色気は女の最大の武器らしいです胸なんかそこそこあれば良いのです、巨乳が何だというのですか色気が無いのは女やめているのと一緒らしいですあまり練習していなくて怖いので、化粧っ気も少ない私です、放って置いてください色気は恋によって磨かれていくものらしいですどうせ、生まれ変わってからの初恋もまだなのですよ決闘から数日たったある日の事、才人が女子寮廊下のわら束の上で毛布に包まって寝ていました折れた腕や全身の傷は跡形も無く治っています流石はヴァリエール公爵家、仕送りも貰える額がうちみたいな貧乏貴族とは段違いのようですね「楽しいですか、才人?」「楽しそうに見えるか?」しゃがんで、しげしげと才人の状況を眺めてみます藁束、薄い毛布、寒い石造りの廊下、鼻水たらしている才人と、心まで寒くなりそうな状況がこれでもかというくらい満載ですね「ふむ…楽しそうというよりは寒そうですね。 何かの罰でしょうか?」「ああ、実は…」才人はルイズが自分の藁束の中に忍び込んできた夢を見て、授業中に寝言を言った事と、それをネタにルイズをからかって怒らせた事を話してくれました「…ちょっとからかっただけじゃねーか、何も廊下に叩き出さなくても。」「それは叩き出されて当然なのですよ、才人。 いくら普段鬱憤が溜まっていたからといって、女の子のプライドを傷つけるのはやりすぎなのです。 貴族平民云々の問題ではなく、そんな事をされたら、どんな女の子も傷つきます。」才人を半眼で睨んでみたら、才人が目をそらしたので、そちらに顔を移します目をそらしたって事は、わかっているのですよね、やりすぎたって「才人は謝罪するべきだと思うのですよ、人として。」「ヤダね、誰が謝るかよあんな奴に。」口を尖らせてつーんとそっぽを向きます「小学生ですか、貴方は…」「誰が小学生だよ! …って、何でケティが小学生なんて単語を知っているんだ?」才人が藁束の上からガバッと起き上がりましたああ、あんまりのしょうもなさについ口が滑ってしまいましたなんというアホな失態なのででしょうか「ああ…いや…その、ですね、何と言いましょうか…。」「あんた日本の事を知っているのか? この国に小学生なんて単語はないし、あんた今間違いなく日本語で《小学生》って言っただろ! そういや、俺の名前の呼び方も他の連中は訛っているのに、あんただけ普通に呼んでいるよな?」ああもう、何でこんな時だけ急に鋭くなるのですか才人私の正体を貴方に曝す気なんか、全く無かったというのに「答えてくれケティ、あんたいったい…ん?」キュルケの部屋のドアが開いています使い魔のフレイムが何時の間にやらやってきていて、才人のパーカーの袖をくいくい引っ張っていました「ほ、ほら、ミス・ツェルプストーが才人の事を呼んでいるみたいですよ? 呼ばれているのですから早く行かないと、ほらほら。」「おま、ちょ、ま!」才人を引っ張りあげて、キュルケの部屋までグイグイ押しますこの後起きるアクシデントで、全部忘れてくれる事を願うのみなのです「それでは、ご・ゆっ・く・り!なのです~。」「待てや、こら。」扉が閉め切れそうになったところで、扉が開いて才人の腕がニュッと突き出され、そのまま部屋の中に引きずり込まれました「レディに何という乱暴な真似をするのですか、貴方は。」「そんなベタな逃げ切り方で、どうにかなると思うほうがおかしいっての。」ああっ、才人から向けられる視線が痛いのです「ようこそ、こちらへいらっしゃい。」「ちょ、ちょっと、レディを引き摺るとは何事ですか。 離してください、才人、才人ってば!」私はキュルケに促されて彼女に近づいていく才人に、ずりずりと引き摺られて行きますこのシーン、ただでさえカオスなのに、私まで加わったらどれだけカオスになるのですかっ!「あら?貴方はジゼルの妹のケティじゃない。 そこで何をしているのかしら?」「見ての通り、引き摺られているのです。」キュルケも蝋燭の明かりで、やっと私の存在に気付いてくれたようですあとは才人がキュルケの色香に惑わされてくれさえすれば、脱走は適うのですよ「助けてください。 具体的に言うと、才人を誘惑して私への関心を無くしてください。 その格好から察するに、元々そういう流れなのでしょう?」「あ…あのねえケティ、そういう事はもう少し遠まわしに言ってくれないと、ムードが作れないわよ?」そんな余裕は既に無いのですよこのまま才人に捕獲されたままではまずいのです「火の情熱を掌るツェルプストーといえば、片手に女がぶら下がっていようが、その女がムードぶち壊しな事を言おうが、狙った男は絶対に篭絡するのが伝統でしょう。 さあさあ私のような貧相な女には構わず、好きなようになさってください。 そのでかい胸はその為にあるものなのでしょう。」「いくらツェルプストーが火の情熱を掌っていても、片手に女の子ぶら下げた男を口説くのは無理よ! そもそも火メイジの家系というなら貴方だって同じだし、貴方は別にプロポーションだって悪くないじゃない。」物欲は果てないのですよ、キュルケ多少恵まれていようが、より恵まれている者を羨むのは仕方が無い事なのです「当家の火は情熱ではなく、炭焼きとか野焼きとか、そういう田舎っぽい火なのです。」「そうね、ルイズの姉の婚約者だったパーガンディ伯爵が婚約破棄後に娶ったのは、ジョセフィーヌ・ド・ラ・ロッタとかいう人だったけど。」あー…まあ、そういう事もつい最近ありましたねラ・ヴァリエール家は火メイジの家系に呪われているのでしょうか?「へえ、ルイズに姉ちゃんがいるのか?」才人が話に乗ってきてくれましたチャンスなので、このまま話を逸らしてルイズが殴り込んで来るまで時間を稼ぎましょう「ええ、ミス・ヴァリエールにはエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール公爵令嬢という姉上がいらっしゃいます。 この方の婚約者がいきなり婚約破棄されたあと、何故か娘の数には事欠かない当家から妻を娶りたいという話が来まして、ジョセフィーヌ姉さまがパーガンティ伯爵家に嫁いでいきました。 大事な事だからもう一度言いますが、飽く迄も婚約が破棄されてからの結婚なのです。 フォン・ツェルプストー家のように、ラ・ヴァリエール家の恋人を代々寝取っている家系ではないのですよ。」「失礼ね、ツェルプストーだって別に寝取りたくて寝取っているんじゃないわ。 ヴァリエールの人間の性格が代々きつ過ぎるから、皆耐えられなくなって逃げ出すってだけよ。 ツェルプストーの情熱は暖炉の火の如く、ヴァリエールに傷つけられた人々の心を包み込んで癒してあげたのよ。」その割には、結構強引に奪った話も多々聞くわけですが。「こりゃあ面白い話を聞いたな。」「才人、こういう醜聞をミス・ヴァリエールをからかうのに使っては駄目なのですよ? むしろ、絶対に使わないで下さい。 もしもこのネタを彼女をからかうのに使ったりしたら…消し炭になるのを覚悟していただきます。」反骨心の塊なのもいいですが、才人はもう少し自重したほうが良いのです「キュルケ…待ち合わせの時間に君がいないから来てみれば…。 おお、そこの可愛い子も一緒に来てくれるのかい?」いつの間にか窓際に人がぷかぷか浮いていました不満そうな声でしたが、私を確認した途端に一転して好色な視線を向けてきます「吹き飛びなさい。」下品な人は嫌いですキュルケの蝋燭の火を10本ほどの矢に加工して、ぶつけてやりました「へぷろっ!」「えーと、今のはペリッソン…のように見えたけど?」軽く焦げながら、名も知らぬその人は落下していきました「キュルケ!今日は君とその可愛いコの二人で一緒にいてくれるのかい!?」才人は見えていないのですか、そうですか「下品な人は嫌いだと言っています!」「ぺぱろに!」次の下品な人には蝋燭の火を20本ほどの矢に加工して、一気にぶつけてやると、炎上しながら落下していきました「ええと…今のはステックスだったかしら?」「下品な人は下品な人です。 個体識別なんか、どーでも良いのですよ。」次にも誰か来たら、容赦はせずにブッ放したい気分なのですよ『キュルケ、そ…』「消し飛ぶのです!」蝋燭の火から炎の矢を100本ほど生成して名も知らぬ三人にぶつけると、悲鳴も上げられずに落下していきました彼らにはには炎の壁がぶつかってきたように見えたでしょう「ええと、一瞬だったから自信ないけど、マニカンとエイジャックスとギムリだったかしらね?」「ミス・ツェルプストー、いったい何人とお付き合いしていらっしゃるのですかっ!」一巻のこんな細かい所まで覚えていませんでしたが、こんなにいましたか?「貴方も知っての通り、ツェルプストーは情熱の家系ですもの。 アレもほんの一部よ?」「情熱もいいですが、アレでは面倒臭くありませんか?」私は複数の男性と付き合うとか、とてもではありませんが無理です趣味や魔法の練習の時間も削られますし「ツェルプストーの情熱は、求めるもの全てに等しく分け与えられるのよ。」「理解不能なのです…。」個人の趣味ですから置いておくとして、疲れないのでしょうか?魔法の練習で連日倒れていた私が言う事でもありませんが「ツェルプストォォォォォォォォォォォッ!」「うぉ、何をするんだキュルケ!」ドアが物凄い勢いで蹴り開けられ、ルイズが立っていました隣を見ると、キュルケが才人を抱きしめていますおちょくる気満々ですね、わかります「ヴァリエール、今は取り込み中よ?」ルイズを横目で見てくすっと笑い、すぐに才人に視線を移してキスしようとしていますいやいや、私がいますから…って、キュルケが目でサインを送っていますああ、今のうちに逃げろって事ですね「誰に断って私の使い魔に手を出してんのよツェルプストー!」「それではミス・ツェルプストー、ごきげんよう。」怒りで才人とキュルケしか見えていないルイズの横を通り過ぎて、私はキュルケの部屋をあとにしましたなにやら言い争いが起きていますが、ここは一旦退散させてもらうのです「ケティ!ケティ起きてる?」翌朝、ドンドンというドアを叩く音で目が覚めました「誰なのですか、虚無の曜日は一日中寝ているのが一番なのに。」眠い目を擦りつつ、ドアを開けるとジゼル姉さまが立っていました「王都にクックベリーパイを食べに行くわよ!」「間に合っているのです。」バタンとドアを閉めました「ちょ、ちょっとケティ!いきなりドアを閉めないでよ! エトワール姉さまはデートに出かけてしまったし、クラスメイトも既に出かけてしまっていないのよ。 私一人でお店でお菓子食べるとか、寂しすぎるじゃない。」すぐさまドアを開きなおして、ジゼル姉さまが訴えてきます姉さまの背後にいるバグベアーのアレンも血走った目で訴えてきますが、怖いから止めてください「ジゼル姉さま、私は塩辛いものとお酒が好きなのです。 お菓子も嫌いじゃありませんが、わざわざ馬で遠乗りしてまで食べに行きたくなるものでは無いのですよ。」「お酒と塩辛いものが出る店で奢ってあげるからさ、ね?」そこまでしてあの甘酸っぱいお菓子を食べたいのですか、ジゼル姉さま。ちなみに私の味覚的嗜好は前世とあまり変わりはないのですよね甘いものが好きではなかった前世に比べれば、割と好きな部類に入るようになったのが違いといえば違いなのです「…まあ、そこまで言われるのであれば。 着替えますから、その間に馬の準備をお願いできますか?」「わかったわ、早く来てね!」化粧っ気があまり無いとはいえ、私も女の子ですから、それなりに身支度に時間はかかるのですよ、姉さま「お待たせしました、姉さま。」制服は楽でいいです適度におしゃれで、何も考えなくても良いところが実家でも普段は皆野良着でしたし、着物は楽なほうが良いのですよちなみに用意してあったのは、馬ではなく2頭だての驢馬車でした「驢馬…。」「驢馬しかいないって言われたのよ…。」最初から駄目駄目な雰囲気なのは何故でしょう?「…驢馬でも意外と早いものね。」「エトワール姉さまがいれば、ルナに乗ってひとっ飛びなのですけれどもね。」三時間半かかりましたが、何とか王都につきました帰ったら夜中になりますね、これは…「さあ、クックベリーパイ食べに行くわよ!」「はい、姉さま。」姉さまたちといつも行く店に入ると、キュルケとタバサがいましたテーブルには甘いものを売る店には不似合いな、包装されたでかい剣が立てかけられています「あら、ジゼルにケティじゃない。 こっち来ない?」「あ、キュルケとタバサ、王都に来ていたの…と、そのでかい剣は何?」ジゼル姉さまが二人に声をかけたあと、不思議そうに尋ねます「ああこれ?これはダーリンの為に買ったのよ!」「ダーリンって、特定の彼氏でも出来たの?」ジゼル姉さまが不思議そうに尋ねますキュルケに不特定の彼氏がいるのは、既に公然と知れ渡っているのですよね「ヴァリエールの使い魔の大活躍見たでしょ? 彼の大活躍に心が震えたのよ、この心の震えこそまさに恋だわ。 そして恋の情熱に身を任せるのがツェルプストーの流儀なのよ。 そういえばケティ、昨夜ダーリンと一緒に私の部屋に入ってきたけれども、廊下でいったい何をしていたの?」「昨夜はご迷惑をおかけしました。 才人はあの廊下で寝ている所をたまたま見つけただけなのですよ。 何故廊下で寝ているのかと話を聞いたら、ミス・ヴァリエールをからかい過ぎた結果ああなったのだといったので、彼のためにも少し諌めていました。」才人はあのどさくさで、私への疑念を忘れてくれたでしょうか?忘れていてくれると良いのですが。「店員さん、こちらにもクックベリーパイを二つお願いできるかしら? あと香草茶(ハーブティー)もお願いね。」私達が話すのを尻目に、ジゼル姉さまは既に注文を始めてしまっています「…なんという色気より食い気。」私が言うのもなんですが、ジゼル姉さまは結婚できるのでしょうか?「ケティ、なんか視線に失礼なものを感じたのだけれども。」「気のせいですよ、あと今日はお酒と塩辛いものは諦めましょう。 もう既に日が傾き始めていますから、もう一軒行ってから驢馬車なんかで帰ったら、明日の早朝になってしまいます。」エトワール姉さまがいれば一時間弱で往復できる距離なので、お酒と塩辛いものはまたの機会にしましょう「へえ、もう一軒行く予定だったの?」「ええ、いつも行っている店ですけど…お二人は行った事は無いかと思われます。 基本的に平民向けの店ですので。」 うちは貧乏ですから、あまり高い店で飲み食いできないのですよ…貴族ですから、流石に場末の安酒場にはいけませんが「店の名前は?」「星降る夜の一夜亭といいます。 お酒も料理もそこそこですが、ハシバミ草を様々な料理方で美味しくできるというちょっと変わったところが…。」そこでクックベリーパイの6皿目を平らげたタバサが、頭を上げてこちらを見ました「私もそこに行きたい。」「ええと、驢馬車だと帰りが遅くなるので、今日は諦めてここで食べ終わったら帰ろうかと思っているのですが。」そういえば、タバサはハシバミ草が大好物でしたよね私もサラダは駄目ですが、あの店のハシバミ草料理は好きです苦味と塩辛さのマッチがなんとも言えず…ジュル「シルフィードに乗せてあげる。」「あなた、本当にハシバミ草が好きよね。」少し呆れたような口調でキュルケがタバサに話しかけていますそこまでしてハシバミ草を食べたいのですか、タバサ驢馬車は置き去りになりますが…まあ、後で学院の使用人に話しをしておけば何とかなりますよね「わかりました、では一緒に行きましょう。」「ありがとう。」タバサの感情は瞳の中に出るのですね滅茶苦茶わかりにくいですが、目が輝いています「いえいえ、ミス・タバサもシルフィードの件宜しくお願いします。」でないと帰れませんからね『かんぱーい!』木製のジョッキに並々と注がれたビールを高らかと掲げて酒宴の開始ですテーブルにはハシバミ草の料理ばかりがぎっしりと、全部頼んだのはタバサです彼女はビールには手をつけず、ひたすらハシバミ草の料理を口に運び続けています「美味しいですか、ミス・タバサ。」「ん。」タバサはまさに一心不乱といった感じです年上に言うのも変ですが、何というか小動物の食事みたいでとても微笑ましい風景ですああ…なんて、なんて可愛い生き物なのでしょうか「ミス・タバサ、ここのレシピであれば、幾つか教えてもらったものがあるのです。 事前に仰っていただければ、学院でもいくつか作れますよ?」「今度お願いする。」ああ可愛い、可愛すぎますこれが萌えというものなのですね来た時はどうなるかと思いましたが、思わぬ収穫でしたああそれにしても、可愛い…