== Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==
お昼休みに、もう一つの物語が進行していた。
後藤君が購買で昼食を買って教室へ戻る時、一人の少女を目にする。
三枝由紀香が、寂しそうな顔をして窓から外を見ている。
死の淵で開眼した後藤君の女性限定の読心術は、現在も絶好調に起動している。
ちなみに魔術師ではない後藤君は、スイッチの入れ方も切り方も知らない。
起動しっぱなしの魔術は、徐々に魔力を貪っていく。
後藤君の命のカウントダウンは、今も続行中だ。
第10話 後藤君の昼休みの物語
心の読める後藤君は、由紀香の気持ちが手に取るように分かってしまう。
(このまま去るのは、男らしくないでござるな。)
後藤君は、意を決して声を掛ける。
「こんにちわでござる、由紀香女史。」
「あ、後藤君。
こんにちわ。」
「悩み事でござるか?
拙者でよければ、お話を伺うでござるよ。」
「なんで、私が悩んでいると思うの?」
(うう……。
心が読めるからですとは言えないでござる。
衛宮殿の口の上手さが欲しいでござる。)
「…………。」
ストレートで返される疑問に後藤君は悩んでしまう。
沈黙が痛い……。
「すまんでござる。
そう思ったから、つい、声を掛けてしまったでござる。」
「ご、ごめんね。
私も、困らせるつもりじゃなくて
言い当てられたから。」
由紀香は、俯いてしまう。
「ご友人が喧嘩をしているのでござるかな?」
由紀香は、驚いたように後藤君の顔を見つめている。
「うん。
今、蒔ちゃんと鐘ちゃんは、冷戦状態なの。
だから、困ってたんだ。」
(そうでござった。
彼女達は、三人一組でござったな。)
「なんとか仲直りさせたいんだけど……。」
「では、拙者が助言いたそう。」
「?」
由紀香は、首を傾げる。
「確か、そなた達は、同じ部活動でござったな。」
「うん。」
「では、そこで、必ず三人顔を合わす訳でござるな。」
「うん。」
「その時、そなたが二人にいつも通り、
笑ってあげるだけで解決するでござるよ。」
「え? それだけ?」
「うむ。
不安でござるか?」
「うん。
それだけじゃ……。」
「では、魔法の言葉も授けよう。
もし、笑っても効果がなければ、こう言うといいでござる。
『なんで蒔ちゃんは、苗字で、鐘ちゃんは、名前なんだろう?』でござる。」
由紀香は、後藤君を見て固まっている。
余りに突拍子のない言葉に目を丸くしている。
「騙されたと思ってやってみるといいでござる。
もし、効果がない場合は、拙者は腹を切ろう。」
後藤君は、言う事を言い切ると、その場を後にした。
残された由紀香の頭の中では、疑問符が駆け巡った。
しかし、かけがえのない親友のため、どうしようもない状態になったら実践してみようと思うのであった。