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No.7779の一覧
[0] 【ネタ完結】Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~[熊雑草](2009/05/16 02:23)
[1] 第1話 月光の下の出会い①[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[2] 第2話 月光の下の出会い②[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[3] 第3話 月光の下の出会い③[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[4] 第4話 月光の下の出会い④[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[5] 第5話 土下座祭り①[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[6] 第6話 土下座祭り②[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[7] 第7話 赤い主従との遭遇①[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[8] 第8話 赤い主従との遭遇②[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[9] 第9話 赤い主従との遭遇③[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[10] 第10話 後藤君の昼休みの物語[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[11] 第11話 赤い主従との会話①[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[12] 第12話 赤い主従との会話②[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[13] 第13話 素人の聖杯戦争考察[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[14] 第14話 後藤君の放課後の物語①[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[15] 第15話 後藤君の放課後の物語②[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[16] 第16話 後藤君の放課後の物語③[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[17] 第17話 天地神明の理[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[18] 第18話 サーヴァントとアルバイト①[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[19] 第19話 サーヴァントとアルバイト②[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[20] 第20話 サーヴァントとアルバイト③[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[21] 第21話 帰宅後の閑談①[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[22] 第22話 帰宅後の閑談②[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[23] 第23話 帰宅後の閑談③[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[24] 第24話 帰宅後の閑談④[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[25] 第25話 深夜の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[26] 第26話 深夜の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[27] 第27話 アインツベルンとの協定①[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[28] 第28話 アインツベルンとの協定②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[29] 第29話 アインツベルンとの協定③[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[30] 第30話 結界対策会議①[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[31] 第31話 結界対策会議②[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[32] 第32話 結界対策会議③[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[33] 第33話 結界対策会議④[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[34] 第34話 学校の戦い・前夜[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[35] 第35話 学校の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[36] 第36話 学校の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[37] 第37話 学校の戦い③[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[38] 第38話 学校の戦い④[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[39] 第39話 学校の戦い⑤[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[40] 第40話 ライダーの願い[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[41] 第41話 ライダーの戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[42] 第42話 ライダーの戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[43] 第43話 奪取、マキリの書物[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[44] 第44話 姉と妹①[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[45] 第45話 姉と妹②[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[46] 第46話 サーヴァントとの検討会議[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[47] 第47話 イリヤ誘拐[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[48] 第48話 衛宮邸の団欒①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[49] 第49話 衛宮邸の団欒②[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[50] 第50話 間桐の遺産①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[51] 第51話 間桐の遺産②[熊雑草](2010/08/27 00:31)
[52] 第52話 間桐の遺産③[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[53] 第53話 間桐の遺産~番外編①~[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[54] 第54話 間桐の遺産~番外編②~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[55] 第55話 間桐の遺産~番外編③~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[56] 第56話 間桐の遺産④[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[57] 第57話 間桐の遺産⑤[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[58] 第58話 間桐の遺産⑥[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[59] 第59話 幕間Ⅰ①[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[60] 第60話 幕間Ⅰ②[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[61] 第61話 幕間Ⅰ③[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[62] 第62話 キャスター勧誘[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[63] 第63話 新たな可能性[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[64] 第64話 女同士の内緒話[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[65] 第65話 教会という名の魔城①[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[66] 第66話 教会という名の魔城②[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[67] 第67話 教会という名の魔城③[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[68] 第68話 幕間Ⅱ①[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[69] 第69話 幕間Ⅱ②[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[70] 第70話 聖杯戦争終了[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[71] 第71話 その後①[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[72] 第72話 その後②[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[73] 第73話 その後③[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[74] 第74話 その後④[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[75] 第75話 その後⑤[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[76] 第76話 その後⑥[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[77] あとがき・懺悔・本当の気持ち[熊雑草](2009/05/16 02:22)
[78] 修正あげだけでは、マナー違反の為に追加した話[熊雑草](2010/08/27 00:42)
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[7779] 第57話 間桐の遺産⑤
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/27 00:34
 == Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==



 勢いよく飛び出し、居間にズンズンと凛は近づいて行く。
 力一杯障子を開けるとスパーンと障子が音を反響させる。


 「桜! ちょっと、面かしなさい!」


 セイバーとライダーと桜は、目を見開き硬直する。


 「リン……殴り込みですか?」



  第57話 間桐の遺産⑤



 最近のセイバーは、よくテレビを見ている。
 ジャンルは、アクションやアニメが大半であるが、ライダーや桜の趣味に合わせる事もある。
 そのため、彼女は、現在の風俗や文化を急速に学んでいっていた。
 聖杯戦争には、無用の知識である……。
 先ほど、セイバーの口から出た言葉も不良達が戦うアニメを見て出た言葉だった。


 「殴り込みじゃないわよ!
  桜と話がしたいの!」

 「そういう事ですか。
  ドスのきいた声でしたので、てっきり。」

 「私は、『面かしなさい』から、
  殴り込みかと……。」


 本日もサーヴァント二人のコンビネーションは冴えていた。


 「ちょっと、気合いを入れ過ぎていたわね。
  そういう事じゃなくて、桜の体の話をしたいの。」

 「!」


 セイバーとライダーは、凛が決心した事を悟る。
 桜は、避けては通れない事に顔を強張らせる。


 「席を外してくれると助かるわ。」


 凛の言葉にセイバーとライダーは、無言で席を立つと居間の外へ出る。
 居間には、凛と桜だけが残された。


 …


 居間の外でサーヴァント二人が立ち尽くす。


 「思ったより……早かったですね。」

 「ええ。
  ・
  ・
  まさか、もう魔術書の解読が終わったのでしょうか?」

 「そうですね。
  あれだけの量を解読に、たった二日とは考えられないですね。」

 「ここで話していても分かりません。
  士郎の部屋に行きませんか?
  確か、あそこで解読をしていたはずです。」

 「はい、行きましょう。」


 セイバーとライダーは、士郎の部屋へと向かう。


 「ところで、セイバー。」

 「何でしょうか?」

 「私達の会話に関してですが、
  同じ様な言葉遣いで分かり難くないですか?」

 「正直に言うと分からないと思います。」

 「やはり、人を呼ぶ時に、
  名前で極力呼ぶようにして判断するしかないのでは?
  ・
  ・
  例えば、士郎を呼ぶ時です。
  セイバーの場合は、シロウ。
  私の場合は、士郎。
  ・
  ・
  人称を呼ぶ時も、
  セイバーは、貴方。
  私は、あなた。
  ・
  ・
  と分かれているのですから。」

 「しかし、『私』で始まって、人称を呼ぶ事なく会話が終わる事もあります。」

 「そうですねぇ……。
  そこは、もう、読者の想像力に頼るしかないのではないでしょうか?」

 「確かに……。
  会話と会話の間に、細々『誰が何した』と入れるとテンポが悪くなります。」

 「ええ、原作の方での作画と文字のコラボレーションは、
  非常によく考えられています。
  活字だけでは分からない台詞の有無を画によって、
  誰が話しているか一目で分かるため、テンポよく読み進められます。」

 「…………。」

 「我々は、一体何の話をしているのでしょうか?」

 「さっさと行きましょう。」


 セイバーとライダーは、士郎の部屋に向かった。


 …


 居間では、姉妹が見つめ合っている。
 これからの話は、お互いが心の境界に踏み入らなければ成立しないからだ。
 凛は、深呼吸を一つする。


 「日も高くなっているし、縁側で話さない?」

 「……はい。」


 凛と桜は、縁側に移動し、仲良く並んで座る。
 穏やかな日差しと冷たい空気……そして、風に乗って鼻をくすぐる洗濯物の洗剤の匂い。


 「ん? 洗剤?」


 姉妹は、匂いの先に目を移す。
 その先には、姉妹の下着が風に舞っている。


 「「!!」」


 姉妹の顔が、みるみる赤くなる。


 「何で、わたしの下着が洗濯された上に
  干されているのよ!」

 「わ、わたしのもあります!」

 「だ、誰よ!?
  勝手に洗って干した奴は!?」

 「……洗濯機を仕える人物が、
  犯人なんじゃないでしょうか。」

 「士郎ね……。
  ・
  ・
  あんにゃろ~~~!
  絶対、ぶっ飛ばす!!」

 「下着を置きっ放しにした
  わたし達にも問題がある気がしますが……。」

 「……そうね。
  確かにそれもあるわ。
  ルールを作りましょう。
  女性陣と男性陣で区別しましょう。」


 姉妹は、洗濯物を見続ける。
 自分達の下着と一緒に揺れる男性物の下着が、弥が上にも気を散らせイラつかせる。


 「居間に戻りましょう。」

 「……はい。」


 姉妹は、再び居間に戻る。


 …


 士郎の部屋にセイバーとライダーが現れる。
 部屋には、イリヤしか居ない。


 「二人とも、どうしたの?」

 「凛に追い出されました。」

 「そう。
  凛は、行動が早いのね。」

 「知っていたのですか、貴女は?」

 「ええ。
  わたしが煽ったんですもの。」

 「煽った?
  ちゃんと煽ったのでしょうね?」

 「煽り方に問題でもあるの?」

 「凄い気の入れようでしたので……。」

 「それは、わたしのせいじゃなくて、
  凛の性格の問題じゃないの?」


 セイバーとライダーは、少し考える。
 先日のお説教した時の凛の気概が頭を過ぎる。


 「性格ですね。」

 「でしょ?」


 イリヤは、クスリと笑う。


 「イリヤスフィール、質問なのですが、よろしいですか?」

 「ええ、構わないわ。」

 「魔術書の解読は、もう、終わったのですか?」

 「ええ、一通り。
  まだ、実際に魔術を試した訳じゃないから、
  完全に終わった訳じゃないけど。」

 「それにしても早過ぎませんか?
  間桐は、仮にも聖杯戦争のシステムを組み上げた一族。
  その魔術書の解読が、二日で終わるなど考えられないのですが。」

 「それは、士郎のおかげね。」

 「士郎?
  士郎が解析したとでも言うのですか?」

 「ええ、そう言っても過言じゃないわね。」

 「本当ですか!?」

 「あれは、魔術師が解くと時間が掛かる本だったのよ。」

 「?」


 イリヤは、座布団の上に座り直すと説明を始める。


 「秘伝の魔術書には、当然、一族以外に知られないための秘密がある。
  暗号、アナグラム、読み込むルール……例をあげれば数え切れないわ。
  間桐の魔術書は、魔術文字を基点に秘密が隠されていた。」

 「魔術文字……。」

 「そう。魔術師なら見た瞬間に必ず意味が頭に浮かぶ。
  更に今では、魔術師達に広く知れ渡っている
  暗号の解読法が散りばめられている。
  つまり、文字の中に文字を隠しているというわけ。」

 「木の葉を隠すなら、森の中……ですか。」

 「ええ、よく出来ているわ。
  まず、魔術文字で意味を惑わす。
  次に解読法で解読させ惑わす。
  ・
  ・
  これだけでかなりの時間を取られる。
  わたしの知っている解読法だけでも、
  誤認させられた解読法は、20近くもあったわ。」

 「そんなに……。」

 「更にその中から本当の解読をしているものを見極めなければならない。
  解読した記述は、試さなければ分からない。
  1個1個試せば、百年は掛かるわよ。」

 「百年……。」

 「イヤらしい事この上ないのよ! この魔術書!
  だって、全…………部っ、解読出来るのよ!
  解読出来ちゃった以上、調べるしかないじゃない!」

 「では、何故、シロウが正解の暗号を解読出来たのですか?」


 セイバーの質問に冷静さを取り戻し怒りを静めるとイリヤは、落ち着いて話し出す。


 「初めにおかしいと思ったのが、
  文字も読めない士郎がリストを作った事。」

 「でも、挿し絵で判断したとか言ってませんでしたか?」

 「セイバー、試しに士郎のリストを見ないで、
  この本の……この章の挿し絵を見てみて。」


 セイバーは、本をパラパラと捲り挿し絵を確認する。
 ライダーも横から挿し絵を覗いて確認する。


 「…………。」

 「統一性がない……馬鹿な!?
  シロウに見せて貰った時には、意味を理解出来たはずなのに!?」

 「うん。
  じゃあ、士郎のリストで示している挿し絵を見て。」

 「…………。」

 「繋がる……意味が繋がります!」

 「士郎は、ちゃんと意味を理解して挿し絵を選り分けているの。
  だから、士郎にコツを聞いたの。
  答えは、簡単だったわ。
  魔術文字の意味、暗号の解読法は全部フェイク。
  本当の解読法は、文字の記号化だったんだから。」

 「文字の記号化……。
  つまり、文字を記号として意味を持たせて
  文章を作らないと読めなかった……という訳ですか。」

 「その通りよ。」

 「しかし、その文字が、どのような意味の記号かの判断は?」

 「それが士郎にしか出来なかった事よ。
  実に効率的に解き明かしたわよ、士郎は。」


 イリヤの顔が引き攣っている。


 「どうしたのです?」

 「士郎はね……。
  赤点回避の技術を使ったんだって……。」

 「また、ですか!?」

 「ショックが大きいわ……。
  長年培った知識や一族秘伝の解読法を一蹴したんですから……赤点回避の技術で。」

 「士郎は、一体何者なんですか!?」

 「それより、一体どんな方法なんですか!?」

 「士郎の話では、赤点回避の連中の中では、
  使い古された古い方法らしいわ。」

 「それだけでも、侮辱された気分にさせられますね。」

 「国語の選択問題の技らしいんだけど。
  士郎は、国語の問題の時、問題の長文を一切読まないんだって。」

 「は?」

 「え?」

 「わたしも文章読まないで問題なんて解けないと思うわ。
  だって、文章の中に答えが書いてあって、それと合っているものを
  選択しないと正解しないのが道理でしょ?」

 「全くです。」

 「勘で当てるのですか?」

 「いいえ……作った人間の心理を読むのよ。」

 「前もそんな事を言っていましたが……。」

 「国語の選択問題だと……。
  明らかに違うもの。
  言葉の意味が矛盾しているもの。
  似た意味のもの。
  が大抵あって、意味の似ているもののどれかが、ほぼ正解なんだって。
  ちなみにこの心理は、士郎の学校の国語教師ね。」

 「今のが4択なら、ほぼ正解の2択まで絞れましたね。
  後は、一体何を判断するんですか?」

 「語尾らしいわ。」

 「語尾?」

 「~と言っている。
  とか
  ~と言います。
  日本語には、『ですます調』とか『である調』があって
  これで判断するって。
  テストペーパー自体の完成度が高いと答えが『である調』になって
  完成度が低いと『ですます調』になるんだって。」

 「完成度など、判断つくのですか?」

 「士郎の話だと、配点の振り分けで判断出来るらしいけど……。
  もう、わたしはお手上げ。
  言っている意味すら分かんない。」

 「セイバー、私は、頭が痛いのですが……。」

 「奇遇ですね……私もです。」

 「で、その法則に基づいて、挿し絵を判別するんだけど……。
  臓硯の思考を読み取ると……挿し絵に癖があって、
  明らかに騙そうとする者の意思が見え隠れするんだって。
  これは配点の完成度が分かるようにならないと無理だから、私には分からない。
  ・
  ・
  士郎が言うには、その癖の法則を照らし合わすと、そのリストになるんだって。」

 「全然分かりませんし、納得も出来ません。」

 「ええ、誰一人として士郎の説明に納得出来る人間は居ないわ。」

 「理解も出来ないのに
  どうやって貴女達は、取っ掛かりを見つけたんですか?」

 「士郎の言葉で文字が記号。
  挿し絵の選り分けは、可能になったでしょ?」

 「はい。」

 「挿し絵には、表題がついている。
  つまり、挿し絵=文字=記号になるのよ。」

 「なるほど。」

 「後は、文字=記号をリスト化する。
  新たな文章に、文字=記号で訳していき、
  新たな文字=記号に予測した意味を加えてリストを完成させれば……。
  魔術書の解読は完成よ。
  士郎が魔術師ではない事と勉強嫌いで変な能力があったから、
  解読の時間は短縮されたのよ。」

 「しかし……。
  手放しで喜べない。
  この後味の悪さは……。」

 「もう、言わないで……。
  魔術師の粋を極めた魔術書を『馬鹿』に解読されたってだけで、
  わたしや凛のプライドは、ズタズタなんだから。」

 「しかも、士郎は、数時間で解読してましたよね……。」

 「それも頭痛の種の一つ……。」


 セイバーは、額を押さえて俯いていたがある事を思い付く。


 「イリヤスフィール、ちょっと思い付いたのですが……。」

 「何?」

 「貴女の家系にも難攻不落の魔術書があるのではありませんか?」

 「ええ、あるわ。
  出所不明のものや一族全員の宿題に繋がるようなものも。」

 「それを……シロウに解かせては、どうですか?」

 「…………。」


 セイバーの意見にイリヤとライダーが固まる。


 「確かに得体の知れないものほど、
  士郎は、解き明かしそうな気がしますね。」

 「そうでしょう?」

 「面白いわね。
  やってみる価値はありそうだわ。」


 イリヤは、携帯を取り出すとセラに電話を掛ける。
 セラに電話が繋がるとイリヤは、現在、城にある未解読の古文書を手配した。


 …


 居間に戻る際に凛は、台所に足を運ぶ。
 そこにはティーカップのセットと沸騰し始めたポットが用意されていた。


 「アーチャーね……。
  陰ながら応援してくれているのかしら?」


 凛は、ポットの火を止め、紅茶を自分と桜の分を手早く用意すると桜の居るテーブルに運ぶ。


 「お待たせ。
  少し落ち着けてから話しましょう。」

 「はい。」


 紅茶を口に運び一息つくと、凛が話し始める。


 「桜、あなたの体の事は知っているわ。
  本来の属性を替えられるほどの影響が
  髪の色と目に表れているほどだから。」

 「…………。」

 「そして、桜が辛い事を我慢して来た事も。」

 「…………。」

 「だから、ごめんなさい。」


 凛は、深く頭を下げる。
 桜は、驚いて理由を聞く。


 「なんで、姉さんが謝るんですか?」


 凛は、頭を上げる。


 「桜の変化に気付いていたって事は、わたしは、それを認識していたのよ。
  だけど、わたしは、知っていながら桜を助けなかった。」

 「でも……それは、お爺様を倒す力がなかったからって……。」

 「それは、言い訳……。
  本当に勇気があったなら、殺されても桜を助けに行くはずだった。
  わたしは、死ぬのが怖くて、一歩を踏み出せなかったのよ。」

 「…………。」


 凛は、自分を許さない。
 強い意志で、自分の非を認める。
 桜は、その姉の態度に自分の弱さを認識し始める。
 そして、姉の様に少しでも強くなれたらと一歩を踏み出し始める。


 「もし……姉さんが、それを理由に謝るなら、わたしも同じなんです。
  わたしは、自分が辛いのを周りの人に言う事が出来なかった。
  大好きな姉さんに助けを求める事をしなかった。
  わたしは、勇気がなかったんです。
  ・
  ・
  抵抗もせず、助けも求めず、ただ自分を捨てていただけなんです。」

 「…………。」

 「この家に来てから、分かった事があるんです。
  姉さんと話す事、ライダーと話す事、みんなと触れ合う事……。
  これは、とっても大事な事だったんです。」

 「…………。」

 「本当は、これを守るために戦わなければいけなかったんだって。
  今、姉さんと話して気付きました。
  ・
  ・
  実は、こうして本音を話せるのも、
  今、姉さんの強い態度を見た後押しがあったからなんです。」

 「…………。」


 凛と桜は、お互いの言葉に罪の意識を背負っているのだと感じ取る。
 それは、すれ違った十数年に積み上げ蓄積されたお互いの壁のように思えた。
 だけど、この壁は、壊していかなければいけない。
 姉妹の手を取り合って……。


 「わたし達の感じている気持ちは……。
  悪い事なのかしら……。」

 「わたしは、姉さんに自分を責めて貰いたくないです。」

 「わたしだって!
  ……桜に自分を責めないで欲しい。
  ・
  ・
  誰だって思い通りに勇気を持てる訳じゃないもの。
  ……死ぬのは、怖いわ。」

 「そうです。死ぬのは、怖いんです。
  わたしも姉さんも、再会を望んでいました。
  死んだら再会を果たす事は出来ません。
  だから、死を恐れたんだと思います。
  ・
  ・
  わたし達は、みんな弱者なんだと思います。」

 「そうね。
  どんなに虚勢を張っても、誰でも勇気を出せない時があるはずだわ。
  認めましょう……わたし達は弱者だって。
  ・
  ・
  桜、わたしは、あなたが居なければ生きていけなかった。
  そして、死ぬのも怖かった。
  だけど、あなたの存在が、わたしを辛い魔術の道から外れないでいさせてくれた。」

 「はい。
  ・
  ・
  わたしも、姉さんが居なければ生きていけませんでした。
  そして、他人に自分を見せるのが怖かった。
  だけど、正義の味方の姉さんが助けに来てくれると信じて、間桐の家でも生きて来れました。」


 勇気とは、何だろうか。
 英雄のように賞賛される者だけが得られる証なのだろうか。
 弱さを認めた者にも等しく与えられる言葉ではないのだろうか。
 姉妹は、弱さを認め勇気を得たのだろう。
 胸の痞えも、高く感じた壁も、気にするほどではないように思えて来る。


 「わたしは、これからの未来は幸せに生きたい。
  桜と過ごせなかった時間より、桜と幸せになるわ。」

 「はい。
  わたしも、これからの未来は幸せに生きたいです。
  姉さんと過ごせなかった時間より、姉さんと幸せになりたいです。」

 「…………。」

 「だから……。
  本当の姉妹に戻りましょう。」

 「はい。」


 離れていた気持ちが近づくと、手に入れたかったものが手の届くところにあると認識する。
 姉が居てくれる事が嬉しくて。
 妹が居てくれる事が嬉しくて。
 そして、姉妹に戻る事をお互いが望んでいた事が嬉しかった。
 長い年月を掛けて取り戻した絆に感情は、目から溢れ落ちた。
 鏡写しに頬を流れる涙に気付くとお互いが気持ちを整理するため、暫しの沈黙が居間を支配した。


 …


 士郎の部屋では、件の人物である士郎の存在を思い出していた。


 「そういえば……。
  シロウは、何処に居るのですか?
  ここで作業をしていたのでは、居場所がないのでは?」

 「邪魔だから、隣のセイバーの部屋に押し込んであるわ。」

 (邪魔ですか……。
  士郎の部屋を占領しているのですから、
  この場合は、どちらかというと……。)


 『そうですか』と一言呟くとセイバーは、隣の襖を開ける。
 そこでは士郎が、昨日同様に大の字で寝ていた。


 「寝てます……。」

 「血を作らねばならないのですから、
  そっとして置いてあげてください。」

 「う~ん……。
  そうなると古文書の解析は、どうしよう?」

 「叩き起こしますか?」

 「セイバー、私の話を聞いていましたか?」

 「おや?
  これは……。」


 セイバーは、士郎の枕元に転がるライオン2体を抱き上げる。


 「見事です。
  仕事を終えてから眠りにつくとは……。
  流石は、私のマスターだ。」


 新たな鬣を生やしたライオン2体にセイバーは、満足顔で頷く。


 「何ですか、それは?」

 「ふむ。
  シロウに頼んで置いたライオンの大人化です。」

 (病み上がりの人間に
  この従者は、何をさせているのか……。)

 「あーっ!
  セイバーだけ、ズルイ!」

 「ズルくありません!
  これは、マスターに召喚させたサーヴァントの特権です。」

 「何か微妙に言葉のニュアンスがおかしいです。」

 「ライダー、貴女の気のせいです。」

 「わたしも、ぬいぐるみ持って来ればよかった!」

 「貴方は、人の家を改築するほどの事をしているではありませんか。」

 「そんなの些細な事よ!
  わたしは、お金で買えない幸せが欲しいの!」

 「士郎は、大人気ですね。」


 士郎は、耳元でギャンギャン騒ぐ口論に目を覚まし、数分前から胡坐をかいて座っている。


 (何をくだらない事で口論しているんだ?)

 「フ……。
  では、特別にシロウを貸してあげましょう。
  ぬいぐるみに罪はありません。」

 「ホント!?
  どうしようかな~。
  全部、お気に入りだからな~。
  新しいの作ってくれないかな~?」

 「流石に新しいのを作るのは時間が掛かるのでは?」

 「そんな事ないぞ。
  さっき、作ったヤツでよければ持って行っていいぞ。」


 件の人物の参入でセイバーとイリヤとライダーは、士郎の起床に気付く。


 「起きていたのですか?」

 「起こされたというのが正しい……。」

 「ねえ、士郎。
  『さっき、作ったヤツ』って?」

 「生地が余ってたんでな。
  ライオンを直した後に作ったんだ。」


 士郎は、押入れに仕舞った裁縫道具を掻き分けて人形を取り出す。
 そして、一体に手を突っ込む。


 「『シロウ! おかわりです!』」

 「あ! セイバー!」


 セイバーのグーが、士郎に炸裂する。


 「妙な台詞で、私の人形を操らないで下さい!」

 (的確に捉えた言葉だと思いますが……。)


 士郎は、反対の手に別の人形を装着する。


 「『フ……。
   セイバーの腹は、私が満たそう。』」

 「今度は、アーチャーですか。」


 再びセイバーのグーが、士郎に炸裂する。


 「だから、私を題材にからかうのを止めてください!」


 士郎は、構う事なくアーチャーの人形を外し、別の人形を装着する。


 「『セイバー、もう……その辺で止めては?』

  『何を言っているのです、ライダー。
   私は、まだ、腹八分目ですし、
   デザートの別腹も確保してあります。』」

 「士郎、上手い。
  声も少し似てる。」

 「声というより発音の強弱と発する間ですね。」


 再びセイバーのグーが、士郎に炸裂する。


 「シロウ!
  これでは、私が、ただの食欲魔人の様ではないですか!?」

 ((違うの?))


 士郎は、ライダーの人形を外し、バーサーカーの人形を装着する。


 「こればかりは、どうしようもないですね。
  バーサーカーは、しゃべれませんから。」


 イリヤは、期待の目を向け、士郎は、ニヤリと笑う。
 左手のセイバーに対して右手のバーサーカーは、溜息を吐いた後、両手を挙げてやれやれと首を振る。
 セイバーの最後のグーが、士郎に炸裂する。


 「侮辱も大概にしなさい!」


 イリヤは、笑い転げ、ライダーも少し笑いを堪えている。


 「まあ、概ね真実に沿った人形劇でしたね。」

 「ライダー!?」


 士郎は、両手の人形を外すとイリヤに纏めて渡す。


 「こんなんで、いいか?」

 「うん! ありがとう!」


 士郎に対してセイバーは、鋭い視線で敵視する。


 「シロウ。
  イリヤスフィールには、随分と甘いのですね。」

 「そうか?
  俺は、誰に対しても甘いぞ?」

 「私に対しては、どうなのですか?」

 「何を言ってるんだ?
  お前に対して、一番甘いじゃないか。
  普通いないぞ。
  自分のサーヴァントに殺され掛けて笑って許す奴なんて。」

 「うぐ……。
  シロウ、それを言うのは卑怯ではありませんか。」

 「まあまあ。
  ここからは、お前も楽しめる。」

 「は?」


 士郎は、新たな人形を両手に装着する。


 「『桜~。
   肩凝っちゃたわ。
   揉んでくれない?』

  『いいですよ、姉さん。』」

 「リンとサクラですか……。
  こんなものまで作ったのですか。」


 セイバーは、感心と呆れたの中間の言葉を吐く。


 「『どこが凝っているんですか?
   ここですか?』

  『もう少し下よ。』

  『ここですか?』

  『あんた、下手ねえ。』」

 「凛は、随分と偉そうですね。」

 「こんなもんじゃない?」


 人形劇でも主人の扱いに不満を持つライダーとデフォルトだと認識するイリヤ。
 士郎は、新たな人形を桜と入れ替える。


 「『なになに?
   ダメよ、桜ちゃん。
   わたしに任せて任せて!』」

 「まさかの大河登場ですか。」

 「『いくわよ! 遠坂さん!』

  『~~~っ! 待った!
   藤村先生、待ったです!
   押してます! 間違いなく秘孔を押してます!』」


 藤ねえのマッサージで苦しみもがく凛。
 ライダーは、少しすっきりした表情をしている。
 士郎の操作で凛の人形は、泡を吹いているように見える。
 士郎は、再び藤ねえと桜の人形を入れ替える。


 「『姉さん! 姉さん! 姉さ~ん!』
  ・
  ・
  デッド! エ~ンド!」

 「死んでしまうのですか!?」

 「うん。」

 「シロウ、それは笑えません。」

 「そう?
  セイバーは、こういうの好きかと思ったけど?」

 「貴方は、私をどういう風に捉えているのです?」

 「S。」

 「は? S?」

 「まあ、気にするな。」

 「気になります。」

 「これも君にあげよう。」


 士郎は、イリヤに凛と桜と藤ねえの人形を渡す。


 「あ、ありがとう。」


 イリヤの腕は、既に持ち切れないほどの人形が抱えられていた。
 人形劇は、更に続く。


 「『お嬢様! 一体、何時だと思っているのです!』

  『大丈夫よ。
   バーサーカーも一緒なんだから。』」

 「あ!」

 「誰ですか?」


 イリヤの家のメイドを知らないライダーは、首を傾げる。


 「『私とリズが、どれだけ心配をしているのかご存知ではないのですか!?』

  『うん、イリヤ心配。』」

 「シロウ、もう一人は?」

 「リズだ。
  ちなみに会った事ないから、リズの言葉遣いは、
  イリヤの情報から俺が適当に操っている。」

 「器用ですね……。
  片手で2体操るとは……。」

 「『今度からは、気を付けるわ。』

  『お嬢様は、あの衛宮という男に油断し過ぎです!
   あの得体のしれない男に近づくというだけで、
   私が、どれ程神経を磨り減らすか……。』」


 イリヤは、額を押さえる。


 「どうしたのですか、イリヤスフィール?」

 「いや、最近あった強烈なデジャブが……。」

 「『セラ、怒らない。
   小皺が増える。』

  『リズ! 貴女は、何を言っているのです!』

  『そうよ。
   セラ、美容によくないわよ。』

  『お嬢様まで!』」

 「士郎……。
  跡着けてたの?」

 「合ってるか?
  セラには、ちょっとした恨みがあるので、
  少し痛い目を合わせているのだが。」

 「わたし、もう少しセラに優しくしよう……。」

 「『もう、いいです!
   二人は、私の事など、何とも思っていないのですね!?』

  『そんな事ないわ。
   大好きよ、セラ。』

  『お嬢様……。』


 イリヤとセラの人形が抱き合う。


  『実は、セラとイリヤ……。
   こういうノリが好き。』

  『『リズ!』』
  ・
  ・
  みたいな?」

 「士郎……。
  本当に跡着けてないわよね!?」


 士郎は、人形を手から外すとイリヤに渡す。


 「これも君にあげよう。」

 「……ありがとう。」


 イリヤは、複雑な表情で人形を受け取る。


 「それにしても……。
  シロウ……何故、こんなに裁縫が出来るのですか?」

 「藤ねえに仕込まれてな。」

 「大河、直伝ですか?」

 「いや、違ったな……。
  藤ねえとネコさんだな。」

 「どっちも分からないのですが……。」

 「藤ねえがシロウの義姉で。
  ネコさんがアルバイト先の主です。」


 セイバーが、手早く説明を加える。


 「ある日だな。
  藤ねえとネコさんが、揃って家を訪れてだな。
  制服を直せと言って来るのだ。」

 「何で、そんな状況に陥るのです。」

 「まあ、あの人達は、
  ありもしない問題ごとを持って来る天才だから。」

 「生まれながらのトラブルメーカーなの?」

 「うん。
  で、次の日、卒業生を送り出さないといけないから、
  直すの手伝えというイベントが発生してだな。
  一度、直してやったら、いいもの見つけたみたいに思われて、
  事あるごとに直させられる訳だ。
  ・
  ・
  それ以来、俺の腕はメキメキ上達し、
  ご近所さんのウェディングドレスを手縫いで
  作成出来るほどにまで上達したのだ。」

 「……ウェディングドレスって。」

 「では、自分の服も手作りですか?」

 「それはしない。
  自分で作った服を自分で着るのは……痛い。」

 (((ああ、それは……。)))


 セイバーが、イリヤが持ち切れずに零した自分の人形を手に取る。


 「随分といい生地を使っていますね。」

 「ほら、一杯あるじゃん。布地は。」


 セイバーは、指差す先を見る。


 「!!
  私の服ではないですか!?」

 「正確には、藤ねえのお古な。
  それになんか……それを好んで着てるから。」

 「まあ……。
  そうですが……。
  シロウの話では、制服なるものがほとんどで着れないのは確かです。」

 「実は、着たかったとか?」


 セイバーのグーが、士郎に炸裂する。


 「そんな趣味はありません!」

 「士郎が、見たかったんじゃないの?」

 「可能性の一つは目撃した。
  セーラー服のセイバーは、実に新鮮だった。」


 再びセイバーのグーが、士郎に炸裂する。


 「子供の前で、何を堂々と言っているのです!」

 「男の浪漫?」

 「士郎は、わたしやライダーにも着て欲しい?」


 イリヤの質問にセイバーとライダーが士郎を見る。


 「……見たいに決まってるじゃないか。」

 「恥も外聞も無く言い切りましたね。」

 「私は、似合わないと思いますが……。」

 「ふ……。
  ライダーは、ダメだ……。」

 「ダメ?」

 「ああ、ダメだ……。
  ・
  ・
  それだけのスタイルと美貌!
  そして、落ち着いた口調を併せ持って似合わない!?
  男だったら、『馬鹿か!?』となるぞ。」

 「士郎……。
  褒めているのかもしれませんが、
  セクハラを受けている気分もします。」

 「士郎! わたしは?」

 「バッチリだ……いい。
  お嬢様のセーラー服……。
  白い髪っていうのも映えるよな。
  ・
  ・
  総合すると男でよかった。
  ・
  ・
  聖杯戦争で得した事って……。
  世界中の美少女を呼び出しまくれる事だと、今、気付いた!」


 士郎は、感動を噛み締めながら、拳を握り締めた。


 「いらない事に気付きましたね。」

 「やっぱり、ただの馬鹿だと再認識しました。」

 「ここまで正直だと逆に清々しいかも。」


 その時、家の呼び鈴が鳴る。
 セラが古文書を持って到着した。


 …


 居間では、凛の説明が始まっていた。


 「この家で桜の体の事を知らない人は居ないわ。」

 「衛宮先輩も知っているんですか?」

 「ライダーが、桜を救出する時に説明しているわ。
  その時に魔術書を手に入れさせたのが、士郎よ。」

 「衛宮先輩が?
  ・
  ・
  それで魔術書の移動を。」

 「ええ、ライダーの話を汲んでくれたらしいわ。
  一応、人としての筋を通してくれたみたいね。
  ・
  ・
  そして、魔術書を解読して、桜の体について調べたの。」

 「なんで、調べる必要があったんですか?」

 「色々、調べられるのは嫌だと思うけど。
  体の修正が命に関わるものや
  日常生活に支障を来たすものだったらって、心配だったの。」

 「……姉さんには話します。
  わたしの体には、蟲が寄生しています。
  そして、その蟲は魔力を吸い続けています。」

 「ありがとう。
  桜の口から聞けて、よかったわ。
  魔術書の解読は、もう、終わっているの。
  そして……。
  わたし達は、魔術書を解読して、
  桜の体から蟲を追い出す事を考えている。」

 「可能なんですか!?」

 「出来ると思ってる。
  だから、桜の体を調べないといけない。
  その時、アーチャーの解析魔術を使うわ。」

 「解析?」

 「ええ。
  手順も含めて簡単に説明するわね。
  アーチャーは、対象物の基本格子から構造まで全てを解析出来る魔術を身につけているわ。
  アーチャーの魔術で、桜の体に寄生している蟲の位置や状態を確認する。
  この蟲が魔術書通りのものか確認出来なければ、どうにもならないから。
  桜の体の状態と対象の蟲が確認出来たら、開発した『蟲をコントロールする魔術』を使用する。」

 「もう、随分と進めていたんですね。」

 「本当は、桜への説明が先だと思ったんだけど……心を決め兼ねてた。
  結局、さっき話すまで言い出せなかったのよ。
  ・
  ・
  でも、みんなが後押ししてくれたのよね。」

 「後押し……ですか?」

 「わたしと桜の二人の問題に踏み込まないで全部託してくれたの。
  だから、わたしが桜と話すまで、何も言わないでいてくれた。
  (イリヤには叱咤されたけど……)
  わたしと桜で解決してくれるって信じてくれているのよ。
  力強い後押しだと思わない?」

 「はい。
  信じて貰えるっていう事は力強いです。」


 凛は、目を瞑り、一呼吸して覚悟を決める。


 「今夜、実行しようと思うの。
  わたしの魔力が最高に高まる前にアーチャーの魔術を実行する。」

 「……はい!
  お願いします。」

 (力強い返事……。
  桜も覚悟を決めたんだ。)

 「分かったわ。
  ・
  ・
  桜、本番を前に確認させて貰いたい事がある。」

 「なんでしょう?」

 「開発した魔術が、本当に効果を発揮出来るか試さないと。」

 「確かにそうですね。
  分かりました。
  左手に使用してください。」


 桜は、左手を捲り上げて差し出す。


 「蟲には、体を左右に振る命令を出すから。」

 「待て。」


 凛の魔術実行前にアーチャーが現界し、止めに入る。


 「アーチャー……。
  あんた、そこで覗き見てたの?」

 「嫌な言いがかりはやめてくれ。
  私は、君のサーヴァントだ。
  主の側に付き従うのが役目だ。」

 「で、何で止めるのよ?」

 「どうせなら、今、解析を行う。
  君の魔術が機能しているかも、合わせて確認する。」

 「なるほど。」

 「それに……試す前の魔術を
  補佐なしで実行するのは危険だろう?」

 「お願いするわ。」

 「うむ。
  任せて貰おう。
  ・
  ・
  トレース・オン。」


 アーチャーは、桜の手を取り解析を始める。
 全身に行き渡る蟲の存在を確認する。


 「小僧に見せて貰った魔術書の蟲と同じだな。
  ただ、心臓付近に大物が居る。
  コイツは、魔術書にも載っていなかったものだ。」

 「大物?」

 「まずは、小物で試せばいいだろう。
  始めてくれ。」

 「分かったわ。」


 凛は、魔術刻印を起動し、新たに作り上げた呪文を詠唱する。
 意識が深く落ち、魔術を実行する回路に自分を導いていく。
 そして、組み上げた魔術が、凛の左手の前に現れる。


 「アクセス開始。」


 凛の魔術の光が、桜の左手に触れ左手を覆い始める。


 「コンタクト。
  ・
  ・
  命令を出すわ。」


 アーチャーの解析の元、蟲が左右に動く。


 「凛、左右に動いているのを確認した。
  次は、動きを止めてくれ。」


 凛の命令で、蟲は静止する。


 「確認した。」

 「コンタクト・カット。
  ・
  ・
  アクセス・カット。
  ・
  ・
  ふう。」


 凛が、魔術を停止させる。


 「制御出来たわね。
  桜、大丈夫?」

 「はい。」

 「見事だな。」

 「これで本番を迎えられるわね。
  今晩、決行よ。」


 凛と桜の話し合いと魔術の試験が終わる。
 戦いは、今夜。


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