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No.7779の一覧
[0] 【ネタ完結】Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~[熊雑草](2009/05/16 02:23)
[1] 第1話 月光の下の出会い①[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[2] 第2話 月光の下の出会い②[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[3] 第3話 月光の下の出会い③[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[4] 第4話 月光の下の出会い④[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[5] 第5話 土下座祭り①[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[6] 第6話 土下座祭り②[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[7] 第7話 赤い主従との遭遇①[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[8] 第8話 赤い主従との遭遇②[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[9] 第9話 赤い主従との遭遇③[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[10] 第10話 後藤君の昼休みの物語[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[11] 第11話 赤い主従との会話①[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[12] 第12話 赤い主従との会話②[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[13] 第13話 素人の聖杯戦争考察[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[14] 第14話 後藤君の放課後の物語①[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[15] 第15話 後藤君の放課後の物語②[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[16] 第16話 後藤君の放課後の物語③[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[17] 第17話 天地神明の理[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[18] 第18話 サーヴァントとアルバイト①[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[19] 第19話 サーヴァントとアルバイト②[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[20] 第20話 サーヴァントとアルバイト③[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[21] 第21話 帰宅後の閑談①[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[22] 第22話 帰宅後の閑談②[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[23] 第23話 帰宅後の閑談③[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[24] 第24話 帰宅後の閑談④[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[25] 第25話 深夜の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[26] 第26話 深夜の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[27] 第27話 アインツベルンとの協定①[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[28] 第28話 アインツベルンとの協定②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[29] 第29話 アインツベルンとの協定③[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[30] 第30話 結界対策会議①[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[31] 第31話 結界対策会議②[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[32] 第32話 結界対策会議③[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[33] 第33話 結界対策会議④[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[34] 第34話 学校の戦い・前夜[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[35] 第35話 学校の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[36] 第36話 学校の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[37] 第37話 学校の戦い③[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[38] 第38話 学校の戦い④[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[39] 第39話 学校の戦い⑤[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[40] 第40話 ライダーの願い[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[41] 第41話 ライダーの戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[42] 第42話 ライダーの戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[43] 第43話 奪取、マキリの書物[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[44] 第44話 姉と妹①[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[45] 第45話 姉と妹②[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[46] 第46話 サーヴァントとの検討会議[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[47] 第47話 イリヤ誘拐[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[48] 第48話 衛宮邸の団欒①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[49] 第49話 衛宮邸の団欒②[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[50] 第50話 間桐の遺産①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[51] 第51話 間桐の遺産②[熊雑草](2010/08/27 00:31)
[52] 第52話 間桐の遺産③[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[53] 第53話 間桐の遺産~番外編①~[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[54] 第54話 間桐の遺産~番外編②~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[55] 第55話 間桐の遺産~番外編③~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[56] 第56話 間桐の遺産④[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[57] 第57話 間桐の遺産⑤[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[58] 第58話 間桐の遺産⑥[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[59] 第59話 幕間Ⅰ①[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[60] 第60話 幕間Ⅰ②[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[61] 第61話 幕間Ⅰ③[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[62] 第62話 キャスター勧誘[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[63] 第63話 新たな可能性[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[64] 第64話 女同士の内緒話[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[65] 第65話 教会という名の魔城①[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[66] 第66話 教会という名の魔城②[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[67] 第67話 教会という名の魔城③[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[68] 第68話 幕間Ⅱ①[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[69] 第69話 幕間Ⅱ②[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[70] 第70話 聖杯戦争終了[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[71] 第71話 その後①[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[72] 第72話 その後②[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[73] 第73話 その後③[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[74] 第74話 その後④[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[75] 第75話 その後⑤[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[76] 第76話 その後⑥[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[77] あとがき・懺悔・本当の気持ち[熊雑草](2009/05/16 02:22)
[78] 修正あげだけでは、マナー違反の為に追加した話[熊雑草](2010/08/27 00:42)
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[7779] 第50話 間桐の遺産①
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/27 00:30
 == Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==



 明方……。
 張り詰める静けさと冷気の中で士郎は、目を覚ます。


 「ダメだ。
  体が鍛錬を忘れるなって起こしに掛かる。
  ・
  ・
  仕方ない……少し早いが起きるか。」


 士郎は、私服に着替えると天地神明の理を持ち、部屋を出る。


 「昨日、風呂入ってないな。
  酔っ払い共も朝風呂に入るかもしれん。」


 士郎は、鍛錬の前に洗濯機を回し、風呂掃除を始めた。



  第50話 間桐の遺産①



 風呂掃除を終えて、水を張り直し、釜に火を入れる。
 酔っ払いの居る居間を通り過ぎ、玄関から庭へ出る。


 「あの荒れ果てた庭が本当に直ってる。
  セラに感謝だな。」


 続いて、衛宮邸の奥へと目を移す。
 そして、イリヤの居る角部屋で静止する。


 「セラ……。
  ワザとか?
  ・
  ・
  いや! ワザとだ!」


 衛宮邸の角部屋は、造形の美しい白亜の宮殿に生まれ変わっていた。
 武家屋敷と西洋の宮殿のコラボレーションは、何とも言えない異様な雰囲気を醸し出していた。
 士郎は、今はいないメイドに怒りを覚えつつ土蔵に向かった。


 「すまんな。
  忘れていた訳じゃないんだ。
  今日も頼むよ。」


 士郎は、天地神明の理に話し掛けると柄を握り、集中し始める。
 直にピンと張り詰めた空気が土蔵を覆う。


 (早い……。
  柄を握った瞬間に、一体になった。
  俺が成長したのか? それとも天地神明の理の特殊能力か?)


 士郎は、疑問を振り払いイメージトレーニングを始める。
 サーヴァントの桁違いの動きを目の当たりにしてから、敵のイメージは何度か修正している。
 士郎は、更に昨日得た情報を敵に付加する。
 ライダーの宝具の威力……。
 敵に必殺技と呼べる奥の手を付加する。

 結果、士郎は、イメージでボコボコにされる。


 「手が付けられない。
  ただでさえ、動きをセイバー以上に設定しているのに、
  ライダーの宝具を与えたら、迂闊に近づく事も出来ない。
  ・
  ・
  天地神明の理で宝具の魔力も吸い切れるのか?
  それが出来れば、少し粘れるんだけど。」


 士郎は、慎二の攻撃を思い出す。
 天地神明の理は、慎二の偽臣の書による攻撃を確かに吸収して見せた。


 「問題は、受け皿になる俺の体が、
  どれだけ魔力を蓄える事が出来るかだな。
  容量を超えれば、きっと破裂する。
  ・
  ・
  そういえば、ライダーから奪った魔力を体内に入れっぱなしだ。
  あれを試してみるか。」


 士郎は集中し、昨日奪い取ったライダーの魔力と自分の中の黄金の光の塊を認識する。
 ライダーの魔力を少しだけセイバーに送るため、魔力の変換をイメージする。
 作業は、思いのほか簡単だった。
 黄金の光の塊自身がセイバーをよく認識しているようで、ライダーの魔力をセイバーの色鮮やかな青に変換する感じで滞りなく処理してくれた。
 そして、とりあえず、今は、ライダーの残りの魔力を体の中に残して置く事にした。
 もしかしたら、何かの役に立つかもしれない。


 「う~ん。
  なんかこの黄金の光って、セイバー贔屓な気がするな。
  ライダーの話じゃ、俺の体力を奪ってるっていうから、
  きっと、コイツがやってんだ。
  なんなんだろう?
  多分、マスターのイリヤや遠坂や桜にもあるんだろうな。」


 士郎は、天地神明の理を握り、再びイメージトレーニングを始める。
 戦いの際には、相手の宝具攻撃を天地神明の理から魔力を吸収して防ぐ事をイメージして。
 そして、己の中の黄金の光に奪った魔力を注ぎ込むように。


 …


 士郎が起きてから2時間後、イリヤが目を覚ます。
 御付きのメイドが居ないため、朝の支度やお茶がないのを少し残念に思いながら着替えをする。
 自分の部屋を抜け出し、士郎を探索に行く。
 士郎の部屋は、もぬけの空になっていた。

 目を閉じて魔力を感知しようとする。


 「士郎って、魔力ないんだった……。
  ・
  ・
  あれ? ライダーの魔力が2つ?
  消えていく……。
  何? この変な魔力の動きは……。
  ・
  ・
  変……デタラメ……士郎だ!」


 イリヤは、魔力の消えた土蔵に向けて走り出した。


 …


 土蔵の中での士郎は、本日、イメージの敵に4敗目を喫していた。


 「ダメだ~!
  強い! 強過ぎる!
  木刀じゃない分だけ、強度が増したのに吸収し切れない。
  あの連続攻撃が手に負えない。
  こっちは、1回受け流すだけで慣性殺して衝撃吸収するから、
  どうしても動きが大きくなる。
  だけど、魔力を通した攻撃は、通常攻撃の威力が上がるから、
  大振りに変わっても動作が大きくなる事がない。
  ・
  ・
  変えないといけない。
  新しい型に……。
  威力は、全部消せないにしても連続で受け流せるように。」


 士郎は、集中を解く。
 頭を柔軟にして考える。
 衝撃を吸収するため、力を抜くのは大事だ。
 しかし、体を動かす時は、筋肉を動かし力を入れなければいけない。
 この時、筋肉を締める事で骨格が固定され、衝撃が分散されず体に伝えてしまう。
 では?


 「衝撃の慣性が通り過ぎた後に次の攻撃が始まるまでに筋肉を動かす。
  無理無理……。
  筋肉は繋がっている。
  体を動かす時には、一連の通り道がある。
  そこを動かす筋肉を選ぶ事なんて出来ない。
  ・
  ・
  まず、衝撃を全部消すために、同じ方向に飛ぶ距離を抑えよう。
  これだけでもモーションが少し減るから、体を立て直す時間は稼げるはずだ。
  ただ、抑え過ぎると攻撃を貰って余計に体勢が崩されるから……。
  ・
  ・
  一朝一夕で、なんとかならんぞ。
  もう、聖杯戦争始まってんだから。
  ・
  ・
  そうだ! いっそ、ぶっ飛ばされるんだから、
  飛ばされる事と次の攻撃の動作を関連付ければ……。
  だったら、型の改造なんていらないし。
  そもそも、それを失敗してるから考えてんじゃん……。」


 八方塞がりだった。
 とりあえず、思いつくまでは、慣性の方向へ飛ぶ練習をしようと士郎は思う。
 そして、土蔵の中で試行錯誤しながらピョンピョンしているとイリヤがやって来た。


 「士郎が狂った……。
  ・
  ・
  だったら、いつも通りか。」

 「開口一番が、その一言かイリヤ……。
  昨日の宴会で要らない知識を植え付けられたようだな。」

 「何してたの?」

 「刀を使った訓練。
  俺、魔術師じゃないから、何かしてないと死んじゃうだろ?」

 「そうだね。
  何もしてなかったら、バーサーカーに2人にされてたもんね。」

 「上士郎、下士郎です……みたいな。」

 「そうそう。」

 (笑えんな……。)


 笑顔のイリヤにゲンナリと落ち込む士郎。
 その時、居間から悲鳴が聞こえる。


 「トラップ発動!」

 「セイバーの声っぽかったね。」


 続いて聞き覚えのある悲鳴。


 「ライダーだな。
  蜂蜜の時に聞いた。」


 そして、姉妹の息の合った悲鳴の不協和音。


 「凄いな……。」

 「サーヴァントの悲鳴って貴重よね。」

 「英雄だから、戦いに敗れても悲鳴はあげなさそうだもんな。」


 続いて、アーチャーの悲惨な悲鳴があがる。


 「なんで、アーチャーも悲鳴をあげるんだろう?」

 「悲鳴じゃないな。
  呻き声だ……。
  行き場のない皆の拳が、アーチャーに向かったと見た。」

 「さすが、士郎。
  こういう分析は得意ね。」

 「任せてくれ。」

 「悲鳴がやんだね。」

 「このままでは、紐をただ解かれてしまう。
  イリヤ、バーサーカーに遠隔で命令出せないか?」

 「う~ん。
  明確なイメージを伝える必要があるから、言葉よりも難しいけど……。
  出来ない事もないよ。」

 「じゃあ、俺が取るポーズをバーサーカーに取らせてくれ。
  バーサーカーにも紐は結んである。」

 「いいよ。」


 士郎は、『ヒーロー見参!』のポーズを取る。
 居間から、再び悲鳴が聞こえる。
 バーサーカーに全員引っ張られたのだろう。

 続いて、モーニング娘。の『LOVEマシーン』を踊ってみる。
 居間から阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえる。


 「まだ、やれるか?」

 「く……ふふ……あはは。
  もう、無理……。
  笑い堪えてバーサーカーに命令送れない。」

 「そうか。
  次は、ラジオ体操をするつもりだったんだが。」

 「士郎、そろそろ戻らない?」

 「そうだな。
  鍛錬も行き詰まった事だし。」


 イリヤと士郎は、土蔵を出て居間に向かった。


 …


 魔界の扉を開くが如く、居間の障子を開ける。
 居間の真ん中には、バーサーカーに絡みついたサーヴァントと人間の塔が建っていた。


 「これは、一つのアートだな。」

 (さすが、イリヤ。
  バーサーカーを暴れさせても居間を壊していない。
  ここで食事をするのを理解しているからかな?)


 イリヤは、お腹を抱えて笑っている。


 「そこのちっこいの!
  笑い過ぎよ!」

 「凛、今の状態、分かって言ってるの? えい!」


 イリヤは、凛の脇をツンツンと突っつく。


 「こら! やめなさい! くすぐったい!
  あはははははははははは!」


 自分達に自由はないんだと再認識する塔の住人達。


 「シロウ……。
  貴方の仕業ですね?」

 「違う。」

 (あっ。
  士郎の嘘が始まった。)

 「言い逃れは出来ませんよ。」


 セイバーの声で他の住人の目にも殺気が篭る。
 士郎は、徐に溜息をついてみせる。


 「お前さ……。
  昨日の惨劇を全て覚えているのか?」

 「…………。」

 「……何処からですか?」


 その言葉を聞いて、全員記憶がない事を認識させられる。


 「あの場でな。
  意識があったのは、俺とイリヤだけだ。」

 「では、間違いなく犯人は……。」

 「だから、一部始終を知っている。」

 「…………。」

 (士郎は、間の使い方が上手いんだな。
  相手を誘導するから、士郎が仕方なく答えている様に思わされるんだ。)


 イリヤは、やり取りを観察しながら感嘆する。


 「何があったのでしょう?」

 「これをやったのは、セイバーとライダーとアーチャーだ。」

 「え!?」
 「なに!?」
 「我々が!?」

 「バーサーカーと飲み勝負したのは覚えているな?」


 三人のサーヴァントが頷く。


 「同時に、そこから記憶がないのも。」


 三人のサーヴァントが頷く。


 「お前達は、勝負は無効だと言いすがり、
  『誰一人逃げられないように』と紐で自分達を拘束したんだ。」

 「…………。」

 「それなら、シロウ達も拘束されているはずでしょう?」

 (意外と鋭いな。
  しかし……。)

 「お前達が、『飲めない奴に用はない』と放り出したんだろうが。」


 「「「うっ。」」」


 記憶がないから証拠もない。
 士郎の言葉が事実に置き換わっていく。


 (完全に士郎のペースね。
  それにしても、どうして嘘をこうも堂々と言い放つ事が出来るんだろう?)

 「疑いを掛けて、申し訳ありません。
  シロウ……出来れば、この紐を切って欲しいのですが……。」

 「分かった。
  イリヤ、バーサーカーの力で断ち切ってくれ。」

 「「「「「待った!!」」」」」

 「どうした?」

 「こんなに絡み合っているのに
  バーサーカーの力で断ち切ったら痛いでしょう!?」

 「セイバー……。
  『痛い』じゃ済まないわよ。
  骨とか折れるわ。」

 「士郎、今のはなしの方向で。」

 「そうか。
  じゃあ、頑張ってくれ。」


 士郎は、台所に向かおうとする。


 「待て! 小僧!
  とりあえず、外せ!
  それとお前楽しんでいるだろう?」

 「呆れてるんだよ。」

 「喧嘩を売っているのだな?」


 士郎は、アーチャーを無視してイリヤを見る。
 『もういいんじゃないの? わたしは十分楽しめたわ』とイリヤが頷く。


 (仕方ない。
  ここまでにしとくか。)

 「小僧! 無視をするな!」

 (必死だな……アーチャー。
  美女達と絡まってんだからいいじゃないか。)

 「霊体化だ。」

 「なに!?」

 「なんで、お前ら霊体化して抜け出さないんだよ。」

 「「「あ。」」」


 サーヴァント三人が、目の前から消えると紐と服が残される。
 そして、直ぐに武装した姿で目の前に現れる。


 「大丈夫か?」

 「いいえ……。」
 「あまり……。」
 「最悪だった……。」


 続いて、イリヤの命令でバーサーカーが姿を消す。
 そして、残される姉妹。


 「お前らも、早く霊体化しろよ。」

 「出来るか!」

 「じゃあ、縄抜けの術でも。」

 「魔術師は、マジシャンじゃない!」

 「じゃあ、桜だけでも。」

 「わたしも助けなさいよ!」

 「怒るならあっちな。」


 士郎は、無実のサーヴァント三人を指差す。
 アーチャーは、台所へ。
 セイバーとライダーは、ゴミを片付け始めた。


 「逃げやがった……。」

 「あの……衛宮先輩。
  本当に外して貰えないでしょうか?」

 「…………。」

 「あの……?」

 「なんか、その格好エロイな。」


 桜が赤面し、凛とイリヤのグーが士郎に炸裂する。


 「「セクハラ!」」

 「っ!
  遠坂……お前、やっぱり縄抜け出来るんじゃないか!」

 「へ?
  ・
  ・
  違うわよ!
  これは……ツッコミ入れようとしたら抜けたのよ!」

 (便利な特殊能力を持っているじゃないか……。)


 士郎は、桜のところに行くと紐を一本引っ張る。
 すると桜に絡みついた紐は、全て解けた。


 「あ、ありがとうございます。」

 (どうやったんだろう?)

 「あんた、一体何者なのよ?」

 「こんなもん。
  ここに住んでれば、自然と身につく。
  暴れ虎は、自分で絡まったり絡ませたりするからな。」

 「藤村先生……。」

 「さて、朝食だな。
  しかし……。」


 士郎は、凛と桜を見る。


 「何よ?」

 「酒臭い女の子って引くな。」


 凛と桜が、ショックで固まる。


 「凛、魔術で分解したら?」

 「そんな事出来るのか?」

 「出来るよ。」

 「へー。」

 「それもするけど、朝風呂に入る!」

 「我が侭だな。」

 「うるさいわね!」

 「火は点いてるから、いつでも入れるぞ。」

 「気が利くじゃない。」

 「俺が入るつもりだったんだ。」

 「まあ、いいわ。
  桜、行くわよ。」

 「あの…姉さん……。
  昨夜も一緒に入りましたけど?」

 「いいのよ。
  今まで出来なかった事なんだから。」


 凛は、桜を連れて出て行ってしまう。
 士郎とイリヤは、密かに親指をビシッと立てた。


 …


 アーチャーが朝食を作り、居間の片付けを他のメンバーで行う。


 「セイバー達は、酒臭くないんだな?」

 「サーヴァントは、一度、霊体化して現界すれば元通りです。」

 「便利だな。」


 感心している士郎に、ライダーが真剣な顔で質問をする。


 「士郎、これからの事ですが……。」

 「うん?」

 「いつから始めるのですか?」

 「間桐の魔術書の解読か?
  イリヤには、もう協力をお願いしたんだ。」

 「うん。
  魔術師の等価交換も成立しているわ。」

 「後は、遠坂に事情を話すだけだ。
  でも、作業は、今日から実行しよう。」

 「はい。」

 「で、役割分担なんだけど……。
  魔術書の解読出来るのは、イリヤと遠坂の二人。
  この二人は、調査に専念して貰う。
  セイバーとライダーは、桜の心のリハビリを頼む。
  セイバーから、昨日、聞いているから引き続き頼む。」


 セイバーとライダーが頷く。
 ライダーは、この後、セイバーにお礼を言っていた。


 「残りは、俺とアーチャーなんだが。
  アーチャーは、見張りをお願い出来ないかな?」

 「何故だ?」

 「多分、残っているクラスで危ないのがアサシンだと思うんだ。」

 「他のランサー、キャスターも危ないと思うが?」

 「ランサーとキャスターは、正攻法の考えを持っていると思う。
  だから、多勢に無勢の無理な攻撃はしないと思う。
  だけど、アサシンは別じゃないか?
  気配を遮断出来るなら、目視するしかない。
  確かクラスの中で遠見が優れているのは……。」

 「了解した。
  貴様の考えは正しい。
  監視は、私がしよう。」

 「で、残るのは俺だが……。
  役割がない……。」

 「…………。」


 居間が沈黙する。
 士郎は、魔術師でもなければサーヴァントでもない。


 「士郎も、桜と会話をしてくれればいいと思いますが?」

 「自分で言うのもなんだが……。
  俺と会話させて桜が変な方向に心を開放させたら、どうする?」


 全員の頭に士郎の行動が浮かび、それを桜に置き換える。


 「ダメですね……。」
 「却下ですね……。」
 「女の子で、あそこまでは……。」
 「士郎が二人に……。」


 再び、居間が沈黙する。


 「まあ、そういう訳だ。
  俺は、自分の部屋で大人しくしてるよ。
  よく考えたら、血を作らないといけないし。」

 「そうでしたね。
  重症のくせにピンピンしているから忘れてました。」

 「では、小僧は放っといて、他の面々は実行に移そう。」


 居間での作戦会議が終わり、風呂からあがった凛と桜が加わる。
 朝食は、いつも以上の賑やかさで終始した。


 …


 朝食の後、士郎とアーチャーが凛を廊下で捕まえる。


 「遠坂。
  ちょっと、いいか?」

 「珍しいわね。
  あんた達、二人でなんて。」

 「凛、真面目な話だ。
  桜の事についてだ。」


 凛の顔が真剣なものに変わる。
 魔術師としてのスイッチが入ったようだ。


 「君の事だから、もう、分かっていると思うが、
  桜の体は、修正を受けている。」

 「分かってる。」

 「どういう状態かも分かっているか?」

 「昨日、今日と一緒にお風呂に入って大体は……。」


 凛は、視線を廊下に落として俯いた。


 「小僧は、ライダーからその事を聞いたらしい。
  その時、間桐の魔術書を持ち出した。」

 「犯人は、士郎だったの……。」

 「それは、希望を見出すためだ。」

 「希望?」

 「君の魔術の知識があれば、何とかなるかもしれない。」

 「……本当?」

 「確信はない。
  しかし、出来なくはないと思っている。
  君は、私が認めた優秀な魔術師だ。」


 凛は、顔を上げる。
 自分の見立てでは、間桐の人体修正は何をしているか検討がつかなかった。
 アーチャーの言葉だけでは、心許無いと士郎にも顔を向け目で訴える。


 「とりあえず、こう考えている。
  桜の体の修正は、蟲を使っている。
  だから、その蟲をコントロールして外に追い出す。
  この考えの根本は、臓硯の肉体が蟲で出来ていた事に起因するんだ。
  蟲を操って体を作っていたなら、蟲を操作する事が出来るって。
  だから、間桐の遺産を紐解いて救い出す。
  残念ながら、これが出来る魔術師を俺は、二人しか知らない。
  遠坂とイリヤだ。
  イリヤは、間桐の魔術書の知識を提供する事で協力してくれるってさ。」

 「……あ。
  ……たすかる…助かるんだ。
  桜…桜、助かるんだ。」


 諦め掛けていた可能性が開かれたため、凛は、気が抜けるとしゃがみ込む。


 「安堵するのは……。」

 「分かってるわ!
  わたしが解読する!
  解読して、桜を救うわ!」

 「いつもの勇ましい遠坂だ……。」


 士郎に凛のグーが炸裂する。


 「女の子に勇ましいはないでしょう!」

 「なぜ、殴る?」

 「景気づけの一発よ!」

 「俺、関係ないじゃん?」

 「士郎を殴ると気合いが入るのよ!」

 「お前も、デタラメだ。」


 気合いの入った凛は、間桐の魔術書を解読するため、士郎の部屋に向かった。


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