兵器ヲタで何が悪い好きなものは好きだからしょうがないのです兵器ヲタで何が悪い何故に人格が崩壊したのにこの趣味だけしっかり残ったのでしょうか?兵器オタで何が悪い闇市の横流し兵器が私を待っているのです、うふふふふふふふふふ…「…んで何だったのよ、あの可哀想な使い魔は?」村のざっとした修復も終わった夜の事、私達はモンモランシー達が作った食事を食べながらのんびり歓談をしていたのですが、その話の中で不意にルイズがそう話を切り出してきたのでした。「てか、何で虚無の使い魔が他にいるわけ? テファも虚無の担い手だし。 何でこんなポコポコ虚無の担い手だか使い魔だかが湧いて出たのよ? そんなわけでケティ、教えて。」「いや、そういう話を私に振られても困るのですが。」まあ確かにそのあたりの話は覚えていますが…。私が全部まるっと話してしまったら、本当に《何者だお前は?》といった感じになってしまいますし。「私よりも、そういうのはそこの妖刀の方が詳しいと思いますよ。 そうでしょう、デルフリンガー?」「すっかり妖刀扱いなのな、俺…。」今までの言動で妖刀扱いしなかったら、むしろそっちの方がおかしいのです。まぁ、正確には血に餓えた妖刀ですが。「…ま、いいか。 それよりも、何で虚無がこんないっぱい居るか…ねえ? まあアレだ、時期が来たからだろうなぁ。」「時期?」ルイズが首を傾げています。「そ、時期。 相棒、お前さんやさっきの可哀想な使い魔が召喚され、伝説の彼方から目覚める時期って事。」ミョズニトニルンてば、すっかり《可哀想な使い魔》で呼び名が固定しているような…いやまあ、印象付けたの私なような気がしますが。「ところでエルフの娘っ子、あんた使い魔は?」「え?ううん、まだ呼び出していないわ。」デルフリンガーの問いに、ティファニアがふるふると首を振っています。「そりゃ良かった。 お前さんが呼び出す事になるのはたぶん、アレだからな。 いざって時まで呼び出さない方が良い。」「ひぅ、そうなの?」ティファニアがデルフリンガーの声に篭もった物騒さに気付いて、少し怯えながら聞き返したのでした。「ああ、どうせ時期が来たら呼び出す事になるから、それまでは止めとけと言わざるを得ない。」「わ、わかったわ。」ティファニアはコクコクと頷いたのでした。「…で、使い魔が4人って事は、担い手も4人って事?」「たぶんな。 でも、条件絞って探せば、ひょっとするともっと居るかも知れないぜ? ただし、虚無の使い魔を召喚出来ない連中は、単なる虚無の系統のメイジでしかねぇだろうがな。」それでも十二分に強力だと思いますが…。「飽く迄も4人の虚無の使い魔を従えた4人の虚無の担い手のみが、ブリミルの遺志の後継者達ってわけだ。」「ねえ、それって…虚無の担い手が虚無の使い魔を呼び出す為に居るみたいに聞こえるんだけど?」おや、気付きましたかモンモランシー?「おお、確かに。 素晴らしい洞察力だね、僕の素敵なモンモランシー。」何故に太鼓持ちみたいな事をしていますか、ギーシュ?「そうだな、たぶんその通りだ。 ただ、虚無の担い手がそうそう居るわけも無いだろうから、あまり気にするようなもんでもねぇだろ。」「まあ…それもそうね。 こんな物凄い腕力のがポコポコ居たら、色々と危険だわ。」そう言いながら、モンモランシーはルイズとティファニアを見るのでした。「ほへ?」首を傾げるティファニアと…。「喧嘩売っているなら、買うわよ?」「買うな買うな、モンモン殺す気かお前は…。」立ち上がろうとしたのを、才人に頭ぽふぽふされて宥められるルイズ自重。「で、でも、どうしてルイズ達は、ほぼ一斉に虚無に目覚めたんだ?」「あ、それは私も不思議だわ。」何とかルイズの気を逸らす為、苦し紛れで出した才人の質問にルイズも興味を持ったのでした。「さっき言ったろ、時期が来たからだって。 4人の担い手と4人の使い魔が、4つの指輪と4つの秘宝を携えて聖地に行くと…。」「…行くと?」ルイズがゴクリを喉を鳴らして聞き返したのですが…。「行くと…なんだったっけか?」『ズコー!?』私を含めて全員が、一斉にずっこけたのでした。「こここここのボケ剣! ななな何で肝心要の部分を覚えてないのよ!?」ルイズがうがーっと激昂しているのです。「いや、俺もう齢6000歳よ?エルフもドラゴンも土に還っちゃうくらいのお年寄りなんだぜ? だいたいお前さん、昨日の夕食の献立思い出せるか?」「え?えーっと…あれ? ケティ、何だったっけ?」ルイズ、覚えていないのですか。何だか最近、頭脳部分を私に委託しつつありませんか、ルイズ…?「え!?そんな急に振られても…。」とはいえ、実は私もですが。えーと…なんでしたっけ?「スープと、野菜を茹でたのと、ソーセージですよ。」私が思い出して答える前に、シエスタが答えてくれたのでした…シエスタG.J!「貴族様方は、日々の食事への感謝の念が足りませんわ。」「ううっ…申し開きのしようも無いのです。」意外と思い出せませんよね、昨日の夕食の献立って…。「お前さんが昨日の夕食の献立も思い出せないのに、俺に6000年も前の話を急に思い出せったって無理ってもんだろ?」「ううううう、言い返せないわ。」デルフリンガーってば、妖刀の癖に上手い切り返しを。「まあなんだか忘れたが、すげぇ事があるんだと思う、たぶん…な。 でもな、なるべくならそんな事気にせずに、のんびりやって欲しいんだよ、俺は。」「どうしてだよ?」才人が不思議そうに訊ねます。「おっかない娘っ子が時々言っているだろ、『過ぎたるは及ばざるが如し』って。 でっかい力にはでっかい運命とでっかい使命が詰まっているもんだ、そしてそれは大抵人の手には余る。 そういうもんに振り回されて破滅していった人間を、俺はこの6000年の間に何人も見ているんだよ。 だからさ、相棒やお前さん達がそんなもんに振り回されて不幸になるのは見たくないんだ。 それに…。」『それに?』今度は、忘れたとかは無しですよ、デルフリンガー。「それにさ、前にそれを使った時に何か物凄く悲しい事が起きたんだよ。 今のところ物凄く悲しかったって事をうっすらとしか思い出せないんだが、出来る事ならこのまま思い出したくねえ、そんな出来事が。」「デルフ…。」デルフリンガーの心底悲しそうな声を聞いて、才人も声を詰まらせたのでした。「ま、何とかなるわよ。 だいたい、今すぐ起こるようなもんでも無いんでしょ、それ。 なら、私が今すべき事は、サイトが元の世界に帰る方法を探す事だわ。」しんみりした空気をひっくり返すつもりなのか、ルイズが唐突にそんな事を言ったのです。「いぃっ!?俺、元の世界に帰されちまうの?」そしてそんなルイズの爆弾発言に、才人が慌て始めたのでした。「こんな事になるとは知らなかったとは言え、あんたをこっちに一方的に召喚したのは私なんだから、私の責任であんたがあんたの国に帰る方法を探すのは当然でしょ? 勿論、私は確実な方法を見つけるだけよ。 帰るか帰らないかは、あんたが決める事だもの。」「うーむ、それはそれで決断に迷うな…。」見つかる前から決断に迷ってどうするのですか、才人…。「私も、強力な何かなんか貰っても困るわ。 私は静かに平和に過ごしたいだけだし。」テファはそう言いましたが、剛力使いこなしていますよね、彼女…。「それじゃ、結論は簡単ね。 すなわち…先送りという事で。」『異議無し。』モンモランシーの一言に、全員一致で頷いたのでした…何という玉虫色決着。まあ、今のところはそれで十分なのですが。この後は、再びのんびりした話題に戻って、夜が更けていくのでした…。その夜の夜中、眠りに就こうとしていた私の耳に、コンコンというノックの音がしたのでした。「…俺だけど、入って良い?」「才人?ええ、どうぞ。」私が許可すると、才人がそっとドアを開けて部屋に入ってきたのでした。「ええと、夜這い…?」「違う…っつーか、夜這いだと思うのに俺を入れたわけ?」そうでないような、違うような?「才人はそういう事はしない人だと思っていますから。」「う…うーん、そう信用されるとちと辛い…。」そう言いながらポリポリと頭を掻く姿が、何となく可愛いのですよ、才人。「…って、いきなりからかわれてたか、俺?」「おほほほほ、ようやく気付きましたか。」相変わらず象並みに鈍いのです。「ああもう、折角謝りに来たのに。 これ…。」才人が差し出した手の中にあったものは…。「なな…ななな、な…。」「す、すまんケティ…。」私のモーゼルM1896…だったものなのでした。ひしゃげて、錆びていて…どう見ても不帰の客となっていますが。「敵の剣を受け止めちまった。」「わた…私の大事なモーゼルが…。」思わずベッドから出て、才人の手から取り返してしまったのでした。反動が強過ぎて正直ただの飾りになっていたので、暇が開いたら杖の契約しようと思っていたのに…。「本当に済まん…ケティが大事にしていたものだったのに。」「い…いえ、それで才人の命が救われたのであれば、用途こそ違いますが道具の本懐というものでしょう。 ですが事前に言ってくれれば、機関拳銃(マシンピストル)なら他にもあったのに…。」別に、私が持っている機関拳銃(マシンピストル)はモーゼルだけでは無いのです。「モーゼルが無いので代わりに携帯していましたが、例えばこのミネベアM9とか…。」ベッドの脇においてある鞄の中に入れておいたミネベアM9を出してみたのでした。ミネベアM9は長野県のベアリングメーカーであるミネベア社が造っている国産機関拳銃(マシンピストル)で、自衛隊しか持って居ない武器でもあります。これが無くなったのが発覚した時、その世界の自衛隊内では蜂の巣を突付いたような大騒ぎだったでしょうね。世界扉さんてば、何の落ち度も無い自衛隊員に何という酷な事を…。「特にこのCZE‐Vz.85とか、結構あったのに…。」鞄からCZE‐Vz.85、通称スコーピオンを8丁取り出して机の上に置いたのでした。チェコ製の機関拳銃(マシンピストル)で、かなりのベストセラーですから横流し品に時折混ざっているのですよ。特にこれらはスコーピオンシリーズの中でも使用している拳銃の多い弾種である9パラこと9mmパラベラム弾を使うので、使い勝手が良いのですよね。ちなみにミネベアM9も、使用弾種は9パラだったりします。「どんだけ機関拳銃(マシンピストル)を鞄に入れて持ち歩いてんだよ!?」「あああ、私の可愛いモーゼルが、モーゼルが…。」無事に帰って来たら、綺麗に分解掃除してあげようと思っていたのに…。「わざとか、わざとだな? わざと何でわざわざいっちゃんお気に入りのモーゼル持って行きやがったんだよこのど畜生と俺を責めているな?」「ええ、勿論当たり前ではありませんか。 才人の命を救ってくれたのが喜ばしい事なのは事実ですが、それはそれ、これはこれなのです。」結構出回っている筈にも拘らず何故か第二次世界大戦前後に中国で作られたものばかりで半ば諦めかけていたところで、やっと見つけた本家マウザー社製のM1896だったのに…。「大人気ないぞコンチクショー! この武器ヲタめがー!」「なんとでも言いなさい! …まあ、形あるもの皆壊れる、壊れてしまったものはしょうがありません。 以後こんな事が無いように、この中で好きなのを持って行ってください。」スコーピオンなら商会の倉庫に十数丁ありますから、2~3丁持っていかれても問題無いのです。「んじゃ、これで。」「…何故に、わざわざ私が手に持っているミネベアM9を持って行こうとしますか?」喧嘩売っていますか?喧嘩売っていますね?「いやだって、それが一番強いんだろ?」「そのスコーピオンも使用弾種は一緒ですし、工作精度も信頼のチェコ製です。 ガンダールヴなら、どっちも大して変わりませんよ。 ミネベアM9は日本製なので、希少価値が高いというだけなのです。」いやまあ、ミリヲタには希少価値が高いというのは結構大きい理由ですが…。「日本製とか聞いて、余計に欲しくなったんだが?」「あげません。」モーゼルの次にこれまで持って行かれたら、失意のあまり塩の柱になります。「つか、チェコ製の何処が信頼出来んの?」「はぁ…確かに日本では知名度が低いですけれども、チェコは大国とは言い難い国ですが、第二次世界大戦前からの技術立国ですよ? 第二次世界大戦においてはドイツの車輛生産を支えた一角ですし、特に銃器に関してはトップクラスの技術力を持っています。 そのスコーピオンは機関拳銃(マシンピストル)のはしりであり、いまだに世界各国で愛用されるベストセラーなのです。 技術で食っているのは日本だけではないという事を知っておいてください。」ヲタに趣味の事で語らせると…長いですよ?「意外と凄い国だったんだな、チェコ…お、中々使い勝手良さそうだな、これ。」掴んだ時にスコーピオンに関する知識も流れ込んできたのか、才人の顔がぱっと明るくなったのでした。「そりゃまあ、ベストセラーですから。 私も普段持ち歩くなら断然スコーピオンですね、小さいですし。」チェコ脅威の技術力の結晶なのですよ、これは。「そう言えば、今はガンホルダーに何入れてんだ?」「これですよ。」私がスカートの下から取り出したのは、ワルサーTPHという小型拳銃(ポケットピストル)。手のでかいアメリカ人には不評だったようですが、私の手にはぴったりの代物です。「うわ、ちっさ!?」「そういう拳銃ですからね。 モーゼルがこうなってしまったので、代わりにこれで杖の契約をしようかとも思っていますし、携帯に便利な方が良いのですよ。」予備の杖、融けちゃいましたし。「拳銃を杖にするとか、出来るのかよ…?」「基本的に手に持てるものならば、何でも杖として契約出来ます。 例えばギーシュ様は造花を杖にしていますし、やろうと思えば剣でもフライパンでもペンでも、勿論拳銃だって杖に出来るのです。」メイジにおける《杖》は、手に持てて使用者が先端で魔法を操る事が出来るというイメージを作り出せるものならば、基本的に何でもいけます。イメージさえ作り出せれば例えば丼なんかでも魔法が使えますが、いまだに丼で魔法を使うオモシロメイジには出くわした事がありません。「まあ兎に角アレです。 本国に戻ったら、泥棒通りの闇市巡りに付き合って貰います。 姫様は仰っていました、才人には帰ったらシュヴァリエの叙勲があると。 シュヴァリエになったら、給料が出るのです。」「…まさか、買えと?」才人は恐る恐る私に聞き返してきたのでした。「あれば、買って下さい。 まあ、あるとは思っていませんけれども。」「俺の財布は一体どうなるんだ…。」いやー、楽しみなのです。「み…ミス・ロッタ。」「おおぅ?随分と扇情的な格好ですね、シエスタ。 朝這いとは新しいのです。」翌日の朝早く、下着にボタンを閉められないワイシャツ一丁という、物凄い恰好でシエスタが私の部屋にやってきたのでした。「メイド服が…メイド服が…予備も含めて全部奪われてしまいました!」「成る程、アイデンティティの危機というわけですね?」メイド服で無いシエスタなんて、ただの家事が得意な女の子なのです。「違います!こんな恰好じゃ出歩けません…一緒に置いてあったスカートなんか胴回りが細過ぎて、ボタンがプチーンと弾けちゃいました、プチーンって。」そう言って、シエスタは魔法学院のスカートを私に見せるのでした。「痩せなさい。」成る程ルイズに奪われましたか、メイド服。「酷っ! あんな細い胴回りになったら、仕事に使う体力が無くなってしまいます! このスカート、ミス・ヴァリエールの仕業に相違無いですわ!」「確かにそんな細い生き物は、あのルイズだけでしょうね。」ルイズの事だから嫌がらせでは無いでしょう…コスプレですね、わかります。「お願いします、取り戻してきて下さい!」「ふむ?」まあ、このままじゃ困るでしょうね、才人とかが目のやり場に。「良いでしょう、取り戻して来ます。」さてはて、ルイズは何処に居るのやらー?「あの…ミス・ロッタが服を持ってくるまで、私は何を着ていれば?」「その上からエプロンでも着けていなさい。」下着シャツエプロンとか、余計駄目な感じもしますが。「わかったでしょ、あんたはこの御主人様にだけデレデレしていればいいの! あ、やっぱりわたしにもデレデレしちゃダメ!」「女に一切デレデレするなって、才人に悟りでも啓かせようというのですかー? それにしても、ネコミミメイドとはやりますね。」森の中でぶかぶかのメイド服を着て、ネコミミつけて一人芝居をしているルイズに出会ったのでした。「にゃ!?ななななななななんでケティが!?」「シエスタに頼まれて、ルイズを探しに来たのです。 メイド服、せめて一着でも残してあげないと…シエスタが困っていましたよ?」さて、この空気を何と表現すればいいものやら?「あうあう、あうあうあう…。」「取り敢えず言っておきますが…ぶかぶかです、色々と。」シエスタは背丈が162サント、ルイズは153サントで10サントも違いますし、グラマラス系のシエスタと矢鱈と華奢なルイズ…見事なくらいぶかぶかなのですよ。「そういうのもとても可愛らしいとは思いますが、たぶんルイズが目指している路線とは大幅に違う筈です。」たぶんルイズはシエスタみたいな色気が欲しくて、わざわざシエスタのメイド服を奪った筈なのです。「色気…無いかしら?」「とっても可愛いですが、色気は欠片も。」ロリコンなら大喜びするような?「な…何故?」「ぶかぶかの服というのは、幼さを際立たせる効果があります。 色気は減り、可愛らしさが上がるというわけなのです。 己のキャラをきちんと把握し、それに合った服を着ましょう。」ちなみにブカブカの服というのは、例えばキュルケやシエスタなんかがやると、《何でサイズ合わない服着てんの?》という反応にしかならなかったりします。逆にタバサ辺りがやると、必殺兵器と化すでしょう。己のキャラにあった装いが一番という事なのです。「そんな、色気ムンムンだと思ったのに。」「冗談は顔だけにしておけよ?なのです。」人間には出来る事と出来ない事がきちんと存在するのですよ。「そもそもルイズに色気ムンムンは無理なので、諦めてください。」「がーん、なんでよ!?」いや、ショックを受けられても困るのですが。「例えば、セクシーなドレスに身を包んだタバサとかを思い浮かべてみてください。」「ええと…ストンと落ちるわね。」 何がですか、何が。「ルイズが何を想像したのかは敢えて深くツッコミませんが、そういう事なのです。」ええ、私は敢えてツッ込みませんよ、敢えて。「残念ながら今のルイズがどんなに肉感的な色気を出そうと頑張っても、痛々しくなるだけで色気は増しません。 ルイズの武器は可愛らしさですから、それを活かして伸ばさなくては駄目です。」「い…今までのわたしの努力の殆ど全てが否定されたような気が…。」そもそもルイズの本質は元気系ですから、健康的に可愛らしく飾り立てるのが一番健康的な色気を引き出せる筈なのです。「ルイズにはルイズの魅力の引き出し方があります。 そのあたりはモンモランシーにでも相談してみれば良いかと。」「モンモランシーに丸投げする気ね?」おおう、何故かルイズが半眼で私を睨んでいるのです。「いやいや~私は地味系なので、御洒落に関しては興味な…もとい、概論しかわかりませんし。 モンモランシーはマッド系な癖に、あれで意外と御洒落好きですから。」「確かに、そういやそうね。」興味が無ければ、香水の調合が得意で《香水だけは信頼と安心のモンモランシー》略して《香水のモンモランシー》なんて呼ばれないのです。「ひう!?」ルイズが納得してうんうん頷いている所に、何故か近くからティファニアの鳴き声がしたのでした。「テファ、どうかした…の? あああああああああんた、あんた!」「またですか、エロ使い魔?」声のした方に慌てて駆けつけると、才人がティファニアを押し倒して、胸を揉みしだいている格好になっているのです。流石、ラブコメ主人公属性持ち…。「あわわわわ、違うんだルイズ、ケティ、これは事故がハプニングで桃林檎なアレなんだよ!」「トリステイン語でおkなのです。」まあ恐らくは、たまたま才人かティファニアがコケて、たまたま胸を鷲掴みにしたのでしょうが…。「わわわわわ分かったわ。 つまりアレね、死にたいと。」「話を全く聞いていないだろお前!?」ルイズにしてみれば、ティファニアを押し倒して、あのとてつもない胸を揉んでいるだけでアウトという事なのでしょう。まあ、才人の説明は言語になっていませんが。「すんごいわよねティファニア。 もう色々と圧倒的過ぎて、正直な話彼女には畏敬の念さえ抱いているけれども、サイトあんたは駄目よ。」「だから、これはおおむね不幸な事故で…。」大きな胸揉んでおおむねですか、やりますね。「わたしも揉みたいのを我慢しているのに…死になさい。」そういや、私の胸もよく揉んでいますし、ルイズって結構おっぱい好き?「え?お前も揉みたいって何…ちょ、やめ、うぎゃー!?」暴虐の嵐としか呼べないものが才人の身に降りかかっているのを、私達は見守る事しか出来ません。「ひう…もうやめてあげてルイズ、サイトが死んじゃう。」「駄目ですティファニア、こうなったらもう誰にも止められないのです。」飛ぶ血飛沫、何かを砕き潰す音が室内に響き渡ります。「ついでに言うと、才人の凄まじさも目の当たりにする事になりますし。」「ぎゃああああああああぁっ!?」「サイトの凄まじさ?」ううむ、人の絶叫に慣れちゃあいけないと思うのですが、御馴染ですからねえ、これ。「フィニッシュ!」「ほげろ!?」ようやく、暴虐の嵐は終わったのでした。「まったくもう、私が揉む前に揉むとか、何なのよ、もう。」えーと…ドサクサ紛れに何を言っとりますか、このピンクは?「ね、ねえ、何で皆、サイトが死にかけているのに平気なの?」「ああ…見ていればわかりますよ、ほら。」3、2、1…。「あー、死ぬかと思った…。」「ひう!?」死にかけていた筈の才人の傷が一瞬で消え、何事も無かったかのように起き上がったのを見て、ティファニアはびっくりして飛び上がったのでした。「いやしかし…その妙に不死身な体、ガンダールヴの能力だったのですね。」「そうらしいな…まあ剣持っているのに何で伝承では盾なのかいまいち疑問だったんだが、たぶんそういう事なんだろうな。 虚無の盾になる為に、戦っていても極端に死にづらい体にって事なんだろ…まったく、上条さんか俺は。 もっとも、長時間ダメージを受け続けると、蓄積されて本当に死んじまうみたいだが。」才人が一時的に死んでしまったのは、回復が追いつかないくらいの長時間大きなダメージを受け続けたせいだったのですね。「さて、もう数日逗留しながら村を直して…およ?」ばっさばっさと飛んできた白い大きな梟が、マリコルヌの頭の上に止まったのでした。「あいたたた、爪が、爪が刺さる!?」梟は猛禽類ですから、爪が鋭いのですよね。「爪が、爪がががが!?」「おい梟、そこはフワフワしているが鳥の巣じゃねえぞ?」「ホウ。」梟は一声鳴くと、ボケた事を言っていた才人に手紙を渡したのでした。「痛い痛い痛い!? あれ?何だか気持ち良くなってきたぞ?」「手紙?」「ホウ。」一声鳴いて、梟は頷いたのでした。「ええと…何々…?」「ぎゃー、血が、血がたらーっと!?」才人は手紙を開いてさっと目を通すと、私に手紙を渡したのでした。「すまん、こっちの字を読めないのすっかり忘れてた。」「ナイスボケです才人。 どれどれ…。」「あの…何で誰も僕の心配をしてくれないのかな?」マリコルヌですからー。ちなみに手紙は姫様からなのです。内容はというと…。《ガーゴイルが送ってきた報告書読んだけれども、サイト殿見つかったんでしょ? 早く帰ってきなさいというか、帰ってきてルイズと一緒に仕事手伝って。 会議で一週間城を空けたら仕事が溜まりに溜まりまくっていて、このままでは死んでしまうわ。 お願い、すっごい良い船をポート・オブ・サウスゴーダに送るから、早く帰ってきて…ボスケテ。 アンリエッタ・ド・トリスティン》「ひ…姫様が悲鳴を上げる量の仕事…ですって?」それはそれは、物凄く帰りたくないのですが…というか、ボスケテって私は姫様のボスでは無いのですが。「ど、どうしたのケティ?」「姫様がこのままだと書類の山に埋もれて圧死するから、私とルイズに手伝ってくれって…。」私がそう言うと、ルイズはくるりと向きを変えて逃げようとしたので、襟首を掴んで引き止めたのでした。「ぐぇ…あにするのよ?」「どこに行く気ですか、このちんちくりんピンク?」私だって同じ気分なのですよ。「酷い事を言われたような気がするわ。 そんなわけで気絶、がくっ。」ルイズが急に狸寝入りを始めたのでした。「敵前逃亡は許しません。」「あの姫様が悲鳴を上げるような量だなんて、そんなの一部でも任されたら私は完膚なきまでに死ぬわよ!?」死んでもやり遂げて下さい。「しかしこの村、外との直通通路が出来ちまったが、大丈夫か?」「私に任せなさい。」不安そうにルイズが作った道を見ている才人に、モンモランシーが自慢げに胸を張ったのでした。「私の作った植物成長促進の水の秘薬があれば、どんな盗賊もそこを通ればたちどころにパックンチョよ!」「うぉい!例の薬かよ!?」才人が無い胸を張るモンモランシーに思い切りツッ込んでいるのです。「畑を謎の植物モンスターの森に変えた、あの伝説の秘薬を使うのですね…。」「ふっふっふ大丈夫、歩く植物モンスターは出来ないように改良したわ。」懲りずに改良を続けていたのですか、あの薬。しかも、植物モンスターになるのは変わらないのですね…。「ひぅ、パックンチョって何!? 一体、森のあの部分に何が起こるの?」ティファニアが怯えているのです…。「取り敢えず、誰も通れない鉄壁の地域が出来上がるので、子供達が迷い込まないように気をつけてあげて下さい。」モンモランシーに、普通の植物生長促進剤を期待するのは間違いですからね…。「僕も村の周囲に水掘を掘っておくよ…万が一、植物モンスターが侵入して来ないように。 近くに泉もあるようだし、それほど大変な作業にはならないだろう。」前髪を指でくるくるしながら、ギーシュはそう宣言したのでした。矢張り土メイジはこと土木工事になると、己の力を存分に発揮しますね。「僕は勿論、それを見守っているよ。 見守っているだけだけれどもね!」マリコルヌ、まさに外道!頭に梟がとまったままで、顔が血塗れでも外道!まあ風メイジは生産的な魔法が必要な時には、殆ど欠片も役に立ちませんからね。流石は『戦闘だけ』最強の系統…。「さてと…返事を書きますか。」「フッ…早くしてくれないと、僕が失血死するよ?」頭から流れ落ちる血液をハンカチで拭き取りつつ、マリコルヌがなぜか気障な口調でそう言ってのけるのでした…ああ、痛いのが気持ち良いから問題ないのですか。ちなみに梟はよほど気に入ったのか、マリコルヌの頭にとまったままなのです。「それは望む所ですが、返事が遅れると姫様に怒られそうですし、さっさと書きましょうか。」「あヒん!あざーっす!」あ…しまった、またご褒美をあげてしまいました。《現在、後始末の最中ですので、3日ほどお待ちください。 4日後にポート・オブ・サウスゴーダでお待ちしております。 ケティ・ド・ラ・ロッタ》さらさらさら~っ…と。「では梟さん、これを姫様まで。」私が手紙を梟に咥えさせると、大きく羽を広げて飛び去って行ったのでした。「…ふと思ったのですが、梟って長距離飛行向けでしたっけ?」確か、梟って短距離の急降下狩猟向けの翼で、長距離飛行には決して向かない鳥だったような…。「えーと…飛んでいる途中に力尽きたりしませんよね?」「どうしたの、ケティ?」ルイズが不思議そうに私の顔を覗き込んでいます。郵便に使うなら、長距離飛行はお手の物なアホウドリとかの方が良いような気がするのですが…まあ、ファンタジーにそんな生物学的考証は野暮ってものですか。そして四日後、ポート・オブ・サウスゴーダに私達はやって来たのでした。「有り難うサイト、あれで暫らくはやっていけそうだわ。」「礼ならケティ達に言ってくれ。 俺がやったのって、木を削るくらいだったし。」「鉈になったり、彫刻刀にされたり、なかなか忙しい日々だったぜ…。」才人にはデルフリンガー一本で色々とやって貰ったのですよね。「有り難うケティ、助かったわ。」「今回大活躍だったのはモンモランシーとギーシュ様ですから、感謝なら彼らにどうぞ。」私もゴーレムを何とか1体こさえて土木工事に加わりましたが、流石にギーシュのようにはいきませんでした。土系統は慣れていないので、疲れます…。「ううん、残った木を村の壁にする事を考えてくれたのはケティだもの。」丸太で村をぐるーっと囲んだのですよね…ルイズ、木を蹴り倒し過ぎなのです。「水堀に丸太塀って、よく考えたらちょっとした砦だけどね…。」ギーシュは、ちょっとやり過ぎたかなといった表情で前髪をくるくるしています。「調子に乗って物見台まで用意したから、あれはもうウエストウッド村じゃなくて、ウエストウッド砦よ。」同じく、やり過ぎたかなといった表情でモンモランシーが苦笑いを浮かべています。「しかも、ケティが更に調子に乗って、その物見台にでっかい弩弓を据え付けたしね。」ルイズがにひひと笑いながら、私を見ているのです。「あ…あれは、ああいう目に見える脅威があれば、盗賊避けになるというですね…。」「なあケティ、素直になれよ…趣味だろ?」ポンポンと肩を叩きながら、才人が妙に爽やかな笑顔で私を見るのでした。「ああ…ううう…。」テファを除く全員が、私をニヤニヤと見ているのです。趣味全開にし過ぎましたか…?「ああもう、もう止めーっ!」取り敢えず、マリコルヌ殴って誤魔化すしか。「有り難うございますっ!」幸せそうな表情で、マリコルヌは床に崩れ落ちたのでした。「あ痛たたた…手が、手が…。」いくらぽっちゃりしているとは言え、人の顔を殴るもんじゃないのですよ。何でルイズやモンモランシーは、いつも殴っても平気なのですか…。「気を取り直して…あの村はあれで暫くは盗賊に教われたりする事も無い筈なのです。」「ああっ、愛が、愛が痛い!」私のスカートの中を覗き込もうとするマリコルヌの顔を踏んづけつつ、ティファニアに微笑みかけてみたのでした。「う…うん、確かにあれだけ物々しくしたら、暫くは誰も近づけないと思うわ。」「ぐりっと、ぐりっときた!有り難うございます!」「だ…誰か、マリコルヌを片付けてください。」このままでは、まともに話が出来ません。マリコルヌは多分、固有結界アンリミテッド・シリアス・ブレイカーの持ち主なのです。「おう、わかった。」「僕達に任せたまえ。」何時の間にか近くまで来ていた才人とギーシュが、マリコルヌの右腕と左腕を掴んで引きずり起こしたのでした。「な、何をする貴様らー!」「大丈夫だよ、安心したまえマリコルヌ。」「そんな性癖、殺されても欲しくないから。」マリコルヌはずりずりと引き摺られて行ったのでした。「いちいち殴ったり踏んづけたりするから反応するんじゃないの?」モンモランシーが、そう言ってくれますが…。「反応しなかったらしなかったで、散々パンツを視姦されるのが目に見えているではありませんか…。」変態として、マリコルヌはまさに隙無しなのです。パーフェクト変態…始末に終えません。「わたしなら、思い切り踏んづけるけど?」ルイズはそうアドバイスしてくれますが…。「それは、マリコルヌの頭が木っ端微塵に弾け飛ぶので、止めた方が良いと思うのです。」流石に殺しちゃまずいのですよ。「グランドプレ家から求婚の申し入れが来るかもね。」「どういう悪夢ですか、それは。」もしそんな事になったら、本気で泣き崩れますよ?「ふむ…マリコルヌを始末するのは勘弁したいので、そうならないようにグランドプレ家に姫様経由で圧力をかけてもらいましょう。」「うわ、久し振りにこんな真っ黒になったケティの顔見た!?」「始末とか圧力とか、ケティがこんなしょうも無い事で本気モードになったわ…気持ちはわかるけれども。」ありとあらゆる手段を講じて、そっちのフラグは潰しましょう、ええ。「久し振りですな、卿の名がサイト・ヒラガ殿で宜しいか?」「確かに俺はサイト・ヒラガだけれども、卿とかそんな風に呼ばれるような身分じゃあ…。」港に停泊している船を見てびっくりというか、これはトリステイン空軍旗艦のデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェンではありませんか。しかもそれに乗ってきたのが…。「恩人の帰還に立ち会えた事を誇りに思うよ。 知っていると思うが、私の名はジャン・ド・ポワチエ伯爵である。」まさか、ポワチエ卿が迎えに来るとは…。「卿のおかげで大勢の部下が救われた、心から感謝する。 あと、貴公は既にシュヴァリエの叙勲が決定している。 貴族に対して《卿》と呼ぶのは、別に変な事ではありませんぞ?」そう言って、ポワチエ卿はウインクして見せたのでした。『な、なんだってー!?』私と事態をよく理解していないティファニアを除いた全員がびっくり仰天して、才人を見ているのです。「そうなんだ凄いね、おめでとうサイト。」「お、おう、ありがとうテファ。」才人が貴族になるという事を理解していない良くも悪くも世間知らずなティファニアが、一番最初に素直に才人を祝っているのです。「…とまあ、それが姫様からの労いのしるしなのです。 私が言うよりも、他の人から聞いたほうが実感が湧くでしょう?」アニエスの時も揉めたらしいですが、今回も揉めたでしょうねえ…姫様、お疲れ様なのです。「俺が貴族か…なんだか実感わかねえな。」戸惑った表情で、才人は頭をポリポリと掻いています。「な、何だかすっごい複雑な気分だわ。 …でも、おめでと。」「お…おう、ありがとう。」使い魔が貴族だなんて、前例がありませんしね。もう一つの理由、姫様が才人をトリステインに取り込もうとしているのにも気付いているのでしょう。まあ姫様真っ黒ですし、気付かないわけが無いのですが。「凄いじゃないサイト! 喜びついでに例の借金チャラにしてくれると嬉しいわ。」「ありがとうモンモン、でもあの額の借金チャラは断じてありえねー。」才人とモンモランシー、どっちの笑みも真っ黒なのです。「やあ、これは素晴らしい! 流石は僕を倒した男だ。 ここまで強くなってくれると、最初に倒された男として名誉だよ、あっはっはっは!」「背中バシバシ叩くな、いた、痛いって!」ギーシュは素直に喜んでいるのです。こんな表裏の無い人間が二股とか、どう考えても無理ゲーでしょう。「女の子にモテようとさえしなければ、それで良い。 覚えておけ、リア充はこのマリコルヌ・ド・グランドプレが粛清する。」「…お前は一体何を言っているんだ。」全く祝いの言葉でないのですよ、マリコルヌ…。「それじゃあ、これで一旦さようならだな、テファ。」「…うん。」才人の言葉に、ティファニアが寂しそうに頷いています。「あの場所は危険だから、ケティが姫様に頼んで大きな孤児院を用意している最中らしい。 用意が出来たら迎えに行くよ、だから待っていてくれ。」「うん、待ってる。 いくら姉さんが色々と持ってきてくれるとは言え、これ以上子供達だけで暮らすのは難しいものね。 姉さんも説得して、一緒に行けるようにするつもりよ。」例の計画に丁度良いから…というのがばれたら、私は殺されても文句は言えませんね。いくらメイジが足りないとは言え、ロマリアにばれたらとんでもない事になります。でももし上手く行けば、彼らの一部だけでも孤児という泥濘から救い上げる事が出来るのですよ、あの計画は。メイジと平民では、出来る仕事も待遇も段違いなのですから。「それでは出航!」「しゅっこーう!」デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェンは、ゆっくりと桟橋から離れ始めたのでした。「さようならー!さようならー!」私達は、手を振り続けるティファニアに、何時までも手を振り続けたのでした。