<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.7779の一覧
[0] 【ネタ完結】Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~[熊雑草](2009/05/16 02:23)
[1] 第1話 月光の下の出会い①[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[2] 第2話 月光の下の出会い②[熊雑草](2010/08/27 00:09)
[3] 第3話 月光の下の出会い③[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[4] 第4話 月光の下の出会い④[熊雑草](2010/08/27 00:10)
[5] 第5話 土下座祭り①[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[6] 第6話 土下座祭り②[熊雑草](2010/08/27 00:11)
[7] 第7話 赤い主従との遭遇①[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[8] 第8話 赤い主従との遭遇②[熊雑草](2010/08/27 00:12)
[9] 第9話 赤い主従との遭遇③[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[10] 第10話 後藤君の昼休みの物語[熊雑草](2010/08/27 00:13)
[11] 第11話 赤い主従との会話①[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[12] 第12話 赤い主従との会話②[熊雑草](2010/08/27 00:14)
[13] 第13話 素人の聖杯戦争考察[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[14] 第14話 後藤君の放課後の物語①[熊雑草](2010/08/27 00:15)
[15] 第15話 後藤君の放課後の物語②[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[16] 第16話 後藤君の放課後の物語③[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[17] 第17話 天地神明の理[熊雑草](2010/08/27 00:16)
[18] 第18話 サーヴァントとアルバイト①[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[19] 第19話 サーヴァントとアルバイト②[熊雑草](2010/08/27 00:17)
[20] 第20話 サーヴァントとアルバイト③[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[21] 第21話 帰宅後の閑談①[熊雑草](2010/08/27 00:18)
[22] 第22話 帰宅後の閑談②[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[23] 第23話 帰宅後の閑談③[熊雑草](2010/08/27 00:19)
[24] 第24話 帰宅後の閑談④[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[25] 第25話 深夜の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:20)
[26] 第26話 深夜の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[27] 第27話 アインツベルンとの協定①[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[28] 第28話 アインツベルンとの協定②[熊雑草](2010/08/27 00:21)
[29] 第29話 アインツベルンとの協定③[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[30] 第30話 結界対策会議①[熊雑草](2010/08/27 00:22)
[31] 第31話 結界対策会議②[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[32] 第32話 結界対策会議③[熊雑草](2010/08/27 00:23)
[33] 第33話 結界対策会議④[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[34] 第34話 学校の戦い・前夜[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[35] 第35話 学校の戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:24)
[36] 第36話 学校の戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[37] 第37話 学校の戦い③[熊雑草](2010/08/27 00:25)
[38] 第38話 学校の戦い④[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[39] 第39話 学校の戦い⑤[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[40] 第40話 ライダーの願い[熊雑草](2010/08/27 00:26)
[41] 第41話 ライダーの戦い①[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[42] 第42話 ライダーの戦い②[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[43] 第43話 奪取、マキリの書物[熊雑草](2010/08/27 00:27)
[44] 第44話 姉と妹①[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[45] 第45話 姉と妹②[熊雑草](2010/08/27 00:28)
[46] 第46話 サーヴァントとの検討会議[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[47] 第47話 イリヤ誘拐[熊雑草](2010/08/27 00:29)
[48] 第48話 衛宮邸の団欒①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[49] 第49話 衛宮邸の団欒②[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[50] 第50話 間桐の遺産①[熊雑草](2010/08/27 00:30)
[51] 第51話 間桐の遺産②[熊雑草](2010/08/27 00:31)
[52] 第52話 間桐の遺産③[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[53] 第53話 間桐の遺産~番外編①~[熊雑草](2010/08/27 00:32)
[54] 第54話 間桐の遺産~番外編②~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[55] 第55話 間桐の遺産~番外編③~[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[56] 第56話 間桐の遺産④[熊雑草](2010/08/27 00:33)
[57] 第57話 間桐の遺産⑤[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[58] 第58話 間桐の遺産⑥[熊雑草](2010/08/27 00:34)
[59] 第59話 幕間Ⅰ①[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[60] 第60話 幕間Ⅰ②[熊雑草](2010/08/27 00:35)
[61] 第61話 幕間Ⅰ③[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[62] 第62話 キャスター勧誘[熊雑草](2010/08/27 00:36)
[63] 第63話 新たな可能性[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[64] 第64話 女同士の内緒話[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[65] 第65話 教会という名の魔城①[熊雑草](2010/08/27 00:37)
[66] 第66話 教会という名の魔城②[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[67] 第67話 教会という名の魔城③[熊雑草](2010/08/27 00:38)
[68] 第68話 幕間Ⅱ①[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[69] 第69話 幕間Ⅱ②[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[70] 第70話 聖杯戦争終了[熊雑草](2010/08/27 00:39)
[71] 第71話 その後①[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[72] 第72話 その後②[熊雑草](2010/08/27 00:40)
[73] 第73話 その後③[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[74] 第74話 その後④[熊雑草](2010/08/27 00:41)
[75] 第75話 その後⑤[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[76] 第76話 その後⑥[熊雑草](2010/08/27 00:42)
[77] あとがき・懺悔・本当の気持ち[熊雑草](2009/05/16 02:22)
[78] 修正あげだけでは、マナー違反の為に追加した話[熊雑草](2010/08/27 00:42)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[7779] 第63話 新たな可能性
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:9b88eec9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/27 00:37
 == Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==



 痩躯の男がキャスターの隣に立つ。
 キャスターは、その男をマスターだと伝えた。


 「…………。」

 「宗一郎様って……葛木先生なのか。」

 「これは……きついわね。
  わたし達の学校の教師なんて。」

 「そ、そうですね。」


 痩躯の男が口を開く。


 「衛宮、遠坂、間桐……お前達もマスターなのか。」

 「え~……まあ、はい。」

 「宗一郎様。
  申し訳ありません。
  私の意見を勝手に変えてしまい……。」

 「構わん。
  キャスターの好きにするといい。」

 「ありがとうございます。」


 士郎は、首を傾げる。
 キャスターと葛木という先生の接点が思い浮かばない。


 「キャスター……。
  二人のなりそめを教えてくれ。」

 「やだ! 坊やったら!」


 キャスターのグーが、士郎に炸裂する。
 凛と桜は、呆然とする。
 殴るべきところなのかと。



  第63話 新たな可能性



 話を伺うと葛木には、理由が見当たらない。
 キャスターを助けたのも気まぐれなら、手伝っているのも気まぐれのような気がする。
 凛は頭を抱え、桜にそっと耳打ちする。


 「分かる?
  何で、キャスターが葛木先生に惚れたか?」

 「正直、分かりません。」


 続いて凛は、イリヤに聞いてみる。


 「…………。」

 「お子様には、分からないか。」

 「失礼ね!」

 「じゃあ、分かるの?」

 「それは……。
  やさしそうだから?」

 「あんた、葛木先生が
  そういうタイプに見えるわけ?」

 「バーサーカーも、静かだけどやさしいし。」

 「バーサーカーはしゃべれないし、
  イリヤの制御下でしょ……。」


 諦めの悪い凛は、続いてサーヴァントに振る。


 「遂に我々ですか。」

 「そ、分かる?」

 「見た目は、物静かな夫に尽くす女房というところなのですが。」

 「なるほど。」

 「しかし、そういう場合は、お見合いを連想させます。」

 「セイバー……。
  何処で得た知識なのよ?」

 「はあ、古き良き日本の文化ですが。
  常に夫の3歩後ろを歩くような。
  ・
  ・
  そんな話を時代劇で……。」

 「時代劇って……。」


 凛は、アーチャーに視線を移す。


 「私は、分からんぞ。」

 「そうよね。」

 (何かそれはそれで、ムカツクな。)


 凛は、士郎に目を向ける。


 (聞いちゃいけない気がする。)


 桜達が、凛の行動を見守る。


 (聞くしかない……わよね。
  流れからして……。
  大丈夫!
  覚悟よ!
  分かっていれば耐えられるわ!)

 「分からないわよね?」

 「いや、分かるが。」

 「分からないわよね!」

 「分かるけど?」

 「『分からない』って、言いなさいよ!」

 「横暴だな……。
  お前こそ、聞きたくないなら聞くなよ。」

 「リン……それは、あまりに酷いのでは?」

 「だって……。」

 「私だって、気持ちは分かります。
  また、場を壊すのですから……。
  ・
  ・
  しかし、流れは大事です。
  そして、貴女が悪くなくても、
  貴女が悪くなってしまう事もあります。
  ・
  ・
  安心してください。
  どんな結果になっても、貴女を責める人はいません。」

 「セイバー!」


 セイバーの胸で凛が泣き濡れる。


 (なんなんだ……この扱いは……。
  俺に味方は居ないのか?)


 凛は、暫くしてセイバーから離れると、仕方なさそうな目で士郎を見ると溜息をつく。


 「士郎、仕方ないから聞いてあげるわ。」

 「これってさ……。
  軽いトラウマになるぐらいの虐めじゃないか?
  桜が周りからこういう事を言われたら、泣くんじゃない?」

 「わたしは、結構慣れてますから……。」

 (ああ……そういえば、そいうキャラ設定だった。
  明るくなったのは、家来てからだった。)

 「桜……今の本当?
  やったのは、誰?
  わたしが、慎二と同じ目に合わせるわ!」

 「凛、及ばずながら、私も力を貸します。」


 桜の事になり、ライダーも割って入る。


 (そういえば、慎二の進退を聞いていなかった。)

 「遠坂、忘れてたんだけど、
  頼んだ慎二への制裁は、何をしたんだ?」

 「両手両足を粉砕しただけよ!」

 「粉砕? どういう事?」

 「両手両足の間接という間接を破壊したの!」

 「流石です、凛。」

 「…………。」

 「桜、言っちゃいけない。
  友達が、この街から居なくなっちゃう上に
  遠坂とライダーが警察に捕まる。」

 「……分かりました。」


 凛とライダーの勢いに士郎と桜は項垂れる。


 「ところで、シロウ。
  さっきから、キャスターが答えを待っていますが?」

 「ん?」


 キャスターの後ろに黒いオーラが見える。
 オーラは、『散々無視してふざけた事を言ったら、ぶっ飛ばす』と言っている。


 (俺のせいじゃないのに……。)

 「で、何が分かるのよ。」

 (ここで、質問するか……遠坂よ。
  ・
  ・
  とっておきのボケをかますタイミングがなくなってしまった。
  ここでボケたら、間違いなく殺される。
  仕方ない……真実を捏造するか。)

 「セイバー、遠坂、桜、ライダー、イリヤ、お前達と同じだ。」

 「「「「「?」」」」」

 「一人でよかったんだ……分かってくれる人が。
  ・
  ・
  セイバー。
  藤ねえがセイバーの努力を理解してくれた時、嬉しかっただろ?」

 「はい。
  私を真正面から受け止めてくれる人は居ませんでしたから。」

 「遠坂、桜、ライダー。
  姉妹同士が分かり合う事。
  主従同士で分かり合う事。
  今、感じている信じ合う事の大事さや嬉しさは?」

 「それは……言葉では言い表せないわ。」

 「はい。
  長年、願っていた事ですから。
  そして、ライダーが、どれだけ頑張ってくれた事かも。」

 「私は、凛と桜が手を取り合って笑った事が忘れられません。」

 「イリヤ、バーサーカーはやさしいだろ?」

 「うん。」

 「それは、イリヤが支配しているからだけじゃないんだ。」

 「本当?」

 「本当だ。
  バーサーカーは、分かっているよ。
  戦い方から、気持ちが伝わる。」

 「士郎……。」

 「もちろん、俺とも分かり合ってる。」

 「うん!」

 「キャスターの逸話を聞けば分かって来る。
  メディアは、信じたかったんだ。
  そして、信じて欲しかった。
  ・
  ・
  葛木先生は、嘘をつかない。
  その真摯的な態度は、学校の皆が知ってるじゃないか。
  上級生になるほど、先生に対しての質問や意見が多くなっている。
  それは、質問や意見に対して、先生が偽りなく答えてくれるからだ。
  ・
  ・
  葛木先生は、メディアの一番欲しかったものを無意識で与えていたんだよ。」

 「…………。」


 士郎の言葉に、皆、心を打たれる。
 士郎は、キャスターを見る。
 キャスターは、涙を拭っている。


 (な、なんとか……乗り切った。
  これが正解だよな!?)


 しかし、ピンチは、まだ続く。


 「衛宮、勘違いをしている。」

 (はい?
  なぜ、葛木先生から意見が?)

 「私は、お前が思っているような男ではない。
  生徒に関して言えば聞かれたから答えたまでだ。
  キャスターに関しても、望みをただ受け入れただけだ。
  本来の私は、自分の意見を持ち合わせていない。」


 キャスターが、少し肩を落とす。
 しかし、顔は、それでも十分だと言っている。
 一方、セイバー達の視線は、葛木を許さないと言っている。


 (葛木先生……。
  なんて事を言うんだ。
  俺に新たなピンチを招かんでください!
  ・
  ・
  なんとかしなければ……。
  なんとかしなければ…。
  なんとかしなければ!)


 士郎は、セイバー達の不信感を背中に感じながら会話を続ける。


 「葛木先生も、人とは違う人生を歩まれたように感じますが?」

 (ダメだ……葛木先生の情報を引き出さないとフォロー出来ない。
  YESかNOかだけでも、手に入れなければ!)

 「ああ、その通りだ。」

 (それだけ!?
  本当に、YESかNOだけ!?
  何かしてたとかは!?
  ・
  ・
  なんとかしなければ!
  頭をフル回転させろ!)

 「先生の人生ですから、これ以上は聞きません。
  ・
  ・
 (本当は、直ぐにでも聞きたいが。)
  ・
  ・
  でも、俺が、今、言った感じ方は嘘じゃありません。
  そして、先生が、ただ受け入れた事も真摯に受け止めていると感じました。
  ・
  ・
  だから、もしキャスターの意見を受け入れたなら、
  彼女の気持ちを考えて行動をして貰えないでしょうか?」

 「ふむ。
  キャスターの気持ちか……。
  何処まで出来るか分からんが。」

 「少しずつでいいと思います。
  人生の伴侶を得てから、理解する事もあると思います。
  それに先生は、キャスターに、もう与えてしまいましたから、
  男だったら責任を取るべきだと思います。」

 「そうか……。」


 葛木の言葉を聞いて、キャスターは、不安そうに葛木を見ている。
 葛木が、キャスターに向き直る。


 「私は、責任を取らねばいけないようだ。
  そして、何も知らない男だ。
  それでも衛宮の言った事は、何故か胸に残る。
  こんな男だが、残りの責任を果たさせて貰えないか。」


 キャスターは、深く頭を下げる。


 「宗一郎様……。
  不束者ですが、お願い致します。」


 本堂は、静寂に包まれている。


 (しまった……。
  夫婦の契りをさせてしまった……。
  ・
  ・
  何をやってるんだーーーっ! 俺は!?)


 士郎は、一人で頭を抱える。
 頭を抱える士郎に凛が話し掛ける。


 「誤解していたわ。
  士郎が、一番、皆の事を分かっていたわ。」

 「…………。」

 「ええ、私は、貴方がマスターでよかった。
  我々の事をここまで思っていてくれたとは、
  思いもしませんでした。」

 「…………。」

 「士郎! 皆で頑張ってシステム作ろうね!」

 (ああ……失敗出来ないね。
  多分、サーヴァントのまま結婚なんて出来ないから。
  根源への道を繋げないとどうにもならない……。
  ・
  ・
  終わった……。
  最後の最後で、取り返しのつかない事をしてしまった。)


 冷静に蚊帳の外から見ていたアーチャーだけが気付いた。


 (自爆したな……。
  嘘が嘘を呼んで取り返しがつかなくなったのだろう。)


 …


 その後、葛木は、病院を訪問してから学校にて残務処理という事になった。
 ほとんどの生徒と先生が入院してしまった学校で動ける先生は少ないためだった。
 一人で山門を潜って行く葛木を見て、凛が質問する。


 「一人で行かせていいの?」

 「ええ、いざとなれば空間転移するから。」

 「キャスターって、そんな事も出来るのね。
  神代の魔術師か……弟子入りしようかな。」

 「お断りよ。
  そんな無駄な時間。」

 「葛木先生との甘い時間がいいものね。」


 キャスターは、照れながらくねくねと嬉しそうに悶えている。


 (嫌味も通じないわね……。)

 「フードつけて悶えるなよ……気持ち悪い。」


 キャスターのグーが、士郎に炸裂する。


 「お黙り! 坊や!」

 (扱いづらい奴だ……。)


 イリヤが溜息をついて話を進める。


 「それで、これからどうするの?
  わたし達、なんの意識合わせも出来てないんだけど。」

 「優秀なブレインが居るんだから指揮って貰おう。
  キャスターさん、お願いします。」

 「仕方ないわね。
  ついてらっしゃい。」

 「どこ行くんだ?」

 「話すのも面倒だから、私の成果を先に見せるわ。」


 キャスターは本堂を抜け、先に歩き出す。
 それに合わせて士郎達が続いて本堂を後にする。


 …


 山門を抜け、階段の途中で脇道に反れる。
 キャスターは、奥の巨石を指差した後、姿を消した。


 「なんか歪んだ……。」

 「キャスターの能力でしょうね。
  行くわよ。」

 「男らしいな、遠坂は。」


 凛のグーが、士郎に炸裂する。


 「褒めたのに……。」

 「言葉を選べ!」


 一同は、巨石からの空間を通りキャスターを追う。


 「何これ!?」

 「神殿です!」

 「小さな町ぐらいあるな。」


 イリヤが周りを見回す。
 そして、感嘆の言葉を漏らす。


 「キャスターの能力……陣地作成能力ね。
  でも、ここまでのものって……。」

 「これって、キャスターが作ったのか?」

 「そうよ。」

 「凄いな~。
  もう、いつでもホームレス生活出来るじゃん。」

 「士郎……。
  そんな無駄な使い方しないでよ。
  そもそも、柳洞寺にしか神殿は作れないわ。」

 「なんでさ?」

 「魔力を集める拠点が必要だから。
  想像出来るでしょ?
  これだけの空間に街を再現する神殿を作るんだから、
  霊脈を使って魔力を大量に確保しないと。」

 「ふ……。
  魔力なんて分からんから、想像出来ないさ。」

 「……大馬鹿。」


 キャスターに続いて長い道を歩き、大きな神殿の前まで辿り着く。


 「ここで例の根源への道を作る装置を作っているのよ。」


 士郎達が、神殿を覗くと地下に磨かれた円形の巨大な石が見える。
 その石には、図形が刻まれている。


 「イリヤ、この図形……。」

 「ええ、古文書の図形に似てるわ。」

 「どうやら、本当に紐解いていたようね。」

 「ところでさ。
  キャスターは、これ作ってどうする気なんだ?」

 「私は、受肉して宗一郎様と居るつもりだったわ。」

 「ただ居るだけでいいのですか?」


 セイバーは驚いているが、キャスターは微笑んでいる。


 「ええ、一緒に居るだけでいいわ。
  そのためには、サーヴァントで在り続けないといけないから。」

 「どういう事だ?」

 「聖杯戦争が終われば、私達は、座に戻らなければいけない。
  あの忌まわしい契約の鎖に繋がれた……。」

 「しかし、今回の聖杯戦争の召喚がなければ、
  私達は、シロウに会う事も、それぞれのマスターに会う事もなかった。
  私は、世界に感謝しています。」

 「セイバー……。
  貴女、契約の事を……いえ、何でもないわ。
  確かに、そこは感謝しているわ。」


 キャスターは、言葉を遮ったが、士郎は、直ぐに思い当たった。
 アーチャーと話した夜の事を。


 (セイバー自身は、気付いていないのか?
  いや、気にしていないんだろうな。
  ・
  ・
  キャスターの話し方から、キャスターは気付いている。
  ライダーは……ポーカーフェイスで読めないな。
  ・
  ・
  それにしても、アイツは、どこまでお人好しなんだ?)


 士郎は、騙されたと思っていないセイバーに苛立つが、自分自身では、苛立っている事に気付かなかった。
 士郎は、とりあえず、その話は置いてキャスターに質問をする。


 「キャスター、ここで根源への道を開くつもりだったのか?」

 「そうよ。」

 「…………。」


 士郎は、顎に手を当て考え込む。
 凛は、士郎に質問する。


 「何か気になる事でもあるの?」

 「ここで根源への道を開くのは、拙いかもしれないな。」

 「どうしてよ?」

 「根源への道を奪われないか?」

 「は? 誰によ?」

 「ここで根源への道を開くと、当然、世界中の魔術師に分かるよな?」

 「莫大な魔力が流れ出るから仕方ないわ。」

 「それを奪いに来ないか?
  魔術協会ってのが。」

 「奪いに来たって平気よ。
  無限に近い魔力があるんですもの。」

 「でもさ。
  キャスターは、魔法使いじゃなくて魔術師なんだろ?
  魔術協会の奴らが、セイバーみたいな対魔力の強いサーヴァントで
  嗾けて来たら、どうするんだ?
  キャスターは殺されて、根源への道を奪われるんじゃないか?」

 「……否定出来ないわね。
  でも、ここ以外で根源への道は開けないわよ。」

 「そうか……。」


 士郎は、再び考え込んでしまった。


 「とりあえず、士郎は、放って置いて、
  今後の作業を決めましょう。」

 「ええ、それがいいわ。
  お嬢ちゃんは、イリヤでよかったかしら?」

 「イリヤスフィールよ。
  そう、呼んで。」

 「分かったわ、イリヤスフィール。
  貴女の持っている古文書や間桐の魔術書を拝見したいんだけど。」

 「協力関係にある以上、閲覧を許可しないといけないわね。
  凛、拠点を移した方がいいわ。」

 「士郎の家から、ここに?」

 「ええ。」

 「確かに……ここじゃないとダメね。」


 アーチャーが前に出る。


 「では、必要な物の運搬は、私がしよう。」

 「いえ、残ったサーヴァント全員で行いましょう。
  マスター達には、キャスターと今後の相談をして貰わなければ。」

 「了解した。
  キャスター、手頃な家を借り受けるぞ。」

 「ええ、構わないわ。」


 セイバーとライダーとアーチャーが、神殿を後にする。
 士郎は、まだ、考え込んでいる。


 「凛、あなたも古文書提供しなさいよね。」

 「わたしも?」

 「そうよ、1%でも可能性を上げるためなんだから。」

 「仕方ないか……。」

 「わたしは、役に立ちますかね?」


 桜は、不安そうに質問する。


 「役に立つはずよ。
  間桐の魔術は、水を基礎としているから、古文書には、その類の説明があるはずよ。
  その時は、桜の知識を貸して貰うわ。」

 「分かりました、姉さん。」

 「まずは、お譲ちゃん達の古文書から意識を合わせましょうか。
  このシステム作りは、結論を出してからにしましょう。」


 魔術師4人が、意思を一つにして頷く。
 その時、士郎が顔を上げる。


 「そうだ……。
  ここに作る必要なんてないんだ。
  ・
  ・
  キャスター、ちょっといいかな?」

 「何かしら?」

 「変な質問なんだけど、キャスターは、世界との契約切りたくないか?」

 「出来る事なら、切りたいわね。」

 「よし。
  ・
  ・
  契約の切り方知ってるか?」

 「ええ。
  でも、実現は無理よ。」

 「理由は?」


 キャスターは、懐から歪な短刀を取り出す。


 「破戒すべき全ての符……私の宝具、ルールブレーカーよ。
  これを突き立てれば契約を打ち消せるわ。
  だけど、私にルールブレーカーを突き立てる方法がないのよ。」

 「なるほど。
  材料は、揃っている訳だな。」

 「凛、これって……。」

 「間違いないわね。
  また、悪魔的な事を考え付いたのよ。」

 「また、ですか!?」

 「さっき言ったように
  ここだと安全じゃないってのは理解したよな?」

 「ええ。」

 「だからさ。
  別のところで根源への道を開こう。」

 「坊や、魔力の集められるところじゃないといけないのよ。」

 「分かってる。」

 「じゃあ、何処で開くのよ?」

 「座だ。」


 士郎の言葉に全員が絶句する。


 「士郎……頭、大丈夫?」

 「正気だ。」

 「何を根拠に、そんな事を言えるのかしら?」


 キャスターが溜息をつく。


 「多分、途中から説明すると混乱するから、
  一番最初の手順から話すぞ。」

 「ええ、聞いてあげるわ。」

 「まず、ランサーを仲間に引き込む。」

 「は?」

 「え?」

 「どうして?」

 「…………。」

 「そして、冬木の聖杯と聖杯戦争のシステムを破壊する。」

 (もう、意味が分かんないんだけど。)

 (士郎、何を考えてんだろう?)

 (衛宮先輩……分からないです。)

 「…………。」

 「さて、問題です。
  この行為をすると何が起きるでしょうか?」

 「何って……聖杯戦争がなくなるだけじゃない。」

 「それから?」

 「それだけよ。」

 「遠坂、冷静に考えろ。」

 「ムカつくわね。」

 「サーヴァントが座に帰るわ。」

 「そう。
  ただし、7人一編にな。」

 「…………。」


 キャスターは考えながら聞いているが、凛、イリヤ、桜の三人は、首を傾げている。


 「この座に戻るのを利用して根源への道を繋げるのが、
  聖杯戦争のシステムの一つだったはずだ。
  と、いう事は、座と根源への道は、近くにあると考えられる。」

 「…………。」

 「この座に帰るのを利用して、サーヴァント7人で根源への道を開く。」

 「「「「!!」」」」

 「どうやって、そんな事をするのよ!?」

 「まず、座とこっちとの間にキャスターの神殿を作る。
  そこがサーヴァント7人の拠点だ。」

 「そんな事、出来るの?」

 「小さくてもいいなら、出来ない事もないと思うけど……。」

 「規模は、関係ない。
  どうせ持久戦になるから、徐々に大きくすればいい。
  それに座には、魔力が溢れているんだろ?」

 「確かに英霊を確保するには、莫大な魔力が必要なはずだわ。
  そうか……世界が魔力を確保するとしたら、
  根源からと考える方が正しいのかも。」

 「そこで神殿を作ったら、今度は、こっちで作り上げた
  根源への道を作るシステムを使用する。」

 「そんなに直ぐには、出来ないわよ?」

 「この後ろの円石。
  これをアーチャーに投影して貰う。」

 「ちょ、ちょっと待った!
  アーチャーは、武器以外の投影は、精度が落ちるって言……。」

 「なら、円石を使わず巨大な剣に図形を描けばいい。」

 「巨大な剣なんて、どう用意するのよ!?」

 「イリヤのバーサーカーに作って貰う。」

 「バーサーカーに……。」

 「話を進めるぞ。
  神殿構築、システム構築、その後は、時間稼ぎだ。
  おそらく根源への道を開くには時間が掛かる。
  根源への距離と溢れる魔力から、
  時間は大分短縮されるが、数日は掛かるだろう。
  その間、敵から神殿を守らなくてはいけない。」

 「敵ですか?」

 「ああ、おそらく世界が契約の破棄を許さない。
  だから、英霊を神殿に送り込んで来るはずだ。
  そいつらと戦うんだ。」

 「無理よ! 数が違うわ!
  こっちは、キャスターを除いて6人よ!」

 「いや、アーチャーも神殿に居て貰う。」

 「じゃあ、5人じゃない!」

 「ただの5人じゃない。」

 「坊や、過大評価するのもいいけど根拠が薄いわ。」

 「烏合の衆と組織された小隊……どっちが強いと思う?
  サーヴァント6人には、組織戦の特訓をして貰う。」

 「な!?」

 「そして、アーチャーを控えさせているのにも理由がある。
  数日戦う以上、2回り以上すると思っている。」

 「2回り?」

 「やられた英霊が座に戻り、再び、戦闘に参加するはずだ。」

 「1回目の戦闘ではアーチャーに神殿からの後方支援を担当して貰う。
  2回目以降は、英霊の弱点となる宝具で狙い打って貰う。」

 「そうか。
  ランサーの武器を応用したアレね。」

 「後で、アーチャーの能力の詳細を教えなさい。」

 「分かった。
  これで、時間稼ぎもクリアだ。
  続いて神殿の無敵化と鍵を作る。」

 「坊や、無敵なんてありえないわ。」

 「神殿に人が居ればな。
  仕上げは永久機関による根源への道の制御だけだ。
  そして、神殿ごと時を止める。
  動いているのは、神殿内部の永久機関だけだ。」

 「時って……止められる訳ないじゃない!」

 「出来るはずだ。
  キャスターの空間転移。
  ヤマトのワープ航行では、時間軸を歪めて飛び越える。
  それが空間転移に応用されているなら、神殿の時間を止める事が出来るはずだ。
  スプリガンでは時の止まった物体は、傷つけられないと言っていた。」


 キャスターは、考え込むと頷く。


 「現世では無理でも、魔力の溢れる座なら出来るかもしれない。
  坊や、とりあえず、出来たものとして続けて。」

 「了解だ。
  永久機関の方は心配してない。
  魔術というものがそうらしいからな。
  聖杯戦争は、二百年続いていると言っている以上、
  魔術は、魔力さえ通っていれば消えないはずだから。」

 「周りは、魔力だらけだもんね。」

 「その通り。
  ・
  ・
  続いて鍵だ。
  これは、現世で根源への道を開くものだ。
  開けっ放しだとバレるけど、使う時だけ開けばバレないだろう。
  ただ、鍵は、想像だけで、どういうものが出来るかは考えていない。」

 「簡単に作れるわ。先に進めて。」

 「さすが、キャスター。
  さて、これで根源への道については終わった。
  後は、サーヴァント達の行く末だ。」

 「あの……。」

 「なんだ? 桜?」

 「サーヴァントさん達が戦う時の魔力供給は、どうするんですか?」

 「それか。考えなくていいぞ。
  俺達との契約が切れたら、世界との契約に戻るはずだ。
  魔力供給は、世界から来るはずだから。」

 「そうですか……分かりました。」

 「あ、そうだ。
  桜の言葉で思い出した。
  神殿作るのって、世界との契約が復活したの確認出来た後でな。」

 「ええ。」

 「では、あらためて。
  サーヴァントの行く末だが、まず、アーチャーの投影で
  ルールブレーカーとゲイボルグの合体版を作る。
  で、これを矢にして世界に打ち込む。7人分。
  これで世界との契約が切れるから、
  その後、キャスターが根源への道を開いて好きに決めてくれ。」

 「好きに?」

 「言い方が悪かった。
  こっちで皆の今後の希望を聞いて実現してくれ。
  キャスターなら、葛木先生と人生を歩みたいとかだ。」

 「宗一郎様と……。」

 「うん、生まれ変わってな。
  契約切れたし、これで万事めでたしめでたしだ。」


 キャスターは考え込み、凛達は、頭で必死に整理している。


 「衛宮先輩、本当に出来るんでしょうか?」

 「俺は、無責任な立場だからな。
  出来そうな事だけを言って、皆に考えて貰っている。」

 「でも、座に拠点を作るって、
  中々思い付かないのではないでしょうか?」

 「う~ん、俺も苦肉の策から搾り出したんだ。
  誰も手が出せなくて魔力のあるところって考えたら、
  あそこしか思い付かなかったんだ。」

 「確かに冬木の街に
  根源への道が開いているのは怖いですよね。」

 「うん。下手したら世界中の魔術師が集まって、
  冬木の街が魔術協会になりかねない。」

 「故郷がなくなっちゃうのは、辛いですものね。」


 士郎は、黙って頷く。
 そして、考えている凛、イリヤ、キャスターを余所に桜との会話を続ける。


 「そういえば、魔法使いって居るだろ?」

 「はい。」

 「彼らは、ちゃんとその辺の処理をしているよな。
  痕跡も迷惑も残さないんだから。」

 「そうですね。」

 「桜達が根源への道を開くなら、
  アフター・ケアもしっかりしないとな。」

 「出来るでしょうか?」

 「どうだろう?」

 「不安です。」

 「大丈夫、時間はあるんだから。
  ん? でも……時間掛かって学校始まったら、作業が遅れるな。
  ライダーに、また結界張って貰おうか?
  そうすれば、また休校だ。」

 「ダ、ダメです!」

 「じゃあ、しっかりしなきゃ。
  期待しているからさ。」

 「が、頑張ります。」


 桜と話している内に、キャスター達が結論を出したようだ。


 「神殿を作って根源への道を作るのは可能だと思うわ。
  問題は、サーヴァント同士の戦争よ。」

 「ええ、こればかりは避けて通れないはずだもの。」

 「問題もあるわ。
  わたしのバーサーカー。
  狂化が解けたバーサーカーが、すんなり味方になってくれるかよ。」

 「狂化は、今、解けないのか?」

 「クラスが固定されているから。
  それに本来、ヘラクレスは、
  バーサーカーとして呼び出される英霊じゃないわ。
  それを強制的に狂化して制御下に置いているから、
  狂化を解く事は出来ないわ。」

 「そっか。
  ・
  ・
 (アインツベルンは、積極的に裏技を使うな……。)
  ・
  ・
  バーサーカーの事は神殿を作ってから、
  キャスターと相談して貰うしかないかな?」

 「何で、私に相談なのよ?」

 「だって、狂化しているバーサーカーに行く末聞けないじゃん。
  結局、最後は、キャスターと話さないと。
  一緒で、いいじゃん。聞くのは。」

 「……目敏いわね、貴方。」

 「まずは、ランサーだ。
  アイツを捕まえんと、どうにもならん。」

 「あんたさ……。
  アーチャーに試し打ちさせる時に、ランサーで実験しなかった?」

 「そんな事もあったな……。
  あの時、やっつけなくてよかった……。」

 (ランサーが聞いたら怒りそうだわ……。)

 「でも、どこに居るんだろう?」

 「あなた達、キャスターの能力を忘れてない?
  彼女の魔力感知能力は、冬木の街全体に広がっているわよ。」

 「もしかして、誰がマスターかも分かってる?」

 「分かっているわよ。」

 「「「お~~~。」」」

 「マスターは、仲間になってくれそうな奴なのか?」

 「ならないわね。
  ・
  ・
  赤い貴女。」

 「凛、って呼んでくれていいわ。」

 「マスターは、貴女の天敵よ。」

 「天……敵?
  もしかして!」

 「神父よ。」

 「あ~~~っ! やっぱり!」

 「誰?」

 「あんたにも話したでしょ!
  監督役よ! 聖杯戦争の!」

 「あ~、俺が断った。」

 「そうよ。」

 「変態と名高い。」

 「そうよ!」

 「じゃあ、やっつけちゃえばいいじゃん。
  使えなくなった作戦通りにライダー対ランサーをしている最中に、
  残りのサーヴァントでフルボッコにすれば。」

 「あんた、悪魔みたいな奴ね。」

 「ホント、魔術師が可愛く見えるわ。」

 「そこまでか?」


 各々、何度目かの溜息をついたところで、一息入れる事にした。


 「アイツら、早く戻って来ないかな……パリッ。」

 「あんた、何処から煎餅出したのよ。」

 「本堂から持って来た。」

 「図々しいわね。」

 「皆も食べるか?」

 「お茶も欲しいわね。」

 「緑茶でいいのか?」

 「紅茶がいいわ。」

 「貴女、そんなものを好んで飲むの?
  あんなものただの色水じゃない。」

 「……キャスターって、味覚障害者なのか?」


 キャスターのグーが、士郎に炸裂する。


 「違うわよ!
  貴方、言葉に気をつけなさい!」

 「俺は、言葉より先に出る拳を注意するべきだと思う。」


 寛いでしゃべっているところに、セイバー達が戻って来る。


 「必要そうなものは、持って来ました。
  ただ、シロウのものは、纏まっていませんでしたので、
  後ほど、取りに戻ってください。」

 「分かった。
  俺以外は、泊る用意して荷物持って来てるからな。
  ・
  ・
  あ、これお駄賃。
  セイバーのために取っといた。」

 「ありがとうございます。」

 (嘘じゃない……。
  さっき、皆で食べようって出したヤツだし。
  外見の袋空いてるし。
  ・
  ・
  セイバー信じ過ぎ……。)


 セイバーは、さっそく一枚口に加える。


 「イリヤの荷物は、大変だったろう?」

 「途中、セラというメイドに会いました。
  既に内装も済んでいます。」

 「やっぱり、凄いな……セラ。
  あれ、イリヤの宝具なんじゃないの?」

 「坊や、寛いでていいの?」

 「ああ、さっきの話?
  キャスターがしてくれないかな?
  俺のは、勝手な予想だろ?
  専門家の予測を入れて説明してくれると分かり易い。
  ・
  ・
  あと、イリヤと遠坂と桜。
  御三家の代表として、フォロー頼む。」

 「分かったわ。」

 「仕方ないわね。」

 「出来る範囲で、がんばります。」


 その後、キャスターの説明により、お使いに出されたサーヴァント達に説明が行われた。
 キャスターの知識により、主だったフォローを入れずに説明は滞りなく終了する。


  ・
  ・
  こんなところかしら?」

 「大胆な戦略だな。」

 「ええ、聖杯戦争のサーヴァント召喚のシステムを逆手に取るとは。」

 「シロウの匂いが、プンプンしますね。」

 「ええ、坊やの考えよ。
  ・
  ・
  ここからは、実行するかどうかの意思確認が必要だわ。
  立案した以上、坊やは賛成。
  他の人達の意思を確認したいんだけど。」

 「キャスター。
  貴女自信は、どうなのですか?
  まず、貴女の意見を聞きたい。
  正直、勝算があるかどうか判断し難い。」

 「私は、勝算がなくても乗るわよ。
  坊やの言った通り、根源への道を奪われて殺される確立の方が大きいから。
  根源への道の隠蔽も出来るなら、一石二鳥ですもの。
  それにサーヴァント同士の戦いは、
  私個人よりも貴方達の実力と連携に懸かっているわ。」

 「そうですか。」

 「私は、乗らせて貰う。
  世界との契約で戦うのも飽きて来たところだ。」

 「飽きて来たって……。」

 「いや、磨耗して来たが正しいか。
  繰り返される戦いより、次の生で確かめたい事が出来た。」

 「契約を切って転生希望って訳ね。」

 「ああ。」

 「私も、お願いします。」

 「ライダー。」

 「契約さえ切れれば、交える縁の可能性があります。
  私は、もう一度、望んでみたい。」


 キャスター、アーチャー、ライダーは、すんなりと答えを出した。
 続いて、セイバーが口を開く。


 「私は、お手伝いだけさせて貰います。
  世界との契約を切る事は出来ない。
  世界には、恩がある。」

 「馬鹿らしい。」

 「何がですか、シロウ!」

 「馬鹿らしいから、馬鹿らしいと言ってんだ。
  セイバーは、根っこの部分が全然変わってない。」

 「何故、そのような言い方をするのです!」

 「自分で考えな。
  俺、アサシンに聞いて来る。」


 士郎は、苛立ちながら立ち上がり、外へ向かう。


 「何だというのです! あの態度は!」


 サーヴァントであるものだけが理解していた。
 不条理な契約の真実を。
 だから、士郎が苛立つ事に反対は出来なかった。
 そして、英雄である事を貫いているセイバーに尊敬と複雑な感情が彼らの胸に残った。


 「お譲ちゃん達は?」


 キャスターの質問にイリヤが真っ先に答える。


 「やるわ。
  ただし、条件を付けさせて貰うわ。
  聖杯戦争のシステムを壊すのは、最後にして貰う。
  万が一、失敗したら聖杯を再び求めないといけないから。」

 「当然の答えだわ。」

 「聖杯戦争のシステムは、聖杯を壊せばいいはずよ。」

 「でも、エネルギーの溜まっていない聖杯は、
  姿を現さないんじゃなくて?」

 「大聖杯から、直接、聖杯だけを壊すわ。」

 「イリヤ! そんな事まで話していいの!?」

 「構わないわよ。
  サーヴァントは、聖杯戦争が終わったら消える運命ですもの。」

 「確かにそうだけど……。」

 「ところで、凛。
  あなたは、どうするの?」

 「わたし? 乗るわよ。
  アーチャーが望んでいる事だし。
  借りは返して置きたいわ。」

 「桜は?」

 「わたしも賛成です。
  ライダーの力にもなってあげたいし。
  冬木から、争いの種はなくしたいです。」

 「そう。
  じゃあ、反対者なしね。」

 「アサシンは?」

 「いいのよ。
  アサシンのものは、私のもの。
  私のものは、私のものなんだから。」

 「酷いジャイアニズムね。」

 「じゃあ、今後の展開。
  私とお譲ちゃん達は、システム作り。
  バーサーカーは、剣作り。
  残りは、ランサー確保。 いいわね?」


 皆が、一様に頷く。


 「そうなると綺礼との交渉は、士郎がやるのか……。
  不安が残るわ。」

 「どうせ、決裂するんでしょ?
  だったら、誰が言っても同じじゃない。」

 「それもそうか。」

 「え~と。
  士郎とセイバーとライダーとアーチャーが行くんだよね?」

 「ええ。」

 「サーヴァントが三人も居れば、絶対負けないと思うわ。」

 「勝ち負けじゃなくて、確保が目的よ。」

 「分かってるわよ。
  神父だけ殺せばいいんでしょ?」

 「それも、何処かずれてる。」


 本日は、これでお開きになった。
 拠点の移転による後始末やシステム改造の下準備に当てるために。
 ただ、士郎とセイバーのすれ違いが少し胸に残った。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.037785053253174