<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.7779の一覧
[0] 【ネタ完結】Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~[熊雑草](2009/05/16 02:23)
[1] 第1話 月光の下の出会い①[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[2] 第2話 月光の下の出会い②[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[3] 第3話 月光の下の出会い③[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[4] 第4話 月光の下の出会い④[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[5] 第5話 土下座祭り①[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[6] 第6話 土下座祭り②[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[7] 第7話 赤い主従との遭遇①[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[8] 第8話 赤い主従との遭遇②[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[9] 第9話 赤い主従との遭遇③[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[10] 第10話 後藤君の昼休みの物語[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[11] 第11話 赤い主従との会話①[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[12] 第12話 赤い主従との会話②[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[13] 第13話 素人の聖杯戦争考察[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[14] 第14話 後藤君の放課後の物語①[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[15] 第15話 後藤君の放課後の物語②[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[16] 第16話 後藤君の放課後の物語③[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[17] 第17話 天地神明の理[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[18] 第18話 サーヴァントとアルバイト①[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[19] 第19話 サーヴァントとアルバイト②[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[20] 第20話 サーヴァントとアルバイト③[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[21] 第21話 帰宅後の閑談①[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[22] 第22話 帰宅後の閑談②[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[23] 第23話 帰宅後の閑談③[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[24] 第24話 帰宅後の閑談④[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[25] 第25話 深夜の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[26] 第26話 深夜の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[27] 第27話 アインツベルンとの協定①[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[28] 第28話 アインツベルンとの協定②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[29] 第29話 アインツベルンとの協定③[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[30] 第30話 結界対策会議①[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[31] 第31話 結界対策会議②[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[32] 第32話 結界対策会議③[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[33] 第33話 結界対策会議④[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[34] 第34話 学校の戦い・前夜[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[35] 第35話 学校の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[36] 第36話 学校の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[37] 第37話 学校の戦い③[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[38] 第38話 学校の戦い④[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[39] 第39話 学校の戦い⑤[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[40] 第40話 ライダーの願い[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[41] 第41話 ライダーの戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[42] 第42話 ライダーの戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[43] 第43話 奪取、マキリの書物[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[44] 第44話 姉と妹①[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[45] 第45話 姉と妹②[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[46] 第46話 サーヴァントとの検討会議[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[47] 第47話 イリヤ誘拐[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[48] 第48話 衛宮邸の団欒①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[49] 第49話 衛宮邸の団欒②[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[50] 第50話 間桐の遺産①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[51] 第51話 間桐の遺産②[熊雑草](2010/08/27 00:31)
[52] 第52話 間桐の遺産③[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[53] 第53話 間桐の遺産~番外編①~[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[54] 第54話 間桐の遺産~番外編②~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[55] 第55話 間桐の遺産~番外編③~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[56] 第56話 間桐の遺産④[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[57] 第57話 間桐の遺産⑤[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[58] 第58話 間桐の遺産⑥[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[59] 第59話 幕間Ⅰ①[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[60] 第60話 幕間Ⅰ②[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[61] 第61話 幕間Ⅰ③[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[62] 第62話 キャスター勧誘[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[63] 第63話 新たな可能性[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[64] 第64話 女同士の内緒話[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[65] 第65話 教会という名の魔城①[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[66] 第66話 教会という名の魔城②[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[67] 第67話 教会という名の魔城③[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[68] 第68話 幕間Ⅱ①[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[69] 第69話 幕間Ⅱ②[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[70] 第70話 聖杯戦争終了[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[71] 第71話 その後①[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[72] 第72話 その後②[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[73] 第73話 その後③[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[74] 第74話 その後④[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[75] 第75話 その後⑤[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[76] 第76話 その後⑥[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[77] あとがき・懺悔・本当の気持ち[熊雑草](2009/05/16 02:22)
[78] 修正あげだけでは、マナー違反の為に追加した話[熊雑草](2010/08/27 00:42)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[7779] 第39話 学校の戦い⑤
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/27 00:26
 == Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==



 凛とアーチャーが、階段を駆け上がる。
 そして、セイバーとライダーの戦闘が始まり、セイバーの魔力を強く感じる。
 目的の場所まで近づいた時、踊り場に藤ねえが倒れているのを見つける。


 「藤村先生!」


 凛は、藤ねえに近づくと状態を確認する。


 「先生……。
  ここまで助けを呼びに来たのね。
  ・
  ・
  頬に痣がある。」


 凛が、そっと藤ねえの頬を撫でる。
 しかし、何時までもここに居る訳にもいかない。
 凛は、先を急ごうとする。


 「アーチャー、急ぐわよ。」

 「…………。」

 「アーチャー?」


 アーチャーが、藤ねえを見たまま動かない。
 そして、掌を額に置き苦しんでいる。


 「ちょっと、どうしたの!?」

 「…………。」


 アーチャーが方膝を突く。
 凛は、藤ねえをそっと横たえ、アーチャーに近づく。


 「アーチャー!?」


 凛が、アーチャーの肩を掴み揺する。
 それをアーチャーは、静かに手で制する。


 「……大丈夫だ。」

 「大丈夫って……。」

 「少しだけ記憶が戻りつつあるだけだ……。」

 「え?」

 「おかしいとは思っていた。
  ところどころで彼女を覚えていたし……。
  最初は、世界の制限か凛の召喚のせいかと思っていたが……。」

 「何を言っているの……。」

 「すまない。
  今は、上手く話せない。
  ただ……私の記憶に制限を掛けた者が居るみたいだ。」

 「!」

 (そうだ……。
  私は、自分を衛宮士郎と認識していたはずなのだ。
  だから、ここにいる衛宮士郎が魔術を使えない事に驚いた。
  だけど、それは何故か些細な事と処理していた。
  ・
  ・
  そして……。
  やはり、彼女を強く覚えている。
  それなのに……何故、気付かなかった!?
  彼女は、霊体化していたではないか!?)


 凛が、アーチャーを心配そうに見ている。
 アーチャーは、凛に話し掛ける。


 「凛、少し時間をくれないか?」

 「え?」


 凛は、耳を澄ます。
 依然とセイバーの魔力放出を感じるだけで戦闘の音は聞こえない。
 状況は掴めないが、少しの時間ぐらいなら問題なさそうだった。


 「いいわ。
  でも、なるべく急いで。」

 「分かった。」


 アーチャーは、記憶を辿ろうと目を瞑り集中する。


 「…………。」

 (『……くらを…………った。』
  『…………ヤだって……。』
  ・
  ・
  『そのペンダント貸しときなさい。
   いい? これを返すまで勝手にどっかに行っちゃダメなんだから。』
  ・
  ・
  …………。)

 「…………。」

 「…………。」

 「…………。」


 記憶は、これ以上戻らなかった。
 だが、最後の声は覚えている。
 目の前の少女に他ならない。
 そして……。


 「犯人は、恐らく君か……。」

 「は? わたし!?
  ・
  ・
  やっぱり、わたしの召喚なんじゃない!」

 「すまない……そうではない。
  しかし、これでハッキリしたな。」

 (凛が、ペンダントに細工を施した。
  そして、感じる違和感……。
  あの大師父と関わりを持つ彼女なら出来るはずだ。
  多分、1回限りの限定魔術。
  ・
  ・
  問題は、何故、このような魔術を施したかだが……。
  追々、思い出せば良かろう。
  今は、それよりもやる事がある。)

 「手間取らせてしまったな。
  もう、大丈夫だ。急ごう。」

 「そう……。
  分かったわ。
  行きましょう。
  ・
  ・
  でも、どうして藤村先生を見て思い出したのかしら?」

 「確かに……。」

 (思い出した記憶と一致するものがない。
  状態や状況が私の中の何かを切っ掛けにした?)

 「とりあえず、この事は小僧達には秘密にしてくれ。
  弱点以外の何者でもない。」

 「そうね。」


 アーチャーは、藤ねえを背負うと、凛と一緒に階段を再び上がり始めた。


 …


 セイバーが士郎の左手の治療を始めた頃、凛とアーチャーが駆けつける。


 「遅かったな。」

 「人助けをしていたものでな。」


 アーチャーは、背中からよく知る人物を下ろす。


 「藤ねえ!」


 士郎は、藤ねえに駆け寄る。
 藤ねえの頬に痣がある。
 士郎は、それを凛と同じ様にそっと撫でた。


 「士郎……。
  その痣は……。」

 「分かってる。
  ありがとな。」


 士郎は、凛とアーチャーにお礼を言う。



  第39話 学校の戦い⑤



 異常な事態だった。
 士郎がからかいもせずに、凛とアーチャーにお礼を言った。


 「どうしたの!?」

 「頭でも打ったか!?」

 (酷い言い草ですね……。)

 「ああ、頭をしこたま打った。
  だから、おかしな事を口走っている。
  話をしていいか?」


 士郎以外の三人は、お互いの顔を見合った後、無言で頷く。
 凛は、アーチャーが元通りになっている事も確認する。


 「とりあえず、結界は止めた。
  そして、溶かされた人間(自分)の予想からの今の状態。
  本来の体力の1/4ぐらいが失われていると言える。」

 「数値で出すと分かり易くて助かるわ。」

 「だから、早急に処理が必要だが話す時間はあると判断して、
  事の顛末を語って置く。」

 「ええ、お願いします。
  私達の知らないところで何が起きたのか。」


 士郎は、一息つくと話し始める。
 セイバーは、士郎の服を裂いて作った急場の包帯で止血を続ける。


 「時間がいくら経過しても暴れる形跡が見て取れなかったんで、
  俺は、無理して教室を出たんだ。」

 「「「うっ。」」」


 士郎を除く、三人の顔が強張る。
 士郎は、珍しく気付かず話を進める。


 「遠坂のアドバイスのお陰で覚悟を決めてたせいか、
  周りの人間が気絶している中で、俺は、意識を繋ぎ止めたんだ。」

 「でしょ!?
  わたしのお陰よね!?」

 (いつもと立場が逆だな、凛。)

 「周りは、誰も動かないから異様に静かでさ。
  慎二の笑い声だけ近づいて来た。
  気だるい状態で戦えるか分からないけど、
  セイバー達が駆けつけてくれると思って行動を起こした。」

 (これは、罪悪感がありますね……。)

 (まさか、話が脱線していたとは言えまい……。)

 (でも、あれは士郎に原因があるんだし……。)


 士郎以外の三人は無言で頷き、真実を隠す事にした。


 「慎二は、結界を解いて欲しければ土下座しろと言って来た。」

 「な!」
 「なに!?」
 「あの馬鹿!」


 全員が気絶している慎二を睨む。


 「俺は、直ぐ土下座した。」

 「は?」
 「え?」
 「なんで?」

 「抵抗しなかったのですか!?」

 「しなかった。
  優先すべきは、結界の解除だから。」

 「…………。」

 「その後、不当な要求が続いて自分の手も刺し貫いた。」

 (何事も無い様に……。
  そこは、嘘ですね。
  ・
  ・
  やはり、いつものシロウだ。)


 嘘に気付いているセイバーとは余所に凛とアーチャーは驚いている。


 「あんた、そこまでしたの?」

 「した。
  けど、そこまでしても結界を解かないって言うから、実力行使に出た。」

 「そうか、そこで戦闘になったから、
  ライダーは、我々の前から姿を消したのだな。」

 「ああ、多分。
  偽臣の書を使う事でサーヴァントの魔力を借り受けて攻撃したから、
  直ぐに分かったんだろう。」

 「なるほど。」

 「ただ、慎二自身が魔術を使い慣れてないのと
  攻撃が一直線だったから、躱すのは簡単だった。」

 「当たり前ね。
  魔術は、ただ、便利な物ではないもの。
  修行や知識、絶え間ない研鑽をしなければ発揮出来るはずがないわ。」

 「その通りだ。
  慎二の間合いに入った時、脅して止めるはずだったんだ。
  ・
  ・
  だけど、慎二が学校のみんなを助けようとした藤ねえを
  蹴り飛ばしたって聞いたら、一気に頭に血が上って……。」

 「それじゃあ、藤村先生の痣って……。」

 「俺は、危うく慎二を殺すところだった。
  気が付いて、この刀を慎二の顔の横に突き立てたら、
  慎二が気絶しちまったんだ。」

 「気持ちは分かるけど。
  そうしたら、どうやって結界を解かしたのよ?」

 「ライダーとセイバーが駆けつけて戦闘になるかと思ったら、
  ライダーは、偽臣の書を拾い上げて、
  『これは、お礼です』って、結界を解いて居なくなった。」

 (これも嘘ですね。
  一体、真実は、何なのでしょう?
  そして、何故、ここまで隠すのでしょうか?
  ・
  ・
  シンジを気絶させた件は本当でしょうが……。)


 凛は考え込むと推測を弾き出す。


 「きっと、ライダーは、偽臣の書での縛りを解く事が目的だったんだわ。
  マスターに愛想が尽きたんでしょうね。
  結界を張るのも英霊として許せなかったのよ。」

 「正直分からないが、そんなところだと思う。
  話は、以上だ。
  ここからは、みんなを助けないと。
  俺は、どうすればいい?」

 「士郎は、いいわ。」

 「え?」

 「後は、わたしが何とかする。
  ここからは、魔術師と監督役の教会で何とかするしかないから。」

 「そうか。
  俺は、役に立たないな。」


 凛は、ボソッと声を漏らす。


 「これ以上、士郎に借りは作れないわよ。」


 アーチャーは、その声を聞き取ると苦笑いを浮かべる。


 「そういう事だ。
  手を怪我した小僧は戦線離脱だ。
  セイバー、小僧を労ってやってくれ。」


 セイバーは、凛とアーチャーの言葉に深く頭を下げる。


 「感謝します。」


 そして、セイバーは、士郎を連れ出し帰宅の途に着こうとする。
 そこで、士郎は振り返る。


 「遠坂、頼みがある。」

 「何?」

 「慎二の制裁は、十分とは言えない。」

 「?」

 「ボコボコにしてくれるとありがたい。」


 士郎の言葉に凛の顔が悪魔の微笑みに変わる。


 「任せなさい!」

 (やはり、小僧は小僧か……。
  そして、我がマスターも……。)


 アーチャーは、溜息をついて士郎とセイバーを見送った。


 …


 士郎とセイバーは、家に帰宅する。
 途中、一人で歩けると言った士郎を強引に捻じ伏せ、セイバーが肩を貸しての帰宅だった。


 「本当に大丈夫なのに……。」

 「結界により、体力が落ちているのです!
  それにあれは、人を溶かすものです!」

 (そうだった。
  セイバーは、俺が溶けてないの知らないんだった。
  まあ、いいや。
  その辺も纏めて『アイツ』を含めて話そう。)

 「セイバー。」

 「何ですか?」

 「お腹空いたから、ご飯作っていいか?」

 「…………。」

 「本当に自分主義というか……。
  ええ、お願いします。
  体力の落ちた貴方には、食事こそ重要です。」


 士郎は、料理を始めると手早く昼食を作り上げる。
 そして、テーブルには三人分の料理が並ぶ。


 「一人分多くありませんか?」

 「今、呼ぶ。」

 「呼ぶ?」


 士郎は、懐から偽臣の書を取り出し、兔人参の様に『ヘイ』と言って、5回右手で偽臣の書を叩く。
 暫くすると士郎とセイバーの前にライダーが現界する。


 「ライダー!」


 セイバーは、士郎の前に出て身構える。


 「何してんだ? お前?」

 「何って……。
  ライダーです!」

 「そりゃ、見れば分かるよ。」

 「では、警戒をしてください!」

 「仲間なのに?」

 「そうです!
  ・
  ・
  仲間?」


 疑問符の浮かぶセイバーに変わり、ライダーが話す。


 「マスター。
  偽臣の書の効果は、私とマスターしか分かりません。
  セイバーにも説明を。」

 「分かってる。
  からかっただけだ。」


 セイバーは、とりあえず士郎にグーを炸裂させる。


 「分かる様に説明してください!」

 「セイバー! 自分のマスターを殴るなどと!」

 「ああ、いいんだいいんだ。
  これは、俺達のコミュニケーションだから。」

 (一体、この人達は……。)


 全員、席に着きお茶を一口啜る。


 「あの、マスター……これは?」

 「食事だけど?」

 「我々は……。」

 「その説明も知っている。
  じゃあ、マスターの命令。
  一緒に食べなさい。」

 「仕方ありませんね。」


 説明は、昼食を取りながら始まった。


 「どこから説明して欲しい?」


 セイバーとライダーは、お互い顔を見合わせる。


 「ライダーの事も踏まえ、
  教室で別れた後から真実を話してください。」

 「セイバー、真実とは?」

 「シロウは、共闘したアーチャー達に嘘を伝えました。」

 「そういう事ですか。
  理解しました。
  では、私からもお願いします、マスター。」

 「そのマスターって、嫌だな。
  士郎と呼んでくれないか?」

 「では、シロウと。」

 「発音を変えてくれ。
  読者的に見分けがつかん。
  お前達、話し方が似てるから。」

 「は?」


 よく分からない理由でライダーは、強制的に呼び方を修正させられた。


 「実はな。
  今日の戦いで幾つか分かった事があるんだ。
  まず、結論から言うけど、俺は、結界で溶けてないんだ。」

 「え?」

 「馬鹿な!
  シロウ、貴方は、魔術師ではない!
  結界が効かない訳はありません!」


 そこで士郎は、天地神明の理を出す。


 「この天地神明の理……。
  使用者を擬似的な魔術師に変える事が出来る。」

 「本当ですか!?」

 「そのようなものを所有していたとは。」

 「今日、初めて知ったんだ。
  セイバーとの模擬戦をしてから、変な感覚はあったんだ。
  でも、分からないから無視してた。
  やって見せるよ。」


 士郎は、集中して天地神明の理を握り、魔術回路の線を繋ぐ。


 「OKだ。
  手を握って見てくれ。」


 士郎の手をセイバーとライダーが握る。


 「本当だ。
  一本だけ主張している魔術回路がある。」

 「しかし、魔力が流れていません。
  本当に、ただ繋がっているだけです。
  普通、魔術師は魔力を流して回路を認識すると言うのに。」

 「やっぱり、この線は魔術回路か。」


 士郎が天地神明の理を放すと魔術回路は閉じてしまう。


 「今の要領で擬似魔術師になった俺は、結界で溶けずに済んだんだ。」

 「偶然とはいえ……。」

 「何と運のいい。」

 「でもな……結界は、魔力を取ろうとするだろ?
  俺は、魔力を作れないし送れない。
  そうしたら、セイバーに行っている魔力を
  結界とセイバーで取り合いになっちゃってさ。
  放電しっぱなしだったんだ。」

 「それぐらいのリスクはあるでしょう。」

 「何事も思い通りにはいきません。」

 「で、動かなければ放電は酷くないから、
  事態が収拾するの待とうと思ったんだけど。
  ・
  ・
  何かイヤな予感がして行動を起こした。
  第2段階の予兆もなかったし。」


 セイバーは、視線を斜め下に移している。
 事の理由を知らないライダーが質問する。


 「その第2段階とは?」

 「俺達は、結界を止めるために慎二を少し泳がせた後、
  第2段階で大暴れして慎二に恐怖心を刻み付けて、
  ライダーに慎二まで案内させるつもりだったんだ。
  結界を解けって命令出来るの慎二だけだと思ったから。」


 ライダーは、額に手を当て俯いている。


 (破綻していますね、その作戦は……。
  セイバーの名誉のために黙って置きましょう。)


 ライダーは、あえて問わず先を促す。


 「続きをお願いします。」

 「廊下に出ると慎二の笑い声がしたから、
  廊下の真ん中で待ってたんだ。
  それで慎二が来たから、とりあえず説得してみた。」

 「慎二は、説得の効く人物ではないと認識していますが?」

 「その通りだった。
  土下座して恥の上塗りまでしても、
  言う事を聞いてくれなくて戦闘になった。」

 「土下座したのは、本当だったのですか?」

 「ああ。
  俺、土下座するのに
  なんの抵抗も感じないタイプの人間だから。」

 (騎士である私の主は、土下座が平気……。)

 (プライドが低いのですね……。)

 「で、ここで、また、誤算が起きたんだよな。」

 「また、ですか?」

 「そう。
  しかも、また、天地神明の理絡み。」


 三人の視線が、士郎の刀に移る。


 「これさ。
  擬似魔術師の時、魔力吸収出来るんだよ。」

 「「!!」」

 「こればかりは、俺も度肝抜かれた。
  で、慎二の訳分からん魔術の攻撃を吸収したんだ。
  そうしたら、体の放電が止まった。」

 「シロウ、その刀は、何かの宝具ではないのですか?」

 「ありえますね。
  魔力を吸収するなど、普通の刀剣類にはありえません。」

 「そうかもな。
  ただ、宝具としては攻撃するものではなく、
  明らかに護身用って感じだけどな。
  ・
  ・
  でも、人間の俺が使えるんだから、大した効果は期待出来んぞ。」

 「ふむ。
  武器としては、期待出来ませんね。」

 「しかし、マスターを護身するものと考えれば十分な効果です。」

 「ま、使い道は、追々という事で。
  話の続きな。
  ・
  ・
  慎二の魔力を吸収したのってさ。
  結果的には、ライダー→偽臣の書→俺という流れで
  ライダーの魔力を取り込んだ事になると思うんだ。
  で、結界の効果は、ライダーの魔力を権限として、
  俺を対象から外したんじゃないかって考えてる。」

 「士郎、あなたは鋭いですね。
  その通りです。
  結界自体は、生き物ではないため、
  高度な思考能力など持ち合わせていません。
  判断基準は、魔力の性質です。
  慎二は、偽臣の書により、私の魔力性質を持っていたため、
  結界内で自由に動けたのです。」


 士郎は、予想通りの答えに自信を持つと説明を続ける。


 「自由を手に入れた俺は、慎二を追い詰めて、
  ライダーに命令させるだけだった。
  ・
  ・
  ところがさ~。
  恐怖で命令きかせようと天地神明の理を顔の横に突き立てたら、
  気絶しちゃうんだよ。」

 「慎二は、ヘタレですから。」


 ライダーが、苦々しく呟く。


 「起こそうと思ったら、ライダーが来るし。
  結界発動してから時間は経つしで……。」

 「しかし、私も予想外でした。」


 ライダーは、事実を告白する。


 「まず、不意打ちであなたを仕留めるはずが躱された事。
  もう一つは、既に慎二があなたの下に居た事です。」

 「そうか。
  シロウの躱す技術は、サーヴァントを含め全てにおいて予想外の技術でした。
  それにシンジが、シロウの下に居る事は人質を取られたも同じ。」

 「その通りです。」

 「でも、慎二の命は、どうでもいいような事を……。」

 「あれは、慎二を……マスターを守る最後の抵抗です。
  あなた方は、結界を気にしているようでしたので、
  ああ言えば慎二の使用価値が残るため、殺されないと思ったのです。」

 「嘘かよ!
  じゃあ、あのまま強引に進めれば、結界を解いてくれたのか!?」

 「はい。」

 「シロウを出し抜くとは……。
  しかし、あの時のシロウは焦っていた。」

 「言われてみれば、そうだ。
  こっちの方が、人数も多いし人質も居るんだ。
  何を俺は、あんなに焦ってたんだ……。
  ・
  ・
  いや、焦るか……。
  溶解してしまうんだから。」

 「士郎、問題は、その後です。
  結果を見れば分かりますが、あなたは、何をしたのですか?」


 ライダーが、納得いかないという顔をする。


 「あなたが、慎二からマスターの権限を奪ったのは分かります。」

 「え!? シロウ!?」

 「だから、言っただろう? 仲間だって。」

 「セイバーの話なら、あなたは、魔術師ではない。」

 「その通りだ。」

 「そのあなたが呪文を詠唱した。
  これは、どういう事なのです?」

 「そういえば、『3分』時間を稼ぐというのも分かりません。
  偽臣の書を3分で解読など出来る訳がない。」

 「その通り。
  あんなミミズの這い蹲ったような訳の分からんものは解読出来ん。
  セイバーは、俺が横文字ダメなの知ってるもんな。」

 「ますます、分かりません。」

 「俺が使ったのは、
  『一夜漬けをしないで行うテスト前の解読』の定理だ。」

 「何か……前にも同じ様な事を聞きましたね。」

 「頭のいい優等生は、どうか分からんが、
  俺のように頭の悪い奴は、1点でも落とすと赤点という危機に陥りかねん。」


 セイバーは、ライダーにそっと耳打ちする。


 「覚悟してください。
  必ず脱力します。」


 ライダーは、疑問符を浮かべて話を聞く。


 「時間がない中で予想と傾向を判断するため、
  まず、最初から最後まで流し読みをする。
  そうすると大体の行間やページ数で重要なところがどこか予想がつく。
  特に偽臣の書は、作者が同じだからパターンのバラつきは少ない。」

 「え?」

 (ライダーの反応は、昨日の私ですね……。)

 「大方の傾向を頭に入れつつ2度目の流し読み。
  ここで重要なのは、『挿し絵』と『慎二のコメント書き』。
  俺は、『挿し絵』と『コメント書き』に全部折り目を付けたんだ。」

 「一体、何を言って……。」

 (分からないですよね。
  私も2度目ですが、未だにサッパリです。)


 士郎は、偽臣の書を開き指で差す。


 「こことこことここ。
  この絵から偽臣の書へのアクセスには、血液が必要と読み取れる。」

 「読み取れる?」

 ((読み取れません。))

 「更にマスターの権限を譲渡するには、血液の量と呪文が必要と判断出来る。」

 「判断出来る?」

 ((こんな絵だけで?))

 「この変な絵は、血液の量が一定量越えたら何か起きるっぽい。」

 「っぽい?」

 ((勘ですか!?))

 「以上を予想した上で実行したら……何か起きた。」


 セイバーとライダーは、頭を抱える。


 「デタラメだ……。」

 「こんな馬鹿な……。」

 「で、最後の呪文は、傾向で予想したページの……。
  ここの折り目の『慎二のコメント』が、日本語で書いてある。」

 「まさか……。」

 「そう。
  俺は、これを読み上げただけだ。
  多分、これはパスワードの類だと思う。」


 セイバーとライダーは、悪夢に魘されたように頭を抱え込んでいる。


 「どうした?」

 「セイバーからの助言で覚悟はしていましたが、
  これは、遥か斜め上を行く……。」

 「私は、あの時、こんないい加減なものを信用したのか……。」

 「まるで重度の高熱にでも掛かったようです。」

 「しかも、成功したから余計に性質が悪い。」


 セイバーは、偽臣の書を手元に引き寄せる。


 「ライダー、読めますか?
  私は、少しの文字や単語が分かる程度です。」

 「私も似たようなものです。
  確かに知っている単語や文字は、
  士郎の言った通りの意味をしているものです。」

 「と、いう事があって、
  ライダーは、めでたく俺のサーヴァントになった。
  分かったか?」

 「「分かりません。」」

 「仕方のない奴等だな。
  しょうがない初めから……。」

 「もう、いいです!」
 「結構です!」

 「納得してないんじゃないの?」

 「納得はしていません。」

 「しかし、世の中には納得していなくても、
  受け入れなければいけない現実があるのだと
  痛感させられたところです。」

 「人は、そうやって大人になっていくもんだ。」

 (その成長した大人は、間違いなく破滅の人生を歩むでしょう。)


 何はともあれ、学校の戦いは終わりを迎え、ライダーという新たなサーヴァントを獲得した。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.030334949493408