前回のあらすじ:提督ズの悪巧みは、着々と進行中。 スカリエッティの保有戦力は不明である。 ゼスト・クイントは当然のこと、【アノ】スカドランのようなロボットが居ることは確実。 ならばコチラにも、ロボットが必要である。 一号ロボである【ヴォルヴォッグ】は、純粋な戦闘には向かない。 彼の本分はあくまで偵察であり、本格的な戦闘をするには幾つか機能を足してやらないといけない。 まぁ、ソレはまた後日の話。今の問題は、この四号Cストーンをどうするかだ。 【四号Cストーン】。 この度生成に成功したモノで、順調に行けば【四号ロボ】に組み込む予定。 しかし……この四号ロボットが曲者なのだ。 スーパーAIを搭載しつつも、その運用には人が操縦する必要がある。 ライオン型マシン【ギャレノン】から変化し、人型で戦闘を可能にするモノ。 【ガオヴァー】。ソレがこの、四号ロボの正式名称である。「……ダメだぁぁっ!パイロット候補がいないよぉ……!?」 特殊な機体。特殊な操縦方法。 並のパイロットではダメだ。 溢れるパワーに、鋼のような肉体。そして何より……。「……オヤジーズに匹敵する【根性】の持ち主……普通、いないって!」 六課の隊長陣は最初から除外。 彼女たちはどちらかと言うと、根性とは別のモノで動いている。 唯一。その中でも【根性】という気骨を持ったモノは、あの【デカハンマーの幼女】だけ。 だが彼女にしても、このシステムのパイロットは難しいだろう。 何かが違う。 何処がどうとは言えないけど、何かが違うのはハッキリしているのだ。「あとは……まさかフォワード陣に任せるわけにも……」 肉体・精神・根性。 そのどれを取っても、フォワード陣は隊長陣に及ぶことはない。 つまりは失格。戦闘スタイル的にはゲンヤが一番近いのだが、彼は別の仕事で離れられない。 彼が最適。しかし彼は居ない。 なら彼に近いモノをピックアップして……アレ? ……居た。彼の戦闘スタイルに近く、ある意味【根性】の持ち主。 姉と共にクイントのリボルバーナックルのコピーを持ち、肉体・根性は申し分ない娘。 ただ一つ。【精神】が気がかりだが……。 最悪の場合は、レジアスの権限でゲンヤを呼び寄せよう。権力っていうのは、こういう時に使うものだしね? さてと……五号Cストーンの生成を急ごう。 コレを搭載したデバイス。 ソレこそが勝利の鍵と成り得るのだから。 今ちみっ子たちは、デバイスルームに居る。 ソコで新たに作られた専用デバイスを手にし、コレからの事態に備えるハズだったのだが……。 実はココで、原作と違うことが起きているのだ……現在進行形で。「ハイ。エリオとキャロのデバイス……外見は一緒だけど、中身は別物だからね?」 シャリオからデバイスを受け取ったのは、ライトニングの二人だけ。 スターズの二人は今回、デバイスを受け取っていない。 というよりも、彼女らに与えられる程のデバイスを作れなかった、と言う方が正しいだろう。 スバルのリボルバーナックルはクイントのコピー。 そしてマッハキャリバーは、クイントのブーツの複製からタービンをオミットしたモノ。 つまり、作成者はボク。持てる限りの力を費やしたので、まだまだ酢飯娘には負けませんぜ? ティアナに与えられたデバイスは、ティーダのデバイスのコンセプトを次いだモノ。 耐魔力コーティングをしたクロスミラージュに、右肩にマウントされたライフル型ストレージデバイス――【CNスナイパーライフルⅡ】。 コレは平時は二つに折れて持ち運ぶので、障害等にも邪魔はされない。 管制AIには、ティーダから引き継いだ【バロ】。 本当は、CNスナイパーライフルⅡの開発はしない予定だった。 まだティアナにははやいし、バロすらもサポートさせない。 そうして自力を作ることが必要だと、ボクは考えたからだ。 だが、コレに待ったを掛けたのはヴォルヴォッグ。 ヤツはコレらの必要性を説いた上で、この上でまだ武装が必要だとほざきやがった。 流石にコレ以上は、ティアナが潰れる方が先だ。 武器は多ければ良い、というモノでもない。 仕方無しに折衷し、現在に至るというワケだ。 しかしあのロボット、明らかにティーダそのものだ。 妹を心配するがあまりボクに武装作成を頼んできたり、非番の日はティアナをコッソリ盗撮する日々。 ……良いのかなぁ……? ――ヴィーッ!ヴィーッ!! 隊舎中に響き渡る警告音。 至る所の空間ディスプレイがアラートと書かれた紅い画面に変わり、緊急事態の発生を知らせてくれる。 そう言えばスッカリ忘れてたけど、フォワードがデバイスを受け取った直後に初出撃だったっけ? フォワード陣が出撃。 隊長二人が空でガジェットⅡ型を制し、地上の列車を止める。 概ね原作通りの展開だ。このままで行けば、解決までにそうは掛からないだろう。 ……って油断してるとガブっと喰われるのは、古今東西の掟。 今回もその例に漏れず、アイツらはやって来た。 列車を停止し、ガジェットも確保。 そんな気の緩んだタイミングを狙って、別の車両がやって来たのだ。 三百系のぞみをモチーフにした、黒い車両。 四百系つばさを基にした、黒色がかった銀色の飛行機。 ソレらより一際大きくて、明らかにSLをデザインとして参考にした、大型車両。 更には紅い飛行物体がおり、ホバリングで空を飛んでいる。 ……オイ。今度はアレかよ?向こうさんも、良い趣味してるよなぁ……? テーマソングが若干流れた後に完成する、敵さんの合体機体。 スピーカー越しで聞こえてきた名乗りには、変態ドクターと聞いたことのない声が。 ……その初聴きの声の方が棒読み口調なのは、やはり無理やりやらされているからなのか?『黒い翼に殺意を乗せて、灯せ不幸の赤信号!』『……悪者特急ブラックスカガイン、定刻破ってただ今到着……』『到着♪到着♪』 訂正しよう。三番目の声は非常に楽しそうだった。 まだ誰か乗っていたらしい。 やる気のない声が【一番】だとすると……【四番】か【六番】辺りかな? ――ガシャァァァァンッ!! 周りに爆風と轟音を与えながら光臨する、その巨体。 決めポーズをやったりする度に地響きが起こり、ソレは停止させた列車にも害が及ぶ。 ちょうどその屋根で被害を捜査していたティアナ。当然の如く、屋根から放り出されてしまった。「きゃぁぁぁぁぁっ!!」 落ちるティアナ。 ソレを救ったのは、すぐ近くで隠れていたヴォルヴォッグ。 御丁寧にも、ステルス機能を使ってのご登場だ……タイミングを見てとしか思えん。というか、実際に見てたしね?「……アカン。あたし、寝ぼけてるみたいや……?悪いんやけど、ちょう昼寝してくるわ……」 皆が静止するのも聞かず、作戦司令室から退出してしまうはやて。 気持ちは分かる。でもアレは現実だ。 ちゃんとソレと向き合わないと、局員失格だぞ?……ということで、彼女に二つ目の×を与えよう。「(……しかし、一体どうしようかねぇ?地下のアレはまだ完成してないし……)」 【ギャレノン】はまだ、ロールアウトしていない。 その制御デバイスすら完成してないのだから、どう頑張っても無理。 ならば第二案だ。「……フッフッフ!【こんなこともあろうかと】……!!」 科学者が言ってみたい台詞の、TOP3にはランクインする名台詞。 この時のために用意しておいて、本当に良かった。 準備が無駄にならないっていうのは、凄い嬉しいことなんだよ? ――カシャン。 左手にブレスレットを装着し、中央部にあるボタンを押す。 恐竜の頭をモチーフにしたそのブレスは、あたかも口を開けるかのようにスライドする。 その下から出てくるのは液晶画面。空間ディスプレイが跋扈する世の中だからこそ、こういうレトロなのが良いんだよ?「カリム、レジアス、ザフィーラ……それにリンディ!」 共有チャンネルで、全員に一斉に呼びかける。 呼びかけを聴いた皆は、それぞれが引き締まった真顔になる。 皆分かっているのだ。この後にボクがいうであろう、その台詞を。「全員作戦司令室に集合!……ただし、格好はそのままでね?」『了解!』 一斉に駆け出す一同。 ほぼ同時に到着し、作戦司令室の扉を開ける。 中にあったのは混乱。指揮官が不在なのだ。ソレはある意味仕方のないことだ。「みんな、席について!」 メイド姿のリンディが、慌てふためく陸士たちを一喝する。 ソレを聴いて、落ち着きを取り戻す彼ら。 ただ、何でただのメイドに従わなければならないかは……本人たちにも不明のようだが。「全員の着席を確認!リンディ、いけるよぉ!!」 ボクたちも含めて、全員が着席した。 何時の間にか席が増えたことについては、訊いてはならない。 コレもお約束の一種なのだよ。「えぇ!……【ダイノーズ】、出動!!」 左手のブレスレット。 その中央部のボタンを押し、スクランブルを掛けるリンディ。 ボタンが押されたことで隊舎が承認を確認し、至る所に分割線が走る。『な、何だぁぁぁぁぁぁっ!?』 通常の隊員が驚きに満ちて叫ぶ間にも、隊舎はどんどん変化していく。 何故か作戦司令室にある、掃除用具ロッカーや個人用ロッカー。 イスに座ったままボクたちはソコに押しやられ、それぞれが別の場所に運ばれていく。 移動中のダクトの中では、これまたそれぞれが割り当てられたスーツを装着していく。 紅いスーツを着たレジアスは、真紅のカートに乗って移動。 蒼いスーツを着たザフィーラは、プテラノドンを模したバイクに跨る。 黄色いスーツを着たカリムはサイドカーの側車に乗り、白いスーツを着たボクがそのバイクに乗った。 やがて皆が目的地に着き、この六課が変形したジェット機の操縦席にボクが座る。 蒼い巨大な翼を持った、白いジェット機――【ダイノージェット】。 コイツに乗っていけば、現場まではあっと言う間だ。 ……良し。コレもまた、ボクの夢の一つ。 レジアスから隊舎を変形させて良いと訊いてから、ずっと考えていたアイディア。……あぁ、叶って良かったなぁ……♪ 操縦中の考え事は禁物。 事故の元に為りかねない。 故に、コレからは真面目モード。さぁ、さっさと行きますか……! 大将日記真説 シズカから召集が掛かり、ダイノージェットを発進させる自分たち。 対スカリエッティのロボット用に準備してきたモノは、未だ完成には至っていない。 仕方無しに、我々が出撃することになった。 ゼストたちは対ロボット戦の経験があるが、自分たちにはソレがない。 文字通り、初のロボット戦だ。 何が起こるか分からない。気を引き締めていかなければ……。 ……そう言えば出撃直前に、「あぁぁ!あたしの隊舎が……!!」 とか叫ぶ声が聞こえたが……もしかしてアレは、八神ニ佐のモノだったのだろうか……? ゲイズさんちのオーリスちゃん【漆】 いつもと同じ、ティーダの見舞い。 ……だと思ったのだが、今日は彼の様子が変だった。 別段意識を取り戻したワケではないのだが、それでもいつもよりも穏やかな顔。 夢の中でティアナにでも会えたのだろうか……? そんなことを思いつつ、持ってきた花を活けようとするオーリス。 今まで成功したのは、百回やっての一回のみ。 成功率一パーセント。 足りない分はガッツで補う……ことは出来ず、結局今日も看護士さんにしてもらうことに。 ……次こそは。そう決意を新たにするオーリスだった。