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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] ちょっとだけ番外編(バカップル編)
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/17 03:25
1993年4月2日 遼東半島 旅順軍港


「お~・・・ あれは旅大級駆逐艦か。 艦番号は110、『大連』だな。 隣は108、『西寧』か。
向うは・・・ 江滬II型フリゲート。艦番号544って事は? あ、北洋艦隊は 『四平』 だな。
台湾海軍の富陽級(ギアリング級)駆逐艦。 DD-924 『開陽』、DD-927 『雲陽』 もいるな。
あっちには韓国海軍の・・・ 忠北級駆逐艦。 DD-912 『光州』、DD-922 『江原』 か。 蔚山級フリゲートのFFK-953 『忠南』、FFK-956 『慶北』 もいる」

「・・・・・ねぇ・・・」

「お? おい! 帝国海軍も、ご入港中だぜ!? 第2艦隊だ。 第10戦隊の重巡 『妙高』 『那智』 『足柄』 『羽黒』 
おお? 3水戦の軽巡 『五十鈴』 に 『阿武隈』、 向こうは駆逐隊か。 ひょう! 流石、最新鋭ばっかりだぜ! 『陽炎級』 と 『夕雲級』だぞ!?」

「直衛・・・ ねぇ、ちょっと・・・」

「おいおいおい! 航空戦隊もいるじゃねぇの! 4航戦だぜ!? 戦術機母艦 『天龍』 に 『神龍』! 『雲龍』型の3、4番艦だぜ! 
知ってるか? あのクラスは改『飛龍』型で、1隻で戦術機を60機、搭載可能なんだぜ?」

「こら・・・ 少しは・・・」

「因みに搭載機は、F-4EJⅡ改 ≪翔鶴≫だけどな。 斯衛の ≪瑞鶴≫ と似た名前だけど、コンセプトは180度違う機体だけどさ!」

「直衛ぇ~~~!!!」

「・・・・あぁ? どうした? 祥子?」

「どうした? じゃ、ないでしょう・・・ 私達の仕事、忘れているの?」

「・・・・あ」


全く・・・ まさか、彼がここまで軍艦好きだったとは・・・
確か、お兄様が海軍大尉だとか言っていたから。 その影響かしら?
それにしても!

「周防少尉? 私達は『任務』で、ここに来ているのよ? 物見湯山じゃありませんッ!」

「はッ! 失礼しましたッ! 綾森中尉殿ッ!」

傍らで高機動車の運転手・兼・案内役をしてくれている、海軍の二等兵曹と上等水兵が、何とも言えない表情で、笑いを堪えている。
はぁ、溜息が出るわ・・・


私こと、綾森祥子陸軍衛士中尉(4月1日進級)と、周防直衛陸軍衛士少尉は今、大陸側で、北アジア最大級の軍港・旅順軍港に居る。

どうして陸軍の私達が、統合軍海軍の軍港(中国北洋艦隊の母港でもある)・旅順に居るかと言うと。
単純に、大陸派遣第3陣の先遣隊(1個戦術機甲連隊+アルファ)の、受け入れ連絡将校に任命された、と言う事だ。

こんな仕事、派遣軍司令部の将校にやらせればいいのに。 何も、前線部隊の野戦将校にわざわざ・・・
最初、私も直衛も、同じ愚痴を言っていたのだけれど。 大隊長の広江少佐(4月1日進級)から説明されて、諦めた。
何と、先方の『御指名』だったのだ。 先遣隊と一緒に着任する、新任の派遣軍『作戦参謀』・河惣 巽少佐の・・・

で。 今、先遣隊を搭載した戦術機母艦 『大鷹』 『雲鷹』 『沖鷹』 『神鷹』 『天鷹』 と、輸送艦8隻の着岸を見守っているところなのだ。
5隻の戦術機母艦が、入港してきた向きと反対に回頭しながら、着岸しつつある。


「・・・・ねぇ? どうして1個連隊運ぶのに、5隻なの? 確か今、『雲龍』型って、60機搭載って、言ってたわよね?
連隊は108機だから、2隻あれば搭載できるんじゃないの?」

流石に海軍、しかも下士官兵に聞こえると、些か不格好なので、小声で聞いてみる。

「・・・『雲竜』型と、『大鷹』型、大きさを比較してみろよ。 全然違うだろ?」

直衛も小声で答える。 うん。確かに、全然違うわね。 片や、如何にも『黒金の艦』といった趣だけれど。
片や、何だか無理やり軍艦にされた輸送船、みたいな・・・


「へぇ? 良い観察眼だね。 正解。 『大鷹』型は、戦時標準輸送船の船体を流用した、改造母艦なんだ。
小さいから、搭載機数は24機。 『雲竜』型の半分以下さ。 2個中隊分だね。 もっぱら、戦術機輸送に使用されているよ」

そうだったのね。 それにしても・・・


「失礼します。 綾森中尉、周防少尉。 間もなく接岸完了。 乗艦予定時刻、1130 宜しくありますか?」

海軍二等兵曹が確認してくる。

「判った。 宜しいです、二等兵曹」

「・・・はっ」

あら? 何か変な事言ったかしら? 二等兵曹が少し苦笑気味の表情をしている。
その時、直衛が横から口を挟んできた。

「≪兵曹≫、連隊本部は、『大鷹』だな?」

「はっ! 少尉」

「よし。 しかし、別にランチ(運用艇)でも良かったのだぞ? 君は艇長もしているのだろう?」

「・・・タラップは使えませんよ?」

「スインギングビーム(係船桁)でも大丈夫さ。 陸軍でも、訓練校じゃ、似たような事をする」

「ほお、そうでありますか。 ・・・・いや、周防少尉は陸軍なのに、何気に海軍にお詳しいですね」


私もそう思う。 さっき、直衛が口を出したのは、多分、『二等兵曹、じゃなく。 単に兵曹、と言えば良い』と、私に教える為だろう。
後は・・・ ランチ? スインギングビーム? 何の事かしら・・・?


「単に俺の実兄が、海軍の主計大尉というだけさ。 従兄弟たちの中にも、海軍さんがいる。 叔父貴も、海軍中佐でね。
陸軍は俺と、2歳上の従姉だけだ。 後は実は、海軍なんだよ」

「そうでありますか。 いや、それならば・・・ はは、実は、変だな、とは思っておりまして」

「矢鱈と海軍に詳しい、変な陸軍のヒヨっ子少尉だ、と?」

「あ、いや。 失礼しましたッ!」

「構わんよ、別に」


2人して、ニヤニヤしている。 残った上等水兵も、似たような表情。 何なのよ・・・
私って、仲間外れ? ちょっと、不機嫌!!








≪1305 戦術機母艦『大鷹』 士官室(連隊本部)≫


「ご苦労だったな、綾森中尉、周防少尉。 何、連絡将校だと言っても、特別何か仕事がある訳じゃない。 体裁さ。
実務はこちらの本部と、大連の後方本部とでやる。 君達は、今日・明日と、ゆっくりしていけば良い」

艦内での昼食時。 私と直衛は、河惣少佐からそう言われて、些か気が抜けた。
乗艦してから、連隊本部、及び護送戦隊司令部へ出頭。 諸々、挨拶やら、格納庫内の戦術機の状態確認やらで、昼食が遅れた。

本来なら、私達の様な尉官クラス(中・少尉)は、専用の区画(第1士官次室と言う名を、直衛から教えられた)で食事するのだそうだけど。
生憎ともう、時間が過ぎていたらしく。 そこで河惣少佐が手配して下さって、士官室(上級士官公室)で食事する事になった。


「判りました・・・ が、少佐?」

「ん? なんだ? 中尉」

「去年のような『作戦』は、もう無いですよね?」

「また、ドレスアップしたいのか? ふむ。 周防少尉に見せたいなら、なんとかでっち上げるが・・・?」

「ちっ、違いますっ!」

何を言うのよっ、あんな恥ずかしい真似。 もう、こりごりよ・・・ はぁ・・・

溜め息交じりに、ナイフで肉を切り分ける。 それにしても海軍って、贅沢よね。
お昼から、フルコース並の昼食だものっ! それに、水兵の給仕付きよ!? 信じられないっ!
思わず陸軍の、私達の日常と比べてみて、余りの落差に唖然としたわ・・・


「豪勢な食事だろ? ま、中身は同じ合成食材だけど」

横から直衛が聞いてくる。 彼は特に、驚いていないようだけど・・・

「・・・知っていたの?」

「中学の時。 兄貴の乗艦が入港した時、乗せて貰った。 その時にね。 ガンルームだったけど、これと遜色無かったな。 海軍って、艦隊はこんなものさ」

ああ、お兄様の・・・ って? ガンルーム?

「ガンルームって、1次室・・・ 第1士官次室の事。 英国海軍から取り入れた名前だけどね。 もう、4年ほど前か。 兄貴もまだ、主計中尉の頃だったな」

「これが、艦隊司令部の昼食になると、軍楽隊の生演奏が付くぞ?」

「・・・・えっ?」

河惣少佐の言葉に絶句する。 直衛に『嘘でしょう?』と、視線で問いかけると。

「本当だよ」

「か・・・ 海軍って・・・ 一体、何なの?」







≪1415 旅順軍港 埠頭付近≫


結局、する事が無くなってしまったので、私は艦を降りて埠頭を眺めていた。
別に、これと言って特別な風景じゃなかったけど。 何となく、居心地が悪かったのだ。
直衛は意外と、海軍の空気に馴染んでいた。 海軍士官のお兄様や、親戚に海軍が多い、と言う環境かしら?


(・・・でもっ! 上官で、恋人の私をほったらかしにするのは、どうなのっ!?)

今頃、ガンルームで談笑しているであろう、部下にして恋人の顔を思い浮かべて、ムカムカする。

第一、私は3日後から3週間、本土に戻って初級指揮幕僚課程のカリキュラムを受講しないといけない。
中尉に進級して、小隊長として部隊指揮するのに必要な、必修教育課程。
私の他に、源君と、麻衣子に紗雪の4人がそうだ。


(3週間! 3週間も会えないのよっ! 今回の出張だって、本当は大隊長と、木伏中尉が気を使ってくれたと言うのにっ!)

以前の大隊長。 藤田中佐が進級と同時に、派遣軍司令部参謀に転出した。 代わって、やはり進級した広江直美少佐が、第2大隊長となった。
第3中隊長は空席のまま、木伏中尉が中隊長代理をしている。 同時に第1小隊に移ったので、暫定的に私が第2小隊長なのだ。


(・・・良い度胸よね? 恋人ほったらかしにして。 それに3週間、羽も伸ばす気なのね? 翠華・・・ 蒋翠華少尉と!)


翠華自身は、良い子なのよ! 素直で、裏表がなくって。 ま、まぁ、少々行動的過ぎるきらいはあるけど・・・
それに、あの時。 彼女を『抱きなさい』って言ったのは、私だし・・・ べ、別にっ! 浮気を公認した訳じゃないのよ!?
・・・ああ、もう! どうしてこんな事、うじうじと考えなくちゃいけないのよっ! 直衛の馬鹿ぁ!!


そんな、スパイラルダウン思考をしていたから、近くに来ていた人の気配に、全く気付かなかった。


「君、どうかしたか? ん? 陸軍さんが、どうしてここに?」

見ると、若い(と言っても、私より7,8歳位年上に見える)海軍大尉殿だった。

「あ、失礼しました。 大尉殿。 いえ、別段、何でもありません。 少々、港を見ていましただけで・・・」

「ん・・・? ああ、派遣軍か? 君は」

「はい。 連絡将校として参りました」

「そうか。 しかし、まぁ。 ここで、ぼーっとしていても、何も無いぞ? それにまだまだ、内地と比べて気温も低い。 そこの詰め所で、茶の1杯でも出そう」

「はっ 有難うございます」

一人で悶々としているより、気が紛れるかもね。

「うん。 おう、そうだ、君の名前は?」

「帝国陸軍衛士中尉・綾森祥子であります。 大尉殿」

大尉が一瞬、驚いたような顔をした。 何故?

「綾森中尉。 海軍では『殿』は不要だ。 普通に『大尉』でいい。 それと、海軍では『たいい』では無くて、『だいい』と言う。 できればそう言ってくれ」

「はい」

「うん。 ああ、自己紹介が遅れた、済まんな。 私は、帝国海軍主計大尉・周防直武(なおたけ)だ」


―――――えっ? えっ!? ええぇぇ~~~!?







≪1500 旅順軍港 帝国海軍主計事務所≫


帝国海軍主計大尉・軽巡洋艦 『阿武隈』 主計長・周防直武。 

間違いなく、私の恋人・周防直衛少尉の、お兄様だった。
お聞きしたところ、27歳。 奥様と2人のお子様が、横須賀にお住まいとか。


「ははは。 いや、弟の上官の方でしたか。 失礼した」

そう言って周防大尉(正確には、主計大尉)が笑う。 その笑顔なんか、彼にそっくりだった。 流石、兄弟ね・・・
事務所の応接セット(と言っても、備え付けのテーブルと椅子だけど)の上には、綺麗に切った羊羹とお茶。

「いえ。 周防少尉からは、御家族に海軍将校の方がいらっしゃる、とは伺っておりましたが。 こちらこそ、失礼しました。 周防大尉」

「まぁ、弟は筆不精に輪をかけて、自分の事には無頓着なやつでしてね。 私の事も、碌には話していないでしょう」

「あ、ええ。まぁ・・・」

何だか変な感じね。 兄弟だから、似ているのは当然だけど。
周防大尉は、年齢とか、階級相応の落ち着きのある感じの方で。 直衛があと、7、8年もすれば、こんな感じになるのかしら?
それは、不快じゃない、楽しみな未来の想像だった。


色々と四方山話を聞かせて頂いた。 
直衛の小さい頃の話。 やんちゃだった小学生の頃。でも、意外と甘えん坊で、お姉様には良く懐いていた事。

丁度、名古屋に御実家が移り住んで、長門少尉と知り合った中学の頃。

海軍兵学校を受験しようとして、風邪をひいて身体検査で不合格になった時に、悔し泣きしていた事。

自分では内緒にしているようで、しっかり周りにバレている、初恋と失恋の事(ちょっと、聞き逃せないわね)

いつの間にか、時間が過ぎていた事に気付かない程、楽しい時間だった。



「・・・時に、綾森中尉。 お聞きしたいのだが・・・」

「はい?」

急に真剣な表情で、大尉が聞いてくる。 

「あれは・・・ 弟は。 戦地で、しっかりとやっているだろうか? 部隊の皆に、ご迷惑をお掛けしていないだろうか? それに・・・」


それに? 大尉は次の言葉を飲み込んだ。 ああ。 そうね。 いくら身内でも。 帝国軍人である以上、公私はつけないと、と言う事ね・・・


「・・・ご心配無く、大尉。 周防少尉は、今や我が中隊の中核戦力で、優れた衛士です。
戦場においても、為すべき事を立派に心得て戦っております。 小隊長として、私は彼を右腕と頼んでおりますよ」

「そうですか・・・」

「それに、彼は非常に運の強い衛士です。 無論、勇気と蛮勇の違いも、しっかり心得ていますから・・・
大丈夫、彼は生き残る衛士です」

「・・・・・感謝する」


帝国海軍軍人として、私情を挟んだ事を聞いてしまった、と言う悔悟と。
兄として、肉親への情愛から、弟の近況を確認できた安堵。

大尉の表情は、そんな色々なものが混ざり合った表情だった。


「・・・弟が、あの筆不精者が、家族に便りを寄こしたのは、この1年で2回しかありませんでね」

「・・・たったの2回!?」

全く。 何しているのよ。  次からは、もっと便りを出すよう、きつく言っておかないと・・・

「1度目は、去年の4月中頃か。 部隊配備になったばかりで、緊張するが、頑張る。 と言った事を、ね」

ああ、あの頃。 懐かしいわ。 ふふ、初々しい新任少尉だったわね・・・

「・・・次が、今年の2月だった。 丁度、大陸派遣軍が満洲で 『大戦果』 の発表をした直後だな」

「・・・・・」

「両親や、姉には・・・ ああ、私と直衛の姉でね。 私の2歳上で、直衛とは丁度、10歳違いで。 昔から年の離れた弟を、可愛がっていた。
親や姉への便りは、とりたてて、変わらない内容だったそうだ。 満洲の冬は寒い、とか。 元気にしている、とかね。
だが、私宛の手紙には・・・」

「・・・・」

「もし、自分が戦死しても。 両親や姉さんが悲しまないように、兄さんから宜しく言って欲しい、と。
戦う理由を持って、戦っている、と。 衛士の覚悟も、ちゃんと持っている、と」

「ッ・・・・!」

「同じ軍人として、今まで戦ってきた兄さんを尊敬する、と。 
甥っ子達や姪っ子達が―――ああ、私と姉の子供達だが、大きくなって戦場に出なくていいように戦う、と。
――――まるで、遺書だ。 馬鹿者が・・・」

楓ちゃんが戦死した、すぐ後の事だ・・・ 直衛、貴方・・・


「海軍と陸軍の違いはあれ、私も帝国軍人だ。 満洲の実情は、良く承知している・・・
あの 『大戦果』 が、発表通りのような、生易しいものでは無いと言う事も。 
寧ろ、地獄と言う表現が、生温く思えるほどの現状だと言う事も」

・・・だから? 同じ軍人のお兄様には、自分の本音を判って欲しかったのね・・・?


「・・・そんな事を書いて寄こした弟だが。 最後に、本当に最後に一文だけ。 兄を安堵させた事を、書いていましてね」

「・・・それは、何と?」

「生きる理由を見つけた、と」

生きる理由!?

「生きる理由を見つけた。 自分はその為に戦って、生き抜く、と。 そして・・・」

「そして?」

「最後に。 君の名が、書かれてあったよ。 綾森祥子中尉。 自分の生きる理由の女性だ、と」

ッ! ・・・直衛 ・・・直衛  直衛!!

「昔から、意地っぱりで、なかなかに頑固な弟だが・・・ 一度言った事は、不器用でも、不格好でも、やり通す子だった。
そんな弟が、あんな風に言っていた。 ・・・綾森さん、これは帝国海軍軍人としてではなく、一人の、弟に甘い兄として、だ。
あれを、直衛を、お願いする・・・」

「た・・・ 大尉・・・」

涙が止まらない。
生きる理由、そう言ってくれたのだ。 私が、彼の生きる理由、と。
それでいい。 それだけで十分よ。 それだけあれば、私は・・・


「・・・ご安心ください」








≪1610 旅順軍港 帝国海軍主計事務所前≫


「すっかり引き止めてしまって、済まなかったね」

周防大尉が済まなさそうに仰る。

「いえ、こちらこそ。 楽しい時間でしたわ」

「そう言ってくれると、助かる」

穏やかな笑みを浮かべる。 その顔は、表情は、とても彼にそっくりだった。

「しかし、何だな?」

「はい?」

大尉が急に、人の悪い笑みを浮かべた。 何だろうか・・・

「近い将来、そうなったとして。 綾森中尉、君は私の『義妹』になる訳だ」

「ッ!!」

あ、あ、あ・・・ た、大尉。 急に、何てこと仰るんですかッ!
顔が熱い。 私ッ! 今、どんな顔してるのッ!?


そんな私を見て、大尉が愉快そうに笑う。 もうッ! こう言う所も、兄弟そっくりねッ!!


「はは、済まない。 からかっているんじゃ、ないんだ。 正直、我が弟ながら、女性を見る目のある奴だったのだな、と感心しているのだよ」

「大尉・・・」

ああ、もう。 顔の火照りが収まらないわ・・・

その時だった。


「あッ! 綾森中尉! 探しましたよ! 全く、どこに行っていたんですか? 軍港で迷子になったかと・・・」

直衛・・・ いくらなんでも、この年で迷子だなんて、言わないでよ・・・


「直衛」

「・・・・え? あ、兄貴!? どうしてここに!? って言うか、どうして兄貴と中尉が!?」

直衛がすごく吃驚している。 お兄様が旅順に居る事、知らなかったのかしら・・・

「俺の乗艦は、『阿武隈』だぞ? そこの主計長だ。 入港した艦の主計長が、主計事務所にいて、どこか変か?」

「い、いや、そうじゃないけど・・・ でも、なんで・・・?」

「偶々、お会いしたのよ。 で、色々とお話を聞かせて頂いたの。 誰かさんは、『上官』の事は、すっかり忘れていたみたいだし?」

ちょっと意地悪するわよ? ほったらかした罰ね?

「い、いや。 別にほったらかした訳では・・・ と、言いますか、中尉。 一体、兄と何のお話を・・・」

ふふ。 焦ってる、焦ってる。
周防大尉も、悪乗りしてくる。

「ん、まぁ、お前の旧悪をな。 何せ上官殿だ。 部下の把握には、情報も必要だ」

「あ・・・ 兄貴ぃ~~~・・・・」

「では、私はこれで失礼する。 艦隊の主計会議も有るのでね。 直衛、明日か明後日でも、時間が有れば一杯付き合え」


そう言って、周防大尉は見事な敬礼を残して、艦の方へ歩いて行った。





「あ・・・ あのさ? ウチの兄貴、何か変な事、言ってた・・・?」

あらあら。 よっぽど、過去の悪さがバレるのが怖い様ね? でも安心して? いざと言う時にしか、カマかけたりしないから。
何せ、大事な、大事な、アドヴァンテージだもの?

「いいえ? 別に?」

「・・・本当に?」

「・・・ふふ。 教えてあげない」

「~~~! 祥子、勘弁してくれ・・・」


駄目よ。 教えない。 大尉から伺った、あの言葉は。
ずっと、ずっと。 私の中で、大切に、大切に守ってゆくの。


「ほら、行くわよ。 特に仕事がないからって、ブラブラしてたら、海軍に対して面子が立たないでしょ!」

「・・・誰が、フラフラと姿消してたんだよ・・・」


直衛が何やら、ぶつぶつ言っているけど。 いいわ、聞き逃してあげる。

『大鷹』に向かう。 岸壁に居るのは、河惣少佐ね。 どうせ、少佐とも楽しくお話していたのでしょうね。
全く。 ようやく判ったわ。 年上の女性に弱い訳。 お姉様も、甘やかし過ぎたと言う訳ね?


「ほらっ! ダラダラしないっ!」

「マムッ! イエスッ! マムッ!」




2人して、艦に向かう。 西の空の夕焼けが綺麗だった。
夕陽を浴びた、彼の笑み。 私の大好きな笑み。 ずっと、ずっと、見ていたい。






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