<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[7678] 国連欧州編 シチリア島3話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/05 00:59
1994年9月9日 1830 マルタ島 バレッタ軍港 英国海軍地中海艦隊(Mediterranean Fleet) 支援戦術機母艦(CVS)「インヴィンシブル」


「艦長、出港用意完了。 出港5分前です」

副長の報告に、「インヴィンシブル」艦長、アーサー・レイモンド・スチュアート英海軍大佐が、無言で頷く。
ふと、ある事を思い出して副長に確認する。

「ナンバー・ワン(副長)、例の『お客さん』はどうしているかね?」

「至って大人しくしています。 まぁ、彼等にしても。 初めての母艦運用です、正直なところ戸惑いも有りましょう」

「ふむ・・・ 君はどう思う? あの戦術機。 母艦運用の可能性は?」

「無用でしょうね。 あれは正しく『陸軍戦術機』ですよ、艦長」

衛士上がりの副長―――トヴィアス・ディグレイ英海軍中佐が即答する。

「海軍戦術機に求められる事は、強襲戦域制圧能力です。 
BETA前面への海岸線上陸作戦、その支援が海軍戦術機の存在理由と、小官は考えております」

「ふむ・・・ アメリカ海軍や、日本海軍と同様かね?」

確かに、両国海軍共に、戦術機に対する位置づけはそうあるのだが。 
しかし―――アメリカはどうだろうか? 近年はその傾向に疑問符が付く。

「F/A-18、それも最新のE/Fタイプは、どちらかと言うと近接戦能力を高めた、砲撃支援タイプのようだが?」

「アメリカの場合。 戦術機による戦域制圧能力を突き詰める必要性は、必ずしもありません。
豊富な戦艦群の大口径艦砲射撃、巡洋艦群による艦対地ミサイルの飽和攻撃。 面制圧はそれで賄えましょう。
戦術機は寧ろ、より海兵隊的な運用に傾倒しつつあります」

「ふむ ――― つまりは、上陸後の支配戦域拡大の為。 つまりは、地上で正面切ってBETAと遣り合う為。 成程、それが為の近接戦能力か」

それ以外にも、目的は有ろうが―――それは、口には出さない方がいいな。
スチュアート大佐が内心を封じ込めた時、見張り員長のChief Petty Officer (CPO 上等兵曹に相当)から報告が入る。


『見張所より艦橋。 『アーク・ロイヤル』 『イーグル』 出港。 続いて『ヴァンガード』 『アンソン』 『ハウ』 出ます』

地中海艦隊H部隊所属の戦術機母艦『アーク・ロイヤル』(4万3300トン、246m、搭載戦術機60機)と、『イーグル』(3万6800トン、245m、搭載戦術機60機)
そして戦艦『ヴァンガード』(5万4500トン、16インチ砲連装4基)、『アンソン』 『ハウ』(改キング・ジョージⅤ級。4万6700トン、15インチ砲3連装2基、連装2基)
H部隊の主力艦が出港する。

沖合には既に、協同作戦をとるべく終結しているイタリア海軍、そして数少ない主力艦をジブラルタル経由で回航してきた、ドイツ高海艦隊が終結している。

イタリアは、軽戦術機母艦『アンドレア・ドリア』(戦術機36機)と、『ジュゼッペ・ガリバルディ』(戦術機24機)
そして戦艦『ヴィットリオ・ヴェネト』 『リットリオ』を中心とした主力艦隊。

ドイツは戦術機母艦こそ派遣していないが、戦艦『グナイゼナウ』、重巡『アドミラル・ヒッパー』、そして軽巡『ニュルンベルク』 『エムデン』
この4隻を中心とした、制圧支援艦隊を派遣している。

これよりH部隊はティレニア海に面したベルヴェデーレ・マリッティモ沖に、独伊合同艦隊は半島を挟んで反対側の、タラント湾のロッサーノ沖に展開。
BETA間引きの、第1防衛線支援に入る事となる。


「宜しい。 スロウ・アヘッド・ポート(左舷微速前進)」

ゆっくりと、艦が岸壁から離岸する。
そして、徐々に湾口へむかって前進してゆく。

「ミジップ(舵中央)・・・ ハーフ・アヘッド・ツー(両舷半速前進)・・・
しかし。 貴重な残存艦艇と、少なからぬ陸軍部隊を投入しての、デモンストレーションか・・・
果たして、それ程の価値が有るものか・・・」

「少なくとも、我が国防省はそう考えているようですね。 最も、第一海軍卿(First Sea Lord 軍令部総長に相当)は、ご不満のようですが?」

「当然だろう・・・ いきなり頭越しに、H部隊の投入を決定されたのだ。 しかも、裏では国連軍統合情報部(UN-JID)が動いているとか、どうとか」

スチュアート大佐も、ディグレイ中佐も、苦々しい表情になる。
今回の作戦。 第一海軍卿のサー・ベンジャミン・バサースト海軍元帥も、海軍母艦部隊・戦術機部隊を統括する第五海軍卿も与り知らぬ内に。
いきなり国防省より決定事項として通達されたのだ。
しかし、そもそも国防省は国家国防政策の策定機関であり、軍令部や艦隊司令部の上位組織では有るが、作戦の策定組織では無い。

そして、噂が見え隠れするUN-JID。 海軍としては、些か以上に不愉快な決定で有った。


「・・・仕方有るまい。 既に決定したのだ。 海軍は政治に韜晦すべきでは無い」

「詰まる所、完全な『政治的作戦』であると」

「当然だろう。 『ユーロファイタス国連派遣部隊』? 忌々しいが、ものは良いようだな」

そして、その『忌々しい』部隊は、自分の指揮する艦を根城に活動する。
スチュアート大佐にとって、僚友たちが忌々しげに仰ぎ見るであろう部隊が、自分の艦と混同されそうになる事が、心底忌々しかったのだ。


作戦海域到達は、約11時間後。 作戦開始は13時間後の翌9月10日、0930
カラブリア半島へ侵入を開始し始める模様のBETA群に対し、まずは艦砲射撃とVSLによる飽和攻撃。
そして母艦戦術機による戦域制圧攻撃の後、陸上部隊による『選抜間引き』を実施する。
最終的には、シチリア島対岸のパルミ南方から、シチリア島のメッシーナ北部までの間で『舞台』を開演する予定だ。

「まぁ、一番忌々しく感じているのは。 引き立て役に指定された陸軍部隊だろうが・・・」

夕闇が迫る海原を見つめつつ、スチュアート大佐は誰ともなく呟いた。











1994年9月10日 0730 レッジョ・ディ・カラブリア


「「「「「「 部隊を分ける!? 」」」」」」

ブリーフィング・ルームに集合した各指揮官が、一斉に驚きと疑問の混ざった声を上げる。
ここに居るのは、国連軍第86、第87、第88独立戦術機甲大隊から選抜された、3個中隊の小隊長以上の指揮官達が集合していた。

「そうだ。 ラメツィア~カタンザーロ間の約30km 3個中隊で10kmずつを警戒するよりも、9個小隊で各々3.3kmずつを警戒する。
余計な『取りこぼし』が有ってはならないのだ」

作戦参謀のルシオ・マルキーニ国連軍少佐が、したり顔で説明する。

「しかし、少佐。 各防衛線が1個小隊では。 BETAの圧力に対するのに、心もとないのでは?」

派遣部隊の指揮官中、最先任である第87大隊のルドルフ・シュテルファー大尉が疑問を呈する。
スイス出身の24歳。 大尉の中では、若手に入る。

「問題は無い。 海上より英艦隊と、独伊合同艦隊が間引き砲撃を実施後、パオラ=コゼンツァ、そしてサン・ジョバンニ・イン・フィオーレ=チーロ・マリナ間で、
イタリア軍第3戦術機甲師団 『トリデンティナ』 の2個戦術機甲連隊が、BETAの主力を『間引く』
諸君らは、『トリデンティナ』の取りこぼしをより正確に、『オーダー』通りに削っていけばよい。 
なに、歴戦の諸君にとっては、児戯に等しい仕事であろう」


―――ちっ、事務屋が・・・


あちこちで、小さく舌打ちする者が居た。
実際問題として、艦砲射撃と1個師団の戦力で、どこまでBETAを削ぎ落せるか。 来襲する数にも寄るのだ。 

もし、連中が師団規模以上の数で押し寄せてきたら?
もし、地中侵攻をかけてきたら?
もし、光線級を出してきたら?

―――司令部は、本当に検討したのか?

疑わしい。 
何より、この眼の前の少佐。 どうやら実戦部隊上がりではなさそうなのだ。
言葉の端々から、どうにも嫌な匂い―――情報関係者の感じがする。 
これまで、情報部の間抜けな情報分析の為に、何度死にそうな目に有った事か。


「よし。 それでは作戦を発動する。 防衛線展開は0830 作戦開始は0930
以降は統合HQの指示に従いたまえ。 コードネームは『テルモピュレイ』 以上だ」


マルキーニ少佐が退出した後、ブリーフィング・ルームは罵声の嵐に包まれた。
―――『テルモピュレイ』!? あの馬鹿野郎! 俺達を、全滅したスパルタ兵にするつもりかっ!?








「周防、ちょっと」

姐御―――シェールソン中尉から呼び止められた。 ヴァレンティ中尉もいる。

「何です? 姐御」

珍しく、姐御が真剣な表情をしている。 「黒姫」―――ヴァレンティ中尉もだ。

「いざって時は―――あの馬鹿少佐の指示は、無視するよ」

いきなり切り出してきたな。 まぁ、予想はしていたが。
姐御の言葉を継いで、ヴァレンティ中尉が続ける。

「1個小隊だけで、BETAと対峙して防衛線を支えるなんて無理よ。 
『イルマリネン』は、なるべく連携を取った方が良いわ」

「それが道理でしょうね。 で? 他はどうすると言っているんですか?」

「第86は確認したよ。 向こうの先任―――マクガイヤー中尉も同意見だった。
でも、第87はまだなんだ。
あんた、何か聞いてないかい? 確か向こうのカシュガリ中尉とは、あんた結構話してたろ?」

確かに、第87のユスーフ・カシュガリ中尉とは、補給などの面で結構融通をつけあったりして面識が有った。
寡黙で、朴訥なウイグル人。 だが、結構、気持ちの良い好漢だ。

「ユスーフは特に何も。 あまり喋らないですしね。 しかし、向こうのシュテルファー大尉は若手ですが実戦派の実力者です。
流石に、馬鹿正直にHQの言いつけを守って、窮地に飛び込む真似はしないでしょう」

「だと良いのだけど。 周防、貴方、念の為に向うに渡り付けておいてくれる?
最悪、レッジョに展開している第5アルピーニ戦術機甲連隊の分遣隊に、私の知り合いがいるの。 何とか話を付けてみる」

「ヴァレンティ中尉。 余りヤバい橋は渡らないで下さいよ?」

「命がかかっているのだもの。 多少の無理は承知よ」

「2人とも、頼むよ。 アタシは、第86の連中と話を詰めておくからさ」


―――全く。 今回こそは、無事に済ませたいと願っていたんだがな。

どうやら、一波瀾ぐらいは有りそうだ。 くそっ。














0900 ラメツィア海岸線より7km地点 第88戦術機甲大隊「イルマリネン」分遣隊第3小隊


「・・・と言う訳だ。 どうかな? ユスーフ。 君の所のシュテルファー大尉、何か言っていたかい?」

布陣が終了した後、隣に位置する第87の第3小隊―――ユスーフ・カシュガリ中尉に秘匿回線通信を入れて、探りを入れる。
この辺りはまだ起伏が残っており、約6km離れて布陣するユスーフの第87-3小隊は見えない。 まぁ、向こうからも俺の第88-3小隊は目視出来ないが。

『・・・いや、大尉は何も。 しかし、君達の意見には同意する』

「じゃ、君から意見具申の形で出して貰えないか? 俺の名を出しても良いし、ウチの先任、シェールソン中尉の名を出しても良い」

『判った。 進展が有れば、連絡を入れる』

「頼む。 事務屋の作戦で上手くいった試しは無い」

『んっ』

通信が切れる。 
・・・いや、しかし何だな。 相変わらず、言葉少な目と言うか。 無駄な言葉を出さない奴だ。 ウチのファビオの真逆を行くな。

正直、今の30kmの防衛線を、3個中隊―――1個大隊分、36機の戦術機(全てトーネードⅡ)で支えるのはホネだ。
後方のレッジョ・ディ・カラブリアには国連派遣のイタリア海軍第521戦術機甲大隊(トーネードADV-F.5)が駐留し、
防衛線後方のヴィーボ・ヴァレンティアとタウリアノヴァに、イタリア軍第5戦術機甲師団 『ジュリア』 指揮下の、
第5アルピーニ戦術機甲連隊(F-16C)が1個中隊ずつ分遣隊を置いているが。

レッジョの部隊は、そんな前には出てこれない。 
彼等はシチリア島のメッシーナへの、BETA渡海を阻止する、最後の防衛線だ。
第5アルピーニの2個中隊も、阻止戦力と言うより、初期即応戦力である。 言わば本隊が出てくるまでの時間稼ぎ。

(―――その割に。 今回『ジュリア』は、シチリア島に居残ったままだな?)

いずれにせよ、もし俺達が抜かれたら。 あとはお寒い限りの戦力しか残っていない。
せめて、COMFOD-1から1個師団、出して然るべきだろうに。
海軍戦術機部隊? 英国海軍は兎も角、独伊合同艦隊の母艦戦術機は英国艦隊の半分だ。 2個大隊弱と言ったところか。
合計でも180機、2個連隊弱。 地上部隊が2個連隊と2個大隊分。 大体、2個師団分の戦術機戦力か。

(軍団規模のBETAに来られたら・・・ 抜かれるぞ?)

シチリア島にはCOMFOD-1の4個師団と、国連軍2個師団の計6個師団がいる。
例え上陸を喰らっても、この戦力なら押し返せると踏んだ訳か。 
「舞台」の主役たちも、母艦からの運用と聞く。 ヤバくなったら、おウチにお帰り。 か!


知らずに顔に出ていたか、通信回線を入れてきた『部下』が怪訝な顔をする。

『どうしました、中尉?』

―――ん? エドゥアルトか。

「いや、何でも無い。 それよりどうだ? 緊張は無いか? 他の2人は?」

何しろ、今回初めて小隊を組む 『借りてきた』 隊員だ。 
エドゥアルトにソーフィア、ウルスラ。 この3人を各々の小隊に無事に帰す事が、最大の仕事だ。
最もこの3人は、少尉の中では経験を積んでいる部類に入るから、そう心配は無いだろうが。

『大丈夫ですよ。 中尉達のように大規模侵攻戦の経験は有りませんが、まぁ、それなりの経験は積んでいますから。
ソーフィアも、ウルスラも。 あ、あの2人は相変わらず、男の品定めに熱中していますよ』

呆れた口調で、エドゥアルトが苦笑する。
そして、とんでもない事を言い始める。

『今夜あたり、ソーフィアかウルスラが、中尉の所へ夜這いに行くかもしれませんよ。 中尉、気を付けた方が良いですよ』

―――むぅ。 流石に今晩は無いだろう。 何せレッジョに来てからは、姐御や「黒姫」と同室なんだし。

国連軍に出向して、色々とカルチャーショックは有ったが。 中でも最大の驚きが『前線での、自由性交渉』だった。
帝国軍でも、最前線では「黙認」はされている。(明文化されてはいない)
しかし。 国連軍の場合、歴として軍行動規範文に「明記」されているのには驚いた。

戦場で「死」と直面する為に、「子孫を残す」行為に対する衝動が大きくなるのか。
将兵同士の男女関係は非常にオープンなのだ。 実はこれは、欧州連合軍も変わらない。
極東でも、統合軍(日中韓連合軍)などはかなりオープンだったが。 いや、それ以上だ。

お陰で何度、夜這いをかけられた事か。(翠華に、引っかき傷を付けられる原因だ)
しかも、何も全てが「恋愛感情」が有っての事では無い。 「一夜の相手」といった程度の場合が多いのだ。
誰もかれもと言う訳じゃないが。 それでもベテランになる程、その傾向が強い。

―――俺は夜這いをかけてはいないぞ?(その度に、翠華の所に逃げ込む羽目になるが)

まぁ、我ながら、どうしようもなく我慢しきれなくて。 「そういった関係」をした相手は、1人や2人や3人・・・ いるけどね。 大隊以外で。
俺も相手も、その場限りの割り切りだけど(大体、彼女達にも夫や恋人が居る)


「夜這いかけるなら、せめてアグリジェントに帰還してからにして欲しいな。 
それと、翠華に殴られる覚悟は、しておいて貰わんと」

『ははっ! 蒋中尉、あれでいて結構ヤキモチ焼きですしねぇ! いやぁ、彼女、可愛いなぁ・・・』

「・・・お前も、俺に殴られるか?」

『贅沢ですねぇ、中尉は』

―――ぬかせ。










ベルヴェデーレ・マリッティモ沖 1230 英海軍H部隊


『ヴァンガード』の16インチ砲と、『アンソン』 『ハウ』の15インチ砲が吼える。
『タイガー』 『ブレイク』(タイガー級軽巡。9550トン)、『フィジー』 『ジャマイカ』(フィジー級軽巡。8525トン)の4隻から、VSLが発射される。

突撃級が装甲殻を射貫され、つんのめるように停止する。
要撃級の一団が、纏めて吹き飛ばされていた。
小型種は個体識別が出来ず、纏めて赤黒く霧散している。

ベルヴェデーレ・マリッティモ沿岸部を通過する、旅団規模BETA群に降り注ぐ主砲弾と艦対地ミサイルの飽和攻撃で、BETAはその数を大きく削られていた。

「経過は良好のようですな」

参謀長のカニンガム大佐が、CICの戦況MAPを見つつ、呟く。
H部隊司令官、サー・トーマス・マクライト少将は、その呟きに同意するように無言で頷いた後。 航空参謀(戦術機参謀)に問いかける。

「どうかね? ファントムの出番は? ロシュフォード君」

「はっ、今の所、陸上のイタリア軍第3戦術機甲師団からの支援要請はございません。
出現BETA群の規模も、最大でも旅団規模。 『舞台』までの順送りでは、順調に『間引いて』送り出せております」

「つまり、結論は?」

「お茶の時間までは、暫く無聊をかこって貰いましょう」

如何にも英国的な言い回しだが。 状況が安定している証左でもある。
であれば。 H部隊の方針は決定した。

「当面はこの海域にて遊弋し、BETA群への打撃を続行する。 戦術機部隊の投入は、状況の変化を見極めた上で、行う。
通信参謀、『向こう側』の独伊合同艦隊へも、通達をしておいてくれたまえ」

主砲の斉射による轟音と震動が伝わってくる。
作戦開始から2時間半。 既に主砲弾の4割を消費している。 この調子では、1500頃には補給を受けに下がらねばならない。

「参謀長。 『アンソン』 『ハウ』、それに『フィジー』 『ジャマイカ』は、攻撃を一旦中断させる。 再開は1500
それまでは、『ヴァンガード』 と 『タイガー』 『ブレイク』主体で行おう」

「イタリア人に、いつまでも昼食後のおしゃべりを与える訳には、参りませんな。 判りました」

これで『ヴァンガード』 『タイガー』 『ブレイク』グループと、『アンソン』 『ハウ』 『フィジー』 『ジャマイカ』グループで、途切れ無く支援する事が出来る。
参謀長の良い様は、些か英国的諧謔の掛った言い方であったが。









1535 ラメツィア海岸線より8km 第88-3戦術機甲小隊

≪トロンボーン(HQ-CP)よりブラウン(87-1小隊)、グリーン(87-3小隊)、パープル(88-3小隊)、大隊規模のBETA群、エリアD6Rより南下。 中隊規模まで削れ≫

『ブラウン・リーダー了解』
『グリーン了解した』
「パープル・リーダー、了解」

HQよりBETA群の「間引き」オーダーが入った。 丁度、隣のグリーン小隊(第87大隊の第2小隊)前面から、大隊規模。

『こちら、ブラウン・リーダーだ。 パープル、両翼から締めあげたい』

「パープル、了解。 グリーン、30秒待ってくれ」

『こちらグリーン・リーダー。 ブラウン、パープル、了解した』

各隊が一斉に行動を開始する。
我がパープル小隊(何てネーミングだ)も、4機が跳躍ユニットを吹かしてNOEを開始、BETA群の側面へ移動する。

「ソーフィア、ついてこい。 ウルスラ、掃討は任す。 エドゥアルト! 支援砲撃は1000から開始だ。 行くぞっ!」

『『『 了解! 』』』

元の所属のポジションから、俺とソーフィアが突撃前衛、ウルスラは強襲掃討、エドゥアルトが砲撃支援に就いている。

BETA群に対し、グリーンが正面から受け止め、その隙にブラウンは右翼から、パープルが左翼から突入し、削り落とす。
20秒後、目指すBETA群を視認する。 光線級はいない。 突撃級、要撃級が200体ほど。 他は小型種で都合1000体程だ。

「エドゥアルト、側面から要撃級を削れ。 50体ほどまで削りたい。 突撃級と合わせて100体程だ。
ソーフィア、奥の小型種を削るそ。 全部殺ってもいい。 ウルスラ、喰い残しは残すな、全部平らげろ」

『『 了解! 』』 『了解~・・・ 隊長、私ってそんなに、育ち悪く見えますぅ?』

「例えだ、例え! ったく・・・ 行くぞっ、かかれっ!!」

『『『 Ja!! 』』』

―――どうでも良いけど。 ソーフィア、何でお前までドイツ語なんだ?


途端にエドゥアルトのMk-57が、57mm速射支援砲弾を吐き出す。
射弾が要撃級の1群に吸い込まれ、瞬く間に10体以上が無力化された。
急速にBETA群が接近する。 高度100、そのままNOEを維持しつつ、BK-57を発射。 LOモードでも毎分600発の勢いだ。

俺とソーフィアが、BK-57を乱射しながらフライパスした後を、ウルスラが両手と、
両背部兵装ラックから前面展開させた、突撃砲の36mmをばら撒きながら続行する。

右翼からブラウン小隊が同様の上空攻撃をかけつつ、クロスした後に待機していたグリーン小隊が、
地表面噴射滑走で突撃級の隙間を縫いながら、弱い側面や無防備な後方に120mmと36mmを叩き込む。

最初の一航過で200体は削れた。 この調子であと3回ほど繰り返せば、オーダーは達成する。

「パープルより、ブラウン、グリーン。 再攻撃開始する」

『ブラウン了解。 次はもう少し前を攻撃しよう』
『グリーンよりブラウン、パープル。 小型種が前面に出始めている。 出来れば掃除してくれると有難いのですが』

「『 了解 』」


―――5分後、BETA群は200体程に削られ、南下して行った。

『ブラウン・リーダーよりトロンボーン。 オーダーは達成した。 BETA群、約200。 ヴィーボ・ヴァレンティア方面へ南下』

≪トロンボーン了解。 早速で悪いが、次のオーダーだ。 ブラウンとグリーンはエリアD8Tでアンバーと合流して、大隊規模BETA群を削ってくれ。
パープルはエリアC7D。 ホワイトとブラックが持て余し気味だ。 こっちは2個大隊規模。 協同して2個中隊規模まで削って貰いたい≫

『ブラウン・リーダー了解』 『グリーン・リーダー、了解した』

「パープル・リーダー、了解―――ホワイト、ブラック。 状況知らせ」

『こちらホワイトッ! さっさと戻ってきなッ! 洒落になン無いんだからねッ!!』
『ブラック・リーダーよりパープル。 私の珠のお肌に傷がついたら、貴方責任取りなさいよッ!?』

―――なんて言いがかりだ。 しかし、2個小隊でBETA群2個大隊規模は確かにきつい。

「パープル・リーダー了解! 5分待って下さいよッ!」

『早くッ、早くッ!』 『あ~! もう、待てないからねッ!!』

兎に角、急いだ方が良いな。

「パープル各機! 飛ばすぞ、A/Bに放り込めっ!」

『『『 了解!! 』』』



4機のトーネードⅡが、2基のRBB205-Mk104のアフターバーナーの焔を揺らめかせ、一気に次の戦場へ加速して行った。





前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.047559976577759