== Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~ ==
楽しい事があれば、辛い事もある。
出会いがあれば、別れがある。
宴の後のポッカリ空いた空虚な気持ち。
聖杯戦争の終止符を打てば、イリヤは、去らなければならない。
アインツベルンに戻り、成果を報告するためである。
第72話 その後②
大聖杯、二度目。
前回よりも数を減らし訪れる地下の大空洞。
約束通りに聖杯戦争のシステムを止める。
「破壊するのか?」
「いいえ。
キャスターが残してくれたメモ。
これには聖杯戦争のシステムの止め方が書いてある。」
「止め方?
と、いう事は、休火山みたいにお休みするだけか。」
「ええ。
ただし、一度、火を落としたらシステムに魔力が行かなくなる。
だから、徐々に魔力が枯渇するわ。
枯渇したシステムに魔力を込めるには、また、長い年月が掛かる。」
「なるほど。」
「でも、時間は、聖杯戦争の周期と同じよ。」
「そうなのか?」
「だって、システムは出来てるんだから、
スイッチをONにするかOFFにするかの違いでしょ?」
「……そりゃそうだ。」
「じゃあ、止めるわよ。」
凛が、魔法陣に手を置く。
イリヤは、凛の反対側まで歩いて手を置く。
そして、二人の魔術師により魔法陣に封印が施される。
「凄いな。」
「はい、姉さんもイリヤさんも優秀な魔術師です。」
「スタートが違うだけだ。
桜もいずれ優秀な魔術師になれるよ。」
「衛宮先輩……。
ありがとうございます。」
(二人に嫉妬した事を見破られたんでしょうか?)
魔法陣への魔力の供給が断たれて、聖杯戦争のシステムは眠りに着く。
「終わったな。」
「ええ、全て。」
「じゃあ、これでお別れね。」
「え?」
皆が、イリヤを見る。
「今日、これからアインツベルンに帰るの。」
「そんな突然……。」
「居心地がいいから、離れられなくなっちゃうから。」
「また、冬木に来るんでしょ?」
「どうかな?
根源への道が開かれた以上、そんな暇はないかも。」
「…………。」
「じゃあ、押し掛ければ?
遠坂、一人でも大暴れするから楽しいぞ?」
凛のグーが、士郎に炸裂する。
「あんたは、毎回、わたしを引き合いに出すな!」
イリヤは、クスリと笑う。
そして、士郎達は、ギャアギャア喚きながら大聖杯を後にする。
あの時と変わらず。
ただ、突然、去ってしまう白い少女の存在は、賑やかだった日常から、また、灯火を奪っていくような感じがした。