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No.7779の一覧
[0] 【ネタ完結】Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~[熊雑草](2009/05/16 02:23)
[1] 第1話 月光の下の出会い①[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[2] 第2話 月光の下の出会い②[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[3] 第3話 月光の下の出会い③[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[4] 第4話 月光の下の出会い④[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[5] 第5話 土下座祭り①[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[6] 第6話 土下座祭り②[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[7] 第7話 赤い主従との遭遇①[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[8] 第8話 赤い主従との遭遇②[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[9] 第9話 赤い主従との遭遇③[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[10] 第10話 後藤君の昼休みの物語[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[11] 第11話 赤い主従との会話①[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[12] 第12話 赤い主従との会話②[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[13] 第13話 素人の聖杯戦争考察[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[14] 第14話 後藤君の放課後の物語①[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[15] 第15話 後藤君の放課後の物語②[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[16] 第16話 後藤君の放課後の物語③[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[17] 第17話 天地神明の理[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[18] 第18話 サーヴァントとアルバイト①[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[19] 第19話 サーヴァントとアルバイト②[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[20] 第20話 サーヴァントとアルバイト③[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[21] 第21話 帰宅後の閑談①[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[22] 第22話 帰宅後の閑談②[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[23] 第23話 帰宅後の閑談③[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[24] 第24話 帰宅後の閑談④[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[25] 第25話 深夜の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[26] 第26話 深夜の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[27] 第27話 アインツベルンとの協定①[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[28] 第28話 アインツベルンとの協定②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[29] 第29話 アインツベルンとの協定③[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[30] 第30話 結界対策会議①[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[31] 第31話 結界対策会議②[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[32] 第32話 結界対策会議③[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[33] 第33話 結界対策会議④[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[34] 第34話 学校の戦い・前夜[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[35] 第35話 学校の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[36] 第36話 学校の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[37] 第37話 学校の戦い③[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[38] 第38話 学校の戦い④[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[39] 第39話 学校の戦い⑤[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[40] 第40話 ライダーの願い[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[41] 第41話 ライダーの戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[42] 第42話 ライダーの戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[43] 第43話 奪取、マキリの書物[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[44] 第44話 姉と妹①[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[45] 第45話 姉と妹②[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[46] 第46話 サーヴァントとの検討会議[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[47] 第47話 イリヤ誘拐[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[48] 第48話 衛宮邸の団欒①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[49] 第49話 衛宮邸の団欒②[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[50] 第50話 間桐の遺産①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[51] 第51話 間桐の遺産②[熊雑草](2010/08/27 00:31)
[52] 第52話 間桐の遺産③[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[53] 第53話 間桐の遺産~番外編①~[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[54] 第54話 間桐の遺産~番外編②~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[55] 第55話 間桐の遺産~番外編③~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[56] 第56話 間桐の遺産④[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[57] 第57話 間桐の遺産⑤[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[58] 第58話 間桐の遺産⑥[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[59] 第59話 幕間Ⅰ①[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[60] 第60話 幕間Ⅰ②[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[61] 第61話 幕間Ⅰ③[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[62] 第62話 キャスター勧誘[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[63] 第63話 新たな可能性[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[64] 第64話 女同士の内緒話[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[65] 第65話 教会という名の魔城①[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[66] 第66話 教会という名の魔城②[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[67] 第67話 教会という名の魔城③[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[68] 第68話 幕間Ⅱ①[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[69] 第69話 幕間Ⅱ②[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[70] 第70話 聖杯戦争終了[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[71] 第71話 その後①[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[72] 第72話 その後②[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[73] 第73話 その後③[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[74] 第74話 その後④[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[75] 第75話 その後⑤[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[76] 第76話 その後⑥[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[77] あとがき・懺悔・本当の気持ち[熊雑草](2009/05/16 02:22)
[78] 修正あげだけでは、マナー違反の為に追加した話[熊雑草](2010/08/27 00:42)
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[7779] 第45話 姉と妹②
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/27 00:28
 == Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==



 士郎は、1時間ほどの仮眠の後、臓硯の手記を見直していた。
 手元には、別のノートを置きメモを入れていく。


 「記号の意味が分かって来た。
  本棚の本と対になっているんだ。
  文字が分からないから、形だけで判断した結果、
  章は18に分かれて、それぞれ5項目で纏めてる。
  90冊の本は、そこに関係がある内容なんだろう。
  と、なると、数字の方はページか?
  いや、目次の章番かも……。
  でも、位置を表しているはずだ。
  ・
  ・
  後は、18章に分かれてる本の各章が、何を記しているか判断しないと。
  例によって絵だけで判断か……。
  臓硯の書物だから、コメントもないし。
  とりあえず、この本のリストと手記を関連付けられるようにしよう。
  ・
  ・
  リストにメモを入れるのは、いいだろう。
  間違っているのは、しょうがない。
  勘なんだし。」


 士郎は、一息つく。
 関連付け出来ない本が7冊残ったが、挿し絵も少なく判断がつかなかった。



  第45話 姉と妹②



 士郎は、挿し絵の速読を繰り返してリストを完成させていく。


 「この手記で記号が使われ出したのは、ここ50年ってとこだな。
  つまり、50年前にある程度の完成形が出来ていたんだ。
  子孫に伝えるために纏めた資料かな?
  でも、挿し絵が多いという事は、何かを伝授するためのものだよな?
  ・
  ・
  となると本当の秘伝は、残された7冊にこそ書いてあるんだろう。
  ただ、この7冊……それほど古くない。」


 士郎は、更に速読を繰り返し数時間の後、リストを完成させた。


 …


 改めてリストを確認し、人体修正に関する本を手に取り確認する。


 「俺は、馬鹿だ。
  軽い想像で桜に声を掛けちまった。
  これは想像を絶するものだ。
  ライダーが激怒するのもおかしくない。
  ・
  ・
  『蟲を支配する』『蟲を退治する』これを纏めた本を重点的にリスト化するべきだな。」


 士郎は、件の本を詳細にリスト化する。
 そして、士郎は、ここでペンを置く。


 「居間に戻るか。
  遠坂に連絡を入れないと。
  残り7冊の解読は、もう、俺じゃあ無理だ。
  悠長に待っていられない……よな。」


 士郎は立ち上がり、血が足りているか確認する。
 続いて気持ちを切り替える。
 桜を見る目が、ライダーみたいになっては困る。

 士郎は、自分の部屋から出て居間へ向かった。


 …


 居間の方から懐かしい音楽が聞こえる。
 これは何だったかと、士郎は、首を傾げ障子を開ける。
 そして、頭を押さえる。


 「サーヴァントが、スーパーファミコンしてる……。
  なんで、そんな古いものを……。
  ・
  ・
  いや、なんで、こんな展開になった!?」


 士郎の声にセイバー達が振り向く。


 「何をしているんだ、お前達は?」

 「『ミニ四駆 シャイニングスコーピオン レッツ&ゴー!!』です。」

 「そうでじゃない!
  なんで、テレビゲームなんかしてるんだ!?」

 「シロウが、居間で寛げと?」

 「そうだった……。
  言ったの俺だった。」

 (しかし、この展開を誰が予想出来る?
  ・
  ・
  そうだ!
  こういう時は、冷静なライダーに聞けば……。)


 士郎は、ライダーに事情を聞こうとする。


 「ライダー……。
  ・
  ・
  服が!」

 「ああ、士郎。
  今、気付きましたか?」


 ライダーは、黒いトレーナーに黒いジーンズを履いている。


 「なんだ!? 何が起きたんだ!?
  俺が知らない間に、なんでコイツらは、こんなに馴染んでいるんだ!?」


 混乱する士郎。
 桜も苦笑いをしている。
 士郎を無視して、セイバーが桜に話し掛ける。


 「この設定でいいのですか? 桜?」

 「あ、はい。
  よく分からないので……。」

 「そうですか。
  では、パスワードを。」


 セイバーは、パスワードをメモに取るとリセットを押し、フリーバトルのモードに移行する。
 そして、パスワードを入力する。


 「まず、私のものを
  『ゃ¥っめのまっえゃとるいに*ひとぬもこく
   っけきほふ%ゆぅゅぇしのっきえぅぇぅいり
   ふ&%はい$かにきてろれく!』
  ・
  ・
  続いて、ライダーのものを
  『わなぉ¥-せらわみ$まめぃやまにてゆやゆ
   つなんをゅぉ?さにねもさ&きるむ¥ぁなょ
   し&より&りみみふ&にきっそ』
  ・
  ・
  そして、最後に桜のものを
  『うまへたゅは$やゃぅょ&しけもぬおっさす
   *ろ!くませくけりてとへまみよてしら&う
   まゅやゅ$りちね!うこぇさり』
  ・
  ・
  よし!」

 「『よし!』じゃねー。」

 「シロウもやりますか?」

 「やらん!
  なんで、こんなに緩んでるんだ!?」

 「今日ぐらい、ゆっくりすべきです。
  シロウも血を作らなければいけませんし。
  ・
  ・
  シロウは、誰が勝つと思いますか?」

 (やる気満々だな、セイバー。)

 「じゃあ、レイスティンガーで。」

 「フ……浅はかな。
  我々は、スーパーグレートジャパンカップを制した猛者ですよ?」

 (いや、それ俺のセーブデータだから。
  それにこのゲームって、ストーリーモードとフリーバトルモードを
  同じに考えるとエライ事になるはずだけど。
  ぶっ飛ぶはずだ……コースアウトして……。)


 テンションがハイのセイバーは、スプリングカップのコースを選択する。


 「何か賭けてるのか?」

 「特に何も。」

 「そうか。」

 (それがいい。)

 「ふむ。
  それも面白い。
  罰ゲームを設けましょう。」

 「は?」
 「え?」


 ライダーと桜は、少し嫌そうな顔をする。


 「おや?
  ライダーは、クラスが騎兵のくせに逃げるのですか?」

 (煽るな、セイバー!)

 「セイバー、あなたには少し痛い目を見せる必要がありそうですね。」

 (お前も乗るな、ライダー!
  そんな安い挑発!)

 「やめませんか?
  ゲームですし……。」

 「俺も桜の意見に賛成。」

 「たかがゲームです。
  罰ゲームも、そんなに酷いものではありません。」

 「お前が決めるのか?」

 「そうですね……。
  負けた者は、さっき入力したパスワードを
  次にこの家を訪れた者の前で叫んで貰いましょう。」

 「ハードル高いぞ!」

 「いいでしょう、セイバー。
  私のトライダガーZMCで叩き潰して差し上げましょう。」

 「わたしは、やりたくないのに……。」

 (珍しいな。
  ライダーが桜を無視なんて。)

 「では、私が、シャイニングスコーピオン。
  ライダーが、トライダガーZMC。
  桜が、セイバー600。
  ・
  ・
  桜は、良い名前のボディを選んだ。」

 (じゃあ、お前が選べばいいじゃんか。)

 「そして、シロウが、レイスティンガー。」


 士郎は、吹き出す。


 「俺も加わるのか!?」

 「はい。
  シロウは、COMのマシンを選択したので、
  負けた時の罰ゲームは、我々のパスワードを全て叫んで貰います。」

 「…………。」

 「俺だけ、不当な扱いじゃないか?」

 「では、始めます。」

 「軽く流された。」

 (凄いですね、セイバー。
  ここまで主を無視するサーヴァントも珍しい。)

 (セイバーさんって……なんで、衛宮先輩より偉そうなんだろう?)


 …


 そして、開始されるレース。
 ……2周目。
 そこには、レイスティンガーしか走っていなかった。


 「馬鹿な!?」

 「わたしのトライダガーZMCが!?」

 「みんな飛んじゃった……。」

 (やっぱりな……。)


 愕然として項垂れる、セイバー、ライダー、桜。


 「まあ、自業自得という事で。
  罰ゲーム頑張ってくれ。」


 そして、都合よくなるインターホン。


 「なんて間の悪い……。」

 「これでは、誤魔化す事も出来ない……。」

 「セイバーさん、往生際が悪いです……。」


 どうしたもんかと士郎は、玄関に向かった。


 …


 訪れた客は誰かと士郎は考える。
 一番先に浮かんだのは藤ねえだったが、病院に運ばれているはずの藤ねえが訪ねて来るのはおかしい。
 そもそも藤ねえは、インターホンを押さない。


 (イリヤかな?)


 イリヤと別れた時の自分の『いつでも来てくれ』という言葉を思い出す。
 しかし……。


 (イリヤもインターホン押さないな。
  堂々とバーサーカーと不法侵入してたし……。)


 考えながら玄関に辿り着くと赤い影が見える。


 (遠坂か。
  電話でいいのに。
  わざわざ経過を教えに来てくれたのか。)


 士郎は、玄関の扉を開ける。


 「よう、遠坂。」

 「話があって来たの。」

 「そうか。
  まあ、ここではなんだし。
  あがってくれ。」

 「ええ、そうさせて貰うわ。」


 居間に案内しながら、士郎が話し掛ける。


 「学校の方は?」

 「全て終わったわ。
  重傷者は、全て治療したから命に関わる人は居ないわ。
  後処理も任せて来たから。」

 「よかった。
  悪いな、わざわざ報告に来て貰って。」


 士郎の言葉に凛は、立ち止まる。
 そして、居間の障子の前で二人は静止した。


 …


 居間の中では、セイバー達が揉めていた。


 「遂に障子の前まで来てしまいました。」

 「セイバーが、あのような罰を設けるから。」

 「本当にやるんですか?」

 「このままやめては、シロウに何と言われるか。
  私は、罰が更に重いものになると思います。」

 「まったく、厄介な主従ですね。」


 内側の三人は、静かに罰執行を待った。


 …


 立ち止まり黙りこくってしまった凛に士郎は、疑問符を浮かべる。


 「どうしたんだ?」

 「話は、事後処理の報告じゃないの。」

 「他に何かあったか?」


 凛は、士郎に頭を下げる。


 「士郎に頼みがある。
  これは、完全なわたしの我が侭。」


 士郎は、予想外の展開に焦り出した。


 …


 居間では、三人が息を潜め続ける。
 しかし、桜が俯いている。
 表情には、不安や焦りが見える。
 その様子にセイバーが声を掛ける。


 「桜、どうしたのですか?」

 「遠坂先輩が……。」

 「リンの事ですか?」

 「どうして、ここに遠坂先輩が来るんですか?」

 「リンは、今、私達と協力関係にあります。
  本来は、学舎の結界を止めるまでのものでしたが……。」


 ライダーは、口を閉ざしていた。
 ライダーは、凛と桜の関係を知っている。
 桜の過去を夢に見たからである。
 プライベートのため、口にはしていない。
 あの家で桜を支えていた存在が凛であり、待ち続けていた人物である事も知っている。
 それ故に、凛の本心を桜が怖がっているのを知っている。
 『自分をどのように思っているのか?』
 『勝手な期待をしていたのは、自分だけではなかったのか?』
 『凛は、自分を見捨ててしまったのではないか?』
 ライダーは、直ぐにでも手を差し伸べたかったが我慢する。
 桜は、凛との対峙を真正面から受け止めなければいけない。
 それによって傷ついたとしても……。
 これは、桜の戦いなのだから。

 居間では、セイバーだけが事態を把握出来ないでいた。
 セイバーは、桜とライダーの心情を僅かに感じ取ると静かに事態を見守る事にした。


 …


 未だに頭を下げ続ける凛に、士郎は困惑する。
 こういう展開には慣れていない。


 「話、聞くからさ。
  頭を上げてくれないか?
  もし、ずっとそのままなら頼みは聞かない。」


 凛は、頭を上げる。
 そして、視線を下にしたまま話し出す。


 「結界の事後処理の後、直ぐに間桐の屋敷に行ったの。
  状況から考えて間桐のマスターは、
  サーヴァントに守られていない状態だと思ったから。」

 (俺達と入れ違いか。
  事後処理をした後だから、遠坂の方がずっと後だけど。)

 「でも、そこには倒すべき敵は居なかった。」

 (ライダーが暴れた後だからな。)

 「…………。」


 凛は、押し黙っている。
 唇を強く噛み締めた後、会話を続ける。


 「本当は、そこには、もう一人居た……。」


 凛の言葉は、居間の桜にも届いている。
 桜は、俯きながらスカートを握り締めて凛の言葉を待っていた。


 「わたしの聖杯戦争の報酬……。」

 「なんで、報酬なんだ?」

 「わたしの魔術は、桜のためにあって……。
  何もなかった聖杯戦争での願いに願いが出来た……。」

 「なんか日本語がおかしくないか?
  順序だってないというか……お前、大丈夫か?」


 いつもの覇気がない凛に、士郎は疑問を持つ。


 「大丈夫じゃ……ないかな。
  自分が、こんなに脆いものだなんて思わなかった。」


 士郎は、溜息をつくと頭をガシガシと掻く。
 このままでは、内容が分からないと凛を誘導する事にした。


 「まず、ハッキリさせたいんだけど。
  間桐 桜と聖杯戦争は、本来、別の事だったんだな。」

 「ええ。」

 「じゃあ、聖杯戦争の報酬が、間桐 桜というのは?」

 「桜を取り戻す事だった。」


 凛は、どんどん暗くなっていく。
 立て直したはずの気持ちは、早くもグラつき始めていた。


 (『だった』過去形。
  遠坂は、屋敷の痕跡を見て、桜が死んだと思ったのか。
  ・
  ・
  よく考えれば、あれは、そういう痕跡だな。
  誰も残って居ないし。)

 「その『取り戻す』って?
  まるで間桐 桜が、遠坂のものみたいじゃん?」

 「桜は……わたしの妹。
  ・
  ・
  遠坂 桜が、本当の名前よ!」


 抑えていた感情が、最後に爆発した。
 潮らしく振舞うなんて自分らしくないと本来のスイッチが入る。


 「桜と別れたあの日から、魔術を修練して来た。
  今のわたしじゃ無理でも、いつか力をつけて臓硯から桜を取り戻すんだって!」

 (なんだ!?
  急に怒り出した!?)

 「なのに!
  どっかの馬鹿が、桜をこ……。」


 士郎に掴み掛かる勢いは、一瞬で消え失せる。
 冷静を保とうとしても頭の中はぐちゃぐちゃだった。
 言葉も喜怒哀楽も支離滅裂になっている。
 どんなに取り繕うと最愛の人を失った衝撃を十代の少女の感情では抑え切れなかった。


 「殺し…ちゃった……。」


 凛は、床に蹲ってしまった。
 代わりに士郎の前にアーチャーが現界する。


 「すまんな、小僧。」

 「なんと言えばいいか……。」

 「私が馬鹿だった。
  どんなに優秀な魔術師でも、凛は、まだ、大人になりきっていない。
  心の整理をつけさせるべきだった。」

 「妹が亡くなったのか?
  ・
  ・
  ちょっと、待った!」


 士郎の言葉に答えようとするアーチャーに静止を掛けて整理する。


 (確かライダーの話では、桜は養子だ。
  そして、遠坂の話では、桜は妹。
  ・
  ・
  つまり、遠坂家から出された桜を再び取り戻そうとしていた訳だ。)


 士郎は、事態を把握してアーチャーに話し掛ける。


 「事態は、飲み込めた。
  少し遠坂と話させて貰っていいか?」

 「構わん。
  しかし、いつもの調子で凛を傷つけるような時は容赦しない。」

 「信用ないな……。
  了解だ。
  遠坂を傷つけるような事はしない。」


 凛を見ると蹲ったまま、小刻みに震えている。
 士郎は、ハンカチを凛に渡す。
 凛は、それを受け取ると涙を拭いて士郎を見上げる。
 士郎は、目線を合わすために廊下に胡坐をかいて座り込んだ。


 「遠坂って、根源を目指すためだけに
  魔術師になったんじゃないんだな。」

 「始めは納得してた。
  魔術師になって遠坂家の悲願を達成するんだって。
  ・
  ・
  でも、おかしいのよ。
  魔術師だからって桜を手放すのは……。
  ・
  ・
  あの時、わたしは子供で父に逆らう事も出来なかった。
  流されるままに桜を取られて無理やりに納得してた。
  本来、跡目にしか伝えない魔術の奥義を
  桜が、間桐の家で伝授される事が出来るって。
  ・
  ・
  でも、時が流れるうちに桜は暗くなっていった。
  わたしは、それが許せなかった。
  大好きな妹が、どんどん別人のようになっていく。
  慎二に虐められているのも何度も目にした。
  だから、わたしは、桜を取り戻す事を決意した。
  そのためには、間桐 臓硯より、優秀な魔術師になる必要があった。」

 「そうか。
  根源を求める事から、妹を取り戻す戦いに変わったのか。
  話し合いで済まなければ実力行使……。」

 (実力行使というのが遠坂らしい。)

 「話し合いで解決しないのは分かっていたわ。
  だから、ひたすらに魔術を極めないといけない事も。
  でも、魔術を知れば知るほど、目指す高みも敵の実力も遠く感じるようになった。」

 (アーチャーが心配するまでもなく、とても茶化す雰囲気じゃない。
  ・
  ・
  桜の言っていた『正義の味方』って、遠坂の事だったんだな。)

 「魔術は、一朝一夕で直ぐに身につくものじゃない。
  十数年の修練でも、間桐 臓硯に勝てるなんて見込みはなかった。
  そんな時、いつもより早い周期で聖杯戦争が開始された。
  サーヴァントを得れば勝てると思った。」

 「遠坂の聖杯戦争には、そんな意味も含まれていたのか。」

 「ええ。」


 会話がいつもの凛のペースに戻る。
 気持ちが少し落ち着いて来た事もあるが、自分の中の溜め込んだ気持ちを少し吐き出したのが気を楽にさせた。


 「遠坂は、自分の時間を桜のために費やして来たんだな。」

 「士郎……。」

 (セイバーは、国のために……。
  ライダーは、桜のために……。
  桜は、誰も傷つけないために……。
  遠坂は、桜……妹のために……。
  ・
  ・
  この聖杯戦争は、みんな誰かのために戦っているんだな。
  これは、偶然なのか?
  戦いに野心が見えないなんて。
  あっ、イリヤは野心があった。
  俺を殺そうとしてた……。)

 「桜もきっと、同じ時間だけ遠坂を思っていたよ。」

 「やめてよ!
  今、そんな事言われたら、また……。」

 「そうじゃない。
  桜は、生……。」

 「やめてったら!」

 「いや、だから。
  桜は、生……。」

 「やめてったら!
  ・
  ・
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 士郎が、桜の生存を伝えようとするが、凛が遮るという無限ループが発生する。
 士郎は、いい加減うんざりして切り上げる。
 そして、代わりにアーチャーに話し掛ける。


 「アーチャー、あのさ……。」

 「小僧。
  私に言った事を覚えているか?
  『容赦しない』と。」

 「俺の言う事は、最重要の事なんだが……。」

 「貴様に選択の権利はない!
  全ての話が終わってからにしろ!」

 「……なんでさ。」


 士郎は、少しやさぐれた。


 …


 居間では、桜が泣いていた。
 姉は、自分を忘れていた訳ではなく自分のために時間を費やし努力を重ねていたからだ。
 そして、その側で二人のサーヴァントは、頭を押さえていた。


 「セイバー、士郎は、正しい事を伝えようとしているのに
  何故、ここまで足蹴にされるのです?」

 「シロウと関わった者の2次災害と言うべきでしょうか?
  普段、デタラメな事をしているので信用がないというか……。
  また見当違いな事を言い出すのではないか不安というか……。」

 「そうでしょうか?
  私と桜に対しては、誠意ある態度を取ってくれたように思えます。」

 「…………。」

 「そうですねぇ……。
  『蜂蜜』という言葉を聞けば、思い当たる節があるのではありませんか?」

 「……あれですか。
  非常に納得です。」

 「あの行動は、敵味方問わず混乱を招きました。
  生前、戦において、あの様な得体の知れない戦術を取る者は居ませんでした。」

 「本当は、いい話をしていると言うのに……。」


 セイバーとライダーは、士郎の事は、放って置く事にして桜をなだめ始めた。


 …


 士郎は、だんまりを続けた。
 何故か、この場には、自分の意思を主張する機会が与えられないからだ。
 アーチャーに睨まれながら、凛が落ち着きを取り戻して話しをするのを待ち……待たされ続けた。


 「ごめん、落ち着いた。
  でも、今は、そういう話はなしで、お願い。」

 「ああ、分かった。」

 (桜の死を受け入れられないのは分かるけどさ。
  彼女、死んでないんだよ……。
  この一言を言えれば、万事上手くいくのに。)

 「それで、一番初めに言っていた事に戻るけど。
  士郎に折り入って頼みたいの。
  ・
  ・
  キャスターとライダーを探すのを手伝って欲しい。」

 「復讐か?」

 「そう。
  戦いの痕跡から犯人は、このクラスしか考えられない。
  そして、探すなら人数が多い方がいい。」

 「う~ん。」

 (なんて言えばいいんだろう?
  犯人も経緯も全部知っているのに……。)


 士郎は、どう伝えようか悩んでいたが、赤い主従には断る理由を考えているように見えた。


 「士郎、これは、被害を減らす事でもあるのよ。
  犯人がライダーなら、恐らくマスターを殺している。
  マスターの魔力供給がない以上、人間を襲い出すわ。」


 …


 居間では、ライダーがセイバーを問い詰めていた。


 「何故、私が見境いのない血に飢えた野獣の様な扱いを受けているのですか!?」

 「シロウのせいです。
  シロウは、リンにライダーを手駒にした事を言っていません。
  その場凌ぎの嘘で、ライダーが偽臣の書を奪って
  自由を手に入れたという事にしてしまったのです。」

 「これが、2次災害ですか……。」


 ライダーは、がっくりと項垂れる。


 「もちろん、戦略的な要素もあると思います。
  一時的に協力関係にあるとはいえ、
  リン達とは、いつか敵同士になるのですから。」


 セイバーは、ライダーにフォローを入れて場の空気を落ち着かせようとした。


 …


 士郎を凛とアーチャーが睨みつけ返答を待つ。


 「話は、それで全部か?」

 「ええ、後は、あなたの返答次第よ。」

 「アーチャー。
  もう、俺の話をしていいか?」

 「答えが先だ。」

 「答えも何も、遠坂達は大きな間違いをしている。
  よって、そこを訂正してからじゃないと答えられない。」

 「「間違い?」」

 「そう。
  まず、桜は死んでいない。」

 「「!!」」


 凛とアーチャーが目を見開いて言葉を失くす。


 「そして……。
  間桐邸の襲撃に関しては全て知っている。」


 凛とアーチャーは、固まったまま動けない。
 そのまま、約1分の時間が流れる。


 「え、あ、……ちょっと待って。
  どういう事?」


 凛が、アーチャーを見る。


 「私に聞かれても……。」


 アーチャーが、士郎を見る。


 「お前らが悪いんだからな。
  俺が話そうとしたのを全部遮ったんだから。」


 凛が膝立ちすると士郎にグーを炸裂させる。


 「何すんだ!」

 「士郎……。
  わたしに分かる様に説明しなさい。」


 凛が、魔力で強化した手で士郎の肩をがっちりと掴むと強靭な握力で締め付ける。


 「っ!
  痛いって! 話す! 話すから!
  お・ち・つ・け!」


 凛は、士郎の拘束を解く。
 凛の後ろでは、凛がやらなければ私がやったと言わんばかりにアーチャーが仁王立ちしていた。


 (なんなんだ!? この不当な扱いは!)


 士郎は、ゴホンと咳払いをする。


 「話をする前に約束して貰う事がある。」

 「何よ?」

 「遠坂の願いが達成されたあかつきには、
  俺への戦闘行為は、金輪際なし!
  つまり、聖杯戦争で俺を殺すというのはなし!
  それと3つぐらいの言う事を聞いて貰うからな!」

 「いいわよ、それくらい。
  さっさと話しなさいよ。」

 「約束したからな!」

 「しつこいわね! 分かったわよ!」

 「まず、結界を解いたとこから話す。
  お前達に話したのは、半分嘘だ。」

 「「な!」」

 「当たり前だろ?
  お前ら、俺を殺すかもしれないのに
  本当の事を全部話す訳ないじゃんか!」

 「言われてみれば、その通りだけど……。」

 「いいか?
  俺が話すのは、お前達がもう敵じゃないからなんだからな!」

 「もういい!
  小僧、一体、何が嘘だったんだ!」

 「ライダーが逃げたというところだ。」

 「じゃあ、倒したの?」

 「違う。
  偽臣の書を慎二から奪って、
  マスター権限を俺に書き換えた。」

 「「!!」」

 「そんな事出来るの!?」

 「知らんよ。
  本に書いてある事を実行したら出来たんだよ。
  そこら辺は、魔術師である遠坂の分野だろ?」

 「凛、可能なのか?」

 「可能かもしれないけど……。
  それには、偽臣の書の解読が必要なはず……。」


 士郎は、偽臣の書を取り出すとセイバーとライダーにした説明をする。
 同じく微妙な反応をして頭を抱える赤い主従。


 「デタラメだわ……。」

 「有り得ん……。」

 「ああ、もういいよ。
  デタラメで。
  ・
  ・
  で、ライダーは、俺のサーヴァントになったわけ。」

 「なるほどね。
  それでライダー犯人説はなくなるのね。」

 「いや、間桐邸を襲ったのはライダーだ。」

 「あ~~~!
  何で、いつも士郎の話を聞くと予想と違う答えが返って来るのよ!」

 「凛、諦めろ。
  コイツは、人間ではないのだ。」

 「酷いな……。」

 「一体、ライダーに何を命令したのよ! あんたは!」

 「話を急ぎ過ぎ。
  いいか? 過程が大事なんだ。
  ・
  ・
  ライダー自身は、真っ当なサーヴァントだ。
  おかしいのは、慎二という偽りのマスターだけなんだ。」

 「本物のマスターもイカレてるじゃない。」

 「本物のマスターは、臓硯じゃない。桜だ。」

 「嘘? 何で!?
  どうして、あの子が聖杯戦争に参加しているのよ!」

 「参加したんじゃない。
  させられたんだ。
  だけど、桜は、人を傷つけるのを望んでいない。
  だから、サーヴァントの権限を慎二に譲渡した。
  それが桜に出来る間桐での精一杯の抵抗だった。」


 大事な妹をやりたい放題してくれた間桐に、凛の表情に怒りが浮かび上がる。


 「遠坂の行動は正しいんだ。
  間桐から桜を取り戻す事は……。
  ・
  ・
  間桐の中じゃ、桜に味方は居なかったんだ。」


 凛は、拳を床に叩きつける。
 再度、振り上げた拳をアーチャーが止め、凛をしっかりと抱きしめる。


 (へ~。
  アーチャーって、優しいんだな。
  ・
  ・
  しかし、なだめ方が暴れ馬を押さえるように見えるのは気のせいか?)


 士郎は、話を続ける。


 「そんな中で、桜の味方が現れた。
  言うまでもないな。
  桜が呼び出したライダーだ。」

 「ライダー?」

 「そう。
  ライダーは、桜の味方だ。
  慎二がマスターの権限を奪っても、ライダーは桜の味方だった。
  実際、ライダーも慎二に嫌な思いをさせられている。
  ・
  ・
  人を襲わされている。
  慎二じゃ、魔力の供給が出来ないからな。」

 「貴様は、何で、ライダーの事情に詳しいのだ?」

 「ライダーに聞いた。
  セイバーの時と同じ様にどんなサーヴァントか知りたくて。」

 「また、願いを聞いたの?」

 「そう。
  そうしたら、桜を救ってあげたいって。」

 「何で?」

 「お前じゃないけど。
  桜の事情を知っていて、それに応えるだけの実力があれば、
  そういう行動に出るんじゃないの?」

 「…………。」

 「ちょっと、嬉しいな。
  わたし以外にも、桜を気に掛けてくれる人が居るなんて。」

 「だから、俺は、ライダーに好きにしていいって命令した。」

 「士郎……らしくない。」

 「いくら俺でも、最後の戦いをする人間を前に茶化さないよ。」

 「最後……。
  そうか!
  ライダーは、魔力供給していないから。
  ・
  ・
  でも、それじゃあ!?」

 「ライダーは、宝具を使用したんだ。
  あの痕跡は、宝具の跡だよ。」

 「何故、2箇所も痕跡の跡があったのだ?」

 「玄関にあったのは、臓硯を倒した跡。
  地下にあったのは、桜を苦しめている修練場の跡だ。
  ライダーは、桜を苦しめるものは全て消滅させた。」

 「ライダー……。
  わたしがやるべき事を……命を懸けてしてくれたんだ……。」


 凛の顔が嬉しさに溢れている。
 妹のために文字通り命を懸けてくれた事に。
 感謝の言葉と一緒に涙が頬伝っていた。
 凛が涙を拭うと真剣な顔になる。


 「魔力供給のない状態で、宝具なんて使ったら……。
  ライダーは、もう……。」

 「大丈夫。
  お礼は言えるよ。」

 「……よかった。
  でも、どうして?」

 「その後が大変だった。
  消え掛けているライダーに桜が『逝かないでくれ』って。
  ライダーも困惑してた。」

 「桜が……。」

 「セイバーの話だと閉じ込めてた感情がライダーを切っ掛けに解放され始めたらしい。
  俺も桜があんなに声を張っている所を見たのは初めてだ。
  学校じゃ……ほら、あれだったから。」

 「ええ、分かるわ。
  でも、ライダーは消え掛けていたのよね?」

 「魔力が足りないなら供給すればいい。
  偽臣の書は、俺の手の中にあるんだ。
  人を襲わせた。」

 「「!!」」

 「俺をな。
  ・
  ・
  驚いたか?」


 凛が士郎にグーを炸裂させ、アーチャーがゲンコツを落とす。


 「何で、茶化すのよ!」

 「まったく、貴様という奴は!」

 「まあ、そういう訳で。
  めでたしめでたしだ。」

 「二人は?」


 士郎は、障子を指差す。


 「俺達の会話は、駄々漏れだ。」


 凛が士郎にグーを炸裂させると勢いよく障子を開ける。
 その先には、十数年待ち望んでいた人物が涙を流していた。
 そして、隣では妹の恩人が妹を優しく抱いていた。
 凛は、二人に駆け寄ると力一杯抱きつき感謝の言葉を繰り返した。


 「小僧。
  何故、最後に茶化した?」

 「魔力供給のし過ぎで死に掛けたなんて、俺の落ちはいらないだろ?」

 「凛を気遣ったのか?」

 「俺にそんな甲斐性はない。」

 「ふむ。
  今度、酒でも飲みながら、そこら辺を話したいものだ。」

 「未成年に酒を勧めるな。」


 士郎とアーチャーは、微笑みながら三人を見守った。
 セイバーは、デタラメな主が少し誇らしかった。


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