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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/26 00:07
1994年7月28日 1510 ビリャヌエバ・デ・コルドバ 第88独立戦術機甲大隊


『イルマリネン01よりグラム。 大隊はこれよりバイレンへ移動、東より突進してくる2群に対応する。 グラム、先陣を任す』

『グラムよりイルマリネン、了解。 ダンス・パートナーは?』

『第188から1個大隊。 第3、『カラトラバ』だ。 それとコルドバ駐留の第331警備戦術機甲大隊『アルカンタラ』が即応する。
2群の先陣、約1200。 ラ・カロリーナを通過した。 バイレンまで80km地点だ。 急ぐぞ!』

『了解。 ―――グラム・リーダーより各フライト、聞いての通りだ。 全速NOE! 6分で布陣する!』

『『『 了解! 』』』

まず、第2小隊の4機が一気に噴射跳躍で中空へ舞い上がり、アンダルシアの大地に砂塵を巻き上げる。
そして、そのまま高速NOEで南東へ飛び去り、残る3個小隊も次々に追従していく。


1時間前に遡る。 偵察衛星が周回捜索した情報を解析した結果、バレンシア方面へ向かっていた2群・約6500のBETAが、中間地点のアラルコン湖の手前で進路を南西に変更。
グアダルキビル川の上流域に到達しようとしている。 このままバイレンを抜かれれば、対応が難しくなる状況だった。
 
そのまま南へ、コスタ・デル・ソル(太陽海岸)を目指すのか。 南下の途中、グラナダから西進して防衛線の裏に出るのか。 
予備戦力の運用選択肢が不明になる。 何としてもバイレンで持ちこたえなければ、BETAに主導権を握られっぱなしとなってしまう。

防衛司令部はビリャヌエバ・デ・コルドバに布陣させていた合計6個大隊のうち、第188旅団から1個大隊(第3大隊『カラトラバ』)と第88独立戦術機甲大隊『イルマリネン』を急遽抽出。
これにコルドバ駐留の第331警備戦術機甲大隊『アルカンタラ』(F-5EタイガーⅡ/36機)を併せた3個大隊で、バイレン防衛の先陣に充てた。


約5分後、戦域規定高度(500)で高速NOEを続ける第2小隊から、BETA発見の報が入った。

『グラムBよりグラム・リーダー。 バイレン視認。 BETA群視認。 先頭集団に光線級確認されず。 突撃級主体です』

『グラム・リーダー了解。 フォーメーション・ウイング・ツー(鶴翼弐型)! 突破阻止戦闘!』

16機のトーネードⅡがフライト(小隊)に分かれて、小高い丘陵部に布陣する。 前方より突撃級の群。 灰色と赤黒い不気味な津波が地響きを立てて迫ってくる。

『A04、FOX01!』 『D04、FOX01』

たちどころにA、D小隊の制圧支援機から、多数の誘導弾が発射される。

『A02、A03! 右翼の要撃級を叩け!』
『D02とD03、左翼の要撃級に砲撃集中してっ!』

『『『『 了解! 』』』』

打撃支援機と砲撃支援機が、装備するMk-57中隊支援砲を速射する。 
高初速の57mm砲弾は120発/分の発射速度で射出され、瞬く間に左右両翼から接近する要撃級・戦車級BETAを制圧していく。

「グラムB! 中央の突撃級を止める! 機動を止めるな! 無力化すれば良い! いくぞ!」

『『『 了解! 』』』

突撃前衛小隊がトライアングル・フォーメーションで突っ込んで行く。 
先頭のB01が高速噴射滑走で突撃級と衝突ギリギリまで急接近し、直後に短距離横噴射跳躍で交わすと同時に、噴射滑走で突撃級の側面に突っ込み、
マウザーBK-57リヴォルヴァーカノンの57mm砲弾を叩き込む。

その直後を続行していたB02が左右をAMWS-21突撃砲の36mmで掃射しつつ、戦車級を含めた小型種の接近を許さない。
B02の直後をB03とB04が並列で進出、それぞれAMWS-21突撃砲で120mm砲弾を左右の突撃級の側面に叩き込み、仕留めて行った。

そして突撃前衛小隊の後方に陣取った強襲前衛小隊が、戦域滞空高度ギリギリを保ち、前方の要撃級に、兵装ラックに装備した2門の支援突撃砲の支援砲撃で120mm砲弾を見舞う。 
Mk-57程の狙撃精度は無いが、この距離では外し様がない。

『グラム・リーダーより各機、後詰めの第19戦術機甲師団到達は45分後だ! それまで持ち堪えて見せろっ!』

両翼の第881中隊(イルマリネン)、第883中隊(ランスロット)も同様に、戦線の維持を目的としたウイング・フォーメーション(鶴翼陣形)をとり、阻止戦闘を開始し始めた。








BETA群右翼と中央の一部に対し、第88大隊『イルマリネン』が阻止戦闘を開始したと同時に、戦線左翼及び中央では、第188-3大隊『カラトラバ』も阻止戦闘に入った。

平坦な地形の右手に隆起した小高い丘に陣取った、左右両翼迎撃後衛小隊の誘導弾制圧支援と、MK-57中隊支援砲の一斉射撃で開けた大穴に、
平坦な地形を噴射滑走してきた突撃前衛小隊のF-16Cが、スパイクシールドをかざして突進する。

咄嗟に前腕でブロックをかけようとする要撃級へ、36mmの牽制射撃でブロックを下げさせた所へ、スパイクシールドの戦突を突き立てる。
要撃級が体液と内臓物を撒き散らして停止した時には、既に次の獲物へ陣形を維持したまま突進していた。
その後には、突撃砲4門を装備し、36mmと120mmを左右に撃ち広げ突破口を拡大する強襲前衛小隊が続き、
左右の後衛小隊はMk-57の射弾と誘導弾を、前方と左右の脅威目標に撃ち込み続ける。

『 ≪騎士団長≫より『カラトラバ』各隊! 右翼との連携を保てよ! が、遅れる事は罷りならんっ! ここはスペイン―――アンダルシア! 我等が大地! 我等が≪レコンキスタ≫だ! 』

『『『 おおっ!! 』』』

スペイン史上初の中世戦闘騎士団の名を継ぐ部隊は、さながら数百年前の騎士の突撃が如く、BETAへ痛撃を与え続けた。









1520 バイレン 第882戦術機甲中隊≪グラム≫


目前の要撃級の前腕の1撃を、サイドステップで交わしながらBK-57の57mmを叩き込む。 
同時に襲ってきた右手の要撃級を、後衛のギュゼルが間髪入れずに36mmで、全身蜂の巣にして動きを止める。

『直衛! 新しいオモチャ、具合が良さそうね!?』

「ああ! 意外に使える。 支援砲と同口径だから、突撃前衛にはどうかと思ったんだが! 発射速度が格段に高い分、制圧力は十分だ!」

また1匹、要撃級が迫る。 網膜スクリーンの兵装アイコンから、BK-57のセレクターをチェック。 発射速度モードをLOモード(毎分600発)に切換える。

レクチュアルを収束させ、1秒間の精測射撃。 57mm砲弾が前腕付け根部分に見事着弾し、要撃級の片腕を吹き飛ばす。
即座にMIモード(毎分800発)に切換え更に1秒間射撃。 13,4発の57mmAPCBCHE弾を喰らい、要撃級が体内を炸裂させて倒れた。

―――BK-57リヴォルヴァーカノン。 近接制圧砲。

ドイツのマウザー社が、自社で開発・製造している傑作航空機用機関砲、BK-27機関砲(口径27mm)をベースに、戦術機用近接制圧火器として新たに開発した。
砲口径57mmは、Mk-57中隊支援砲と同じだが、BK-57は全長4.65m、砲弾重量568g、全体総重量385kgと。
戦術機用近接制圧火器としては手頃なサイズ、重量に納まっている。
これでいて、砲口初速は1085m/sec、 発射速度はセレクター機能付きで、1200発/分(HI)-800発/分(MI)-600発/分(LO)の切換えが可能。
要撃級や戦車級の制圧は元より、突撃級に対しても正面節足部なら十分に射貫可能。 正面装甲殻でも、先ほど3秒間の1点集中・精測射撃でなんとかブチ破った。

「問題は、撃ちっぱなしじゃ保って1分20秒! 最短で40秒で弾切れって事か!」


極力長時間(3秒以上)の連射を避け、1、2秒間隔の短時間射撃で片付ける。
装弾方式は800発入りの大型弾倉。 但し、予備弾倉は戦術機の予備弾倉ブロックが、3本で片方が埋まる。
今回の兵装はBK-57リヴォルヴァーカノンを1門と、AMWS-21突撃砲とクレイモアを背部兵装ラックに1基づつ。


「先行量産型がたまたま回って来たから、面白そうだと思ったんだけどな! 気にいった!
アリッサ! フローラ! 間を詰めろ! ギュゼルとの間隔を開け過ぎるな! 戦車級に潜り込まれるぞっ!」

『了解です! フローラ! ボヤボヤしないでよっ!』

『小隊長! 僕は『フローレス』です! 女じゃありませんっ 男ですよっ!』

アリッサとフローラが間隔を詰め、36mmの掃射で周囲に集まってくる戦車級への掃討を続ける。

『あんたなんて、フローラで十分よっ!』

『ひっ、ひどいよっ! アリッサ! 君まで・・・ッ!!』

『はいはい、お喋り、そこまでっ! 小隊長! 後続との間隔、開きます!』

ギュゼルが後方に位置する第3小隊―――ファビオの指揮する強襲前衛小隊との間隔がやや開いて来ていると警告する。
後方スクリーンに目をやれば、ファビオの小隊―――グラムCとの間隔が、確かにやや開きかけていた。
拙い―――このまま開いてしまうと小型種、特に戦車級に捻じ込まれると厄介だ。


「グラムBよりグラムC! 続行、どうか!?」

『こちらグラムC! もうちょい、抑えてくれると助かる! 意外に小さい奴等がチョコマカしててな! 掃除がホネだ!』

「グラムB了解。 グラム・リーダーへ。 現地点での戦線確保に移行しますか!?」

中隊長―――アルトマイエル大尉へ、戦線形成地点の確認を取る。

『グラム・リーダーよりグラムB、グラムC。 あと200進めたい! 左翼の『ランスロット』との側面が開いてしまう。 『カラトラバ』の進出が意外に早い!』

戦線左翼―――第3(第883)中隊、『ランスロット』の左翼に展開している、スペイン軍『カラトラバ』大隊の進出が確かに早い。
このまま俺達が戦線形成をしてしまうと、『カラトラバ』の右翼側面がガラ空きになってしまう―――危険だ。

「グラムB了解。 グラムA、D! 前方制圧、願います。 ファビオ、そう言う訳だ。 お掃除、精を出してくれよ?」

『コンチクショウ! 後始末ばっかり押しつけやがって! 後で1杯、奢れよなッ!!』

「1杯でも2杯でも! 行くぞ! グラムB、突破戦闘! アローヘッド・ツー!」

『『『 了解! 』』』

俺とアリッサのトップ&バック。 フローラとギュゼルのトップ&バック。 2つのエレメントで突破をかける。


「フローラ! 目前に集中しろよ! 左右はバックでギュゼルがサポートしてくれるっ! ギュゼル、坊やのお守、頼むぞ?」

『隊長・・・ッ! 僕はフローレス・・・!』

『フローラ? 泣いてないで、早く行きなさいっ! 後ろは気にしなくて良いからっ!!』

情けない表情のフローラが、それでも歯をくいしばって突進をかける。

―――ふん。 ぺーぺーの内は『フローラ』で十分だ。 悔しかったら、早く『フローレス』と呼んで貰えるよう、一皮剝けて見せろ。

最初の部下は、俺のミスで死なせてしまった。 もう、同じ間違いは許されない。
だから―――徹底的にやるぞ? フローラ、アリッサ。

「アリッサ! 後衛支援、気を抜くなよ? 俺の手を煩わせやがったら・・・ 判っているな?」

『ひっ! わ、判ってますよぉ!!』

『フローラ? あなたも、男の子の意地、見せなさいよ? 後からよぉく、見ておいてあげるから』

『うっ! ・・・はいっ!!』

――よし、これ位で良いか。

「前方の要撃級の群! 潰すぞっ!」

『『『 おお! 』』』


主機を定格最大推力まで持っていく。 みるみる距離が詰まる。

―――よし! 2エレメントでシザース!

その時。

≪CPよりイルマリネン! 地中侵攻振動波形を確認! 出現予想地点、エリアE9D、座標SE-14-66!≫

「なっ、に!?」

畜生! またか!!






1994年7月28日 1525 バイレン 第88独立戦術機甲大隊


≪CPよりイルマリネン! 地中侵攻振動波形を確認! 出現予想地点、エリアE9D、座標SE-14-66!≫


「やはり来たか・・・ しかし、悪いタイミングだ!」

ユーティライネン少佐が思わず吐き捨てる。

第188旅団の『カラトラバ』大隊は中央と左翼のBETA群にかかりっきりだ。 第331『アルカンタラ』大隊は支援砲撃と、取りこぼしの掃討に余念がない。
第88『イルマリネン』も、右翼を抑え、中央の第2陣のフォローで手が回らない。

どうする? 新たなBETAの群構成次第では、戦線の再構築が必要になる。 しかし、そんな暇が有るのか? 主力の第19戦術機甲師団到着まで、あと35分!


≪BETAの地中侵攻個体群、出ますっ!≫

―――!!

CPの警告と同時に、前方2kmほどの地面が炸裂する。


『なっ・・・! くそぉ!』 『おいおいおい・・・ 冗談よせや・・・』 『この期に及んで・・・ 要塞級だと!?』

ユーティライネン少佐は、部下達の声を聞きつつ、最悪の事態を確信した。

―――今度こそ最悪だ。 地中侵攻から這い出てきたBETA群は60体近い要塞級―――当然、光線級をその腹に含んでいるだろう。
しかし連中。 一体どこの個体群だ―――そう考えた瞬間、答えに行きあたった。
マドリード―――連中は3群が押し出される前から、こちらに向かっていたのだ。 目標は恐らく、コスタ・デル・ソル。 地中海。

(まるで―――まるで、一級品の戦術用兵ではないか!)

BETAに戦術無し――― 一般に言われるこの言葉。 あれは、本当に正しいのだろうか?











≪スペイン軍第188戦術機甲旅団 第3大隊第2中隊『エスパーダ』≫


『てっ、撤退・・・ い、いやっ! 一時後退して、体勢を立て直すっ!』

―――阿呆っ! 中隊長、いやさ、ボンボン大尉、いや、もうあれは只の馬鹿。 の、耳障りな金切り声が響きやがる。

後退? んな事、出来るわきゃねぇだろうがッ! ここで引いてみろ、糞BETA共のいい様に掻き回されて終わりだ!
クソッ チキン野郎、早くも尻尾見せやがった。 奴がどうなろうと関係無ぇが、仮にも『中隊指揮官』のあの醜態はマズイ。 士気に関わる。

「エスパーダ2よりエスパーダ1。 後退命令は出ていませんぜ? ≪団長≫の指示無しじゃ、拙いですぜ?」

―――ここはひとつ、やんわりと・・・

『エ、エスパーダ2! き、君は戦況が見えないのか!? あ、あれを見ろ! 最早、戦線の維持は不可能だ! 後続の師団主力が来るまで、コルドバまで退いて・・・』

「阿呆ですかい!? アンタは!!」

いや、阿呆なんて範疇、超しているわ、コイツは。
阿呆でも、戦う気力と性根が有ればまだしも。 この馬鹿は逃げ出したいだけだ。

「ここで引いて、どうするんですかい? BETAを戦線の裏までご案内でもすると? それとも、コスタ・デル・ソルで海水浴の手助けでも?
ジブラルタル自体が、崩壊ですぜ? アンタ、ここで助かっても・・・ 生きて帰りゃ、逮捕されて、敵前逃亡罪で銃殺だ。 そっちをお望みで?」

『ひっ・・・』

―――情けねぇなぁ、おい? 最近の士官学校卒業生ってなぁ、まさかこんな連中が幅を利かせてるのかい?


『エスパーダ3よりエスパーダ2』

―――秘匿回線? 誰だ?―――ああ、エスパーダ3、ディエゴか。

「エスパーダ3、ディエゴ。 なんだ? 俺ぁ、男とひそひそ話する趣味は無ぇぜ?」

『―――真面目な話だ、レオン。 いや、アンディオン中尉。 俺は・・・ アンタに、中隊指揮権を継承して貰おうと考えている』

「―――素面で言う話じゃねぇぞ? ディエゴ・パディーリャ中尉。 判ってんのか、お前ぇ・・・」

『その為の覚悟も、用意も有る。 俺の小隊は皆、因果を含めている。 第1小隊は―――リカルドも、ホアンも、レオノーラも承知した。
第4小隊のキュカ―――キュカ・アギラール中尉―――も同意だ。
後は―――アンタだけだ。 ≪ダンディライオン≫ レオン・ガルシア・アンディオン中尉』

―――けっ! そうかい、そうかい! 全く! 寄りによってよっ こんな時によっ! ったく!!


『エスパーダ6よりエスパーダ2! そろそろ、3から話が入ったでしょう?』

「・・・ノエル。 お前も共犯かよ?」

『中隊が生き残る為よ。 そして、今この状況を打開する為。 『イルマリネン』は精鋭だけど、彼らだけでは無理。
そして『カラトラバ』には、あんな指揮官は必要無いのよ』

――― チクショウ・・・ あの、ボンボン大尉。 相変わらず、狼狽して震えていやがる。 やっぱ、ダメだ、ありゃ・・・

「・・・どうするよ? あからさまは拙い。 『咄嗟に置いてけぼり』か?」

『それしか無い。 『部下との連携が全く出来ていなかった』 あざといが、あの中隊長が連携訓練など眼中になく、昇進試験のお勉強に励んでいた事は、周知だ。
大隊長も、深くは追求せんだろう。 旅団の参謀部もな』

「よし・・・ 判った。 俺が指示する。 
―――エスパーダ2よりエスパーダ1。 急な後退はBETAにつけ込まれますぜ。 一度突っかかって、押してからでねぇと」

『エスパーダ2!? よ、よし、そうだな! そうだ! 中隊、一度BETAを押し返すぞ! 突撃体形!』

―――根は、お人好しなのかもしれんが。 戦場じゃ大罪なんだよ、中隊長。 アンタの無能と堕弱は・・・

中隊長が急に生気を取り戻し―――いや、生へ執着しているだけだ―――指示を出す。

『エスパーダ! 突撃! 突撃! 突撃!』


16機のF-16Cがスパイクシールドをかざして、再度突撃に入った。
迫りくる突撃級、そして要撃級の群。 そして激突する直前。

(―――くそっ! 出来るなら、やりたくなかったぜ!!)

「エスパーダ! スライド・ライト(右噴射滑走)!」

15機のF-16Cが、見えない糸に繋がれたような機動で、一斉に右方向へ地表面噴射滑走を開始する―――唯一、中隊長機のみを残して。

『・・・なっ! き、貴様等・・・ッ!? う、うわあぁぁぁ・・・!!!』

ただ1機、取り残された中隊長機はそのまま、突撃級の群れの中に消えて行った。


『・・・ッ! エスパーダ2より、≪騎士団長≫ エスパーダ1戦死・・・ 繰り返す、エスパーダ1戦死!』

『何? こちら ≪騎士団長≫ レオン、確かに『戦死』なんだな?』

―――クソッ やっぱり、感付きやがったか。 あいつは昔っから、俺のやる事には妙に感が鋭かったしな。

『ああ、戦死だ。 それとも何か? ファドリケ。 俺が虚偽報告でも?』

『馬鹿野郎・・・ 一体、何年の付き合いだ? レオン。
―――よし。 『エスパーダ1』 アルフォンソ・バレーラ大尉をKIAと認定・・・
レオン・ガルシア・アンディオン中尉、中隊指揮をとれ! ―――レオン、頼むぞ』

「20年来のダチを、失望はさせんよ。 ファドリケ・クリスティアン少佐」










1994年7月28日 1530 バイレン 第88独立戦術機甲大隊


『カラトラバ』の1個中隊が、BETAに突きかかるかと思いきや。 にわかに方向転換をかけた。

(? 何だったのだ、今の意図は?)

目前の戦闘指揮を続けながら、ユーティライネン少佐は隣接する部隊の行動を、不審げに感じていた。


『 ≪カラトラバ≫より、≪イルマリネン≫、≪アルカンタラ≫ 』

≪カラトラバ≫大隊指揮官から通信回線が入る。

「こちら、≪イルマリネン≫  ≪カラトラバ≫、何か?」

『 ≪アルカンタラ≫だ。 ≪カラトラバ≫、手短に頼む!』

手短に。 そう、手短に頼む。 こちらも、目前のBETAを抑え込むのに手が一杯なのだ!

『要塞級が出てきた。 何としても始末せねばならん。 どのみち、腹には光線属種を孕んでいるだろうしな?』

『当然だな』 「同意する」

『そこで提案だ。 突撃級はこのまま突破させる』

「何!?」 『・・・正気か?』

『ああ。 最も、その直後を ≪アルカンタラ≫ 君達が張り付いてくれ。 Mk-57の速射でケツから始末して貰いたい』

成程。 突撃級は急な方向転換が非常に苦手だ。 背後に付きさえすれば最後、小型種より組し易い。 そして、その為には・・・


『 ≪イルマリネン≫、 君達と、我々 ≪カラトラバ≫ は、突撃級と要撃級の間を分断する』

やはりな。 しかし、それだけではなかろう? 君の手の内は?
―――問題は、要塞級。 そして連中が抱え込んでいる筈の、光線属種なのだ。

「――-前方は2個中隊で、か?」

『理解が早くて、助かる。 流石は『スオミ(フィンランドの古名)の至宝』だな?』

「世辞はいい。 で?」
 
『ここは合計4個中隊、64機有ればなんとか出来よう。
そして各選抜1個中隊、計2個中隊31機で、要塞級の『壁』を突き破る。
こちらは『エスパーダ』を出す。 指揮官は『ダンディライオン』 どうだ?』

「ならば私が、と言いたい所だが。 ・・・無理だろうな」

『当然だ。 私とて、我慢するのだ。 部下を信頼してこそ、使いきれるものだ。 そうだろう?』

「では、『グラム』を」

『ほう? 『ヴィントシュトース』か、よかろう。  『猛き獅子』 と 『突風』に、アンダルシアの大地を駆け貫いて貰う』










1994年7月28日 1535 バイレン 第88独立戦術機甲大隊第2(第882)中隊


『―――作戦は以上だ。 各小隊長、何かあるか!?』

大尉から『説明』のあった内容には、些か、いや、それ以上に呆れた。
たったの2個中隊で、60体に近い要塞級と、恐らくは250~300体近くになる光線級の相手をするとは。
他にも小型種とは言え、2000近いBETAが居る。 自殺行為と言う言葉を超越しているな。

『・・・はぁ。 やらなきゃどうせ、くたばるだけですよ。 ああ! くそっ!』

『レッジェーリ中尉。 ならば、行動して死んだ方が、マシなのではないこと?』

『縁起でもない事、言わんで下さいよ。 オベール中尉。 で? 直衛、お前は?』

ファビオの嘆きと、オベール中尉の突き抜けた感想に苦笑しつつ、内心の『あれ』を隠しながら答えた。

「俺? 俺はストームバンガード・ワン―――突撃前衛長だ。 吶喊命令が出たら、一も二も無く、突撃するさ。 
バックアップは宜しく頼むぜ?  大尉、オベール中尉。 側面支援、願います」

『・・・何だか。 あっという間に、頼もしくなったわね』

「そいつはどうも。 オベール中尉の側面支援は、精々当てにさせて頂きますから」

『ふふ、了解したわ』

『はぁ・・・ 結局。 俺ってば、お前の猪突猛進に付き合わされる訳ね? ま、いいけどさ。
―――精々、派手にぶちかませやっ!』

中指を突き立てる、ファビオの些か下品なゼスチャー交じりの激励? に、俺も些か以上に下品なゼスチャーで答える。
オベール中尉が顔を顰めるが。 ま、我慢して貰おう。


『よし。 中隊、突撃用意! フォーメーション・アローヘッド・ワン(楔壱型)!
今回は『エスパーダ』と協働だ! コンビネーションに注意しろ!』

『『『 了解! 』』』

同時に、『エスパーダ』から通信回線が繋がる。

『こちら、エスパーダ1。 アンディオン中尉だ! こっちの準備は上々! グラム、そっちはどうだい!?』

―――おっさん!? どうしておっさんが? 中隊長戦死か?

『ちょいと、『不幸な出来事』でな。 中隊長戦死だ。 今は俺が預かっている。 で、どうよ?』

『こちらグラム。 我々も準備完了。 何時でもいいぞ』

『いよ~しっ! んじゃ、行くかよっ!? 
・・・っと、そうそう。 今回俺はストームバンガード・ワンだからよっ! 細かい打ち合わせは、第1小隊のノエルと頼むわ!』

・・・中隊長が、突撃前衛かよ? ま、まぁ、おっさんらしいか・・・

『ふむ。 エラス中尉だったな? 宜しく頼む』

『はっ! 大尉殿!』

『いよぉ~~しっ! んじゃ、行くとするかぁ!! 『エスパーダ』! 続けぇ!!』

『グラム! 吶喊! 周防、ブチ破れッ!!』


―――おおよっ!!


増援師団到着まで、あと25分。











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