== Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==
士郎とセイバーは、居間で向かい合っている。
そして、ゆっくりとお茶を啜る。
「暇ですね。」
「昨日の今日じゃないか。
やっと、戦闘しないでよくなったんじゃないか。」
再び、お茶を啜る。
第68話 幕間Ⅱ①
セイバーが、ポツリと呟く。
「シロウ、もし、貴方が魔術師なら、
どのようなサーヴァントを呼び出しますか?」
「魔術師じゃないけど、呼び出してしまっているんだけど。」
「そうではなく……。
媒体を用いて意識的に呼び出す場合です。」
「なるほど。
しかし、なんでまた突然に?」
「暇なので。」
「…………。」
「まあ、いっか。
クラスとかは?」
「そうですね……。
全クラスを伺って置きましょう。
まず、ライダーからお願いします。」
「ライダーなら、アムロ・レイだな。
アムロ・レイを召喚して、宝具のνガンダムを使う。」
「シャア・アズナブルではないのですか?」
(なんかセイバーと普通にガンダムの話が出来るのに
凄い違和感を覚えるな……。
やっぱり、アニメなんて見せるんじゃなかった。
・
・
っていうか、あの短い日数で、どれだけ見たんだよ!?)
「シャアより、アムロの方が扱い易そうだから。」
「カミーユ・ビダンなんかも、扱いづらそうですね。」
「逆に扱いやすいキャラクターなんか居るか?」
「ドモン・カッシュなどは?」
「だめだめ!
絶対、単独行動するって。」
「以外にハマーンは、どうでしょう?
彼女は、冷静沈着ですし、話し合いに応じてくれるのでは?」
「聖杯勝ち取ったら、コロニーでも落としそうだけど……。」
「それは、いけませんね。
やはり、アムロ・レイが無難ですかね。」
「うん。」
「では、キャスターを召喚するとしたら?」
「藤井八雲。」
「三只眼吽迦羅の方が、強力ではないですか?」
「一発は、大きいけど、その後の睡眠を守れる自信はない。
だったら、獣魔術を使える藤井八雲がいいだろう。
多分、獣魔術は、セイバーでもキャンセル出来ないんじゃないかな?」
「確かに……。
獣自身が戦うのですから、キャンセル出来ない可能性が高い。」
「それにさ。
聖杯戦争するなら、実戦で戦える方が有利だ。
普通の魔術じゃ、対魔力の強いサーヴァントと戦えない。」
「流石、シロウ。
考えていますね。
しかし、不死人『无』で召喚されますかね?」
「その可能性があったか。
じゃあ、三只眼吽迦羅を召喚して、
宝具として藤井八雲を使うっていうのは?」
「それは、ありかもしれません。
このキャスターは強いですね。」
「ああ、侮れん。」
「では、アサシンでは?」
「アサシンか……。
思いつかないなぁ。
・
・
あ、ケンシロウだな。」
「北斗神拳ですか。
一子相伝の暗殺拳なら、打って付けですね。」
「なあ、ちょっといいか?」
「何でしょうか?」
「セイバーって、いつの間に知識つけたんだ?」
「ご存知の通り、サーヴァントは寝なくていいものですから、
その間に読み耽っています。」
「ガンダムは?」
「押入れにあったビデオを拝借しました。」
「…………。」
(サーヴァントのする事じゃない……。)
「他にも知識があるのか?」
「はい。」
「…………。」
(絶対に他のサーヴァントは、漫画とか読まないよな……。
セイバーが特別なのか?)
「しかし、シロウの知識は深いですね。
私は、てっきりナルト辺りを選ぶかと思っていました。」
「ナルトも忍者だから、暗殺向きかもしれないな。」
「私の第一候補は、キルアですがね。」
「ちなみにセイバーが、ライダーとキャスターを選ぶとしたら?」
「ライダーなら、エウレカです。
ニルバーシュで戦います。
当然、レントンの席には私が。
・
・
そして、キャスターなら、やっぱりエドでしょう。」
「もう、サーヴァントじゃねー。」
「さあ、次です。
次は、ランサーです。」
「蒼月 潮だな。」
「同感ですね。
彼以外にランサーは有り得ない。」
(俺は、セイバーの妙なテンションの方が有り得ない。)
「次は、悩むと思いますよ。
バーサーカーです。」
「孫悟空だな。」
「何故、彼なのです?」
「精神と時の部屋で悟飯と修行した時に、
スーパーサイヤ人でも普通にいられるようになっただろ?」
「はい。」
「狂化した時がスーパーサイヤ人と考えるなら、
悟空の方で制御してくれそうじゃないか?」
「なるほど。
しかし、狂化した時、大猿になるとも考えられませんか?」
「サイヤ人は、月が出てないと大猿にならない。」
「べジータの様にパワーボールを作る事も考えられますが?」
「悟空は、自ら大猿にならないだろ。」
(聞かなきゃいけないかな? セイバーにも……。
なんか、今、遠坂達の気持ちがよく分かる。)
「セイバーなら、誰を呼ぶんだ?」
「そうですね……。
・
・
思い付きません。
修行不足のようです。」
(少し安心した。)
「そうです!
範馬勇次郎です!」
(時間差か……。)
「なんで、範馬勇次郎なのさ?」
「彼は、きっと既に狂っています。
これ以上、狂わないでしょう。」
「呼び出した瞬間に居なくなりそうだ。
と、いうか、狂化しなくても絶対に制御きかない。」
「アーチャーだと誰になりますか?」
「冴羽りょうだな。」
「誰ですか?」
「拳銃を使う凄腕のスイーパーだ。」
「ほほう。」
「見るか?
確かビデオ残ってるぞ。」
「是非。」
ビデオ鑑賞開始……。
~15分後~
「何ですか!
この『もっこり! もっこり!』言っている男は!」
「お前が、『もっこり!』言うな!」
~10分後~
「なるほど。
あれは、仮の姿でしたか。」
「いや、本性だけど……。」
「本性なのですか!?」
「そう。」
「シロウと同じ匂いがします。」
「俺は、そこまで見境いなくないと思うけど。」
「しかし、彼の射撃の腕もそうですが、
耐久性も目を見張るものがあります。」
「耐久性?」
「100tものハンマーの攻撃に耐えるのですから。」
「そこは、ギャグ。
そもそも、100tのハンマーなんて振り回せる訳ないだろ。」
「ああ、なるほど。」
(こういうのは、ダメか?)
「で、セイバーが選ぶアーチャーは?」
「ヴァッシュ・ザ・スタンピードです。」
「おお! 凄いな!
・
・
なんで、トライガンが分かって、
シティハンターのギャグが分からないんだ?」
「何故でしょうね?
下ネタだったからですかね?」
「そんな言葉まで覚えたのか……。」
「いよいよ、本命のセイバーです。」
「本命なのか?」
「ええ、本命です。」
「五右衛門かな?」
「……ルパンのですか?」
「なんでも切れる斬鉄剣。」
「こんにゃく、切れないのでは?」
「…………。」
「なんで、そんな事まで知ってんのさ?」
「有名ですから。」
(サーヴァントの間で?)
「では、セイバーさんが押すセイバーさんは?」
「比古清十郎です。」
「なんで?」
「飛天御剣流は素晴らしい……。」
「なんの答えにもなってない……。
・
・
それで、こんなもん聞いてどうするんだ?」
「暇つぶしです。
シロウの戦士の戦いぶりを想像してみようかと。」
「……想像?」
(νガンダムが飛び交い……。
パイと八雲が獣魔術で暴れ……。
ケンシロウが秘孔をつく……。
蒼月潮が獣の槍で戦い……。
冴羽りょうが拳銃を撃つ……。
孫悟空がスーパーサイヤ人になり……。
五右衛門が斬鉄剣で斬る……。
・
・
地獄絵図しか思い浮かばない……。)
セイバーも、苦悶に満ちた表情をしている。
「やっぱり、シロウの思考で聖杯戦争など有り得ませんね。
考えなければよかったです。」
「同感だ。
乗せられて考えるんじゃなかった。」
「しかし、こんな日々が毎日続くようでは、私は持ちません。」
「不憫だな……。
余暇の楽しみ方を知らないとは。」
「どうしたものか。」
「ぬいぐるみで遊んでれば?」
「それは、夜の楽しみです。」
(そんな事してんのか。)
「じゃあ、いつも通りでいいんじゃないの?
俺、今日からバイト再開するからさ。
朝、起きて。
道場で汗流して。
バイトして。
寝る。」
「貴方は、楽しみというものがないのですか?」
「今、暇を持て余している奴に言われたくない。
それに俺は、普通に生活していれば事件が起きるから、
楽しみに事欠くことはない。」
「遊び人の高等スキルでも、身につけているようですね。」
「便利だぞ……遊び人。」
「しかし、貴方の考えは正しいでしょう。
普段通りの生活の中にこそ、楽しみを見つけるのですから。」
「そうそう。」
「では……。」
「ああ、ここ暫く怪獣達が暴れた家の中を掃除しよう。」
「了解しました。」
士郎とセイバーは、普段通りの日常に戻るべく部屋を片付け始める。
掃除、洗濯に始まり、システム開発に勤しむ面々のため、差し入れの下拵えをする。
それを、柳洞寺まで運び、台所を借りて調理する。
その後、アルバイトをして家に帰る。
この一連の流れが、士郎とセイバーの生活サイクルになった。