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No.7678の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 ~第1部 完結~  [samurai](2012/01/15 00:56)
[1] 北満洲編1話[samurai](2009/03/31 02:40)
[2] 北満洲編2話[samurai](2009/04/12 14:43)
[3] 北満洲編‐幕間その1[samurai](2009/04/02 03:33)
[4] 北満洲編‐幕間その2[samurai](2009/04/02 23:49)
[5] 北満洲編-幕間その3[samurai](2009/04/04 02:31)
[6] 北満洲編3話[samurai](2009/04/04 22:33)
[7] 北満洲編4話[samurai](2009/04/05 19:23)
[8] 北満洲編5話[samurai](2009/05/16 17:22)
[9] 北満洲編6話[samurai](2009/04/11 02:17)
[10] 北満洲編7話[samurai](2009/04/12 03:34)
[11] 北満洲編8話[samurai](2009/05/05 23:46)
[12] 北満洲編9話[samurai](2009/04/18 21:28)
[13] 北満洲編10話[samurai](2009/04/18 22:35)
[14] 北満洲編11話[samurai](2009/04/19 01:16)
[15] 北満洲編12話[samurai](2009/04/24 02:55)
[16] 北満洲編13話[samurai](2009/04/25 22:53)
[17] 北満洲編14話[samurai](2009/05/06 00:47)
[18] 北満洲編15話[samurai](2009/05/10 04:08)
[19] 北満洲編16話[samurai](2009/05/10 03:42)
[20] 北満洲編17話―地獄の幕間[samurai](2009/05/13 19:48)
[21] 北満洲編18話[samurai](2009/05/16 03:31)
[22] 北満洲編19話[samurai](2009/05/16 03:59)
[23] ちょっとだけ番外編(バカップル編)[samurai](2009/05/17 03:25)
[24] 北満洲編20話[samurai](2009/05/19 23:48)
[25] 北満洲編21話[samurai](2009/05/20 00:32)
[26] 北満洲編22話[samurai](2009/05/24 02:21)
[27] 北満洲編23話[samurai](2009/05/24 04:25)
[28] 北満洲編最終話[samurai](2009/05/24 03:36)
[29] 設定集(~1993年8月)[samurai](2009/05/24 23:57)
[30] 国連極東編 満州1話[samurai](2009/06/09 02:02)
[31] 国連極東編 番外編・満州夜話[samurai](2009/06/09 02:03)
[32] 国連極東編 満州2話[samurai](2009/06/09 02:03)
[33] 国連極東編 満州3話[samurai](2009/06/09 02:03)
[34] 国連極東編 満州4話[samurai](2009/06/09 02:03)
[35] 国連極東編 満州5話[samurai](2009/06/09 02:04)
[36] 国連極東編 番外編 艦上にて―――或いは、『直衛君、弄られる』[samurai](2009/06/09 02:04)
[37] 国連極東編 満州6話[samurai](2009/06/09 02:04)
[38] 国連極東編 満州7話[samurai](2009/06/09 02:04)
[39] 国連極東編 満州最終話[samurai](2009/06/10 07:33)
[40] けっこう番外編(かなりバカップル編)[samurai](2009/06/12 23:53)
[41] 国連欧州編 英国[samurai](2009/06/14 10:27)
[42] 国連欧州編 イベリア半島1話[samurai](2009/06/17 23:46)
[43] 国連欧州編 イベリア半島2話[samurai](2009/06/18 00:38)
[44] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 1話[samurai](2009/06/20 23:34)
[45] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 2話[samurai](2009/06/21 13:54)
[46] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 3話[samurai](2009/06/26 00:07)
[47] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 4話[samurai](2009/06/28 03:55)
[48] 国連欧州編 イベリア半島 『エース』 最終話[samurai](2009/06/28 10:30)
[49] 国連欧州編 シチリア島1話[samurai](2009/07/01 00:59)
[50] 国連欧州編 シチリア島2話[samurai](2009/07/01 01:28)
[51] 国連欧州編 シチリア島3話[samurai](2009/07/05 00:59)
[52] 国連欧州編 シチリア島4話 ~幕間~[samurai](2009/07/05 22:09)
[53] 国連欧州編 シチリア島5話[samurai](2009/07/10 02:30)
[54] 国連欧州編 シチリア島最終話[samurai](2009/07/11 23:15)
[55] 国連欧州編・設定集(1994年~)[samurai](2009/07/11 23:25)
[56] 外伝 海軍戦術機秘話~序~[samurai](2009/07/13 02:52)
[57] 外伝 海軍戦術機秘話 1話[samurai](2009/07/17 03:06)
[58] 外伝 海軍戦術機秘話 2話[samurai](2009/07/19 18:39)
[59] 外伝 海軍戦術機秘話 3話[samurai](2009/07/21 23:41)
[60] 外伝 海軍戦術機秘話 最終話[samurai](2009/08/13 22:32)
[61] 国連欧州編 北アイルランド[samurai](2009/07/25 17:47)
[62] 国連欧州編 スコットランド1話[samurai](2009/07/27 00:36)
[63] 国連欧州編 スコットランド2話[samurai](2009/07/28 00:28)
[64] 国連米国編 NY1話[samurai](2009/08/01 04:13)
[65] 国連米国編 NY2話[samurai](2009/08/06 00:03)
[66] 祥子編 南満州1話[samurai](2009/08/13 22:31)
[67] 祥子編 南満州2話[samurai](2009/08/17 21:26)
[68] 祥子編 南満州3話[samurai](2009/08/22 19:19)
[69] 祥子編 南満州4話[samurai](2009/08/30 19:03)
[70] 祥子編 南満州5話[samurai](2009/08/28 07:52)
[71] 祥子編 南満州6話 ―幕間―[samurai](2009/08/30 18:45)
[72] 祥子編 南満州7話[samurai](2009/09/06 00:08)
[73] 祥子編 南満州8話[samurai](2009/09/16 23:35)
[74] 祥子編 南満州9話[samurai](2009/09/19 03:15)
[75] 祥子編 南満州10話[samurai](2009/09/21 22:59)
[76] 祥子編 南満州最終話[samurai](2009/09/22 00:42)
[77] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1[samurai](2009/10/01 23:43)
[78] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その2[samurai](2009/10/01 22:02)
[79] 国連米国編 NY3話[samurai](2009/10/03 13:42)
[80] 国連米国編 NY4話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/11 12:38)
[81] 国連米国編 NY5話~Amazing grace~ [samurai](2009/10/14 22:32)
[82] 国連米国編 NY最終話~Amazing grace~[samurai](2009/10/17 03:10)
[83] 国連番外編 アラスカ~ユーコンの苦労~[samurai](2009/10/19 21:28)
[84] 国連欧州編 翠華語り~October~[samurai](2009/10/23 22:58)
[85] 国連欧州編 翠華語り~November~[samurai](2009/10/24 15:34)
[86] 国連欧州編 翠華語り~December~[samurai](2009/11/01 23:21)
[87] 国連欧州編 翠華語り~January~[samurai](2009/11/09 00:17)
[88] 国連欧州編 翠華語り~February~[samurai](2009/11/22 03:05)
[89] 国連欧州編 翠華語り~March~[samurai](2009/11/22 03:38)
[90] 国連欧州編 翠華語り~April~[samurai](2009/11/22 04:13)
[91] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 1話[samurai](2009/11/24 00:29)
[92] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 2話[samurai](2009/11/29 02:20)
[93] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 3話[samurai](2009/12/06 22:19)
[94] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・前篇[samurai](2009/12/11 22:37)
[95] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 4話・後篇[samurai](2009/12/12 21:38)
[96] 国連欧州編 バトル・オブ・ドーヴァー 5話[samurai](2009/12/13 20:58)
[97] 国連欧州編 最終話[samurai](2009/12/13 23:06)
[98] 帝国編 ~序~[samurai](2009/12/19 05:05)
[99] 帝国編 1話[samurai](2009/12/20 12:06)
[100] 帝国編 2話[samurai](2009/12/24 00:16)
[101] 帝国編 幕間[samurai](2009/12/25 04:22)
[102] 帝国編 3話[samurai](2009/12/30 05:15)
[103] 帝国編 4話[samurai](2010/02/08 02:09)
[104] 帝国編 5話[samurai](2010/02/22 01:03)
[105] 帝国編 6話[samurai](2010/02/22 01:00)
[106] 帝国編 7話[samurai](2010/03/01 00:28)
[107] 帝国編 8話[samurai](2010/03/13 22:53)
[108] 帝国編 9話[samurai](2010/03/23 23:37)
[109] 帝国編 10話[samurai](2010/03/28 00:51)
[110] 帝国編 11話[samurai](2010/04/10 21:22)
[111] 帝国編 12話[samurai](2010/04/18 10:47)
[112] 帝国編 13話[samurai](2010/04/20 23:21)
[113] 帝国編 14話[samurai](2010/05/08 16:34)
[114] 帝国編 15話[samurai](2010/05/15 01:58)
[115] 帝国編 16話[samurai](2010/05/17 23:38)
[116] 帝国編 17話[samurai](2010/05/23 12:56)
[117] 帝国編 18話[samurai](2010/05/30 02:12)
[118] 帝国編 19話[samurai](2010/06/07 22:54)
[119] 帝国編 20話[samurai](2010/06/15 01:06)
[120] 帝国編 21話[samurai](2010/07/04 00:59)
[121] 帝国編 22話 ~第1部 完結~[samurai](2010/07/04 00:52)
[122] 欧州戦線外伝 『周防大尉の受難』[samurai](2009/09/12 02:35)
[123] 欧州戦線外伝 『また、会えたね』 ~ギュゼル外伝~[samurai](2010/12/20 23:16)
[124] 設定集 メカニック編[samurai](2010/12/20 23:18)
[125] 設定集 陸軍編(各国) 追加更新[samurai](2010/05/15 01:57)
[126] 設定集 海軍編(各国) [samurai](2010/05/08 18:23)
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[7678] 祥子編 南満州番外編~後日談?~ その1
Name: samurai◆b1983cf3 ID:3fa3f4a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/01 23:43
【Achtung!】
今回異なる時空から、AF(オルタードフェイブル)の神様が一部降臨しました。(テンプレです)
それと、某銀河のチートな伝説の神様もホンの一部降臨しています。(一部パロです)
スミマセン、石は投げないでください・・・







1995年4月20日 大連 帝国軍第14師団駐留基地


昨年11月の大損害から、ようやくの事で復旧しつつある極東絶対防衛線。
その一翼を担う帝国大陸派遣軍第14師団。 今は少々浮ついた空気に包まれていた。
無理も無い。 あと半月ほどで彼等は1年間の派遣期間を終え、本国へと帰還するのだ。
 
ここ2カ月程、周辺の重点監視ハイブ(H14、H18、H19)の衛星観測データも、定期哨戒情報でも、BETAの増加・飽和傾向は見受けられていない。
恐らく大過なくあと半月の派遣軍務を終えて、祖国へ帰還できるのだ。 少々浮ついても仕方が無い。

「・・・既に先遣隊は宇賀神少佐と源中尉が本土へ進発。 本土防衛軍との引き継ぎを開始。
瀋陽では早坂少佐と木伏大尉が、交替の13師団・131連隊先遣隊との引き継ぎ業務に入った、と。
部隊残余は大連に集結完了。 人員・機体ともに遺漏無し、と・・・ よし、ご苦労様、水嶋大尉、綾森中尉」

連隊先任幕僚・河惣少佐が書類の記載内容を確認し、報告に来た2人の士官を労っていた。
連隊長の藤田中佐はここ暫く、師団本部と共に交替部隊である第13師団との引き継ぎ会議に出ずっぱりであり、2人の大隊長は本土と瀋陽での引き継ぎ実務を担当している。
自然、部隊の指揮代行は残余の最上級者である河惣少佐が行う事になっていた。

「いえいえ。 皆、てきぱきしたものですよ。 本土に帰還できるとなった途端、いつもの10割増しで勤勉になっちゃってまァ・・・」

普段はおどけ者の水嶋大尉も苦笑するしかない。

「仕方ありませんよ、大尉。 生きて満洲から本土に帰還できるのですから。 弛緩しすぎるのは見逃せませんけれど、多少の浮つきは仕方が無いでしょう」

自身、2度目の大陸派遣を経験した綾森中尉も、実経験から顧みて今の部隊の空気は仕方が無いと考えている。
だらけはさせないが、無駄に引き締め過ぎるのも弊害になる場合もある。 そう言っているのだ。

―――真面目ではあるけれど。 変に肩肘張らない所は、この先の期待を持てそうね。

2人の上級士官が、そんな綾森中尉を見つつ、同じ感想を抱く。
衛士としての適性や腕前以上に、俯瞰的に状況を把握できる能力と冷静な判断力。 そして程々に力を抜いた感の有る部隊掌握力。
実際、部隊指揮官としての将来性は高いものがあるとは、連隊の上級指揮官達が下す綾森中尉への評価だった。


「ま、あとは今本土へ教育課程に出ている新中尉達が帰って来て。 本格的に交替部隊との引き継ぎが完了して、帰還の途に就く。
本当にこの1年間、ご苦労様。 ・・・決して楽な戦いでは無かったけれでど、頑張ってくれたわ」

「ホント、とにかく1年間をどうやって戦い抜くか。 どうやって部下を無事に国に帰してやれるか。 どうやってBETAの侵攻を押しとどめるか。
・・・少佐も先任幕僚、ご苦労様でした」

流石に水嶋大尉も、この1年間の苦闘を振り返ってしんみりしている。 BETAの中規模侵攻が頻発した昨年の夏以降の連続した戦闘。
そして大いなる過誤に始まり、大きすぎる損失を出した11月の防衛戦。 その後も頻発した中小規模の阻止戦闘。

衛士達の苦戦もさることながら、整備補給を含めた部隊の戦闘力の維持管理、補充要員の確保、情報収集、作戦立案。
後方支援業務全般を先任幕僚として、実質参謀長的立場として仕切ってきた河惣少佐のストレスは、かなりのモノだったであろう。
それでいて戦闘では、連隊先任戦闘管制官として統率していたのだ。

「・・・苦労性は、どうやら私の性に合っているのかもね」

その美貌にも、疲労の色が見え隠れする。 部隊の大半は浮かれている今現在であるが、支援業務の主務担当である河惣少佐にとっては、正に今が『激戦』の最中だったのだ。
ちょっとお疲れ気味の河惣少佐。 そんな少佐を見て、水嶋大尉と綾森中尉が顔を見合わせてから、水嶋大尉が切り出す。

「で、ですね、少佐。 ついては近々、慰労会をやろうと思っているんですよ」

「慰労会?」

「ええ。 って言っても大体的なものじゃないです。 有志で集まって、ご苦労様会ですね。
ウチの連隊だけじゃなくて、師団の他の連隊や18師団にも声をかけているんです、実は」

「お互いの同期生なんかを通じて。 強制じゃありませんし、気の合う者達だけで小じんまりと・・・ と行くか判りませんけれど、気の張らない会にしたいと」

河惣少佐の問いに、水嶋大尉と綾森中尉が答える。
実際、ぼちぼち非番の都合をつけあって友人同士、同期生同士での宴席がボチボチ開かれてはいたのだ。

「今回は、女同士の集まりと言う事で。 来て貰おうにも、ウチの連隊は連隊長以下、男の幹部連は皆不在ですし。 この際、女同士で盛り上がろうかと」

綾森中尉が珍しく茶目っ気の有る笑みを浮かべて言う。 横で水嶋大尉もにやりと笑っている。

「・・・ちょっと壮絶な会になりそうね。 で? 私も参加しろと?」

「息抜きですよ、少佐。 やっぱり異性がいれば言えない事も有るじゃないですか? ここはひとつ、弾けるのも手ですよ?」

「はあ・・・ 水嶋大尉? そう何時も弾けるのも問題よ? ま、良いわ、面白そうだし、出席するわ」

―――やったね!

そう言ってハイタッチを交わす部下達を見ながら、こんな若い子達に混ざって、体が保つかしら? と一瞬悩む河惣少佐であった。








1995年4月24日 黄海 門司=大連航路 帝国郵船『照国丸』


「うあ~~・・・ きもちいいぃ~・・・」

潮風を受けながら、ハンドレールにもたれかかった同期生の美園杏が、間の抜けた歓声を上げている。

門司から大連までの定期航路。 その中でも上等の部類に入る客船、『照国丸』の二等船客。 それが私達。
え? 小娘の分際で二等客室なんて図々しいって? ご尤も。 私も自腹切るんじゃ、三等に乗るわね。 何せ料金が倍は違うんだものね。

でも私達の様な20歳前後の小娘でも、帝国の叙勲で言えば立派に高等官(上級職官吏)、『奏任官七等』なのよね。
当然、それ相応の見栄も張らなきゃならないのよ。 ああ、辛いところね・・・

「・・・何を言っているのよ。 出張旅費で落ちるでしょ」

・・・横であっさり、種明かしをしてくれやがったのも、私の同期生・神宮寺まりも。
全く、少しくらいは優越感って言うのかなぁ? そう言うワクワク感に浸っても良いじゃないさ。

「はぁ・・・ それなら、もう少し相応の態度と言うか、自覚と言うか。 持ちなさいよ、全く・・・
私達がこうやって、贅沢な船旅をしていられるのも全部、国民の血税からなのよ?」

―――うわぁ~・・・ 優等生的発言。 こいつってば、すっかり昔に戻ったわね・・・

「まぁ、まぁ、まぁ。 それはそうだけどさ! 私らだって、体張って頑張っているんだしさっ! いいじゃん、この位の役得は。 たまにはさっ!」

さっきまで海原に向かって大口あけて、「うあ~」だの、「あが~」だの、奇声を上げていた杏が、珍しくまともな事を言う。

「・・・何か食べ物でもあたった? 美園?  珍しく・・・」

酷い言いようだし、その『珍しく・・・』の絶句の仕方も、また酷いよ? アンタ・・・

「うがぁ! 何よっ! 私が真面目な事言ったらオカシイのっ!? 神宮寺ぃ!!」

ああ、杏がいい感じにキレちゃった。

「葉月! アンタも我関せずって顔してんじゃなぁい!! えっ!? オカシイのっ!?」

「・・・オカシイと言うより」 「・・・珍しすぎ?」

2人して顔を合わせて確かめ合う。 ―――うん、間違いじゃないね。

「・・・あが・・・」

絶句する杏。 ついでにデッキにへたり込んでイジケ始めた。 ああ、鬱陶しい・・・

「あ、いたいた。 3人とも、あと2時間で大連よ。 そろそろ部屋の中片付けたら? って、何へたり込んでんの? 美園・・・」
「神宮寺は良いけど、美園に仁科。 アンタ達、散らかしっぱなしじゃない。 ・・・美園、拾い食いは駄目よ?」
「いくら男っ気無しとは言えさぁ、あれはみっともないなぁ ・・・美園ぉ、木甲板のチーク材は食えんぞぉ?」

口々に勝手な事を言いながら、船内から出てきたのはこれまた同期生達。

「判ったわよ、江上。 それにどうして、『神宮寺は良いとして』なのよ? 真咲・・・
それと! 男っ気が無いのはアンタも一緒でしょーがっ! 天羽っ!!」

苦笑する江上、舌を出しておどける真咲、にかっとカラカラ笑う天羽。
三者三様、見慣れた同期の顔触れ。 江上、真咲、天羽の3人は、新任当時は私や杏と同じ中隊に配属されていたのだ。
中隊には他に1人同期が居たけど戦死した。 大隊全体で12人の同期が配属されて、生き残っている者は8人。 
その中で今も衛士をしているのが6人。 2人は負傷で衛士資格を失った。 戦死者は都合6人。 2年間で半数を失った。


「あ、神宮寺は初陣半年遅れで、一緒じゃ無かったっけ?」

「・・・何か、棘がある気がするのだけど? 仁科?」

「気のせい、気のせい」

こいつはむくれると、何気に幼い表情になる事は最近発見した。 他にも色々見つかるかもしれない。
これがまた、楽しい。 軍に入ってからの付き合いだけど、最近は色んな事を発見出来る。 これも生きている証拠ねっ!

「さぁて、それじゃ片付けでもしますか!」

「私も。 もう一度詰め忘れが無いか確かめようかな・・・」

神宮寺と2人して船内に入る。 続いて3人の同期達も後に続いてきた。 なんだ、本当に私達を呼びに来ただけだったのか。

―――ん? 何か忘れている気がするけど・・・?

「? ・・・気のせいでしょ?」

うん、神宮寺もそう言っているし、そうでしょ。 さて、短い旅の仮の宿とは言え。 後を汚してちゃね。
私は自室の片付けの為に、狭いラッタルを駆け下り、船内通路を辿って自室へと向かったのだ。



「みんなぁ~・・・ ひどいよぉ~・・・ 忘れるなんてぇ~・・・」



―――あ、杏を忘れてた・・・












1995年4月24日 1330 大連 帝国軍第6軍駐留地(戦術機甲部隊基地) 


「ひどい、ひどい、ひどいっ! あんまりだっ! 信じらんないっ! これで同期生っ!?」

先頭で、一人プンスカ怒っているのは。 私の腐れ縁の同期生で戦友の美園杏中尉。

「あ、えーっと・・・ その、ごめんねぇ~・・・ あはは・・・」

乾いた声とひきつった笑いを顔に張り付かせているのが、以前同じ戦場で戦った同期生の神宮寺まりも中尉。

「忘れていた訳じゃないのよ。 当然、後に付いて来ているものと・・・ ねぇ?」

後ろの同期に同意を求める顔が、やや苦笑気味な江上聡子中尉。

「外したアンタが悪い。 自業自得」

容赦が無いのは、真咲櫻中尉。

「あははっ! アンタは相変わらず、自爆ネタが好きだねぇ!」

豪快に言い放つのは、天羽都中尉。

皆、同期生同士だ。 私達は先月末、1995年3月31日付けをもって、陸軍衛士中尉に無事進級した。
そして4月初めから3週間の初級指揮幕僚課程を修了して、今こうして再び満洲へ戻ってきたのだ。

「みんな鬼だっ!! 一緒に3週間の地獄を這いずり回った仲なのにっ!!」

杏の言う『3週間の地獄』に、皆思い出したように身震いする。
3週間にわたった初級指揮幕僚課程。 少尉から中尉に進級して最初に訪れる試練。 それがこの教育課程だ。

別に、訓練校時代の様に肉体的にギリギリまで扱かれる訳じゃない。
寧ろそういった意味では天国だ。 じゃ、何が試練なのか? ―――徹底的に、頭を使わされるのだ。

任官して2年。 中尉に進級してそろそろ小隊長職が回ってくる。 その時に最低限、指揮官として承知しておかないとならない諸々。
応用戦術論、兵站概論、統率学、それに指揮能力の向上の為の図上演習と、部下の掌握方法。 人事考課者研修。 あれや、これや。

訓練教官の怒鳴り声が響き渡らない代わりに、ちょっとでも回答が出ない者には指導教官の冷ややかな視線と、絶対零度の冷たい台詞が待ちうける。

『中尉―――君は、今後どうやって部隊を掌握する気かね?』

おまけに、次から次へと容赦なく質問が浴びせかけられる。 
揚句に気がつくと、『あ~、う~』と、情けない唸り声しか発していない自分を見出し、猛烈に落ち込むのだが・・・


「・・・神宮寺、やっぱり雰囲気変わったね。 いや、昔に少し戻った?」

駐屯地の衛門をくぐり、各々の部隊へ向かう道すがら、横から江上が誰ともなく小声で呟く。

「そうかな・・・? そう、かもね・・・」

相変わらずご機嫌斜めの杏を、宥めながら前を歩く彼女の背を見ながら、曖昧に応える私。 でも、そう思う。 確かに変わったな、半年前からは・・・

「何よ? 何か知っているの、仁科?」

「別に? 直接聞いてみたら?」

私が言う事じゃない。 彼女の心境の変化に起因する事だし、言う時は本人が言うだろう。
やがて各連隊の管理棟が見えてくる。 この辺でそろそろバラバラになるな。
私と杏は141連隊、江上は142連隊、真咲が143連隊、。 神宮寺は181連隊で、天羽が183連隊。

ただっ広い基地、と言うより基地群。 お互い更に10数分歩く事になる。 とか考えていると、前方に見知った顔が居た。

「ああ、仁科、美園、お帰りぃ ・・・ん? アンタ達、江上に真咲に天羽? 久しぶりねぇ、まだ生きてたかぁ?」

小隊長の伊達愛姫中尉だった。 私達の1期先任士官。

「・・・生きてますよ、生憎と。 伊達さんも流石、世に憚っていますね?」
「しぶといですよね、伊達さんの期は。 人間ですか?」

「あははっ! 言うようになったねっ 初陣でこぞって盛大に漏らした『ションベン娘』達なのにねぇ!」

「「「「「 ぐっ! 」」」」」

「ま、恥ずかしい過去をこれ以上暴露されたく無きゃ、私より長生きして精々口止めしなよ? あははっ!」

「「「「「 い、言われなくとも・・・ 」」」」」

―――やっぱり性悪だっ! この人っ!!

ふと、そんな伊達中尉と私達を見ながら、横で苦笑している2人の中尉が目に入った。 1人は見覚えがある。 確か神宮寺の所の小隊長、市川中尉だ。 
もう一人の女性中尉は・・・? 小声で伊達中尉と何やら話している。―――身長差があるから、屈んでいるように見えるな。 ウチの小隊長、小柄だから。

縁無しの眼鏡をかけた、ちょっとクールな知的美人、って感じ。 見た目はあたし等とさほど変わらない年かな? 
そして・・・ 大きい。 あんなに大きくて操縦の邪魔にならないのかな? って思う程大きい、胸が。
それに何? あの全体のプロポーション? あんなの、緋色さん位しか知らない。 神様は不公平だっ! ―――決して、やっかみじゃないですけどっ! 

その女性中尉がこっちを向いた。 そして―――

「久しぶりだな? 神宮寺」

「・・・ご無沙汰しています」

たったそれだけだったけど。 何やら2人の間で無言の高速会話が激しく交わされているような・・・ 何? この妖しいような、緊迫した雰囲気・・・?

「・・・ふっ」

不意にその中尉がニヤリとしたと思ったら、踵を返して歩き去っていく。 

「愛姫。 例の件、承知したよ」

「サンキュ。 宜しく、静流」

その去り際に伊達中尉と何やら意味不明の会話を交わして。 神宮寺と言えば、ちょっと苦笑気味だ・・・?
その女性中尉の後姿を見ながら、市川中尉が神宮寺の所へ歩み寄って行く。

「教育課程受講、ご苦労だったな、神宮寺。 疲れている所をスマンが、中隊事務所の方まで来てくれるか?」

「・・・? はっ! 了解しました」

それだけ言うと、こちらもさっさと戻って行った。 ・・・何だったんだろうか?


「・・・小隊長、さっきの人誰なんです?」

小走りに走り寄って、聞いてみる。 なんか雰囲気のある人だったけど。 伊達中尉の同期かな?

「んあ? ああ、同期だよ。 182連隊のね」

「はあ、同期・・・ で、何の話を?」

「それは後で・・・ っと、やっぱ今言っておくか。 アンタ達、明日の夕方、予定入れておいてよ?」

「「はい?」」

「仁科に美園だけじゃなくって、江上と真咲も天羽も、隊の連中から話あると思うから」

―――何の話だ?

「何の事ですか? 伊達中尉?」

同じ疑問は持つよね。 江上が同じ事を口に出して聞いてきた。

「合同慰労会、やるから。 14と18師団有志で」

「「「「「合同慰労会っ!?」」」」」

しかも、2個師団の有志でっ!? 一体、何十人・・・ いや、何百人集まるんだろう!?

「そんなに集まらないよ。 女性衛士か、女性CP将校の集まり。 精々尉官まで。 あ、佐官も一応声は掛けてあるけど」

―――佐官って。 ウチの連隊じゃ、先任幕僚の河惣少佐だけだし。 他の連隊でも1,2名位じゃなかった?

「・・・それでも、3割は居ますよ?」

―――女ばかり200人弱か・・・ 壮絶・・・

「もっと少ない。 先遣隊で既に本土に向かっている連中も多いし。 引き継ぎで瀋陽に留まっている連中も居るから。 ざっと・・・ 40人位よ」

―――それでも40人か・・・ ちょっと凄い事になりそうね。



そう。 私の予感は当たっていたのだった。
忘れはしないだろう、あの様を。 きっと、忘れない・・・













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