいモノ持っているではありませんか。」「むぎゅ…。」羽生えている女性は巨乳になるのですかねーとか思いつつ、ケティはヨシアをアイーシャの胸元に押し付ける。「きゃっ!ヨシア!?」「あう…あう…あう…。」初心なヨシアは、完全にフリーズしていた。「ヨシアも気に入っているようで、重畳重畳…いたっ!?」「良くない。」タバサの鈍器がケティの頭に直撃した。「からかい過ぎちゃ駄目。」「あいたたたた…わかりました。」軽くとは言え、タバサの杖(=鈍器)の一撃は痛かったらしく、涙目でケティは頷いた。「も…もう、私くらいなら翼人じゃ普通よ。」「成る程…。」頬を赤らめて胸を両腕で守るようにするアイーシャを見つつ、ケティは《本当にこっちに飛ばされてきたオン○ミヤリュー族だったりしませんよね?》とか思っていた。「ヨシアはこの通りなので、アイーシャからお話をどうぞ。」「え?ええ…人間のメイジの方々、貴方達は私たちを追い払いに来たのでしょう? それであれば、もう必要ありません。」そう言って、アイーシャはヨシアの方を向いた。「ヨシア…私達は今年、増えるのを止めるわ。 だから、あの場所に巣は張らない事に決めたのよ。 私達は戦いを好まないから…森のもっともっと奥に移動して、そこで来年増える為の準備を始める事にするわ。 だからね、貴方ともお別れしなくちゃいけないの。」「そ、そんな…アイーシャ。 き、騎士様、姐御さん、どうにか出来ませんか!?」必死な表情で、ヨシアはケティ達に訴える。「…ヨシアまで私を姐御呼ばわりですか、そーですか。 いや、引っ越して居なくなってくれるというのであれば、私達も敢えて追ったりは…。」「先延ばし。」お役所的対応のままなケティが言い切る前に、タバサはぽそりとそう言った。「でしょ?」そして、そろそろ意地悪していないで説明してあげてと目配せする。そんなタバサに、ケティは軽く苦笑してから頷いた。「…ま、確かにいずれはぶつかるでしょうね。 そのやり方はタバサの言う通り、貴方達翼人と私達人間のこの地に於ける問題を数十年先伸ばしにするだけでしょう。 このままだと遠からず貴方の部族は人間に追い詰められ、死に絶えます。」「そ…そんな。」ケティが言い放つ情け容赦無い現実に、ヨシアは絶句する。そしてケティはそんなヨシアに対し、更に言葉の刃で斬りつける。「ヨシアこそ意外そうな顔をしないで下さい。 樵が木を切り、切り終わった後の地には開拓団が入って畑に変えていく。 そしてその地には翼人などの亜人が住める場所など無い…貴方の親が、曾祖母が、先祖がずっと行ってきた事ですよ。 貴方の村の人間が何故に翼人を嫌うかわかりますか? 経験則として知っているのですよ、木を切り続ける限りは亜人とは最終的に敵対関係にならざるを得ないと。 であればなるべく早いうちに排除しておいた方が、後々面倒な事にならないとね。」「そんなの、何となくわかっていたよ。 でも嫌なんだ!俺はそんなの嫌なんだ! アイーシャ達翼人は俺の知らない森に関する色々な事を知っている。 彼女達は森の住人にして森の守り手なんだ、排除なんかしちゃいけないんだ。」ヨシアはそう言いながらケティに詰め寄るが、ケティはそんなヨシアを無視してアイーシャを見て口を開いた。「さてアイーシャ、貴方はどうしたいのですか? このまま問題を先延ばしにして、緩慢に滅び行くことを選びますか?」「ど…どうすれば?」アイーシャも、自分達のとる行動が滅びにしかつながらない事を告げられて動揺している。「これは部外者である私がどうこうする問題ではありません。 私は、貴方が滅びを選ぶのか、それとも一か八か他の方法に賭けるのか、どちらを選ぼうが知った事ではないのです。」「一か八かの方法って何だよ? 何か方法があるなら、意地悪しないで教えておくれよ姐御さん!」「…姐御やめい。」実のところケティは、ヨシアに向かって話してもいた。ぶっちゃけた話、この件の解決の鍵になりそうな片方と話していたら、もう1人もやってくるだなんて鴨が葱背負ったような状況を見逃すわけには行かない。行かないのだが、この件をタバサとケティが中心になって解決してしまうのは拙いのだ。それではこの件はタバサとケティに《解決させられた》事になってしまい、二人が去った後に責任を負える者が居なくなってしまう。そういう状況は脆く、何時元の木阿弥に戻るかわからない…それでは駄目なのだ。だから二人は飽く迄も吹き込むだけ、決断するのは樵と翼人という事である。「樵達が翼人を排除しようとするのは、翼人が自分の利益にならないどころか、害でしかないからです。 では翼人の存在そのものが樵達の利益になるのであれば、どうでしょう?」「私達の存在が、樵の利益に?」ケティにそう言われたアイーシャは首を傾げる。自分達が樵の利益になるという状況が、いまいち理解出来ないらしい。ケティはヨシアの方を向いた。「商売の話をしましょうという事です。」「よ、翼人と商売?俺達が?」ヨシアも首をかしげた。そもそも翼人には商売という概念が無いのだから、商売のしようが無い。アイーシャも困惑の表情を浮かべている。「私達が商売だなんて…。」ヨシアと触れ合うことで人間への理解があるアイーシャでも、商売まで行くと流石に微妙なようだ。「いやいや、そんなに難しく考えないでください。 商売というのは、なにもお金を介してやり取りする事のみを指すものではありませんよ。 商売とは詰まる所、お互いの利点を交換し合う行為です。 まあつまり何を言いたいのかと言いますと、樵は翼人が居る森を他の人間による破壊から守り…。」そう言いながら、ケティはヨシアの手を取って、アイーシャの手と重ねた。「…翼人はその樵達に利益を提供するという事なのですよ。」「わかりにくい。」タバサからケティに駄目出しが入った。「もったいぶり過ぎ。」「…そんなん言うなら、タバサがやってくださいよ。 つか私、ヘルプなのに喋り過ぎじゃありませんか?」ケティの言葉に、タバサがふるふると頭を横に振る。「私は長い台詞を言うとかむのられりょ。 らかりゃしぇちゅめいすりゅのはむりにゃ。」「嘘つけー!何か可愛いけど、それは嘘なのです!」「ん、嘘。」タバサは真顔でサムズアップした。彼女は何の前触れも無く唐突にふざけるので侮れない。「ははは、こやつめ~。 そんな奴にはデコっぱちの刑なのです。」そう言いながら、ケティはリボンでタバサの前髪を後ろにやって、おでこを全開にする。イザベラ同様ガリア王家の遺伝なのか、タバサの広いおでこが秋の風にさらされた。「寒い…。」タバサは身を震わせる…寒いらしい。「私は荒事の方が向いてる。 口八丁手八丁ならケティ。」「…ルイズといい貴方といい、そっち方面私に丸投げですか、そうですか。 まったく、やんごとなき御方らってのぁ…。」ケティは額を押さえて溜息を吐いた。「…つまり、翼人は樵が切った後の場所の木の根を全部先住魔法で引っこ抜いてください。」ケティはそう言いながらアイーシャの方を見る。「そして樵は翼人が巣を張っているライカ欅は切らないようにして下さい。」そして今度はヨシアのほうを見た。「後はですね、樵の方々はライカ欅の苗を翼人と一緒に植樹して下さい。 さいわいこのあたりは平らではなく山がちな地形ですから、営林を行っても領主に文句は言われないでしょう。」「営林…って、何ですか?」アイーシャが不思議そうに首を傾げる。「森の木々を計画的に運用するという手段なのです。 木を切った後に木の苗を植えて上手く育つように管理し、一定の大きさになったら伐採するというのがざっとした流れですね。 上手くいけば樵は切る木に困らなくなり、翼人は巣を張る場所に苦労せずに済むようになります。 当家領にて実験中の技術なのですが、当家領は森が有り余っているので、あまり実験のし甲斐が無くて…。」ラ・ロッタは《謎の大魔境》扱いされるだけあって、領地の殆どが人跡未踏の森に覆われている。外から入ってくる人が殆ど居ないので緩やかにしか人口が増えず、人口が増えないので開拓出来ない。ぶっちゃけた話、木を切っても後から後から生えてくるのでラ・ロッタ自身には営林する意味が無かったりするのだが、狭い国土から森が消えつつあるトリステインでこれ以上木が無くなると、木材を求めてラ・ロッタに命知らずの挑戦をする者が出かねない。なのに、ラ・ロッタ家が近隣の家領に営林実験の申し出をしても断られるばかりで、上手くいっていなかった。木なんてのは切れば生えてくるという感覚が、トリステインだけではなくハルケギニアでは一般で、営林という思考が出来ないのだ。始祖が光臨した時は一面の大森林であったと言われるハルケギニアが今では殆どが畑と町となり、残った森も水の聖域であるラグドリアン湖周辺を除いて年々小さくなり続けているのにも拘らず…である。「森が有り余っているだなんて、何てうらやましい…そちらに移り住みたいわ。」アイーシャが心底羨ましそうにケティに言うが…。「蜂の眷属に加わりたいなら、何時でもどうぞ。 翼人ならば山の女王も受け入れましょう…ただ、空を飛ぶのにいちいち蜂の許可が必要になる上に、蜂と一緒に鍬持って働く羽目になりますよ? うち、人手不足なので。」「蜂って…貴方ラ・ロッタなの…? 空を取り上げられるだなんて、それこそ死んだ方がましだわ。」アイーシャがドン引きしてケティを見る。「ええとアイーシャ、ラ・ロッタって何処だい?」「一言で言えば…謎の大魔境かしら?」首を傾げて訊ねるヨシアに、アイーシャが返答している。「…またまた謎の大魔境ラ・ロッタ扱いですかぃ。」本当に空を飛ぶ方々には人・亜人の別を問わず、とことん不評なラ・ロッタ領だった。「ラ・ロッタが嫌であれば、ここで生きていく術を見つけましょう。 人間と翼人で森を育て木の共同管理を行えば、それは双方にとっての利となります。 人間には質の良いライカ欅を、翼人には巣を張りやすいライカ欅を。 利権は人と人を結び付ける強固な絆になります。」そう言いながら、ケティはにっこり微笑む。「そしてそれを説得するのはヨシアとアイーシャ、貴方達です。 それぞれがそれぞれの勢力を説得して下さい。 期限は三日後…頑張って下さいね。」「そ、そんな!? 俺に皆を説得しろって…。」「私も自信が無いわ。」二人は動揺するが…。「御互いの事を愛しているのなら、そのくらいの事は成し遂げてください。 私達は所詮余所者であって、貸す事が出来るのは知恵か力かなのです。 地元の事は地元の者が解決しなければいけません。」今回の件の責任を背負うべき二人には度胸と覚悟を身に着けてもらわないと、いざ何かが起こった時に解決できないであろうから、まずはそれを身につけてもらう必要がある。「あ…愛し!?」「な、何でバレてるんですか!?」ヨシアとアイーシャは、顔を真っ赤にして言うが。「わからいでか~。」「ばればれ。」ケティどころかタバサにまでツッ込まれたのだった。 「営林…ですかい?」ヨシアが上手く説明できなかったので、ケティがヘルプとしてやってきたのだが、サム達村人は首を傾げている。「しかし姐御…木ってのは、森に勝手に生えてくるもので御座いましょう?」「そう上手く勝手に生えて来たりしないから、エギンハイム村は何度も移転したのではありませんか。」樵達は代々木を切り尽くしては移転し、自分達の住まう村をエギンハイムと名付けて来た。何故にそんな名前を村につけているのか、今となっては誰も知らない程の昔から。「領主に言っても、実地で体験していないからわからないのですよね。 ですがサム、現役の樵である貴方ならわかるでしょう? 木の成長は遅いのです。 何の手立ても打たずに切り続ければ、今までと同じく周囲に切る木が無くなって、村の移転をしなくてはいけなくなってしまいます。 そうでしょう、村長?」ケティはサム達の親である村長にそう声をかけた。「はい…それは、そうですが。 先祖代々ワシらはそうして来ました。」「誰かが始めたからこそ、先祖代々続いているのですよ。 何事も始まりがあるものには、終わりがあります。 そして恐らく、もうすぐ終わりが来ます…破滅的な形で。」そう言いながら、ケティは目を伏せた。「ヨシアから聞きました。 このエギンハイム村には、《山の木を切ると祟りが起きて村が滅びる》という言い伝えがあるそうですね?」「は、はい…しかしそれはただの迷信では?」村長はそう言って首を傾げる。「いいえ、迷信ではありませんよ。 山の木を切ると、洪水が起き易くなります…錬金。」ケティは手元にあった木片を錬金でスポンジに変えて、テーブルの上に置いた。「山の土というのは腐った落ち葉などが砕けて細かくなっていったもので、大量の水を染み込ませる事が出来ます。 例えばこのスポンジみたいに。」そう言って、ケティはスポンジに水を零して見せた。スポンジは水を吸い込んで膨らむ。「一方で、山の土の下には岩や粘土といった、水を通さない層があります。 例えばこのテーブルみたいに。」そう言いながら、ケティはテーブルに直に水を零した。勿論、水はテーブルから溢れて床に滴り落ちる。「木はこのテーブルみたいな水を通さない層の上を、長い時間をかけて自らの落ち葉などで覆っているのです。 木は落ち葉を落とす事によって森の土を作り、自らの葉で雨が直接地面に落ちるのを防ぎます。 ではこれが無くなるとどうなるかと言いますと…。」ケティはスポンジを取り払って、その上に水を零す。勿論、水は先程と同じようにテーブルから溢れた。「平地は水の流れが緩やかで、なおかつ畑を作って土を一定の品質に保ちますから、問題ありませんが…山はそうは行きません。 雨が降れば急激な流れを作って土を削りますし、山の斜面で畑を作る技術も我々にはありません。 山から保水性のある森の土が失われれば、降った雨はそのまま濁流となって村を巻き込むでしょう。 それともう1つ、土は流れて失われる時に、時々大規模な地滑りを引き起こします。 勿論、大規模な地滑りに巻き込まれたら、村はひとたまりもありません。 恐らくエギンハイムの先祖は、山の木を切って村が洪水や地滑りに巻き込まれた事が何度かあったのでしょう。 それが《山の木を切ると祟りが起きて村が滅びる》という、含蓄深い言い伝えとなって残ったのでしょう。 迷信ではなく、破れば汝らの運命かくの如しと貴方達の先祖が記した、ありがた~い教訓だったと言うわけなのですよ。」「そ、そんな事を言われましても、必ず洪水や地滑りが起こるというわけでは…。」村長は反論しようとするが、ケティに手で押し留められる。「この村の外れには、立派な川が流れているではありませんか。 起こりますよ、洪水ならば間違いなく。 川というのは、山に降った雨水を集めて流す為に発生した自然の水路なのです。 ですからこの先木を切り続ければ、土が失われて山の水が一気に川に集まるようになり、いつか必ず濁流がこの村を襲う事になります。」勿論ケティ自身にもその洪水がいつ訪れるかなどといった予測は出来ないのだが、人に何かを言う時には大抵ハッキリと、時には半ばハッタリを混ぜつつ断定口調で語るというのが彼女の癖だったりする。「だ・か・ら、それを防ぐ為にも営林は必要なのですよ。 翼人の権益を侵し続けるのであれば、私達貴族が力づくで翼人を排除せねば貴方達との衝突は避け得ませんが、翼人と一緒にそれぞれ利益のぶつかり合わない形で森を運用するのであればそれは必要ありません。 むしろ、営林を行う為の人手が増えて、一石二鳥というわけなのです。」「しかし…翼人と組むというのは…。」領域に侵入してきたら、例え火竜だろうが集団で襲って喰ってしまうトンデモ生物(ジャイアント・ホーネット)が育った環境の身近にいたケティは、そっちが強烈過ぎるせいなのか亜人への忌避感情というのがあまり無い。彼女にとって翼人というのは羽の生えた人でしかないし、エルフは耳の尖がった人でしかないし、オーガやジャイアントは単なる気の荒いでかい人という感覚なのだ。勿論、亜人でもオークのようにヒューマノイドタイプの女と見れば人間だろうがコボルトだろうが見境なく発情してレイプするようなエロゲ生物や、ミノタウロスのように牛頭なんだから草でも食んでりゃいいのに何故か人肉大好きな人類の天敵は無理だけれども。いっぽう一般的な平民の感覚としては、大抵の亜人はメイジと同等に恐ろしい存在であり、メイジは傲慢ながらもいざ事が起これば守ってくれるから敬っているに過ぎない。「それに翼人も私達人間の事を嫌っています。 わしらがわかり合うのは難しいのでは?」「だからこそ、利をもって繋がるのですよ。 わかり合うのは難しいですが、分かり合えなくても互いを利用し合う事ならば出来ます。 皆さんは、フラリとやって来た旅の行商人といちいちわかり合わないでしょう?」 とは言え、ケティはそういう感覚があまり無いからこそ、村人と翼人同士で利用し合うという発想が出来るのだとも言える。「まあ確かに…それはそうですが。」「ですから、翼人とも取引をするのです。 貴方達が翼人を忌避している理由は言い伝えもあるでしょうが、結局のところ翼人の事をよく知らないからでしょう。 よく知らないのは何故か?接触しないからです。 接触しないから良く知らない、よく知らないから気持ちが悪い、気持ちが悪いから排除する。 ただ、排除しようとしても、亜人達にだって都合はあるから抵抗する。 抵抗するから私達メイジを呼んだわけですが…知れば何とかなります。 だからまずは触れ合う事か…。」「そんな綺麗事が通じるもんか!」樵の一人が声を上げた。「だいたい、分かったからって仲良くなれるっていう保証が無い!」「ま…それは確かに。」ケティはそれにあっさりと頷いてから、言葉を続ける。「でも知らなければ、仲良くなれるのかなれないのかすらも分かりません。 仲良くなれないという論拠も無いでしょう。 そもそも、翼人と仲良くなれた実例もあるのですから。」そう言って、ケティはヨシアを見た。「皆さんも知っている通り、ヨシアは翼人との衝突を避けるようにと主張しています。 それは何故か?翼人と偶然知り合う事が出来て翼人というのがどういう存在であるかを知り、友好関係を結べる事を理解したからです。 ヨシアに出来たのですから、それを他の人間が出来ないなどという論拠はそもそも存在しないのですよ。」「あは、あははははは…。」村人たちの視線が集まって、ヨシアが乾いた笑い声を上げた。「成る程…ヨシアに出来て俺達に出来ないってのも何か腹が立つな。」そんなヨシアを見ながら、サムがボソリと呟く。「ああ、それは確かに腹が立つな、うん。」他の樵もサムの言葉に同意する。「ヨシアに出来る事なら、俺達にも出来るか…だってヨシアだし。」「んだんだ。」何故か樵達の間に急激に楽観ムードが流れ始めた。「…ええと、物凄い信頼感なのですね、ヨシア。」「みんな酷いや!」可哀想なものを見るような視線を向けるケティに耐えきれなくなったのか、ヨシアが情けない声を上げたのだった。「まあそんなわけで…取り敢えず取引が出来るかどうか話し合ってみませんか? 上手く行けば森を求めて何度も村を移動させる生活からはおさらば出来ますし、最悪上手く行かなくても今まで通りなので損はしません。」何とかこれで上手く行ってーとか願いながら、ケティはそう言った。「まあ、そこまでおっしゃるのであれば。 皆、良いな?」「姐御がそうおっしゃるのなら、信じてみやしょう。」村長の言葉にサムが頷き、それに続いて他の樵達も頷いて行く。「これで、何とか話し合いの段取りは付きましたか…。」ケティはこっそりと安堵の溜息を吐いたのだった。「取引。」アイーシャと一緒に樹上にある翼人達の村にやって来たタバサは、村人の長に向かってそう言った。「取引…ですか。」タバサの一言に、困惑した表情で翼人の長が首を傾げる。「ん、取引。」タバサはじーっと静かに翼人の長を見る。「えーと…。」「取引。」タバサはじーっと静かに翼人の長を見る。「あ…あの、具体的な説明が欲しいのだと思うのですけれども。」アイーシャは空気に耐えきれなくなって、そう声を上げたのだった。「良い指摘。」タバサはそう言って、サムズアップして見せる。「共存の為に人間と手を組んで森を運営する。 その為の取引。」「おお、成る程そういう事でしたか。 人間と共存、共存ね、成る程成る程…。」翼人の長は合点がいったようで、ポンと相槌を打ったのだった。「…って、何ですと!?」「良いノリツッコミ。」翼人の長を賞賛しつつ、タバサは言葉を続ける。「ここから立ち去ると聞いた。」「はい、我々は争いを自ら仕掛けたりはしませぬ。 勿論一時的に戦って守る事も出来ましょうが犠牲も出ますし、次に来るのは貴方達のような数人の相手では無く軍隊…となれば、争っても無駄ですからな。」翼人達も今までの経験から、人間を追い払っても長期的にはあまり意味が無い事を自覚している。人間は群れるもの、少数の群れを排除しても今度はそれを上回る数で攻めてくるのが定石。争っても無駄なら立ち退くのが一番賢い選択であると判断し、彼らはそれを実行しようとしていた。「だから、取引。 利害の共有こそが、理解への第一歩。」「利害の共有とはいっても、我々と人間は現在対立しているんですが…。」翼人の長はそう言うが、タバサは首を傾げたのだった。「それが?」「あ?え?いえ、対立している相手と利害の共有と言われても…。」翼人の長は慌てるが、タバサは更に言葉をぽそぽそと続ける。「対立しているから、利害の調整。 調整が成れば、それすなわち共有。」「ええと、つまり…どの部分が対立しているのかを話し合って、利害を共有できる状態にすれば解決すると?」翼人の長の言葉に、タバサはコクリと頷く。「ん。利害の共有を継続できれば、相互理解も進む。」「しかし…利害の調整と共有とはどうやって?」翼人の長の問いに、タバサは部屋のど真ん中にでーんと居座っているシルフィードの方を向いた。「説明。」「きゅい!? し、シルフィは竜だから、そんな事分かんないのね! あの腹黒娘が《えーりん!えーりん!》とか言っていたけど、何の事やらさっぱりでした、きゅい。」無茶振りされたシルフィードは、頭をぶんぶん振って分からない事を主張する。「カンペ。」「人間の字なんか読めないのね!」ケティが書いたアンチョコをタバサが手渡そうとしたが、シルフィードは字が読めない。そういえば教えていなかったなと思い出したタバサは、今度教えようと心に誓った。「私は長い台詞を言うとかむのられりょ。 らかりゃしぇちゅめいすりゅのはむりにゃ。」「ええい、無駄な抵抗をするなこの無口娘め。 シルフィはお姉さまがもっともっと長い言葉を喋っているのを聞いたことがあるのね、きゅい!」「生臭い…。」当たり前だが、流石に使い魔にその手の嘘は通用しない。タバサはシルフィードに頭をぱくっと咥えられたのだった。「宇宙の法則が乱れるけど、仕方が無い。」無口キャラがあまり喋ると、宇宙の法則が乱れるらしい。《グランドク○ス並みですかぃ!?》とか、ツッ込めるケティはここには居ないのが悔やまれる。「じゃあ、説明を始める…。」タバサは抵抗を止めて、説明を始めたのだった。「…と、いうわけ。」勿論、宇宙の法則が乱れたので、長台詞を淡々と喋るタバサという、世にも珍しい姿はカットされたわけだが。「成る程…つまり、我々と人間とで植樹と木の管理を分担して行う事で、我々は巣を張れる木を半永久的に維持出来るというわけですな。」「ん。」翼人の長の言葉に、タバサはこっくりと頷いた。「これなら確かに人間達と共存出来るわ。 今回巣を張るつもりだった木の件だって、何とかなるかもしれない。」アイーシャはタバサの説明を聞いて頷いた。 「私達は人間達を地を這う生き物と蔑んでいた時も有ったけれども、森で倒れていたヨシアを助けて彼と触れ合って、人間を知る事が出来たわ。 そして、お互いを知る事で分かり合う事が出来た…私達はお互いが触れ合う機会さえ増えれば、きっと分かり合える筈。 お父様お願い、人間達と取引しましょう?」「ふむ…?」翼人の長は、この巣に集まっている翼人達を見回す。「確かにヨシアはいい奴だ。 たぶんあいつが特別良い奴なんだろうが、試してみる価値は有るんじゃありませんか? この騎士殿の言う通り、このまま人間達に譲歩を続けてもジリ貧だ。 俺達の伝統も変わっちまうが、人間達の伝統も同様に変わっちまうらしいし、それならあいこって事で俺はかまいません。」「ま、人間が皆あのヨシア並みに間抜けだったら、俺達は森を奪われ続けずに済んだんだが…やってみる価値はあるか。 失敗しても元の木阿弥に戻るだけだしな。」ヨシアは時々翼人の巣につれて来られていたらしく、翼人達はタバサの説明にそれなりに納得はしたらしい。「きゅい、あのヒョロい樵、意外と人望あるのね。」「親しまれ易いというのも才能。」ヨシアは弄られ体質なのか、口調では侮られつつも樵にも翼人にも親しまれていた。しかも一定の信頼まで得ているというのだから、これはある種の才能だと言える。「それが皆の意見か…うむ、わかった。 韻竜殿を従えた騎士殿、人間の集落に赴く我らの身の安全を保証してくれますかな?」翼人の長は、そうタバサに尋ねる。韻竜は本来、翼人やエルフの側の生き物であり、希少種でもある事から一部の亜人たちからは伝承に伝わる神聖な生き物とされている。その為、それを従えているタバサは彼らに信頼されるのではないかと思ったケティが、タバサ達にこちらに来てもらったのだった。「お姉さまは約束を裏切らないのね。 お姉さまが裏切らないという事は、すなわちシルフィも裏切らないということです、きゅい。」「ん。」タバサはコクリと頷いた。「あと、この件は腹黒娘がノリノリだから、村人がブチ壊したらエギンハイムに『断罪の業火』が顕現するのね。 シルフィがブレスを吐く前に、村全体が炎に包まれている筈なの、きゅいきゅい。」 シルフィードの脳裏にはケティの逆鱗に触れて燃え上がるエギンハイム村と、その中で顔芸染みた壮絶な笑顔で哄笑するケティの姿が浮かんだ。ケティに脅されて以来、シルフィードの脳内順位ではケティは怒らせちゃ駄目な人第2位に浮上していた…一位は勿論タバサである。「あ…あのとぼけた顔の女の子、そんなに怖いの?」「この韻竜であるシルフィを震え上がらせた娘なの、怒らせたら人生の終わりです、きゅい。 そっちも跳ねっ返りが出ないように抑えるのね。 火メイジに森とか、悪夢も良い所なのね、きゅい。」シルフィード的にはそのくらいおっかないという事なのであって、ケティはそんな事は…出来ないわけではないが、たぶんやらない、きっと、多分。「わ、わかったわ。 大いなる意思に誓って、こちらからは仕掛けさせない。」ゴクリ…と喉を鳴らしつつ、アイーシャは頷いた。「…………………。」そんな、ケティが聞いたらむしろ怒りそうな会話がされているが、暴発を抑える事が出来るならそれはそれで結構な事なので、タバサはあえてスルーしている。「決まり。」「後は、村で話すだけなのね、きゅい。 よかったよかったるーるるーるるるー。」心なしかほっとしたような表情になったタバサを見て、シルフィードは元気に歌ったのだった。「さて、皆さん。 お集まり戴き有難うございます。」次の日の朝、村の広場に村人達と翼人達が集まり、村長と翼人の長が広場の真ん中に用意されたテーブルを挟んで座っていた。タバサとケティとシルフィードは、二人の中間地点に立っていた。「はいはーい、皆さんピリピリしない。 ピリピリすると、この子が暴れますよー?」「食べちゃうぞ~なのね~。」シルフィードはくわっと口を開けて見せた。「ちなみに暴れ出したりしたら、タバサも暴れますよー?」「暴れたら撲殺。」タバサはそう言って、杖を握り締める。「魔法とは何だったのか…。 まあそれは兎に角、これからお互いの利害を摺り合わせましょう。」そう言って、ケティはにっこり笑ったのだった。「ゴホン、ではまず私から…。」村長が軽く咳払いをしてから、話を始めた。「貴方達は我々が木を切る事について、どう思われますか?」「木を切る事について…ですか? 特に何も思っていやしませんが。」村長の質問に、翼人の長はきょとんとした表情で応えた。「へ…?」その返答に村長は、あっけにとられた声を出した。「それが貴方達が日々の糧を得る為の手段なのでございましょう。 我々が木の実を収穫したり、狩りをするのと何が違いましょうや?」「い、いやしかし、貴方達が巣を張るのには木が必要なのでしょう?」あっけなく肯定されて、村長は少し慌てながら聞き返す。「そりゃまあ、自分達が今まさに巣を張ろうとしている木を切り倒されそうになったら、それは流石に迷惑なので防衛はします。 ですがそうでないのであれば、貴方達が日々の糧を得る為の手段を妨害したりはしませんよ。 我々は森の民ですが、だからこそ森の守り手を自称する気もありません。」「し…しかし木が無くなったら…。」「確かに巣が張れなくなったら困りますなぁ。」翼人の長の言葉はえらい暢気である。「だからこそ、そうならない為に話し合うのでございましょう?」「それは…そうですな。」村長は気が抜けたように微笑んだのだった。「無事に終わって良かったですねえ。」「ん。」翼人の長が最初に村長の言葉に対して柔和に接したためか、話し合い自体は何とか思惑通りに終わってくれたのだった。現在は昼過ぎ、昼御飯を食べ終わったタバサ達は、シルフィードに村人や翼人から貰った贈り物を載せて帰る準備をしていた。「結局、説得したのケティだった。」「そんな事はありませんよ、私もタバサも説明しただけ。 ヨシアとアイーシャがいなければ、説得は出来ませんでしたから、これで良いのです。」とか言いつつ、ケティもちょっと喋り過ぎたような気はしていた。「兎に角、貸しいち。」「いあいあ、勝手についてきて物見遊山させて貰ったのですから、これでチャラですよ。 そもそも、この程度であっさり纏まったのですから、元々解決の芽はあったという事なのです。」ケティはタバサの言葉を否定する。「でも、貸しは貸しだから。」「はぁ…わかりました。 でも貸し手が言うのもなんですが、無利子無担保ですよ?」ケティは苦笑を浮かべると、軽く頬を掻いた。「…普通は担保がつく?」「ええ、トイチで。」そっと尋ね返したタバサに、ケティは真顔で答えた。「…さすが腹黒娘、情けも容赦も無いのね。」「おほほほ、勿論嘘ですよ? 友人とか、親しい人々にトイチだなんて、そんな暴利を吹っ掛けたりはしません。」げんなりしたシルフィードの言葉に、ケティは笑いながら返答する。「親しい人々以外には?」「おほほほほほほ。」タバサのツッコミをケティは笑ってスルーしたのだった。「あ…あの。」「おほほほ…ほ?」ケティが振り向くと、後ろにヨシアとアイーシャが立っていた。「おや、二人ともどうしましたか…って、おやおや。」お互いの手をしっかりと握っている二人に、ケティはにやけた表情を浮かべる。「何か、暑い。」タバサは手のひらでパタパタと自分の顔を扇ぎ始めた…ちなみに晩秋なので、気温はそこそこ寒い。真顔で冷やかすと、結構シュールである。「きゅい?」シルフィードは良くわかっていないらしく、首を傾げた。「あ…あの、俺達結婚しようかと思っているんです。」「成る程、それは良い考えなのです。 エギンハイム村と翼人の部族が結びつくには、双方の代表者の血縁が結びつくのは好都合ですからね。 政略結婚大いに結構、頑張ってください。」ケティは喜んでそれに頷いた。「え…ええと、政略結婚とか言われると、ちょっと微妙な気分なんですけど。」「結婚の理由なんてどうでも良いじゃありませんか。 貴方達はお互いを好き合っている、だから結婚する。 政略結婚で相思相愛だなんて素敵な状況、そうそう起きる事じゃないのですよ。 私達貴族だって、なかなかそう上手くいきませんよ、はっきり言って羨ましいのです。」微妙な表情になったアイーシャに、ケティは満面の笑みでそう答えた。「腹黒娘は喜び方も腹黒いのね。」「女子力不足。」そんなケティに、一匹と一人は冷めた視線を送る。「がーん、女子力不足とか言われたのです。」「頑張れ。」くず折れたケティの頭を、タバサがよしよしと撫ぜたのだった。そして振り返ってヨシアとアイーシャを見て、口を開く。「二人とも、おめでとう。」私にもこういう人が見つかるのかしら?とか思いながら、ヨシアとアイーシャに祝福の言葉を送るタバサの顔は、珍しく薄っすらとほころんでいたのだった。「おおお、お姉さまがかすかに笑っている…天変地異の…痛っ!?」「からかっちゃ、駄目。」茶化そうとしたシルフィードは、タバサの鈍器…じゃなくて杖で殴りつけられた。「酷いのね、何時も何時もその鈍器は、シルフィの鱗を素通りしてダメージを与えてくるのね。 いつかシルフィは頭を殴られ過ぎで、お莫迦になってしまうのだわ、およよ…きゅい。」シルフィードはわざとらしく泣き真似をして見せるのだった。「それはそうと、おめでとうなのね…実はシルフィ良くわからないけど。」祝福しつつも、シルフィードは首を傾げる。シルフィードは人間で言うと10歳くらいの為、結婚というのが上手く理解できないようだ。「…ま、シルフィードもあと200年くらい経てば、恋をして卵を産むでしょう。 竜なんですから、そのあたりはのんびりおやりなさいな。」「きゅい、わかったのね。」「ん。」200年後だと流石に自分達は生きてはいないだろうが、ケティの言葉に頷いているシルフィードもいつか思い出してくれると良いなと思いつつ、タバサは頷く。「ああ、そうそう…今度営林の技能を研究している者をここに遣わします。 2週間くらいでこちらに到着する筈です。 メイジですけれども、気にせず付き合ってやってくださいね。」「あ、はい、有り難うございます。 父達に伝えておきます。」このハルケギニアにおける技術者は、大抵が爵位を持たぬメイジだったりする。差別とかそういうものではなく、様々なものの加工に魔法が多用されている為に平民が出来る事が限られてくるのだ。例えばゲルマニアの鍛冶屋などにしても、鉄の精錬などに使う炉の温度管理などを魔法で行う為、工房主の一族はメイジで平民の職人達はその補助を行っているに過ぎない。逆に魔法の技能が必要無い仕事であるゲルマニア商人は大半が平民であり、メイジは用心棒などに甘んじているのだが。「いえいえ、私も丁度良い具合に実験場所を確保出来て良かったですから、お構い無く。 しばらくはこちらで研究するはずですから、何か不都合があれば何でも彼に言って下さい。 場合によっては私も駆けつけます。」そう言ってから、ケティはシルフィードによじ登った。ちなみにタバサはケティとアイーシャ達が話している間にシルフィードに乗っている。「どっこいせ…っと。 ふぃー…それじゃあ行きましょうか?」シルフィードの背に座り、ケティはそう言ったが…。「年寄り臭い。」「なのね、きゅい。」「がーん、私は単にタバサほど身軽じゃないだけなのですよ。」タバサとシルフィードのツッコミに、ケティはショックを受けたのだった。「じゃ。」「さよならなのね。」片手を挙げるタバサと首を振るシルフィード。「さようなら、お元気で。」「私達、頑張ります。」「ん。」タバサが二人の言葉に頷くと、シルフィードが大きく翼を広げて羽ばたいた。『さようなら~。』二人はシルフィードの姿が見えなくなるまで、手を振り続けるのだった…が。「あ、姐御は?」見えなくなった頃にサムが慌ててやってきた。「姐御さんならついさっき帰ったけど。」「い…いや、騎士様の食事代だって、ぎっくり腰で動けないおっかさんに金貨を数枚握らせて帰っちまったみたいなんだ。 あのくらいの食料、銅貨数枚もあれば足りるってのに。」金貨数枚ともなると、この山の奥深くにある村では結構な大金である。「あ、あの、サム兄さん。」ヨシアがそんなサムにおずおずと声をかける。「たぶんそれ、村の皆をきっちりとまとめて欲しいという意味での心づけなんじゃないかな?」「つまりアレか、まとめなかったら激怒した姐御が村にやってくると…ヨシア、死ぬ気でこの調和を保つぞ。 じゃないと姐御にこの村が滅ぼされかねねぇ。」何だかんだで、怖い方怖い方に解釈されるケティだった。