<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[7678] 国連米国編 NY1話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/01 04:13
1994年12月10日 1830 アメリカ合衆国 ニューヨーク州 ニューヨーク市(NYC) クイーンズ区 ジョン・F・ケネディ国際空港


J.F.K国際空港からNYC(ニュー・ヨーク・シティ)の国連本部までの、送迎車両がやって来ていた。
他に、警護の車両が4台。 2台はご丁寧にも、「財務省秘密検察局」=USSS(United States Secret Service:合衆国シークレットサービス)だ。


「合衆国へようこそ、バロネテス。 我が国は貴女の到着を、一日千秋の想いでお待ち申しておりました」

如何にも切れ者の官僚、そう言った雰囲気の男が、一群の中より歩み寄る。 
確か事前ファイルの中にその名が有った。 国務省の、国連担当次官補(局長級)、アーサー・カニンガム。

「・・・光栄ですわ。 この国の友人達にまた、お会いできる機会を与えていただけた事。 感謝しますわ」

レディ・アルテミシアも、内心はどうであれ、にこやかに応答する。 まずは腹の探り合いか。

「諸君。 英国よりの警護、ご苦労だった。 これより先は、我々が引き受ける」

「はっ。 いえ。 我々の任務は、国連本部『まで』、レディ・アルテミシアを確実に警護する事です。
失礼ですが、未だ任務途上であります」

「・・・我が国の、USSSを信用できない、と・・・?」

「はっ。 いえ。 我々の任務は国連本部『まで』の警護であります。 それ『以降に』、米国当局へ引き継ぐようにとの命令であります」

「・・・任務を完遂したまえ」

「はっ!」

冷ややかな視線を一瞬送ってきたカニンガム次官補を、敬礼と『軍人』の態度で無視してから、レディの乗車するリムジンの後ろの車両に乗り込む。
直接警護役のぺトラは、リムジンの助手席に無理やりねじ込んだ。


一団の車両が発信する。
USSSの車両が先頭と最後尾。 俺の乗車した車両が2番目。 主客用のリムジンはそのすぐ後だ。
走行する車両から、ふと外を見る。 今まで主に欧州、それも英国やアイルランドに居る時間が有ったが。 米国はまた異なる趣だった。

まず、人種が本当にバラバラだ。

勿論、欧州にも欧州系以外の住民は、居る事は居る。 BETA大戦で故国を失い、移住してきた人々だ(難民キャンプの世話にならない『持ちたる者』だった)

主に中東系、そして中央アジア系、インド系などを良く見かけたものだった。
しかし、この国は・・・ ほぼ、全ての人種を網羅しているのではないか? 
米国でも、東南部や西海岸南部、北西部の州には難民キャンプが存在する。 
しかし、それ以外で『本当のアメリカ市民』として暮らす、この人種の数・・・!

我ながら、しばし呆然と見ていたので。 横顔に刺さる視線に気づくのが遅れたのは、少々情けない事だった。
横のシートに座る、若いアメリカ人。 着込んだ制服から、米陸軍の中尉と判った。


「・・・失礼だが、何か?」

「いや。 さっきは随分はっきり主張していたな、と思ってね。 
私の聞き及ぶ日本人と言うのは、余りはっきり主張はしないと聞いていたのでね」

「任務上、主張せねばならない時は、主張する。 でなくば、任務の遂行が困難になる」

「いや、最もだ。 失礼した」

そう言いつつも。 この若い中尉(それでも、俺よりは3、4歳年長か?)は相変わらず面白そうに俺を見ている。

―――癇に障る奴だな。

第1印象は、余り良く無かった。


「ああ、失礼した。 自己紹介がまだだった。 オーガスト・カーマイケル。 合衆国陸軍中尉」

「・・・周防直衛。 国連軍中尉」

「ああ。 ファイルに有った通りだ。 確認できて良かった。 何しろ・・・」

「・・・何しろ?」

笑いを堪えるカーマイケル中尉に対して。 些か口調が冷ややかになったのは、理解して欲しい。 
初対面でこんな意味深な態度を取られては、不愉快だ。

「・・・何しろ。 最初は『どうして高校生がいるのだ?』と思ったものでね。 
いや、東洋系が若く見えてしまうのは、許して欲しい」

―――こっ、高校生!? こいつ・・・ッ!

「妹の友人のボーイフレンドが、東洋系でね。 いや、正直最初は驚いたよ。 彼とほとんど変わらないように見えたものでね」

「・・・一体、何歳だ? そのボーイフレンドとやらは・・・?」

「16歳だよ」


―――決めた。 この男とは、仕事以外では一切口など、きくものか!!










1910 ニューヨーク市 マンハッタン島 国連本部ビル 


国連の本部ビル所在地は、ミッドタウン。 マンハッタン島のイーストサイド。 
クイーンズからミッドタウン・トンネルでイースト・リバーを潜って直ぐの河岸に位置する。
西は1番街、南は東42丁目、北は東48丁目に接する建物だった。

着いた途端、わらわらと1個小隊ほどのシークレットサービスが湧き出てきたのには、驚いた。
流石にレディもうんざりした表情だったな。
本部で警護任務を引き継ぐ。 これで、スコットランド以来の任務が終了した。


―――何だか、呆気無かったな。


実際、専用機に乗り組んでからは。 米国側に主導権が移ってしまい、こっちは取り立ててやる事が無くなってしまった。
空港で虚勢を張ったのは、そんな相手の態度への、せめてもの見栄か。


『周防中尉、リスキ少尉。 ・・・グラスゴーからこのかた、本当にありがとう。
あなた方とお知り合いになれて、嬉しかったわ』


レディ・アルテミシアの最後のその一言だけが、唯一の慰めだった。


「さて。 僕もこれでお役御免だな。 全く、休暇中にいきなり呼びつけられて、警護スタッフに加われなんて・・・
専門教育も受けていない衛士に、何をやれと言うんだ? なぁ? ・・・ん? どうかしたかい?」

俺が驚いた表情をしていたからだろう。 いや、横のぺトラも意外そうな顔をしていた。

「君は・・・ 衛士なのか? カーマイケル中尉」

「今、そう言ったのだが? 英語が聞き取れなかったか? 周防中尉。 それと、そっちは・・・ 確か、ぺトラ・リスキ少尉?」

「いや、聞き取れたが・・・ 要人警護スタッフにいるのだから、軍人でもてっきり、対テロ部隊か何かの所属かと思った」

「止してくれ。 年中、覆面をかぶる趣味は無いよ」

カーマイケル中尉が苦笑する。
衛士と聞いたからではないが、こうやって話していると、然程悪い印象では無い。 最も、最初の一言は言語道断だが。


「ああ、あれは悪かった。 謝罪するよ、周防中尉。 
しかし、本当に若く見えてしまうんだ、東洋系は。 失礼だが、何年生まれなんだい?」

「・・・74年生まれだよ」

「と言う事は。 20歳? 若いな、それでもう中尉か。 任官は何年?」

「92年」

「・・・僕はまだ、大学の4年生だったよ」

―――大学生? 士官学校出身じゃないのか?

「ああ、僕は大学のROTC(予備役将校訓練課程:Reserve Officer’s Traning Corps)の出身なんだよ。 母校はコロンビアでね。 
つい半年前に、衛士訓練課程を修了したばかりだ」

―――学士様の、新米衛士? どうしてそんな奴が、警護スタッフに?

「さあね、判らない。 ま、可能性の一つとしては、大学の指導教授が、アクロイド博士の旧知だと言う位かな?
実際のところ、余り話す機会は無かったけど」

改めて、カーマイケル中尉を見る。
身長は・・・ 6フィート(183cm)ちょっとか。 俺が182cmだから、彼の方が少し高い気がする。

「ん? 身長? なんだってそんな事? ・・・まぁ、いいか。 6フィート1インチ(185cm)だよ」

濃いブラウンの髪に、グリーンアイ。 顔立ちは・・・ まあ、整った顔立ちだ。 落ち着きもありそうで、明るい『好青年』
いかにも、女の子受けしそうなタイプの奴だ。

「まぁ、褒め言葉と思っておくよ」

そう言って笑う笑顔が、これまた女の子好みだ。 見ろ、ぺトラなんかさっきから、ちらちらと気になっているようだ。


――― つまり。 大半の男の敵か。


「つれないなぁ。 折角、暫く行動を共にするというのに」

「・・・何だって?」 
「・・・聞いて、いません」

「ああ、やっと、君の声が聞けたね。 リスキ少尉。 うん、水晶のあわさる音のようだ。
・・・っと、脱線した。 いや、国連軍からの要請でね。 君達2人の、NYCでの案内役を仰せつかった。 僕は地元出身だからね」

「・・・我々は、次の任務を未だ受領していないのだが?」

「僕に言われてもな・・・ そうだ、確認すれば良い。 君達は欧州本部の副官部所属だろう?
こっちの副官部に問い合わせればどうかな? 
国連軍の組織は正直判らないが、要請のあったのは本部軍務局の副官部からだと、上官から聞いたぞ」



こちらとしても、些か居心地が悪い気分でもあったので、副官部に問い合わせてみた。
案の定、ベルファストの第3室―――グランドル大佐よりの指示書が、俺達より先に到着していた。 中身を確認する。


『引き続き、アクロイド博士、及びご家族のロスアラモス到着を確認せよ』


――― つまり、ロスアラモスまで同行しろと言う事だ。 米国側は、同意しているのか?

「それは大丈夫だよ。 その為に僕が呼ばれたんだ。
博士のご一家が到着するのは、明後日の12日。 ロスアラモス国立研究所への出立は、15日だ。
ニューメキシコ州。 自然の豊かな、文化的な街だよ。 ロスアラモスは」










1930 マンハッタン グラマシー


『時間も時間だし、ここは一つ夕食にしよう』

そう切り出したのは、カーマイケル中尉だった。 馴染みのレストランに案内してくれるという。
正直、俺達にとっては有り難かった。

当面の宿は国連本部で、ミッドタウンのそこそこ中流のホテルを確保していてくれていたが。
食事をしようにも、全くの地理不案内(俺もぺトラも、アメリカは初めてだ)
どこで食事したものか・・・ 正直、悩んでいたところだった。

連れて行かれたのは、国連本部から南に下がった『グラマシー』 マンハッタンの中央部の東側エリアだ。
そこにある、ジャズ・ハウス。 と言うより、食事をしながらジャズの生演奏を楽しむ、そんなスタイルの店だった。

帝国に居た時は無論の事。 国連軍に出向になってからでさえ、こんな店には入った事が無い。
と言うより、こんな余裕のある国など、俺は知らなかった。


「・・・凄い、です」
「・・・ああ、同感だ」

そんな俺達の内心を知ってか知らずか。 カーマイケル中尉はあいも変わらず、好青年オーラを出して世話を焼いている。

「どうだい? ちょっとした店だろう? 演奏もなかなかだし。
それにここの南部料理は、美味いと評判なんだよ。 どちらかと言うと、演奏より料理を楽しみたい客が多いんだけどね」

にこやかに笑いながら、演奏と食事を楽しむカーマイケル中尉を見て、ふと、祖国を思い出す。
帝国は―――日本では、こんな余裕など全くない。 

朝鮮半島のすぐ先の『極東絶対防衛線』で、BETAの侵攻を辛うじて支えているのが、極東戦線の実状だった。
そのすぐ後方の戦略的要衝である我が祖国は。 今や戦時体制一色に塗りつぶされている。

いや、俺の祖国は未だ『存在している』 しかし、横の席で少し茫然としているぺトラは―――ぺトラの祖国、フィンランドは既に存在しない。
そして、俺もぺトラも。 生まれてこのかた、こんな『豊かな』世界を知らない。







「―――世の中、全く薄情だな・・・」

食事を終え、ホテルへの帰り道。 思わず漏らした俺の呟きを聞きとめたカーマイケル中尉が、不思議そうに顔を向ける。

「薄情? どう言う事だい?」

「・・・俺も、ぺトラも。 こんな世界を知らない。 こんな、あらゆる物が溢れ返っている世界を知らない。
俺たちの知っている世界は・・・ BETAに食い荒らされた、かつての祖国。 BETAの侵攻に怯える祖国。
そこに、こんな享楽は存在しない。 そんな余裕は存在しない・・・」

「難民キャンプと・・・ 軍隊だけ。 知っているのは・・・」

欧州では数少ない、本土を維持している英国でさえ。 今や国家総動員体制の戦時色一色だった。


「・・・それは、本当に気の毒だと思う。 本当にだ。 ただ、判って欲しいのは・・・ 
僕たちアメリカ人は何も、君達祖国を失った人々、祖国がBETAの脅威に直面している人々を、蔑にする気は無い。
その脅威に対処する支援も厭いはしない。 決して、憐れみなどでは無い。 
・・・全てがそうだとは言わない。 でも、多くのアメリカ人がそう思っている事は事実だ。 誤解はしないで欲しい」

―――基本的にカーマイケル中尉は。 東部エスタブリッシュメントの、陽気で気さくな、所謂好青年の『アメリカン・ボーイズ』の一人なのだろう。
少なくとも、彼自身は『本気で』そう言っているのだ。
だが、『アメリカ』は、どうなのだ?

「君は・・・ 今回の米国の計画。 どう考えているんだ? カーマイケル中尉?」

「どう、とは?」

「判っているだろう? 米国がレディ・アルテミシア―――アクロイド博士を招聘した理由は。
G弾だよ。 『グレイ・イレブン』を、最も有効な軍事的活用、それも対BETAへの活用と考えた場合。
博士の研究。 そしてその頭脳。 全ては、G弾の確実的な開発と運用。その向上の為だろう?」

「君は、反対なのだな?」

「・・・今の俺は、国連軍人だ。 国連の計画がどうなろうと、それに反対を唱えるつもりも、権利も無い。
与えられた環境で、だた戦い、任務を完遂するだけだ。 だが・・・
本音で言わせて貰えば。 G弾は、反対だ。 核同様にな」

「予想される、異常重力環境汚染?」

「そうだ。 今の状況で、何年先になるか判らないが・・・ 使用されるとして、その場所はユーラシア、若しくはその周辺地域。
BETAに浸食され、そしてその脅威を直接受けている地域とはいえ。 その場所を故国と、故郷としていた人々は、未だ存在する。
彼らの想いは、どうなる・・・? いつか、いつの日か、故国を、故郷を奪回したい。 そう思い続けている人たちの想いは?
―――その思いすら、異常重力で、汚染するのか?」


・・・アルコールが入っているせいか、普段より余程舌が回る。
俺とは反対にぺトラは、故国を思い出すのか、さっきから無言だ。


「・・・国家の安全保障上、必要と判断されるのなら。 僕は支持する」

「何っ・・・!?」
「・・・ッ!!」

「勘違いしないでくれ。 何も全てをG弾で済ませようなどと。 そんな事は言っていない。
ただ、合衆国と、合衆国市民の生命、財産、権利が危ういと判断される場合。 
その場合には、国家は、そして軍は。 使用を躊躇うべきではない、そう言っているんだ」

「他の国家と、他国民は、考慮の範囲外か・・・?」

知らずに声が震える。 こみ上げてくる怒りを。 抑えきれるだろうか?

「国家の安全保障とは、そう言ったものだよ。 周防中尉。
国家と国民は、支配と従属関係じゃない。 対等の契約関係であるべきなんだ。
国民は、国家が契約内容を履行する限り、その求めに応じて義務を果たす。 そうして初めて、権利を主張できる。
国家は、国民に義務を負わす為にも、その契約を完全に履行すべきなのだ。 どちらか一方的なものではないよ」

「国家と契約・・・? それが、この国の考え方か?」

「そうだよ。 そして、国家間の相互安全保障―――同盟も、そうだ。 どちらか一方が、一方的に義務を負う事では無い。
お互いの国益に合致する限り。 双方、若しくは複数はその義務を履行する。
しかし、それが崩れた時。 一方的な負担は許容できないし、一方の主張ばかりを聞き入れる必要は無い。
何故か? 国家と国民の契約、その不履行だからさ。 国際外交もまたしかり」

「・・・それが根拠で、自国以外でG弾の使用、その解釈に繋がると?」

そんな、手前みその理論で。 実際に使われる側になってみろ、堪ったものじゃない・・・

「俺は、帝国軍時代。 大陸派遣軍で、満洲で戦った。 
共に戦った中国軍、韓国軍、そしてソ連軍や国連軍。 その中には友人もいるし、親しい者達もいる。
欧州に来てからも、欧州各国出身の戦友や、親しい友人がいる。
―――彼らは、君のその根拠を。 是とはしないだろう。 俺自身、納得はいかない」

「だから、先程も言ったよ。 全ての状況下での使用は、容認していないよ、僕も。
ただ、そうだな。 例えば戦術目的。 軍の損失がこれ以上増大すれば、作戦の失敗と、戦略的後退、そして何より人命の浪費。
この3点に繋がると言うのであれば。 使用を躊躇うべきではないと考える。
―――確かに、異常重力環境が発生するかもしれない。
しかし、結果として先に言った3点が回避できるのであれば。 例えばそれが、ハイブ攻略に直結すると言った場合であれば。
最早、躊躇うべき状況ではないだろう? 今の世界情勢は・・・」


戦略的成功―――例えば、ハイブ攻略。 人類の生存圏の拡大と、将来の対BETA戦勝利に繋がる。
戦術的成功―――最小の被害で、最大の成果を。 将兵の死傷も、最低限で抑えられるとしたならば。

これに繋がるのであれば、G弾の使用すら、躊躇すべきではない。 彼はそう言っているのだ。
思い返せば。 米国は74年、カナダのアサバスカに降着したBETAユニットを、戦略核の集中運用で殲滅した。
それも、やはり同じ理論からだ。 ―――広大なカナダの半分が、放射能汚染に晒されようとも。

(だが、流石に戦略核の集中運用は。 要らぬ被害をも、周囲に与える。 ―――だからか。 
より危害範囲を『調整』できるG弾の確実性を高めようとしているのは)



―――実際、有効性は認められるだろう? 使用も場合によっては十分あり得るだろう?

『軍人』と言う、俺を構成する一部の意識と。

―――翠華の故郷や、ファビオやギュゼルの故郷で、『それ』を使っても良いって言うのか? 場合によっては、帝国本土は? 許容できるかッ!

『個人』と言う、俺を構成する大半の意識と。

相反する意識が、互いに脳裏に渦巻いていた。 正直、自分でもカーマイケル中尉の主張を否定しきれない部分が存在した事に、驚いている。


「・・・あくまで、その主張はアメリカ国内での一般論であって、世界の特殊論だ。 それを、世界が許容するとは考えない方が良い」











1994年12月22日 アメリカ合衆国 NYC マンハッタン島 セントラル・パーク


街は、感謝祭が終わってから、クリスマスに向かって全速力で疾走している。 そんな印象を受けた。
最も、帝国出身の俺には、今一つ実感が湧かないのだが(正月の方が判りやすい)

12月のNYC。 気温は場合によっては氷点下10度(米国流に言えば、華氏14度)くらい平気で下がる。
その日もそうだった。 おまけに前日は雪が降った為、あちこちに残雪が残って凍りついている。

(そんな、寒風吹きすさぶセントラル・パークを独りでトボトボと。 俺は何をやっているんだ?)

答え―――今夜の食料の買い出しの帰りだ。 

ふと、気まぐれでセントラル・パークに寄ってみようと思い立ったのが仇となった。 とにかく寒い。

(―――満洲の冬よりは、暖かいんだけどな)

派遣軍時代駐留した北満州の冬は。 日中でも氷点下20度程度まで下がる。 陽が落ちると、氷点下30度前後の極寒の世界だ。
あの時に比べると、随分暖かいのだけどな。 何故だろうか、やたらと寒く感じる。

(―――鈍ったかな? ・・・いや、気分の問題か)


俺は、既にレディ・アルテミシアの警護任務からは外されている。
あの後、12日に一家が到着した。 予定では、その後すぐにニューメキシコ州―――ロスアラモスに移動する予定だったが。
何分、老婦人と幼い少女までの同行だ。 今までの環境から急激に変化するのは、精神衛生上宜しくない。 そういう理由で、出立は年明けに延長された。

ならば、俺の任務も延長か。 そう考えていた矢先。 
グランドル大佐の代理で米国までやってきた、ローズマリー・ユーフェミア・マクスウェル少佐から、辞令を手渡された。


『・・・何ですか、少佐。 この『補習教育受講を命ずる』と言うのは?』

『・・・読んで判らないかしら? そのままの意味よ。 
国連軍はね、初級将校・・・大体、任官3~4年程度の将校に補習教育を受けさすのよ。
内容は様々ですけれど。 周防中尉、貴方には年明けからこのアメリカで、9カ月間の補習教育受講が命じられています』

『9カ月ッ!?』

『普通は、12カ月よ? 大体、9月から始めるのですけど。 貴方は任務で3カ月程ロスしているから、頑張って挽回しなさい?
国連軍は、只の戦場馬鹿の将校を必要とはしないのよ。 しっかり、学びなさいな。
そう言う訳ですから、博士の警護任務は私達が引き継ぎます。 直接警護は、チェレンコフ曹長が。 
私と、ブランシャール少尉は博士の秘書役と、国連本部の連絡役ね』

確かに、エステル・ブランシャール少尉と、レオニード・チェレンコフ曹長も渡米してきていた。

『リスキ少尉も今回は特例で、補習教育を受講して貰います。 
本当は、あと2年くらい先なのですけれど。 大佐が『どうせなら、纏めて放り込もう』と仰って・・・』



途中でアッパーイーストに出る。 今の住処は東88丁目のアパートメント。 
ちょっと古い様式の中層階建築だが、逆に古い時代の感じが良い具合に出ている。
ただし、中の設備も見合って古く、旧式エレベーターはしょっちゅうメンテナンス中だ。だからいつも4階まで階段で上がる。

3BR(3LDK)の部屋。 独りでは持て余す広さだ。 そして、当然一人では無い。

「やあ、買い出し、ごくろうさま」

オーガストがリビングのソファに座って、TVを眺めている。
食事当番のぺトラは、キッチンで何やら下拵え中か。

――― つまり。 3人でルームシェアをしている訳だ。 家賃が高くて、軍人の薄給じゃ払えないから。

俺とぺトラは、年明けから『補習教育』が始まる。 
オーガスタは・・・ 2年の現役任務をいったん終了し、衛士から技術将校へ転科した。 
研究目的で、母校の研究室に潜り込んだらしい。 
つまり、貧乏人が3人。 乏しい懐を持ち合って、この部屋を借りている。

「直衛とぺトラは、何もアッパーイーストじゃなくても良かったのに。 
寧ろ、ヴィレッジ(マンハッタン南西部)の方が、安くて学生向きのアパートも多いぞ?」

「・・・泣きついて、懇願したのは誰だ?」

「ははは、僕だった。 感謝するよ。 お陰で割と良い部屋に住める」

「この辺、治安は良い・・・ 住めるの、助かる・・・」

「そうだよね? ぺトラ」

「・・・だったら。 何もここじゃ無くても、良かったんじゃないのか?」

「私達、地理不案内・・・ カーマイケル中尉、案内助かる。 ・・・周防中尉、贅沢?」

―――その用法、違うと思うぞ? ぺトラ。


思わず溜息をついて、買い物袋をテーブルに置き、窓際に寄る。 バルコニーに出て―――思わず身震いしながら―――煙草に火をつける。
喫煙権を主張するのは、この中では俺一人だけだったから、立場的に弱い。 吸いたければ、氷点下の寒さを我慢してのホタル族しかなかった。


紫煙を見つめながら、数日前を思い出す。
レディ・アルテミシアに、警護任務の終了を報告しに行った時の事をだ。

『・・・中尉。 私を、愚か者と思いますか?』

唐突に、そう切り出された。
恐らくは、今回の計画内容を、大まかにだが知らされた俺達が、どう感じたか。 ―――いや、あれは自分の内心へ問いかけているようだった。

『何を以って、愚か者と判断するのでしょうか? 無知と無分別故の愚行ならば、愚か者と断ずるべきでしょうが。
レディ、私は貴女がどう考え、どう悩まれたのか。 その一端を見てまいりました。 その貴女を、愚か者と断ずる理由を知りません』

『私の研究理論は・・・ 『量子重力理論』と言うものは。 10次元時空が必要なの。 つまり、超高エネルギーでの実験が不可欠・・・
今の世界で、それを満足させられるのは、ロスアラモスだけ・・・ つまり、G元素の臨界実験でだけなの。
G弾はその副産物・・・ でも、弁解はしません。 私は自らの研究に利用するのよ、『重力の禁忌』を・・・』

―――ロスアラモス国立研究所

G元素だけではなく、核兵器開発など合衆国の軍事・機密研究の中核となる研究所であるが。
同時に生命科学、ナノテクノロジー、コンピュータ科学、情報通信、環境、レーザー、材料工学、
加速器科学、高エネルギー物理、中性子科学、非拡散、安全保障など。

様々な先端科学技術について、広範な研究を行う総合研究所でもある。
年間予算は60億ドル。 合衆国と世界の頭脳が集まる、名実共に世界最高の研究機関である、「合衆国の至宝」

研究所は「The world's greatest science protecting America and World(アメリカと世界を守る、世界で最も偉大な科学)」を標榜する。

その中の中核、「グレイ研究所」 ウィリアム・グレイ博士が主宰する、G元素研究の総本山。 レディはそこに、招聘された訳だ。


『個人の本音としては。 使って欲しくは有りません。 
使うとすれば、その場所は・・・ 今現在でならば、私の友人達の失われた故国です。
いや、私の祖国すら、この先どうなるか・・・』

『・・・中尉』

『軍人としては、その実用性を認めるに吝かではありません。 純粋に、対BETA殲滅戦略の道具としましては。
・・・正直、自分自身で驚いております。 この様な、相反する意識が有った事に』


押し黙ったレディの横顔は。 自分で言っておきながら、その発言を俺は後悔した。 
それ程に、何か振り切り去ってしまった、哀しい笑みを浮かべた横顔だったのだ。

―――この女性は。 一体どれほどの内心をかなぐり捨てて。 今、ここに居るのか・・・

あの時、帝大の香月博士の研究を『悪魔的』と言ったレディ。
そして渡米を決意した夜、ふと漏らしたあの言葉 ―――『私は、悪魔に魂を売りましょう』

根底は同じなのか。 どれ程の覚悟と絶望を、その内心に押し殺してしまったのか。
最後まで、窺い知ることは出来なかった。







「で、どうする? 2人とも。 24日は。 良ければ、友人が開くパーティーに一緒に行こう。
なに、皆ROTC出身の士官連中なんだ。 『欧州方面国連軍将校との交流』って言ったら。 是非に、との事だったよ」

未だ、比較的親しく接している米国人は、オーガスタしかいないのだが。
米国と言う国はともかく、個々人を纏めて同一視する事は愚かしい、そう思い始めている。

彼の主張には、賛同しかねる個所も多々有るが。 それでも議論の場では、相手の主張を端から全否定する事はしない。
オーガスタ個人の性格故かもしれないが。 俺にとっては、この国をじっくり観察する良い機会かもしれない、そう思い始めていた。


「・・・私は、予定は未定。 ・・・参加、します」

「そ、そうかい。 うん、判ったよ。 で、直衛、君は?」

「ん・・・ ま、俺も予定は入っていない。 参加させて貰うよ」

「よし! じゃ、イブの夕方、1830に。 僕は主宰者側だけど、一旦抜けて迎えに行くよ」

「了解」 「・・・了解、です」

ふと、小さなレディを思い出す。
最後に有ったのは7日前。 随分と沈んでいた。 母親にしがみついて、元気も無かった。

―――気分転換に、外で遊べたら良いんだけどな。

生憎、今は米国側が用意した護衛が複数、どこへ行くにもベッタリだ。 あの子も塞ぎがちにもなる。
元々、自然豊かなスコットランドで育った子だ。 こんな、世界最大の大都会など、想像の範囲外だったろうに。


「・・・ジョゼも、遊ばないと、大きくなれない。 ・・・中尉、心配?」

「・・・お前さん同様な」













前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.034727096557617