前回のあらすじ:KUGIMIY○に【変態】って言われた。 ミッドの空の下からこんにちわ。 現在逃亡中の月村静香です。原因は言わずもがな、実の妹から逃れるため。 まぁ、少し時を置けばすずかも頭が冷えるでしょう。そうであると信じたい。どうか信じさせて。「……ん?来たのか?」 開けた空が一望出来る、この公園。 そのベンチに腰掛けること十分くらい。 今回の依頼主が、向こうからやって来た。「……待たせたな」「いやぁ?全然待ってないよぉ……って、デートの待ち合わせッポイな」「……オレにそんな趣味はないぞ?」「アリガト。ボクにも、そんな気はないからね?」 ゼストと【ウホッ!】な関係になりたいとは思わない。 というか、誰であってもそんな関係にはなりたいワケない。 だからと言って、近親な関係なんて願い下げだ。「んでさー、今日の用件は何なんだい?」「……オイ」 ゼストは短く言葉を飛ばすと、ソコにはデッカイわんこが居た。 ……良い。凄く良い。 自慢じゃないがボクのわんこ好きは、一番初めの人生からのモノだ。 つまりは筋金入り。家で飼えなかったのも、ソレに拍車をかけているのだろう。 全体に蒼っぽい毛色で、アクセントに白い毛色。 大型犬に乗ることが小さな頃から夢なので、後で乗せてもらうとしよう。「……ゼスト」「……何だ?」「この子、お持ち帰りしちゃあ……」「ダメに決まっている」「……ちぇ!」 良いじゃないか。少しぐらい貸してくれても。 この場で、有無を言わさずにお持ち帰りするワケじゃないんだし。 ……何でだろう?今、激しくティアナの顔が脳裏に浮かんだのは?「……そんでぇ?この子がどうしたのぉ……?」 コンディションブルー、微妙です。 お持ち帰りを禁止されたので、今のボクは激しくやる気ないです。 まぁ仮にお持ち帰り出来たとしても、我が家は猫屋敷だ。結果は考えるまでもないだろう。「……ザフィーラと言う。今日は時間を割いて頂き、感謝する」 ……またこの展開か。 折角プリティーわんことお友達になれると思ったら、中身は何百年も生きているオッサンか。 萎えるわぁ……とか思いつつも、毛皮を撫でる手が止まることはない。うん、見た目って大事だよね?「つーかさぁ?このわんこ太夫とアンタの接点が、全くをもって見当たらないんだけど……?」「前回の闇の書事件で、少し遣り合った関係だ……」 アレ?転生の度に記憶が飛ぶんじゃなかったっけ? それともアレか?もう正常に戻ったから、記憶まで復活したのか? いや。それよりも問題なのは、アンタたち殺し合った間柄でしょ!?何で一緒に居るのさ!?「……ゼストさ、今普通に【闇の書】って言っちゃったけど、ボク部外者だよ?」「心配は無用だ。コレ位ならば守秘義務にも抵触せん。ソレにお前のことだ、ソレ位は知っていただろう……?」「……うん。まぁ、ね……」 この話はもうココまでにした方が良い。 ボク的にもゼスト的にも。そして今撫でまくってる、ザフィーラのためにも。 ……うーん。猫も好きなんだけど、やっぱりボクは犬派だなぁ……本当は狼だけど。「ハイッ!暗い話は終~了!!」 パァンッ!と拍手一発。 打ち切るぞ、このドンよりしたフィールドを。 断ち切るんだ、この世界の歪みを。「ハイハイ、それで?話題を元に戻しましょうか?」「あ、あぁ。それで、頼みというのは……デバイスの作成依頼なのだ」 ザピーラ犬からの依頼も、コレまでのオヤジたちと寸分違わぬモノでした。 期待はしてなかったんだけどねー。それでもそろそろ、違う用件が来てくれても罰は当たらないと思う。 世界はボクに優しくはない。良ぉし……【優しい世界】を作る為に、いっちょ反逆でも起こすか?「……本来オレにはデバイスは必要ない。防御には自信があるし、攻撃にはコレがある……」 【コレ】と言って、右足を上に上げるザフィーラ。 多分彼は、拳を上げているつもりなんだろう。 ……実際には、肉球ラブリーな状態だが。「だが主に何かあった時、今のオレの戦力では打破しきれない場合も考えられる……」「……そうだね」「だからオレは欲する……いざという時に必要な、主を護る力を……!」 わんこモードなので、凄まれても全然怖くない。 だけど分かる。毛皮を撫でてるので、その身体が熱くなったのがハッキリと分かるのだ。 さーて、頭の中をデバイス設計モードに切り替えないとなぁ。「あいよ。どんなのが欲しいんかい?」「……オレに足りないのは、中・遠距離の攻撃手段。それと、皆のサポートが出来ると助かる……」 頭の中で組み上がっていく設計図。 盾の守護獣というくらいだから、両肩に丸い盾を。 中・遠距離の攻撃手段には、彼が持っていない大型銃。 ついでだから、その時専用の甲冑も考えよう。 漆黒を基調として、所々に紅を入れる。 兜の部分の後ろからは、彼の銀髪に似せた長いウィッグのようなモノを垂らす。 勿論狼形態でも装備出来るようにし……って、ちょっとマテ。 【穴馬】――アレか。 だとすれば、ゼン……じゃなかった。ゼストとの連携も出来るようにして……採用決定。 中将日記NEXT 先週出された課題を無事乗り切り、先ほどのテストの結果を思い出す。 九十九点。残りの一問は番組を見ただけでは分からない、超マニアック問題だった。 流石にソコまではチェックをしていなかったので、残念ながら満点は逃した。 だがそれでも最高評議会の面々は満足だったらしく、減給どころか特別ボーナスを出すと言い出した。 勿論丁重に断ったが、彼らに何があったのだろうか? 以前とは様子が異なるようだが……。 ……おっと。そんなことを考えている場合ではなかった。 今居るのは戦場。模擬戦という名の戦場なのだ。 今回は二対二のチーム戦。 コチラはフル武装したゲンヤと自分。 対してアチラは、例のザンカンブレイドを持ったゼストと……元闇の書の守護騎士の一人。 思うところが無い訳ではない。だが、【アノ】ゼストが背中を任せる位の猛者だ。信じるとしよう。 自分以外は、皆新たなデバイスを所持している。 一方自分は、バージョンアップが適宜施されているとは言え、旧式になりつつあるC3-X。 最初の頃から比べると中身は別物と化しているが、それでも最近は自分の動きに付いて来れなくなってきている。 Cストーンは精製に時間が掛かっているらしく、ガトックセクターの方が先にロールアウトするとのこと。 ……焦りが生じているのが、自分でも分かる。 気を付けなければ、いけないな……。 その後、ゼストとザフィーラが連携プレイを発揮。 狼形態になったザフィーラに跨ったゼストが、ザンカンブレイドを一閃。 一瞬、訓練室が使用不可能になるかと危ぶまれた。 ゲイズさんちのオーリスちゃん【壱】 アレから何度かデートをし、今日はティーダの家にお邪魔することに。 彼の家には妹のティアナがおり、最初は険悪なムードを醸し出していた。 何かのキッカケになればと思い、レジアス特製の飴玉を与えてみる。 すると、見る見るウチに上機嫌になっていくティアナ。 もっと頂戴と言う少女に、虫歯になるからと嗜める兄。 とても微笑ましい雰囲気に、心が温かくなるオーリスだった。 追記 この飴玉を作ったのは誰だ?と聞かれた時、場の流れから自分だと言ってしまったオーリス。 少女と彼氏から尊敬の目で見られ、良心がキリキリと痛む彼女。 家に帰ったら、父親に飴玉の作り方を教えてもらおう。そう決意するオーリスだった。 あとがき >誤字訂正 俊さん。毎度ご指摘いただき、本当にありがとうございます!