前回のあらすじ:ティアナ、狙い撃つ⇒シスコン兄、ソレを盗撮する。「みんな揃ったところで、反省会を始めま~す。司会はこの人、機動六課の癒し系【カリム・グラシア】が……」「……シズカさん……?何故、私に話を振るんですか……?」 小首を傾げようが笑みを浮かべようが、その声のトーンはいつもよりも低いモノ。 つまり騎士カリム様はご立腹のようです。 適当に誤魔化しても見破られるので、仕方がないので本当のことを言いまっしょい。「……んーとね?その……メンドくさいから…………ウソ、ウソ!冗談だからね!?」 無言のプレッシャーから放たれるのは、質量を持った殺気。 この女、出来る!!……とか思わせる、トンでもない圧力がボクをズタボロにする。 折角本当のことを言ったっていうのに、こんな扱いは酷いや……とか思うのは、やはり不味いんだろうね?「……そうですか。それでは、さっさと始めて下さいね?コチラにも、寮のお掃除とかが残っているので……」 納得。 カリムの機嫌が悪い理由は、ソレだったのか。 いつもは結構ノリ良く付き合ってくれる彼女だが、ソレは最優先事項がない時に限る。 恐らく彼女の中では、この反省会も大事なのだが、寮の掃除の方が優先順位が高いのだろう。 出撃したことによって、隊舎の至る所が要掃除の対象になっている現在。 今から始めても夜までは掛かりそうな、その度合い。……正直考えてなかった。本当に済まんですたい。「……ゴメン。それじゃ、サクっと終わらせるから…………まずは被害報告」 ゴウダイノー系は特に問題なし。通常メンテナンスも既に終了済みだから、再び出撃が掛かっても大丈夫。 ……とは言っても、そんな状態にはあんまりなって欲しくはないが。 次はフォワード陣の被害報告。 皆、肉体的には問題なし。 ただ精神面に問題が出ている。 あんな非常識な展開に遭い、そして巻き込まれたのだ。何かしらの影響が出ない方が問題だ。 スバル・ナカジマ。 任務中に絶望感を感じ、そのせいでティアナを喪いそうになる。 結果的に無事で済んだから良かったものの、軽いトラウマになる可能性アリ。 この前言っていた、精神面の甘さが露呈したカタチになるな。 次はティアナ。ティアナ・ランスター。 彼女は特に言うことなし。 最後まで諦めずに頑張る姿勢と言い、狙撃のポイントと言い、むしろ良くやった方だ。 フォワードリーダーとしての自覚でも出てきたのか。 それとも原作とは違い、ティーダが存命なのが影響を与えているのか。とにかく、かなりの高評価だ。 エリオ・モンディアル。 ガジェットⅢ型を撃破。 その前にⅢ型に崖に放られるも、キャロとフリードのフォローで救助され、そのままの勢いでⅢ型に向かう。 キャロ・ル・ルシエ。 先述したエリオの項目でもあるように、バックスとしての役割を果たす。 ライトニングの二人は、互いを補うことで任務を達成。 ソレには、自分たちの能力を冷静に分析出来ていることが含まれている。 出来ることと出来ないことの区別。コレが出来ている人間は強い。 さらにその上で、【何をしなければならないか】ということを理解しているので、この二人は理想的なパートナーと言えるだろう。 ということは、新人たちへのアプローチで早急に行わなければならないのは、スバルだけだ。 彼女には新型デバイスのこともあるので、コチラとしても接触するつもりだった。 つまり、一挙両得。なるべくはやくに、話をするようにしよう。 今度はサポートメンバー。ロングアーチのことだ。 指揮官が不在になるという異例な事態に戸惑いつつも、何とか奮戦した彼ら。 特にゴウダイノーのサポートは、不慣れなのにキチンとこなしていた。ソレは評価すべき点だ。 そして……隊長陣。 正直、どう評価したモノか困る。 というのも、ガジェットⅡ型の相手から離れられなかったからだ。 並の魔導師ならば、ソレは仕方のないこと。 だが彼女たちはエースだ。 並の魔導師と同じでは困る。 戦力的には格下のティアナが奮戦したのだ。 両隊長には、もっとキバって貰わないと困るのだが……。 やはり難しいところだ。 彼女たちは入局十年と言われているが、本業として専念出来るようになってからは、そんなに経っていない。 当たり前だが、百戦錬磨の猛者とはワケが違う。 ただ魔力量が多くて、ちょっと実戦経験が多いだけの……普通の少女。 おっと。このままだと本局の批判になってしまうから、この話題は一旦終わりにしよう。 最後にタヌキ……じゃなくて、八神はやて。 彼女の所有デバイス【リインフォースⅡ】は任務中、優秀な上官として職務を全うしていた。 故に、リインを育てたはやての功績は評価すべきだ。 ……でもなぁ? 戦闘中に現実逃避は頂けない。あげく、指揮を放棄するのも不味かった。 まだ若いから、伸び幅があることは想像に難くない。 ゲンヤが育てたこともあるっていうだけあって、基礎はキチンと出来ている。 とりあえず……あの、ギャグ体質をどうにかしよう。 多分ソレさえなければ、優秀な人材なんだろう。 きっとそうだ。そうに違いない。 ……そういえば彼女、×が二つあったっけ?コレが五つまで貯まったら……さぁて、何をやらせようかねぇ? 機動六課が海鳴へ。 翌日にカリムからその話を聞いた時、ボクは真っ先に居残り組に立候補した。 ……だって里帰りですよ? 【アノ】妹が待つ我が家へ、帰らなければならない。 ソレは……何かの罰ゲームか何かかい? 姉上様がいる時なら良い。何だかんだ言いながらも、姉とそのメイドが助けてくれるからだ。 だが今の月村家には、すずかとそのメイド――ファリンしか居ないのだ。 主人の望むことを実行しようとするのが、メイドの仕事。 ファリンの主人はすずか。ボクはその次以下。 ……姉~さ~ん、カンバァァァァァァック!! ドイツで恭也とウフフ、アハハな生活してる場合じゃないだろぉぉ!? と、いうワケでボクは帰らない。帰ってたまるかってんだ。「……という訳で、シズカさん。貴方に現地の案内をして欲しいのですが……」「…………マテ。行くのは六課のメンバーだろ?内偵に何人か同行するにしても、リンディがいるじゃないか!?」 リンディは現在海鳴在住。 何年も戻っていないボクに比べると、明らかに今の姿を知るモノだ。 どう考えたって、彼女の方が案内には適している。「それがね?はやてさんたちは、アリサさんに活動拠点を用意してもらうみたいなの。つまり……」「……内偵用の拠点を、アイツらには内緒で月村家からも出せと……?」「そう。あの子たちにバレると不味いのよ……お願い出来ないかしら……?」 美人っていうのは、その存在自体が詐欺だと思う。 孫がいるような歳にも見えないし、その悲しそうな顔一つで異性を動かすから。 卑怯者め。でも抵抗出来ない自分がいる。その存在が、相手の策士さを一段と高く見せている。ちくせう。「わかった、分かったから……!」「ありがとう、シズカさん。きっとそう言ってくれると思ってたわ……!」 あ~あ。 どうしてボクは、人の頼みを断れないんでしょう? ノーと言える日本人。ボクはソレになりたい。「そんじゃあ、さぁ…………どうせだし、全員で行こうよ?」「……シズカ。無茶なことを言うんじゃない。そんなことをしたら、ミッドの平和はどうなるんだ……?」 大将としては、ソレは最優先事項。 んなことは分かってる。でもアンタを含めてココに居る面子は、そろそろ休暇を入れないとダメなんだよ。 ソレが丁度良い機会だから今回を利用しようとしただけで、いつか休みを取ることには変わりないのだ。「……ん、ふっふっふっふ!ダイジョブ、心配しなさんなって?お偉いさんって言うのは、こういう時のために居るんだから……」 デスクの上の端末をいじり、【ある場所】への直通回線を開く。 今日は折りしも定例会の日だ。 三人とも揃っているから、話をつけるには丁度良い。『……暗号を照会します』 機械的なメッセージが聞こえ、一旦ソコでコチラからのアクセスが停止する。 一応ボクたちよりもお偉いさんなので、最高のセキュリティが敷かれているのだ。 ……でもなぁ?この暗号はないと思うのだが……。『ジイチャン、バアチャン、ダイスキー』 どう考えてもボクに割り当てられた暗号は、本人たちが言わせたい言葉だった。 ちなみレジアスの場合は割りと普通なモノで、カリムの場合は『モウ、オジイサマト、オバアサマッタラ』だ。 こんな暗号を考える人間が現最高権力者だとは……本部の未来は暗いかもしれないな。『暗号を照会完了……月村静香准将と確認』 ついでに言っとくと、最高評議会の方へのアクセスはもっと面倒だ。 あんな脳みその集まりでも、【一応】陸と海のヒエラルキーのTOPだからね。 ……アイツら最近、スカリエッティが開発した脳トレにハマってるらしいが……何やってるんだよ、オイ?『おう。久しぶりじゃな、シズカ。元気にやっとるか……?』『シズカ……最近顔を見せないじゃないか……?訓練室の調整を、そろそろして欲しいんだぞ……?』『アラアラ。シズカちゃん、久しぶりねぇ……?今日はどうしたの……?』 レオーネ・フィルス。 ラルゴ・キール。 ミゼット・クローベル。 どう見ても老人会三人組だが、コレでもれっきとした管理局の生き字引。 法務・武装隊・議会。その三つのカテゴリーのトップであり、かつて黎明期に大活躍した方々。 多少代償を払うことになるが、この人たちを頼れば何とかしてくれるだろう。「いやね?六課の連中が地球――管理外の第九十七番に、ロストロギア回収任務に行くんだけどね……?」『……内偵としてシズカたちも行くことに、か……?』「ん。そんでね?レジアスだけが、残るってきかないんだよぉ……」「オイ、ちょっと待て!何で、そういう話になるんだ!?」 隣でレジアスが何か言ってるが、気にしない。 じいちゃんばあちゃんは、さも面白いことを見つけたとばかりにコチラを見ている。 レジアスをからかうことにかけては、彼らの右に出るモノはいないのだ。『ソレはいけないなぁ、レジー?』『全くだ……団体行動は大切だと、昔から散々言ってきたじゃないか……?』『まぁまぁ。レジー坊やも、まだまだ若いってことで……』「御三方……!!」 ホレ見ろ。 ボクなんか、まだまだだ。 はやくあの領域の住人になりたいモノだ……。『まあ、話は分かった。シズカ。今度の休みに、訓練室の調整を頼む。重力三百倍に挑戦したいんだ……』「OK!お安い御用だよ」『レオーネと私は、地球の紅茶とコーヒーを希望するわ……最高のモノを頼むわね?』「あいよぉ!任せてちょうだい♪」 こうして、ボクたちの海鳴行きが決まった。 向こうでの拠点は、ボク個人の所有物件を使おう。 そうでないと……妹に見つかるかもしれないしね……? ……あ。スッカリ忘れてたけど、向こうには【零号Cストーン】があったんだっけ? あんまりにも生成に時間がかかるから、放置してきちゃったけど……もしかしたらアレ、出来てるかも。 開発するだけして放置してきた【零号Cストーン】と、四号マシンのプロトタイプ。 サポートメカは向こうで完成済みだし、もしかしたら四号マシンの完成を待つ必要はなくなるかも……。 一応、コントロールユニットのデバイスを持っていこう。 あと四号マシン用のCストーンも、念のために持って行けば……。 ソコまで考えると、ボクは急いで準備に取り掛かる。 地球にあるというロストロギア。 ソイツに対して、万が一の場合には必要になるかもしれないから。 そうならないことを祈りつつ、ボクは四号ロボットの方へ走っていった。 あとがき >誤字訂正 俊さん。保管庫までワザワザ着て頂いてのご指摘、誠にありがとうございました!! >今回の大将日記・ゲイズさんちのオーリスちゃん 指の動くままに大将日記を書いていたら、大将日記とゲイズさんちのオーリスちゃんだけで一話分に……! なのでソレを分割して、次回はまた特別拡大版をやります。どうぞ、お楽しみに(?)。