== Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==
士郎は、遠くからセイバーの戦いを見つめ呆れている。
ギルガメッシュの一撃は、民家を含めて数百メートルを吹き飛ばしている。
そして、止めを刺したセイバーの一撃も教会の一部を吹き飛ばしている。
「なんなんだよ、これは……。
人の事をデタラメだデタラメだって言いながら、
一番デタラメなのは、自分じゃないか。」
セイバーの出した被害は、兎も角、ギルガメッシュの一撃は、大被害になっている。
士郎は、携帯を取り出すとイリヤの携帯に電話を入れる。
凛に変わって貰い用件を告げると、携帯からは、スピーカーを使用した様な声が響いた。
第67話 教会という名の魔城③
数十分後、ベンツから、凛が降りて来ると走りながら士郎にグーを炸裂させる。
一緒に来てくれたキャスターが、早速、事態の揉み消しを図ってくれた。
「一体、何があったのよ!」
「そうよ!
昼間に戦っちゃダメなのよ!」
「話し合いのはずじゃなかったんですか?」
「それ、後にしよう。
民家まで攻撃がいってるから、そっちの被害をなんとかしないと。」
そこへ、件の関係者が全員顔を揃える。
「セイバーの戦いが、一番激しかったようですね。」
「はい。
相手に宝具の使用を許してしまいました。」
「よく無事だったな。」
「ええ、覇王剣が役に立ちました。
あの剣は、英雄王の宝具の攻撃さえ斬り裂きました。」
全員は、吹き飛んでいる跡を見ながら、それを斬り裂いたという言葉に驚いている。
しかし、驚いてばかりもいられない。
「キャスターが事後処理を始めてるけど、
俺達も手伝った方がよくないか?
それとも犯人だってバレないように逃げた方がいいのか?」
「居ない方がいいわね。」
とりあえずの行動が決まるとアーチャーが、凛に声を掛ける。
「凛、ちょっといいか?」
「ん? 何?」
「実は、神父を殺した。」
「え?」
「已むを得なかった。」
アーチャーは、蘇った記憶を元に少し事実を捏造する。
「あの神父は、アンリマユの復活を目論んでいた。
それに前回の聖杯戦争で凛の父を殺したのも神父だ。」
「どうして、そんな事……。」
「詳しくは分からない。
だが、私のマスターが凛だと分かったら、
色々と話してくれてな。」
「綺礼の性格なら、話しそうだけど。」
「すまないな。
マスターの事を考えたら、踏み止まれなかった。」
凛は、フンと鼻を鳴らし、そっぽを向く。
「いいわ。
そういう事情なら、許してあげるわ。」
「ああ。」
士郎は、やりとりを聞いて思う。
(嘘っぽいな……。
でも、知らない真実をアーチャーが聞き出したんなら嘘じゃないよな?)
「なあ、アンリマユって、なんだ?」
「この世全ての悪と言えば分かるか?」
士郎以外は、アーチャーから語られる存在に表情を硬くする。
「何それ?」
そして、士郎以外が溜息を吐く。
「その話も全部後にしましょう。
綺礼が死んでいるなら、後処理もしないと。」
「?」
「先輩、教会に連絡するんです。」
「ああ、神父は監督役だからか。」
(しかし、実際に人が死ぬって聞くと、ぞっとするな。
やっぱり、聖杯戦争は戦争なんだな。)
…
報告1:
結局、あれだけの被害が出たにも関わらず死傷者0という有り得ない結果がキャスターの口から報告された。
深い理由をキャスターは、語りたがらなかった。
被害者になるはずの人達は、既に教会の下で、ギルガメッシュという英霊を存在し続けさせるために被害者になっていたらしい。
報告2:
監督役の死亡により、聖杯戦争の管理者が居なくなった。
教会自体も言峰自身がマスターになっていたのは、寝耳に水だったらしい。
冬木の管理者である遠坂が、次の監督役が来るまで取り仕切るという事だが取り仕切るまでもない。
裏では、全てが取り纏まっているのだから。
報告3:
ランサーのマスターが決まった。
キャスターである。
キャスターは、早速、令呪を使って聖杯戦争中の宝具の使用を禁止した。
ランサーは、抗議してキャスターの逆鱗に触れ、2回目の令呪を発動させられた。
ランサーは、キャスターに絶対服従を命じられた。
しかし、令呪の効果は、思ったほどないらしい。
遠坂が渋い顔をしている。
あの女も、アーチャーに同様の使用をしたに違いない。
…
キャスターの神殿に帰った時は、夕方になっていた。
そして、早速、この事態を説明させられる事になった。
しかし……。
(なんで、当事者は、全員正座なんだ?)
キャスターを始め、古文書解析チームの面々は、明らかに怒っている。
怒っているのに笑顔というのが、一層、凄みを増す。
ここら辺は、どの物語でもお約束。
キャスターが、代表して質問をする。
どうも暫く見ない間に格付けをしたらしく、キャスターがリーダーになったらしい。
「説明をしてくれるかしら?」
「セイバー、キャスターからのご指名だ。」
「私が答えるのですか!?」
「うん、マスター命令だ。」
「卑怯ですよ!」
キャスターが、にこやかに話し掛ける。
「セイバー、貴女はいいわ。
指揮していた人に話して貰うから。」
「年齢順がいいです。」
「却下します。」
「じゃあ、背の順で。」
「却下します。」
「あいうえお順で。」
「却下します。
坊や……説明しなさい。」
「命令形?」
キャスターが黙って頷く。
「坊や。
聖杯戦争は、昼間に堂々と
しちゃいけないのを知っているわよね?」
「まあ、知識程度には。」
「じゃあ、何で、話し合いに行ったはずの貴方達が、
2時間後には戦闘を終了しているなんて形になるのかしら?」
「はあ……。
めんどい……。
説明しちまった方が楽だ。
・
・
あのな、俺だって、最初は交渉したんだよ。
だけど、あの神父さ。
全然、交渉する気もないし、裏があったんだよ。」
「交渉の内容から、順に説明してくれる?」
「まず、『手を組まないか』って直接聞いたんだ。」
「ストレートね……。」
「だって、相手が魔術師なら、
近くにサーヴァントが3体も居れば状況を把握出来るだろ?」
「なるほど。
手間は省いているけど、それなりに理由があるのね。」
「だけどさ。
直ぐにNOの即決。おかしいだろ?」
「確かに怪しいわね。」
「だから、脅しも兼ねて『ランサーをくれ』って言ったんだ。」
「貴方、大した度胸ね。」
「負ける要素がないからな。
だけど、これもNO。
つまり、なんか切り札を持ってるみたいなんだよ。」
「なるほどね。それで?」
「零時にランサーを懸けて外人墓地で戦う事になった。」
「…………。」
古文書解析チームに流れる沈黙。
イリヤが疑問を口にする。
「おかしくない?
なんで、約束したのに戦闘になるの?」
「そうよね。
約束取り付けたんでしょ?」
キャスターが、予想を口にする。
「奇襲を受けたのね?」
「騙まし討ちですか!?」
キャスターと桜に対して、士郎は首を振る。
「いや、奇襲を掛けたのは俺達だ。」
「…………。」
再び、古文書解析チームに流れる沈黙。
キャスターが、額に手を当て悩んでいる。
まだ、耐性が出来ていないらしい。
「凛、進行役を変わって貰っていいかしら?
予想が悉く外れて、頭が痛くなって来たわ。」
「……でしょうね。
コイツは、常にわたし達の斜め上を歩こうとするのよ。」
「失礼だな、遠坂。」
「あんた、何やったのよ?」
「別に大した事はしてないよ。
それにこれは、セイバー達と相談して決めた事だ。」
「本当?」
凛が、セイバー達を見る。
「はい。
神父は、切り札を持っているようでしたので、
ランサーを使い捨てにする可能性が出て来ました。」
「何だそりゃあ?」
ランサーが、首を突っ込む。
「怒るなよ?
神父の奴が、マスターって割れてんのに余裕があったんだよ。
3対1で、普通勝負にならないだろ?」
「まあな。」
「それなのに余裕があるって事は、
ランサーがやられても、逆転出来るカードがあるって事だろ?」
ランサーは、不快そうに話を聞いている。
「実際、変な奴が出て来てセイバーと戦ったし。」
「ええ、彼が神父の切り札でした。」
「俺達は、ランサーを失う訳には絶対にいけなかったからさ。
その、理由はだな……。」
「ライダーから、聞いている。」
「そうか……。
じゃあ、話を戻そう。
そういう訳で結論から出たのが、俺達の計画の露見の危機だ。
零時まで時間があるし、計画がバレればランサーを楯にされかねない。
そこで、こっちから仕掛ける事にしたんだ。」
「一応、考えてはいたのね。
でも、やっぱり昼間戦うリスクは大きいわよ。」
「それはない。」
「何でよ?」
「まず、もう戦うマスターが居ないから、
手持ちの駒はバレても構わない。」
「あ、そうか。」
「そして、教会を破壊しても困らない。」
「ん? 何でよ?」
「後始末をするのは俺ではなく、冬木の管理人の遠坂だからだ。」
凛のグーが、士郎に炸裂する。
それを見て、ランサーは大いに笑っている。
キャスターは、額に手を当て俯いている。
悉く予想が外れる訳だと……。
「あんたねえ! いい加減にしなさいよ!」
「大丈夫だ。
これで最後だから。」
再び、凛のグーが、士郎に炸裂する。
「最後の最後まで、迷惑掛けてんじゃないわよ!」
「まあ、そういった訳で奇襲をした訳だ。」
「アーチャー!
セイバー!
ライダー!
あんた達も、この馬鹿の暴走を止めなさいよ!」
「しかし、リン……。
相手に考察の時間を与えるのは、
結局、こっちが不利になる事しかないのです。」
「最初は反対したが、
セイバーの言ったところに最終的には行き着くのだ。」
「すいません、凛。」
「あ~~~っ!
何で、いつもわたしばっかりに被害が飛び火するのよ!」
(この子も不幸ね……。)
「その後、アーチャーが神父。
ライダーがランサー。
セイバーが謎の人物。
と、それぞれを相手にして、今に至る訳だ。
もう、正座崩していいな?」
「士郎以外は、いいわ。」
士郎は、凛を無視して正座を崩す。
「無視して、正座を崩すな!」
凛のグーが、士郎に炸裂する。
ランサーは、再び、大きな声で笑っている。
「リン、疲れませんか?」
「疲れるわよ!
疲れるけど、わたし以外に誰が、
この馬鹿に制裁を食らわすのよ!」
「そんな使命感はいらんぞ。」
「その辺にしなさい。
セイバー、その謎の人物というのは何者なの?」
「彼は、サーヴァントです。」
「!」
「そんなはずないわよ!
ここに7人揃って居るじゃない。」
「はい、今回の聖杯戦争の7人は。」
「今回?」
「件のサーヴァントは、
前回から現界を続けている生き残りです。」
「前回からって……。」
「神父が手伝って、魂喰いを実行していたと思われます。」
「…………。」
「しかし、さすがだな。
そこまで判断出来るなんて。」
「理由があるのよ。」
イリヤが、士郎の言葉に意見する。
「セイバーは、前回、アインツベルンの
サーヴァントとして参加していたんだから。」
「ああ、それでか。」
「ちょっと、『それでか』で終わる?
何万といる英霊から、二回連続で選ばれてんのよ?」
「このマスターにして、このサーヴァントありじゃない?」
「シロウ……その例えは不快です。
貴方の様なデタラメな人間に必然的に呼び出されたなどと……。」
「失礼だな。
お前、俺以外の奴がマスターだったら、
もっと、すんごい事になってたに違いないんだぞ。」
「しかし、今からやらせる気なのでしょう?
その凄い事を。
そのような事をやらせるのも貴方以外にはいません。」
「と、セイバーも褒めてくれている訳だが……。」
セイバーのグーが、士郎に炸裂する。
「褒めていません!」
「条件反射で殴るのやめないか?」
「あ~~~っ! もう!
兎に角!
セイバーは、相手が誰か知っていたのね?」
「はい。」
アーチャーが補足する。
「英雄王ギルガメッシュ……そう言っていたな。」
「あ、それ知ってるぞ。」
「本当に?」
凛が、ジト目で士郎を見る。
「あの武器を一杯集めてる奴だろ?」
「近いわね……。」
「FF5に出てたヤツ。
俺、あのキャラクター好きなんだ。」
「別物ね……。」
「別物だな……。」
「人類最古の英雄王ギルガメッシュ。
それが、私の戦った相手です。
あの無限に内包される宝具に、どれほど悩まされた事か。」
「あれ宝具だったのか?」
「シロウ、貴方には、どのように写ったのですか?」
「ただの武器。」
全員から溜息が漏れる。
「嫌ねえ。
坊やには、武器も宝具も区別がつかないの?」
「すまん。
魔力感知能力0なんだ……俺。
・
・
でもさ!
セイバーの奴、その宝具を簡単に斬り裂いてたぞ!」
「ありえねえだろ?」
「あんた、嘘つかないでよ。」
「嘘じゃないって。
だって、宝具を無限に持ってんなら、
セイバーは、苦戦しているんじゃないか?」
「それもそうね。」
「リン、シロウの言った事は、嘘ではありません。」
「セイバー……貴方の宝具って、一体何なの?」
「私の宝具にそこまでの切れ味はありません。
それを実現したのは、シロウの投影した剣なのです。」
「ああ、あれか。」
「投影? あんた、いつそんな事したのよ!」
「遠坂が、眼鏡を作ってる時だ。」
「セイバー、見せてくれる?」
「それが……ギルガメッシュとの戦いで、
彼の宝具と相殺のうえ消滅しました。」
「じゃあ、今、やって見せて!」
「それは、ダメ!」
「何でよ、イリヤ?」
「あの投影で士郎の魔術回路が焼き付いちゃったんだから!」
「当然だ。
今の話でも分かるだろう?
人知を超えた物を投影したのだから。」
「……分かったわよ。
諦めるわよ。」
少し不機嫌になった凛を見て、士郎は、少し考える。
「簡単なヤツなら、いいんじゃないか?」
「そうだな。
その程度なら問題ないだろう。」
「やるか?」
「ええ、見せて。」
士郎は、天地神明の理を握り、対話の後、魔術回路を繋ぐ。
「OKだ。
誰か、魔力を打ち出してくれないかな?
俺自身、魔力を生成出来ないから、外から持って来ないといけないんだ。」
「いいわ。
わたしがやる。」
凛は、士郎に指を向けガンドを打ち出す。
それを士郎の天地神明の理が吸収していく。
「貴方のその刀って、そんな事が出来るの?」
「天敵だろ? キャスターの。」
「ええ。」
「さて、何を投影しようかな?」
「このペーパーナイフは?」
キャスターが、ペーパーナイフを取り出す。
士郎は、集中してペーパーナイフを投影しようとする。
「ダメだ……出来ない。」
「出来ない?
何で、宝具を斬り裂くような剣が投影出来て、
ペーパーナイフを投影出来ないのよ?」
「そのペーパーナイフが理解出来ないんだよ。
何で出来てんのか、さっぱり分からない。」
「小僧、思った通りに投影してみろ。」
「分かった。
そうだな……。
・
・
あれにしよう!」
士郎は、投影を開始する。
手には、バチバチと前回と同じ様に放電が起こる。
重さ、冷たさ、硬さ、大きさが定まり、形を成していく。
最後に大きな音を立てて投影は完成する。
「出来た。
今度は、焼きついてない。」
手には、刀身から柄まで淡い緑のナイフが握られている。
「凄いわね。
本当に出来たわ。」
「シロウ、これは?」
「エアナイフだ。
風の力が宿っていて、切れ味が抜群なんだ。」
全員で、ナイフを覗き込む。
「見た事ないんだけど……。」
「私も始めて見るわね。」
「例によって、解析してみよう。」
アーチャーが、解析を始める。
「まただ。
金属も分子配列も見た事がないものになっている。」
「また……って。
前回もなの?」
「はい。
前回も解析して貰った結果、謎の金属でした。」
「坊や、試し切りさせて貰っていいかしら?」
「いいよ。」
キャスターが、紙をナイフで切り裂く。
「普通のナイフと変わらないわよ?」
「風をイメージして、切り裂いてみてくれないか?」
「風?」
「魔術使う時のイメージでいいと思う。」
キャスターが、再び紙を切り裂く。
今度は、音もなく紙が切れる。
「凄いわね。
刀身にかまいたちの様な真空波が発生しているわ。」
「マグレじゃないみたいだな。」
様子を伺っていたイリヤが話し掛ける。
「ちょっと、いいかな?
もしかして、士郎の投影って『ない』ものしか
投影出来ないんじゃないの?」
「『ない』ものとは、どういう意味ですか?」
「え~っとね。
士郎は、目の前にあるものは、解析出来ないから分からないの。
でも、この世に存在しないものなら、
なんの制約もないから作れるんじゃないかな?」
「普通、そっちの方が難しくない?」
「そう思うけど……。
・
・
士郎って、デタラメなところがあるから。」
「…………。」
嫌な沈黙が流れる。
アーチャーは、自分の理論を士郎に置き換えて考えていた。
(私の解析や投影は、自身の固有結界から漏れた副産物だ。
固有結界の中から拾い上げ投影する。
固有結界には、無限の剣製により武器が溢れている。
・
・
小僧が、私の可能性なら固有結界から何らかの恩恵……。
つまり、副産物が発生する可能性は、極めて高い。
こいつのパターンを分析すると根本にあるのは、
どう見ても『デタラメ』というキーワードだ。
つまり、副産物が『デタラメ』なんだろう。
すると内包する固有結界は、それに近いものになるはずだ。
・
・
デタラメ……つまり、空想か?)
アーチャーは、一人で、何となく納得する。
「ところでさ。
俺が投影したいい加減な武器を使った訳だが……大丈夫なのか?」
「はい。
あれは、完全な反則の上に成り立っています。」
「反則ってなんだよ?」
「説明します。
まず、ギルガメッシュの特徴から話しましょう。
彼は、この世の宝具の全ての原典を持っています。
つまり、彼が所有していない武器はないのです。」
「そいつも反則の上に成り立ってる気がするんだけど?」
「その彼が言ったのです。
シロウの投影した剣を見て『分からない』と。」
「当たり前だ。
あんな漫画から持ってきたデタラメな剣が存在してたまるか。」
「ええ、だから、彼も分からなかったのでしょう。
・
・
しかし、剣の能力は凄いものでした。
彼の宝具を紙の様に斬り裂いたのですから。」
「マジ?」
「マジです。」
「ん? セイバーが、『マジ』?」
「失礼。
しかし、宝具を斬り裂くという反則をやってのけたのです。」
「それで、苦戦しなかったのか。」
「はい。
ギルガメッシュ自身の剣技は、さしたるものではありません。」
「さすが、剣の英霊だな。
サクッと勝つとは。」
「貴方、話し聞いて何とも思わないの?」
「だから、セイバー凄い。」
「違うのよ。
宝具なんて普通斬り裂けないのよ。」
「ランクにもよるんじゃないか?」
「シロウ、宝具だけでなく普通の武器も斬れないと思いませんか?」
「サーヴァントって、デタラメな存在なら出来るんじゃないの?」
「貴方だけには言われたくないですね。」
「まあ、いいや。
兎に角、勝ったんだから。」
(((((何で、流せるんだろう?)))))
「まあ、これで聖杯戦争は、一件落着だな。」
「はい。
これからは、戦闘はないでしょう。」
「では、あらためて。
キャスター先生、これからの説明をお願いします。」
「何か疲れちゃったわ。
今日は、早めに切り上げましょう。
簡単に話すわよ。
・
・
まず、私達の作業が全然進んでないから、
引き続き古文書の解析を続けるわ。
ランサーを確保した以上、貴方達のチームは解散。」
士郎達が頷く。
「アーチャーは、システムの巨剣を投影しないといけないから、
バーサーカーと作業をしてくれないかしら?」
「了解した。」
「ライダーは、桜の補佐。
あの子は、まだ、支えが必要よ。」
「はい。」
「残りは……私達の作業が終わるまで好きにしていなさい。」
「は?」
「何だそりゃ?」
「アバウトだな……。」
「簡単に言うと残りのメンバーは、役に立たないのよ。」
「ランサーは、役に立つんじゃないか?
中国人じゃないって事から、ネットで調べたんだけど。
ルーン魔術とかいうの使えるって書いてあったぞ。
しかも、かなりの使い手だって。」
「ちげぇねえ。」
「一見、チンピラにしか見えんのだがな。」
「オイ!」
「そうですね。
私も野蛮な人にしか。」
「こら! セイバー!」
「繊細には見えませんよね。」
「ライダー!」
「でも、実は、趣味が編み物とか?」
ランサーのグーが、士郎に炸裂する。
「役割変更ね。
ランサーは、私達と一緒に作業して。」
「仕方ねぇな。」
残りは、士郎とセイバーだけである。
「私も何か手伝える事はないでしょうか?」
「『シロウと同じ扱いなど、我慢出来ません!』。」
「ええ、だから是非!」
「『何でもいいので、お願いします!』。」
セイバーのグーが、士郎に炸裂する。
「遊ばないでください!」
「セイバー、貴方の気持ちは分かるけど、
貴方は、剣士でしょう?」
「くっ!」
「だらけてりゃあ、いいんだから、
無理に働かなくてもいいじゃないか?」
「貴方は、他の人達が努力している間、
怠惰を貪る事に何も感じないのですか?」
「だって、俺達、邪魔じゃないか。
そんなに気になるなら、毎日、差し入れしたり、
洗濯したり、風呂の用意でもすればいいだろ?
まさか、王様は、雑用なんて出来ませんとか?」
「そんな事はありません!
どんな事でも、見事役目を果たして見せましょう!」
「はい、決まり。
キャスター、締めていいぞ。」
(謀られた!?)
「鮮やかな手並みね。
私が見習いたいわ。
ま、そういう訳だから、作業は、明日からよ。」
冬木の聖杯戦争は、これで仮集約を迎える。
作業が分かれた後は、士郎とセイバーが衛宮邸。
他メンバーが、キャスターの神殿で仮住まいとしながら作業を行なう。
そして、キャスターのシステム開発の作業は、2週間で終わりを迎える。
その後、1ヶ月をサーヴァント同士の組織戦のリハーサルに充てた。