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No.7277の一覧
[0] ケティ・ド・ラ・ロッタの事も、時々思い出してあげてください(ケティに転生)[灰色](2010/10/04 10:30)
[1] プロローグ[灰色](2009/05/07 01:14)
[2] 第一話 クラッシュできないフラグもあるのです[灰色](2009/07/02 19:17)
[3] 第二話 貴族の矜持はそういう所で発揮しない方が良いのです[灰色](2009/11/22 01:19)
[4] 第三話 引き際は重要なのです[灰色](2009/10/25 15:10)
[5] 第四話 思わぬ失態と収穫なのです[灰色](2009/11/22 01:22)
[6] 第五話 人を呪わば穴二つなのです[灰色](2009/04/13 23:59)
[7] 第六話 決戦に挑むは後の勇者たちなのです[灰色](2014/05/14 22:52)
[8]  番外編 ハーレム願望も程々にして欲しいのです[灰色](2009/11/22 01:29)
[9] 第七話 男はアホな生き物なのです[灰色](2009/10/31 23:38)
[10] 第八話 格好つかない日もあるのです[灰色](2009/10/25 15:11)
[11] 第九話 これが青春だ!なのです[灰色](2009/11/22 01:30)
[12] 第十話 男心も乙女心も複雑なのです[灰色](2009/04/14 00:01)
[13] 第十一話 気付けば矢面なのです[灰色](2009/05/17 15:13)
[14] 第十二話 介入し過ぎたのかもしれないのです[灰色](2009/04/24 09:58)
[15] 第十三話 裏切りとか、壮絶な最期とか、油断とか、なのです[灰色](2009/04/25 17:31)
[16]  プレ編01 杖と契約するまで[灰色](2009/05/17 15:13)
[17] 第十四話 嵐の合間の静けさなのです[灰色](2009/11/22 01:31)
[18] 第十五話 ファンタジーといえばクエストなのです[灰色](2009/05/17 15:12)
[19] 第十六話 ついて来る人来ない人なのです[灰色](2009/05/23 11:04)
[20] 第十七話 でっち上げ傭兵団、旗揚げなのです[灰色](2009/11/22 01:32)
[21] 第十八話 往くぞ空の彼方まで!なのです[灰色](2009/05/29 17:05)
[22] 第十九話 男と女のエトセトラ、メカもあるのです[灰色](2009/11/22 01:32)
[23]  幕間19.1 トリステイン空軍の意地[灰色](2010/02/25 00:03)
[24] 第二十話 そして少年と少女は背景になった…なのです[灰色](2009/11/22 01:27)
[25] 第二十一話 姫様がはっちゃけ過ぎなのです[灰色](2009/07/12 11:32)
[26] 第二十二話 媚薬なんか作るからこんな事になるのです[灰色](2010/02/22 10:03)
[27] 第二十三話 羞恥心と後悔で死ねそうなのです[灰色](2009/09/08 21:57)
[28]  幕間23.1 女王誘拐[灰色](2010/02/25 00:03)
[29] 第二十四話 絶対に叶わない恋のお話なのです[灰色](2009/10/30 06:59)
[30]  幕間24.1 トリステイン銃士隊&約束を履行したりさせられたり[灰色](2010/03/10 18:34)
[31] 第二十五話 勤労精神と格差とガンマニアなのです[灰色](2010/02/22 10:04)
[32]  幕間25.1 艦隊再建[灰色](2010/02/25 00:04)
[33] 第二十六話 酒場にまつわるエトセトラなのです[灰色](2010/02/22 10:05)
[34] 第二十七話 何事も計画的に程々に、なのです[灰色](2009/10/30 07:01)
[35]  幕間27.1 探す人、あるいは貧乏人達の夜&微熱と熱風の憂鬱[灰色](2010/03/10 18:30)
[36] 第二十八話 諦めた方が幸せな事もあるのです[灰色](2009/10/25 15:09)
[37]  幕間28.1 お買い物デートっぽい何かと女王の憂鬱[灰色](2010/03/10 18:44)
[38] 第二十九話 仕掛けは済んだ、後は…なのです[灰色](2010/09/25 01:44)
[39]  幕間29.1 王女と剣士の少年[灰色](2010/03/10 18:52)
[40] 第三十話 少し気まずい決着…なのです[灰色](2010/02/22 10:09)
[41]  幕間30.1 演歌は心で歌うもの そして、例のアレ[灰色](2010/02/25 00:07)
[42]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山01 [灰色](2010/11/01 10:27)
[43]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山02[灰色](2010/11/04 07:35)
[44]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山03[灰色](2010/11/04 21:36)
[45]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山04[灰色](2010/11/08 23:16)
[46]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山05[灰色](2010/11/19 22:08)
[47] 第三十一話 やっぱり男は必要なのです[灰色](2010/02/22 10:11)
[48]  幕間31.1 スイーツとビター[灰色](2010/02/25 16:55)
[49] 第三十二話 美容の為に命を懸けるのです(加筆修正+幕間部分を試験的に追加)[灰色](2010/03/10 18:57)
[50] 第三十三話 人間なので、間違えることも多々あるのです[灰色](2010/03/19 22:54)
[51] 第三十四話 ハードラックとダンスっちまった…なのです。[灰色](2010/05/08 06:59)
[52]  幕間34.1 舞台裏…って、裏とか言うな! ※ゴム存在に改定※[灰色](2010/05/19 10:20)
[53] 第三十五話 前半分は思い出したくも無いのです[灰色](2010/05/26 23:10)
[54]  幕間 35.1 ダータルネスの大艦隊[灰色](2010/05/30 15:46)
[55] 第三十六話 とんでもない事実なのです[灰色](2010/08/11 18:11)
[56] 第三十七話 才人はお酒を飲まない方が良いと思うのです[灰色](2010/06/19 00:40)
[57]  幕間37.1 漆黒の女王、情熱の娘[灰色](2010/07/01 06:57)
[58] 第三十八話 ジュリオに始まりジュリオに終わるのです[灰色](2010/07/15 21:45)
[59] 第三十九話 勝ったのに御通夜みたいなのです[灰色](2011/04/20 21:37)
[60] 第四十話 勝敗は兵家の常なのです[灰色](2010/08/11 21:17)
[61] 第四十一話 たった三人の撤退戦なのです[灰色](2010/08/19 20:14)
[62]  幕間41.1 血塗れの真紅の悪魔[灰色](2010/08/22 05:55)
[63] 第四十二話 泣いている暇なんて無いのです。[灰色](2010/09/11 08:53)
[64]  幕間42.1 よくコケる王様[灰色](2010/09/16 22:12)
[65]  幕間42.2 怪力娘と真っ黒王女[灰色](2010/09/29 10:22)
[66] 第四十三話 いいモノ持ってんじゃねえか?なのです[灰色](2011/04/20 21:37)
[67] 第四十四話 砲兵は戦場の神なのです[灰色](2010/10/11 15:56)
[68] 第四十五話 ウエストウッド村要塞化なのです[灰色](2010/10/19 11:50)
[69]  幕間45.1 青髪の王と可哀想な使い魔[灰色](2010/10/21 22:53)
[70] 第四十六話 骨の髄までしゃぶり尽くされるのが英雄なのです[灰色](2010/10/30 19:12)
[71] 第四十七話 飾って眺めるのです[灰色](2014/05/14 22:49)
[72]  幕間47.1 無茶振り女王とガンマニア娘[灰色](2010/12/09 00:06)
[73] 第四十八話 ああ!窓に!窓に!なのです[灰色](2010/12/17 12:04)
[74] 第四十九話 平和な時ほど物騒なのです[灰色](2011/01/11 07:06)
[75]  幕間49.1 よく考えてみれば新年度だったのです [灰色](2011/01/11 07:06)
[76]  幕間49.2 忘れてなんかいないヨ、本当ダヨ?[灰色](2011/01/14 10:03)
[77] 第五十話 未練たらたらなのです[灰色](2011/01/29 09:34)
[78]  番外編 チョコ無き世界のバレンタインデー[灰色](2011/02/14 10:22)
[79] 第五十一話 平行世界は色々あるのです[灰色](2011/02/25 01:05)
[80]  幕間51.1 タバサに関わる色々なもの 1[灰色](2011/04/21 07:55)
[81]  幕間51.2 タバサに関わる色々なもの 2 (若干追加)[灰色](2011/04/23 14:53)
[82]  幕間51.3 タバサに関わる色々なもの 3[灰色](2011/07/09 12:04)
[83]  幕間51.4 タバサに関わる色々なもの 4 (加筆修正)[灰色](2011/09/06 19:16)
[84]  幕間51.5 タバサに関わる色々なもの 5[灰色](2011/09/19 15:05)
[85]  幕間51.6 タバサに関わる色々なもの 6[灰色](2011/10/01 00:40)
[86] 第五十二話 久しぶりにのんびりまったりと…エロ話なのです[灰色](2012/05/29 21:55)
[87] 第五十三話 さあ、作戦を始めよう…なのです[灰色](2012/05/18 23:42)
[88] 第五十四話 霧とともに舞い降りるのです[灰色](2012/05/29 21:29)
[89]  幕間54.1 エルフとタバサ、そしてとある物語[灰色](2012/08/03 10:27)
[90] 第五十五話 悲しいけど、これって潜入任務なのよね!なのです[灰色](2012/09/25 20:17)
[91]  超番外編01 てりやきバーガーが食べたい[灰色](2012/11/04 07:57)
[92]  超番外編02 豆チョコ戦車、それは愛[灰色](2013/02/16 19:53)
[93]  幕間55.1 タバサの願う事[灰色](2013/04/24 19:03)
[94] 第五十六話 なるべくなら戦わずに勝ちたいものなのです[灰色](2013/05/26 19:58)
[95] 第五十七話 取り敢えずは逃げるのみなのです[灰色](2013/06/24 01:13)
[96]  幕間57.1 門を開放するまで / ガリアの変な面々[灰色](2013/06/24 20:22)
[97]  突発座談会 そんな名の罰ゲェム[灰色](2013/06/30 00:31)
[98] 第五十八話 人生初のゲルマニアなのです[灰色](2013/08/31 19:16)
[99]  幕間58.1 時の迷子マリー[灰色](2013/08/31 10:24)
[100] 第五十九話 秘密にし続けるのは無理なのです[灰色](2013/10/09 09:11)
[101]  超番外編03 This Is Halloween[灰色](2013/11/01 21:59)
[102] 第六十話 私は見守っていますよ。見守るだけですが、なのです[灰色](2013/11/04 23:47)
[103]  幕間60.1 鬼の居ぬ間に鬼が居る[灰色](2013/12/19 22:26)
[104]  幕間60.2 ケティの居ない学園アレコレ[灰色](2014/01/26 23:42)
[105] 第六十一話 久々の学院なのです[灰色](2014/05/05 07:25)
[106] 第六十二話  ロマリアの光と影なのです[灰色](2014/09/09 18:12)
[107]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼01[灰色](2014/08/06 19:03)
[108]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼02[灰色](2014/10/31 22:51)
[109]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼03[灰色](2015/02/24 20:03)
[110] 第六十三話  武器、治療。そして教皇あらわる。なのです[灰色](2016/01/03 00:15)
[111] 第六十四話 教皇との面倒臭い話なのです[灰色](2017/03/19 01:19)
[112] 第六十五話 私の弱点などどうでも良いのです[灰色](2017/05/26 20:55)
[113] 第六十六話 3度目のアルビオンなのです[灰色](2020/07/16 00:30)
[114] 第六十七話 知っていても話せないのです[灰色](2020/07/16 00:52)
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[7277] 第四話 思わぬ失態と収穫なのです
Name: 灰色◆a97e7866 ID:79909f1c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/22 01:22
色気は女の最大の武器らしいです
胸なんかそこそこあれば良いのです、巨乳が何だというのですか


色気が無いのは女やめているのと一緒らしいです
あまり練習していなくて怖いので、化粧っ気も少ない私です、放って置いてください


色気は恋によって磨かれていくものらしいです
どうせ、生まれ変わってからの初恋もまだなのですよ




決闘から数日たったある日の事、才人が女子寮廊下のわら束の上で毛布に包まって寝ていました
折れた腕や全身の傷は跡形も無く治っています
流石はヴァリエール公爵家、仕送りも貰える額がうちみたいな貧乏貴族とは段違いのようですね


「楽しいですか、才人?」

「楽しそうに見えるか?」

しゃがんで、しげしげと才人の状況を眺めてみます
藁束、薄い毛布、寒い石造りの廊下、鼻水たらしている才人と、心まで寒くなりそうな状況がこれでもかというくらい満載ですね


「ふむ…楽しそうというよりは寒そうですね。
 何かの罰でしょうか?」

「ああ、実は…」

才人はルイズが自分の藁束の中に忍び込んできた夢を見て、授業中に寝言を言った事と、それをネタにルイズをからかって怒らせた事を話してくれました


「…ちょっとからかっただけじゃねーか、何も廊下に叩き出さなくても。」

「それは叩き出されて当然なのですよ、才人。
 いくら普段鬱憤が溜まっていたからといって、女の子のプライドを傷つけるのはやりすぎなのです。
 貴族平民云々の問題ではなく、そんな事をされたら、どんな女の子も傷つきます。」

才人を半眼で睨んでみたら、才人が目をそらしたので、そちらに顔を移します
目をそらしたって事は、わかっているのですよね、やりすぎたって


「才人は謝罪するべきだと思うのですよ、人として。」

「ヤダね、誰が謝るかよあんな奴に。」

口を尖らせてつーんとそっぽを向きます


「小学生ですか、貴方は…」

「誰が小学生だよ!
 …って、何でケティが小学生なんて単語を知っているんだ?」

才人が藁束の上からガバッと起き上がりました
ああ、あんまりのしょうもなさについ口が滑ってしまいました
なんというアホな失態なのででしょうか


「ああ…いや…その、ですね、何と言いましょうか…。」

「あんた日本の事を知っているのか?
 この国に小学生なんて単語はないし、あんた今間違いなく日本語で《小学生》って言っただろ!
 そういや、俺の名前の呼び方も他の連中は訛っているのに、あんただけ普通に呼んでいるよな?」

ああもう、何でこんな時だけ急に鋭くなるのですか才人
私の正体を貴方に曝す気なんか、全く無かったというのに


「答えてくれケティ、あんたいったい…ん?」

キュルケの部屋のドアが開いています
使い魔のフレイムが何時の間にやらやってきていて、才人のパーカーの袖をくいくい引っ張っていました


「ほ、ほら、ミス・ツェルプストーが才人の事を呼んでいるみたいですよ?
 呼ばれているのですから早く行かないと、ほらほら。」

「おま、ちょ、ま!」

才人を引っ張りあげて、キュルケの部屋までグイグイ押します
この後起きるアクシデントで、全部忘れてくれる事を願うのみなのです


「それでは、ご・ゆっ・く・り!なのです~。」

「待てや、こら。」

扉が閉め切れそうになったところで、扉が開いて才人の腕がニュッと突き出され、そのまま部屋の中に引きずり込まれました


「レディに何という乱暴な真似をするのですか、貴方は。」

「そんなベタな逃げ切り方で、どうにかなると思うほうがおかしいっての。」

ああっ、才人から向けられる視線が痛いのです


「ようこそ、こちらへいらっしゃい。」

「ちょ、ちょっと、レディを引き摺るとは何事ですか。
 離してください、才人、才人ってば!」

私はキュルケに促されて彼女に近づいていく才人に、ずりずりと引き摺られて行きます
このシーン、ただでさえカオスなのに、私まで加わったらどれだけカオスになるのですかっ!


「あら?貴方はジゼルの妹のケティじゃない。
 そこで何をしているのかしら?」

「見ての通り、引き摺られているのです。」

キュルケも蝋燭の明かりで、やっと私の存在に気付いてくれたようです
あとは才人がキュルケの色香に惑わされてくれさえすれば、脱走は適うのですよ


「助けてください。
 具体的に言うと、才人を誘惑して私への関心を無くしてください。
 その格好から察するに、元々そういう流れなのでしょう?」

「あ…あのねえケティ、そういう事はもう少し遠まわしに言ってくれないと、ムードが作れないわよ?」

そんな余裕は既に無いのですよ
このまま才人に捕獲されたままではまずいのです


「火の情熱を掌るツェルプストーといえば、片手に女がぶら下がっていようが、その女がムードぶち壊しな事を言おうが、狙った男は絶対に篭絡するのが伝統でしょう。
 さあさあ私のような貧相な女には構わず、好きなようになさってください。
 そのでかい胸はその為にあるものなのでしょう。」

「いくらツェルプストーが火の情熱を掌っていても、片手に女の子ぶら下げた男を口説くのは無理よ!
 そもそも火メイジの家系というなら貴方だって同じだし、貴方は別にプロポーションだって悪くないじゃない。」

物欲は果てないのですよ、キュルケ
多少恵まれていようが、より恵まれている者を羨むのは仕方が無い事なのです


「当家の火は情熱ではなく、炭焼きとか野焼きとか、そういう田舎っぽい火なのです。」

「そうね、ルイズの姉の婚約者だったパーガンディ伯爵が婚約破棄後に娶ったのは、ジョセフィーヌ・ド・ラ・ロッタとかいう人だったけど。」

あー…まあ、そういう事もつい最近ありましたね
ラ・ヴァリエール家は火メイジの家系に呪われているのでしょうか?


「へえ、ルイズに姉ちゃんがいるのか?」

才人が話に乗ってきてくれました
チャンスなので、このまま話を逸らしてルイズが殴り込んで来るまで時間を稼ぎましょう


「ええ、ミス・ヴァリエールにはエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール公爵令嬢という姉上がいらっしゃいます。
 この方の婚約者がいきなり婚約破棄されたあと、何故か娘の数には事欠かない当家から妻を娶りたいという話が来まして、ジョセフィーヌ姉さまがパーガンティ伯爵家に嫁いでいきました。
 大事な事だからもう一度言いますが、飽く迄も婚約が破棄されてからの結婚なのです。
 フォン・ツェルプストー家のように、ラ・ヴァリエール家の恋人を代々寝取っている家系ではないのですよ。」

「失礼ね、ツェルプストーだって別に寝取りたくて寝取っているんじゃないわ。
 ヴァリエールの人間の性格が代々きつ過ぎるから、皆耐えられなくなって逃げ出すってだけよ。
 ツェルプストーの情熱は暖炉の火の如く、ヴァリエールに傷つけられた人々の心を包み込んで癒してあげたのよ。」

その割には、結構強引に奪った話も多々聞くわけですが。


「こりゃあ面白い話を聞いたな。」

「才人、こういう醜聞をミス・ヴァリエールをからかうのに使っては駄目なのですよ?
 むしろ、絶対に使わないで下さい。
 もしもこのネタを彼女をからかうのに使ったりしたら…消し炭になるのを覚悟していただきます。」

反骨心の塊なのもいいですが、才人はもう少し自重したほうが良いのです


「キュルケ…待ち合わせの時間に君がいないから来てみれば…。
 おお、そこの可愛い子も一緒に来てくれるのかい?」

いつの間にか窓際に人がぷかぷか浮いていました
不満そうな声でしたが、私を確認した途端に一転して好色な視線を向けてきます


「吹き飛びなさい。」

下品な人は嫌いです
キュルケの蝋燭の火を10本ほどの矢に加工して、ぶつけてやりました


「へぷろっ!」

「えーと、今のはペリッソン…のように見えたけど?」

軽く焦げながら、名も知らぬその人は落下していきました


「キュルケ!今日は君とその可愛いコの二人で一緒にいてくれるのかい!?」

才人は見えていないのですか、そうですか


「下品な人は嫌いだと言っています!」

「ぺぱろに!」

次の下品な人には蝋燭の火を20本ほどの矢に加工して、一気にぶつけてやると、炎上しながら落下していきました


「ええと…今のはステックスだったかしら?」

「下品な人は下品な人です。
 個体識別なんか、どーでも良いのですよ。」

次にも誰か来たら、容赦はせずにブッ放したい気分なのですよ


『キュルケ、そ…』

「消し飛ぶのです!」

蝋燭の火から炎の矢を100本ほど生成して名も知らぬ三人にぶつけると、悲鳴も上げられずに落下していきました
彼らにはには炎の壁がぶつかってきたように見えたでしょう


「ええと、一瞬だったから自信ないけど、マニカンとエイジャックスとギムリだったかしらね?」

「ミス・ツェルプストー、いったい何人とお付き合いしていらっしゃるのですかっ!」

一巻のこんな細かい所まで覚えていませんでしたが、こんなにいましたか?


「貴方も知っての通り、ツェルプストーは情熱の家系ですもの。
 アレもほんの一部よ?」

「情熱もいいですが、アレでは面倒臭くありませんか?」

私は複数の男性と付き合うとか、とてもではありませんが無理です
趣味や魔法の練習の時間も削られますし


「ツェルプストーの情熱は、求めるもの全てに等しく分け与えられるのよ。」

「理解不能なのです…。」

個人の趣味ですから置いておくとして、疲れないのでしょうか?
魔法の練習で連日倒れていた私が言う事でもありませんが


「ツェルプストォォォォォォォォォォォッ!」

「うぉ、何をするんだキュルケ!」

ドアが物凄い勢いで蹴り開けられ、ルイズが立っていました
隣を見ると、キュルケが才人を抱きしめています
おちょくる気満々ですね、わかります


「ヴァリエール、今は取り込み中よ?」

ルイズを横目で見てくすっと笑い、すぐに才人に視線を移してキスしようとしています
いやいや、私がいますから…って、キュルケが目でサインを送っています
ああ、今のうちに逃げろって事ですね


「誰に断って私の使い魔に手を出してんのよツェルプストー!」

「それではミス・ツェルプストー、ごきげんよう。」

怒りで才人とキュルケしか見えていないルイズの横を通り過ぎて、私はキュルケの部屋をあとにしました

なにやら言い争いが起きていますが、ここは一旦退散させてもらうのです







「ケティ!ケティ起きてる?」

翌朝、ドンドンというドアを叩く音で目が覚めました


「誰なのですか、虚無の曜日は一日中寝ているのが一番なのに。」

眠い目を擦りつつ、ドアを開けるとジゼル姉さまが立っていました


「王都にクックベリーパイを食べに行くわよ!」

「間に合っているのです。」

バタンとドアを閉めました


「ちょ、ちょっとケティ!いきなりドアを閉めないでよ!
 エトワール姉さまはデートに出かけてしまったし、クラスメイトも既に出かけてしまっていないのよ。
 私一人でお店でお菓子食べるとか、寂しすぎるじゃない。」

すぐさまドアを開きなおして、ジゼル姉さまが訴えてきます
姉さまの背後にいるバグベアーのアレンも血走った目で訴えてきますが、怖いから止めてください


「ジゼル姉さま、私は塩辛いものとお酒が好きなのです。
 お菓子も嫌いじゃありませんが、わざわざ馬で遠乗りしてまで食べに行きたくなるものでは無いのですよ。」

「お酒と塩辛いものが出る店で奢ってあげるからさ、ね?」

そこまでしてあの甘酸っぱいお菓子を食べたいのですか、ジゼル姉さま。
ちなみに私の味覚的嗜好は前世とあまり変わりはないのですよね
甘いものが好きではなかった前世に比べれば、割と好きな部類に入るようになったのが違いといえば違いなのです


「…まあ、そこまで言われるのであれば。
 着替えますから、その間に馬の準備をお願いできますか?」

「わかったわ、早く来てね!」

化粧っ気があまり無いとはいえ、私も女の子ですから、それなりに身支度に時間はかかるのですよ、姉さま




「お待たせしました、姉さま。」

制服は楽でいいです
適度におしゃれで、何も考えなくても良いところが
実家でも普段は皆野良着でしたし、着物は楽なほうが良いのですよ
ちなみに用意してあったのは、馬ではなく2頭だての驢馬車でした


「驢馬…。」

「驢馬しかいないって言われたのよ…。」

最初から駄目駄目な雰囲気なのは何故でしょう?





「…驢馬でも意外と早いものね。」

「エトワール姉さまがいれば、ルナに乗ってひとっ飛びなのですけれどもね。」

三時間半かかりましたが、何とか王都につきました
帰ったら夜中になりますね、これは…


「さあ、クックベリーパイ食べに行くわよ!」

「はい、姉さま。」

姉さまたちといつも行く店に入ると、キュルケとタバサがいました
テーブルには甘いものを売る店には不似合いな、包装されたでかい剣が立てかけられています


「あら、ジゼルにケティじゃない。
 こっち来ない?」

「あ、キュルケとタバサ、王都に来ていたの…と、そのでかい剣は何?」

ジゼル姉さまが二人に声をかけたあと、不思議そうに尋ねます


「ああこれ?これはダーリンの為に買ったのよ!」

「ダーリンって、特定の彼氏でも出来たの?」

ジゼル姉さまが不思議そうに尋ねます
キュルケに不特定の彼氏がいるのは、既に公然と知れ渡っているのですよね


「ヴァリエールの使い魔の大活躍見たでしょ?
 彼の大活躍に心が震えたのよ、この心の震えこそまさに恋だわ。
 そして恋の情熱に身を任せるのがツェルプストーの流儀なのよ。
 そういえばケティ、昨夜ダーリンと一緒に私の部屋に入ってきたけれども、廊下でいったい何をしていたの?」

「昨夜はご迷惑をおかけしました。
 才人はあの廊下で寝ている所をたまたま見つけただけなのですよ。
 何故廊下で寝ているのかと話を聞いたら、ミス・ヴァリエールをからかい過ぎた結果ああなったのだといったので、彼のためにも少し諌めていました。」

才人はあのどさくさで、私への疑念を忘れてくれたでしょうか?
忘れていてくれると良いのですが。


「店員さん、こちらにもクックベリーパイを二つお願いできるかしら?
 あと香草茶(ハーブティー)もお願いね。」

私達が話すのを尻目に、ジゼル姉さまは既に注文を始めてしまっています


「…なんという色気より食い気。」

私が言うのもなんですが、ジゼル姉さまは結婚できるのでしょうか?


「ケティ、なんか視線に失礼なものを感じたのだけれども。」

「気のせいですよ、あと今日はお酒と塩辛いものは諦めましょう。
 もう既に日が傾き始めていますから、もう一軒行ってから驢馬車なんかで帰ったら、明日の早朝になってしまいます。」

エトワール姉さまがいれば一時間弱で往復できる距離なので、お酒と塩辛いものはまたの機会にしましょう


「へえ、もう一軒行く予定だったの?」

「ええ、いつも行っている店ですけど…お二人は行った事は無いかと思われます。
 基本的に平民向けの店ですので。」
 
うちは貧乏ですから、あまり高い店で飲み食いできないのですよ…
貴族ですから、流石に場末の安酒場にはいけませんが


「店の名前は?」

「星降る夜の一夜亭といいます。
 お酒も料理もそこそこですが、ハシバミ草を様々な料理方で美味しくできるというちょっと変わったところが…。」

そこでクックベリーパイの6皿目を平らげたタバサが、頭を上げてこちらを見ました


「私もそこに行きたい。」

「ええと、驢馬車だと帰りが遅くなるので、今日は諦めてここで食べ終わったら帰ろうかと思っているのですが。」

そういえば、タバサはハシバミ草が大好物でしたよね
私もサラダは駄目ですが、あの店のハシバミ草料理は好きです
苦味と塩辛さのマッチがなんとも言えず…ジュル


「シルフィードに乗せてあげる。」

「あなた、本当にハシバミ草が好きよね。」

少し呆れたような口調でキュルケがタバサに話しかけています
そこまでしてハシバミ草を食べたいのですか、タバサ
驢馬車は置き去りになりますが…まあ、後で学院の使用人に話しをしておけば何とかなりますよね


「わかりました、では一緒に行きましょう。」

「ありがとう。」

タバサの感情は瞳の中に出るのですね
滅茶苦茶わかりにくいですが、目が輝いています


「いえいえ、ミス・タバサもシルフィードの件宜しくお願いします。」

でないと帰れませんからね



『かんぱーい!』

木製のジョッキに並々と注がれたビールを高らかと掲げて酒宴の開始です
テーブルにはハシバミ草の料理ばかりがぎっしりと、全部頼んだのはタバサです
彼女はビールには手をつけず、ひたすらハシバミ草の料理を口に運び続けています


「美味しいですか、ミス・タバサ。」

「ん。」

タバサはまさに一心不乱といった感じです
年上に言うのも変ですが、何というか小動物の食事みたいでとても微笑ましい風景です
ああ…なんて、なんて可愛い生き物なのでしょうか


「ミス・タバサ、ここのレシピであれば、幾つか教えてもらったものがあるのです。
 事前に仰っていただければ、学院でもいくつか作れますよ?」

「今度お願いする。」

ああ可愛い、可愛すぎます
これが萌えというものなのですね

来た時はどうなるかと思いましたが、思わぬ収穫でした
ああそれにしても、可愛い…


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