== Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==
士郎とセイバーは、帰りにバスを使用せず、歩きながら自宅に向かっていた。
その帰り道で、士郎は、魔力について質問していた。
「魔力について質問していいか?
俺が思うには、魔力は質のいいエネルギー体だと思うんだけど。」
「また、突然ですね……。
まあ、興味を持ってくれるのはいい事です。
ところで……。
シロウは、よくエネルギーと例えますが何故ですか?」
「理由はないよ。
訳分からない力を現す表現がないから、エネルギーって言ってるだけ。
『力』とか『燃料』って言ってもいいけど、
エネルギーって言った方が……カッコイイ。」
「それだけですか。」
「悪いな。
期待しているほどの回答がなくて。」
第20話 サーヴァントとアルバイト③
夜の道は、人通りも少なく聖杯戦争の会話をするのに気兼ねなく出来る。
「それで、シロウ。
魔力が質のいいエネルギーというのは?」
「魔術師って、背中に燃料タンクとか背負って戦わないんだろ?」
「はい。
中には居るかもしれませんが……。
見た事ありませんね。」
士郎は、話を続ける。
「魔力ってやっぱり、体内に入れて使うんだろ?
使っても太ったり体積増えたりしないんだろ?
燃料持たなくていいんだろ?
・
・
便利じゃん?」
「まあ、そうですが……。
魔力を生成する度に大きくなられても困りますし。」
「原理は分からんが凄いよな。
だって、体一つあれば、エネルギー練り出せるんだから。
エネルギーなのに場所を取らない。
これは、質がよくないと。」
「それは、質じゃなくて特性なのでは?」
「…………。」
「そうだな……質じゃない。特性だ。」
「もう少し詳しく言えば、
世界や自然に満ちている大源と魔術師の体内で作られる小源です。」
「ん? じゃあ、魔力って、そこら中にあるの?」
「風が吹いたり、海がうねたっりしますよね?
あれらの動きも僅かながら魔力を含みます。」
「世界の様々な力。
太陽が輝く力、海がうねる力、風が吹きゆく力、大地が震える力、生命と時間がめぐる力……。
天のしずく、地のしたたり時のしぶき、生命の露……。
宇宙を満たす力の源からの極僅かずつ、したたり落ちた純粋なエネルギーの塊。
・
・
の事か?」
「微妙に合っている様で、違っている様な……。
知っているのですか?」
「知らない。
DEW PISMってゲームで言ってた言葉を覚えてる範囲で羅列した。
似てたから、それに近いものだと思って。」
「…………。」
「まあ、そう思ってください。」
(近いイメージを持っているのなら、
無理に否定する事もないでしょう。)
…
その後もセイバーは、分かる範囲で士郎に説明をする。
セイバー自身が魔術師ではないため、基本的な事が主になるが、マスターが何も知らないより知っていた方がいいと説明に力が入る。
二人は、そんな話をしながら衛宮邸に向け歩いて行く。
そして、二人には、刻一刻と敵は迫っていた。
後ろから、二人に少女が声を掛ける。
「こんばんは、お兄ちゃん……。」
しかし、士郎とセイバーは、話に夢中になって気付いていない。
先ほど、会話に出ていた強大な魔力の残り香を醸し出す少女に、真剣に説明をするセイバーは、まるで気付いていない。
士郎も後ろからの声に気付いていない。
少女と二人の距離が離れていく。
少女は、無視された今の状態を恥ずかしく思う。
完全に自分の独り言になってしまっていたからだ。
少女は、その場を立ち去る。
そして、『別の機会にする』と拳を握り締めて心に誓った。