== Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==
「ちょっと、いいですか?」
「なんやねん? いきなり?」
「いえ、ちょっと。
最近、びっくりする事がありまして。」
「またかいな?」
「またって。
自分……。」
「で?」
「あ、聞いてくれます?」
「仕方ないから聞いてやる。」
「実はですね。
この前、電車に乗ったんですよ。
知ってます? 南武線?」
「知ってる。
あの川崎に行くヤツやろ?」
「そうです。
ちょっと、用があって乗ったんですよ。
スターだから、正体バレないように帽子被ってサングラスして深めにマフラーして。」
「変質者やな?」
「違うわ! スターやからや!」
「どうでもええわ!
続けろや!」
「何で、そんなに上から目線なん?
同じ仲間やろ?
二人合わせて……。」
パシーン
「いいから、続けろ。」
「まあ、いいですわ。
で、立川から川崎に向けて乗ってたんですわ。
始発やから座れるかと思ったんですけど、
平日だったんでサラリーマンが多くて、立ちで川崎に向かったんですわ。」
「ああ、ラッシュの時に乗ったんだ。」
「はい。
そうしたら、俺の前におっさんが座ってんですわ。
40か50の。
頭が、もう、禿げ始めてる。」
「おお、んで?」
「そのおっさんが、途中、眠り出したんですわ。
発車して、2,3駅ぐらいだったと思います。」
「うん、で?」
「そしたら、そのおっさん、急に魘され始めたんですよ。」
「マジで?」
「マジで。
そして、それ直ぐ終わるのかなと思ったんですけど、
ずーっと魘されてんですよ。」
「ホンマかいな?」
「ホントです!
登戸に着いても溝ノ口についても、ずーっと魘されてんですわ!」
「おもろいな。
周りの人間、どうしてん?」
「俺と同じですわ。
『えーっ』って、なってん。」
「そら、なるわ。」
「大阪だったら、ツッコムでしょ?」
「ツッコムな。
『なに魘されてんねん!』って。」
「俺、思いっきしツッコミたくなったんねん。」
「ツッコんだらええねん!」
「無理ですわ~!
出来ませんて!
だって、東京ですよ!
ツッコんだ瞬間に冷たい目で見られますもん!」
「で、結局どないしたん?」
「川崎まで、ずーっと放置ですわ。」
「マジで?」
「俺が、ツッコミたいのわかるやろ?」
「わかるわかる。」
「でも、東京の人って全然気にしないのな。」
「そうなん?」
「そうなんですよ。
満員電車だから、一人ぐらいツッコムかと思ったんですけど、
誰一人、ツッコまへんのですよ。
最初、『えーっ』ってなるぐらいで、後、『知りません』って感じ。」
「そういうとこ、あるかもしれへんな。」
「怖いですよ~、東京。」
「ハガキいっていい?」
「なんや突然!
俺の話は、おもろなかったんかい!?」
「まあ。」
「オイ!」
「うっさいな~!
毎度のことやないか!」
「毎度言うな!
俺が、いつもすべってるみたいやないか!」
「ああ、わかったわ。
おもろかったわ。
ハガキいくで?」
「もう、ええわ。
好きにせい。」
「2週間に一度行われる世界ハードSグランプリの
ディフェンディングチャンピオンHさんのセコンドを勤めるMさんに質問です。」
「お前チャンピオンなん?」
「お前かてセコンドって書いてあるやないか。」
「間隔2週間って、めっちゃハードスケジュールやな?」
「しかも、世界戦ですよ?」
「世界中から、2週間置きに集まるんや……。
スポンサー破産するわ!」
「ホンマやな。」
「まあ、ええですわ。
続けてください。」
「ディフェンディングチャンピオンHさんを苦しめた
元GのプロデューサSさんのムッツリハードSについて教えてください。
何や? ムッツリハードSって?」
「あなたの方が、ご存知なんじゃないですか?
専門分野だし。」
「知らんわ!」
「嘘つかないでください。
戦った相手やないですか?」
「敗者のことは、覚えてへん!」
「何気に王者の風を吹かせんといてください。
そもそも、この大会ってどうやって勝敗決めるのかも分かんないですし。
ムッツリついてる時点で、ハードSなんて成立しないですよ。」
「ホンマやな。
どうやって、Sって分かるんやろ?」
「ああ!
でも、お前は、相手が、Sかどうか分かんないから苦戦したんちゃう?」
「どういうこと?」
「関係ないか?
ハードSのお前なら、誰かてシバキ倒すもんな。」
「シバキ倒さんわ!」
「女性は、セクハラか?」
「セクハラせーへんわ!」
「そして、気に入らないヤツは、チャカ出してバーン!」
パシーン
「ええ加減にせいや!」
「次、行かへん?
これ以上、広げられへんわ。」
「最近のハガキは訳分からん。
次、行きます。
最近、髪を切って坊主頭にしたMさんに質問です。」
「最近ちゃうわ。」
「昔のGのDVDを見るとHさんの唇整形疑惑の話がありました。」
「あったなーっ!」
「しかし、今、テレビを見ると元に戻っていますが、何故ですか?
大きなお世話じゃ!」
「あれ、何でなん?
俺も、気になるわ。」
「今も昔も変わってへん!」
「お前……。
一度、整形して唇綺麗にした後、
再手術して、また、たらこに戻したんやろ?」
「するか!
なんでそんなめんどくさいこと、しないといけないねん!?」
「お前、一時期ドラマとか出てたじゃん?
色気づいたんちゃうの?」
「するか!
なんでドラマ出る時、整形して、終わったら元に戻すねん!?
整形したら、そのままにするわ!」
「お笑いに整形した唇で出たら、笑い取れへんから?」
「関係ないやろ!
べしゃりに唇の何が関係あんねん!」
「じゃあ、お前の90%が唇だから。」
「90……って、お前!
俺は、唇で出来とんのか!?」
「はい。」
パシーン
「真実を言いましょうよ。」
「真実も何も整形してへんわ!」
「ええ!?
じゃあ、あれなんだったん!?」
「知らんわ!
このネタにふれんどいて!」
「いや、いじり倒しますよ。
唇と言ったらあなた。
あなたと言ったら唇ですから。」
パシーン
「ふれるな! 言うてんねん!」
「え~っ!
じゃあ、何か納得のいく答えを言ってくださいよ!」
「…………。」
「早く答えろや!
お前、芸人何年やってんねん!?」
「理由なんてないんやから、しょうがないやろ!」
「皆さん、聞きました?
逆ギレですわ。」
「逆ギレちゃうわ!」
「お前、自分の唇の事ぐらい、ちゃんと管理しとけよな!」
「なんで怒られなあかんねん?」
「とりあえず、謝れや。」
「なんで?」
「『自分の唇をないがしろにしてすいません』て。」
「…………。」
「自分の唇をないがしろにしてすいません。」
第55話 間桐の遺産~番外編③~
プチンとセイバーは、テレビのリモコンでスイッチを切る。
「…………。」
不機嫌そうな顔のセイバーにライダーは、質問をする。
「セイバー、何故、このようなものを見たのですか?」
「シロウが、私をGのHのようだと罵ったためです。」
「…………。」
「セイバー、感想は?」
「ありません。」
セイバーは、無言で立ち上がる。
「どちらへ?」
「ちょっと、鬼退治に……。」
「…………。」
セイバーは、無言で居間を出て行く。
「桜、忘れましょう。」
「……はい。」
これは凛達が、解読を進めている合間の出来事である。