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No.8085の一覧
[0] リリカル・とらいあんぐる転生日記  【完結しました】[satuki](2009/11/06 10:47)
[1] リリカル・とらいあんぐる転生日記 00[satuki](2009/06/19 17:02)
[2] リリカル・とらいあんぐる転生日記 01[satuki](2009/06/19 17:02)
[3] リリカル・とらいあんぐる転生日記 02[satuki](2009/06/19 17:02)
[4] リリカル・とらいあんぐる転生日記 03[satuki](2009/06/19 17:02)
[5] リリカル・とらいあんぐる転生日記 04[satuki](2009/06/19 17:02)
[6] リリカル・とらいあんぐる転生日記 05[satuki](2009/06/19 17:02)
[7] リリカル・とらいあんぐる転生日記 06[satuki](2009/06/19 17:03)
[8] リリカル・とらいあんぐる転生日記 07[satuki](2009/06/19 17:03)
[9] リリカル・とらいあんぐる転生日記 08[satuki](2009/06/19 17:03)
[10] リリカル・とらいあんぐる転生日記 09[satuki](2009/06/19 17:01)
[11] リリカル・とらいあんぐる転生日記 10[satuki](2009/06/19 17:01)
[12] リリカル・とらいあんぐる転生日記 11[satuki](2009/06/19 17:01)
[13] リリカル・とらいあんぐる転生日記 12[satuki](2009/06/19 17:01)
[14] リリカル・とらいあんぐる転生日記 13[satuki](2009/06/19 17:01)
[15] リリカル・とらいあんぐる転生日記 14[satuki](2009/06/19 17:00)
[16] 元ネタ帳(00~14)[satuki](2009/04/30 21:34)
[17] リリカル・とらいあんぐる転生日記 15【前編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[18] リリカル・とらいあんぐる転生日記 16【後編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[19] リリカル・とらいあんぐる転生日記 17[satuki](2009/06/19 00:04)
[20] リリカル・とらいあんぐる転生日記 18[satuki](2009/06/19 00:03)
[21] リリカル・とらいあんぐる転生日記 19[satuki](2009/06/19 00:03)
[22] リリカル・とらいあんぐる転生日記 20[satuki](2009/06/19 00:03)
[23] リリカル・とらいあんぐる転生日記 21[satuki](2009/06/19 00:02)
[24] リリカル・とらいあんぐる転生日記 22[satuki](2009/06/19 00:02)
[25] リリカル・とらいあんぐる転生日記 23[satuki](2009/06/19 00:02)
[26] リリカル・とらいあんぐる転生日記 24[satuki](2009/06/19 00:01)
[27] リリカル・とらいあんぐる転生日記 25[satuki](2009/06/19 00:01)
[28] リリカル・とらいあんぐる転生日記 26[satuki](2009/06/19 00:01)
[29] リリカル・とらいあんぐる転生日記 27[satuki](2009/06/19 00:01)
[30] リリカル・とらいあんぐる転生日記 28[satuki](2009/06/19 00:00)
[31] リリカル・とらいあんぐる転生日記 29[satuki](2009/06/19 00:00)
[32] リリカル・とらいあんぐる転生日記 30[satuki](2009/06/19 00:00)
[33] リリカル・とらいあんぐる転生日記 31[satuki](2009/06/19 00:00)
[34] リリカル・とらいあんぐる転生日記 32【注:糖分過多】[satuki](2009/06/18 23:59)
[35] リリカル・とらいあんぐる転生日記 33[satuki](2009/06/18 23:59)
[36] リリカル・とらいあんぐる転生日記 34[satuki](2009/06/18 23:59)
[37] リリカル・とらいあんぐる転生日記 35[satuki](2009/06/18 23:59)
[38] リリカル・とらいあんぐる転生日記 36[satuki](2009/06/18 23:59)
[39] リリカル・とらいあんぐる転生日記 37[satuki](2009/06/18 23:58)
[40] リリカル・とらいあんぐる転生日記 38【少年編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[41] リリカル・とらいあんぐる転生日記 39【歯車戦士編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[42] リリカル・とらいあんぐる転生日記 40【大将と愉快な仲間たち①】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[43] リリカル・とらいあんぐる転生日記 41【大将と愉快な仲間たち②】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[44] リリカル・とらいあんぐる転生日記 42【歪んだ物語・その修正方法】[satuki](2009/06/18 23:57)
[45] 【オヤジ】狩り[satuki](2009/06/05 17:07)
[46] 【オヤジ】狩り-01  【続いた。続いてしまった】[satuki](2009/05/18 23:29)
[47] 【オヤジ】狩り-02  【また続いてしまった】[satuki](2009/05/26 20:02)
[48] 【オヤジ】狩り-03  【またまた、続いてしまった……】[satuki](2009/06/02 01:26)
[49] 【オヤジ】狩り-04  【狩るべきオヤジは、まだまだ存在するのだ!!】[satuki](2009/06/07 19:31)
[50] 【オヤジ】狩り-05  【アンリミティッド・オヤジワークス……ソレは地獄絵図でしかないな……?】[satuki](2009/06/29 21:16)
[51] 【オヤジ】狩り-06  【覇王少女のファンには、彼女が女神に見えるらしい……視力検査したら?】[satuki](2009/06/09 18:10)
[52] 【オヤジ】狩り-07  【イロモノはイロモノを呼ぶ…………奇跡の開幕!?】[satuki](2009/06/11 20:03)
[53] 【オヤジ】狩り-08  【奇跡は続く!?遅れてきた漢……!!】[satuki](2009/06/18 23:39)
[54] 【オヤジ】狩り-09  【漢女と乙女……オトメ同士の決闘!】[satuki](2009/06/19 17:00)
[55] 【オヤジ】狩り-10  【死亡フラグをブチ折ったモノ……!】[satuki](2009/06/20 00:19)
[56] 妖精00 【良く考えたら、コレが全ての始まりなのかもしれないなぁ……?】[satuki](2009/06/05 16:52)
[57] 妖精01 【妖精爆弾……じゃなかった。爆誕!!】[satuki](2009/06/05 16:52)
[58] 妖精02 【やって来たのは運命にかぶれたロリジャイと、その家族】[satuki](2009/06/05 16:53)
[59] 妖精03 【蝶人になった日】[satuki](2009/06/07 19:32)
[60] 妖精04 【淫獣殲滅作戦――全ては清い【なのちゃん】のために】[satuki](2009/06/10 00:10)
[61] 妖精05 【遠足。それは至上最強の闘い!?】[satuki](2009/06/20 00:20)
[62] 妖精06 【掟破り!?……覇王の蘇る日!】[satuki](2009/06/27 20:12)
[63] 真・転生日記【オヤジ】風味 ――『妖精は覇王の夢を見る!』 01[satuki](2009/06/29 21:17)
[64] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 02  【復活したイレギュラー】[satuki](2009/06/29 21:25)
[65] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 03  【お約束は突然に】[satuki](2009/07/03 18:58)
[66] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 04  【突撃、となりの小学校!?】[satuki](2009/07/12 18:30)
[67] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 05  【誕生!?養護教諭プレシあ!?】[satuki](2009/07/14 20:13)
[68] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 06  【予定とは、乱される為にあるのだ!】[satuki](2009/07/16 21:43)
[69] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 07  【イレギュラー戦隊、参る!!】[satuki](2009/07/24 16:48)
[70] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 08  【仮面対仮面(オマケ付き)】[satuki](2009/07/27 16:53)
[71] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 09  【隣の市は危険がいっぱい!?】[satuki](2009/07/31 21:08)
[72] デザイア!?[satuki](2009/08/02 16:08)
[73] リリカル・とらいあんぐる転生日記 43【本筋は、忘れた頃にやって来る】[satuki](2009/08/04 23:55)
[74] デザイア!? 02[satuki](2009/09/04 19:03)
[75] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 10  【近付いてくる真相!?】[satuki](2009/09/04 19:04)
[76] デザイア!? 03 【女(装)王、誕生】[satuki](2009/09/07 02:14)
[77] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 11  【混沌の始まり】[satuki](2009/09/13 12:20)
[78] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 12  【長い伏線(その一)】[satuki](2009/09/18 00:37)
[79] リリカル・とらいあんぐる転生日記 44【長い伏線(そのニ)】[satuki](2009/09/19 19:34)
[80] リリカル・とらいあんぐる転生日記 45【アインヘリアル?何それ、美味しいの?】[satuki](2009/09/25 21:50)
[81] リリカル・とらいあんぐる転生日記 46【少しだけ本気を出した。後悔はしている】[satuki](2009/09/27 21:52)
[82] リリカル・とらいあんぐる転生日記 47【もう少し本気を出してみた。さらに後悔している】[satuki](2009/10/02 21:46)
[83] リリカル・とらいあんぐる転生日記 48【ついに登場、最高評議会!?】[satuki](2009/10/09 11:11)
[84] リリカル・とらいあんぐる転生日記 49【三人目は…・・・グハッ!?】[satuki](2009/10/11 22:41)
[85] リリカル・とらいあんぐる転生日記 50【歯車戦士、愛の決闘】[satuki](2009/10/16 18:38)
[86] リリカル・とらいあんぐる転生日記 51【人生は闘いだ!!】[satuki](2009/10/17 21:59)
[87] リリカル・とらいあんぐる転生日記 52【魔神の生まれちゃった日】[satuki](2009/10/22 22:08)
[88] リリカル・とらいあんぐる転生日記 53【アニキ+ナイスミドル=???】[satuki](2009/10/27 16:33)
[89] リリカル・とらいあんぐる転生日記 54【変形する揺り籠!?至上最悪の悪魔の登場!!】[satuki](2009/11/06 10:46)
[90] リリカル・とらいあんぐる転生日記 55【ラスト・ラストをキミに……】[satuki](2009/11/06 10:47)
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[8085] リリカル・とらいあんぐる転生日記 23
Name: satuki◆b147bc52 ID:171dad2f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/19 00:02


 前回のあらすじ:レジアス、勇者になる。




 とうとう、地球に行く日が来てしまった。
 この日を一日千秋の想いで待って……るワケがない。
 むしろ、転送ポートの故障を願った程だ。

 行きたくない。
 往きたくない。
 ボクを逝かせないで。

 現実は無情である。
 転送ポートの具合は通常を通り越して、快調モード。
 現地の天気も快晴。天はボクに、何か恨みでもあるのだろうか……?

「シズカさーん!準備は出来ましたか~?」

 自室の扉を、ウキウキ気分で叩くカリム。
 彼女は非常に楽しみにしている組で、ボクはその逆。
 ……というか、ボク以外には多分楽しみじゃない組はいない。

 あのレジアスでさえ、最初の渋った様子は何処へやら。
 この機会に地球のレシピと材料、調味料などを調達するつもりらしい。
 ……オイ。お前は何処のコックだ……?

 現在の本職がコックのボクを差し置いて、彼は料理ハンターになるようだ。
 その内、彼が【メイド害】に進化してしまうんじゃないかと、ただただ心配だ。
 ……やめよう。今鮮明に想像出来てしまった映像は、忘却の彼方に葬り去ろう。

「シズカさーーん?」
「……ハイ、ハイ。分かった、分かったから……」

 ボクの(ある意味での)人生が、今日幕を降ろすことになるかもしれない。
 仕方がない。覚悟を決めるしかないようだ。
 だってボクには、元々選択肢なんてあってないようなモノなのだし……。

「シズカさん、遅いですよ?出掛けに【水竜】と【火竜】に挨拶していくって、言ってたじゃないですか……?」
「あー。そう言えばそうだったね?……あんがと。忘れるとこだったよ……」

 【水竜】。そして【火竜】。
 その二つの名前は、新たな勇者ロボの名前……になるかもしれないモノ。
 というのも、その二体はまだスーパーAIの調整中だからだ。

 元々は、ちっとも働かないニート騎士に仕事を与えることが目的だった。
 でも、闘い以外はダメっ子動物な彼女。
 正直処遇に困った。

 ソコで考えたのが、スーパーAIへの人格移植への協力。
 曲がりなりにも、騎士で将な彼女。
 その思考パターンをコピー出来れば、優秀なロボになるかもしれない。

 そう考えての研究。
 そして実行された実験。
 その結果……起動するのも面倒だというダメAI、【火竜】が誕生した。

 流石にこんな事態は、ボクも予想出来なかった。
 困った。
 そんで悩んだ。

 悩みに悩んだ結果、ボクはある種の解決策を思い付いた。
 もう一つ同じタイプのAIを作り、ソイツに共振させて強制的に起こせないモノかと。
 丁度その時医務室には、ウェルダンな堅物青年提督の屍が。

 すぐさま人格コピーを始め、翌日にはスーパーAIが完成した。
 堅物兄ちゃんタイプのAI【水竜】。
 起動はコッチの方が若干ワザとはやくしたので、【火竜】は生まれた瞬間から兄が居ることになった。

「おはようさん。【水竜】、【火竜】」
『……おはようございます。月村博士』
『…………』
「……水竜。火竜はまた寝てるのかい?」
『……いえ。昨日の夜中から、【ネットゲーム】とかにハマっていまして……』

 人間臭いにも程がある。
 とりあえずこの駄ニートAI、もう少し……以上に様子を見ないとダメだな……。
 申し訳ない気持ちを抱きつつも、水竜に火竜を押し付ける。

「水竜、ひっじょ~に申し訳ないんだけどさぁ……」
『……分かっています。火竜の教育は、ボ……私が引き受けましょう』
「……別に【僕】って言っても良いんだよ?』
『……いえ。性分ですから……』

 筐体丸出しのスーパーAIの一方がネトゲにハマり、もう一方が尻拭い。
 ……ウン。コイツらに身体を与えるか、再考した方が良いな。
 なのは型AI【洸竜】・【暗竜】ですら、未だに身体がない状態。ついでに言うと、精神がまだ未成熟……先行きは思いっ切り、不安だ。

 コレじゃあ【電竜】や【嵐竜】なんて、夢のまた夢だよなぁ……。






















 六課メンバーが、無事月村家のトランスポートに到着した。
 ソレは、先行しているヴォルヴォッグから確認済み。
 あのポンコツロボは、休暇をとってまで地球に行こうとした。だから仕方なく、斥候に出させた。

 ロボットなのに、あそこまで嬉しそうに表情を崩すとは……当たり前だが想像出来るワケがない。
 ボディやら何やらの九十九パーセントはボクの設計なのに、残りの一パーセント。
 AIの中身が変態シスコンなだけで、あそこまでへんた……個性的なロボットになるとは……良い意味でも悪い意味でも予想外だ。

 まぁ逆に言えば、ティアナを含めた六課メンバーを監視し忘れるということもないのだ。
 今回ばかりは、助かった結果になる。
 何せボクは、表立って動きたくないからね……この【海鳴】フィールドの中では。

 なのはたちがアリサに用意してもらったコテージを出て、翠屋に向かった様子。
 ソレをボクたちは、ヴォルヴォッグから送られてくるリアルタイム映像で確認。
 段々密偵というよりは、盗撮ストーカーみたいになってしまった彼。

 ……アレ?
 コレは……涙……?
 ボク……泣いているの……?

「……シズカさん。泣きたい時は、思いっ切り泣いても良いのよ……?」

 違う。
 ソレ違う。
 ソレはこんなどうしようもない場面で使って良いような、安い台詞じゃないよ……!?

「そうですか……でしたら、せめて涙を拭いて下さい……」

 差し出されるハンカチ。
 騎士カリム様は気遣いの淑女です。
 人の優しさに触れたかったボクは、思わず差し出されたハンカチで涙を拭いていました。

 ……あ。ハンカチに香水の匂い。
 女の子って、こういうことするもんなのかなぁ?
 それとも、カリムみたいな良家のお嬢さんだけ?

「……ん。ありがと、カリム……」
「……どういたしまして」
「あ、ハンカチ……洗ってから返すね?」
「いえ。ソレは差し上げます。私は予備を持っていますので……」

 まぁ、人が使ったのは流石に嫌か。
 んじゃ、折角海鳴に居るワケだし……新しいの買ってプレゼントでもするかね。
 翠屋のクッキーとかを添えて渡せば、礼儀的にも問題ないハズだしね?

 ……この時ボクは、思いもしなかった。
 後に起こる異常事態への引き金。
 ソレを、このハンカチが引き起こすことになるとは……。







 久しぶりの翠屋。
 何年かぶりのその建物。
 見た目は全く変わっておらず、その事実が大事に使われていることを物語っていた。
 
 なのはたちはスーパー銭湯に移動中。
 だからボクたちは翠屋にやって来た。
 こうしてニアミスにしていけば、彼女たちの足跡を辿っても大丈夫……なハズ。

 それにボクとしては、海鳴に帰ってきたら必ず寄ると決めていた場所だ。
 菓子作りの師匠である、桃子さんに会うために。
 ……ついでに、士郎とかを揉んでやるために。

 ――カランカラン!

 入り口のベルを鳴らしながら、ボクたちは店内に入っていく。
 リンディは現在、六課のコテージで調理中。彼女はボクたちと違って、隠れなくて良いのでラクだ。
 フェイトの家族として会えば良いワケだしね。
 
「いらっしゃいませ~~!……って、アラ?静香ちゃん……!?」
「お久しぶりです、桃子さん!」

 久しぶり会った桃子さんは、以前と変わらず綺麗でした。
 とても子持ちとは思えない、その容姿。
 元気ハツラツとしたその動作。全然変わってないなぁ……。

「(……何なんですか。その礼儀正しい青年ぶりは……?)」
「(…………ボク、桃子さんの前では良い子で通ってるの!!)」

 カリムさんがボクに疑惑の視線を向けてきます。
 あぁ……貴女にそんな視線を向けられるなんて、初対面の時以来ですなぁ……?
 ……痛い。痛いよ。その真っ直ぐな瞳が、ボクのライフをオーバーキルにぃぃ!!

「(……シズカ。己を偽るのは良くないぞ……?)」

 レジアス大将様も忠告してきます。
 ボクは良い子なんだよ!!
 ……桃子さんの前限定だけど。

「(……ウッサイ!とにかく、ココではボクのこと……絶対にバラすなよ?)」
『(……条件付で可決)』

 レジアス……!

『(……否決)』

 カリムゥゥゥゥッ!!

『(……可決)』

 ……ザッフィー!!
 流石は、マイ心の友!!
 飲食店では、犬は立ち入り禁止。
 だから外で待っているというのに、念話で助けてくれるその健気さ!!

 ……ヤバイ。
 やっぱこのワンコ、めっちゃ欲しいわぁ。
 一日中肉球プニプニしたり、フリスビーキャッチをしたり……良いねぇ?最高だよぉぉ!!

「……静香ちゃん?どうしたの?すごい嬉しそうな顔して……?」

 おおっと。妄想してる場合じゃなかった。
 折角民主的に多数決で可決された、ボクの立場。
 有効に使わせてもらわないと……。

「それはもう、桃子さんに会えたからですよぉぉ!!」
「アラ。嬉しいこと、言ってくれるわね~?」



 …………!!



 瞬間的に、異常な程の殺気を感じた。
 狙いはボクのみ。
 次の瞬間に投擲されたのは……飛針だ!!

「桃子さん。今日は連れがいるので、ボックス席をお借りしますね?」
「えぇ、良いわよ!!ちょっと待っててね?すぐにお冷とか持って行くから……」

 サッと自然に身をよじり、何気なく飛針をかわすボク。
 お冷とメニューを取りに、カウンターの方へ走っていく桃子さん。
 コレで【剣士のボク】を見られることがなくなった。さぁ……懺悔の時間だよ!!



 …………!



 今度は鋼糸が。
 空気に触れる音からすると、恐らく四番。
 なら素手で掴んでも問題ない。

「…………フッ!」

 拘束用の鋼糸を右手で掴み、逆に相手を吊り上げる。
 相手もプロなので、普通は成功しない。
 でも今のボクは強い。例え【閃】が来ようとも、破ってみせる自信がある!!

「…………ぐあぁぁぁぁあっ!!」

 フィ~ッシュ!
 高町士郎、召し捕ったり!
 ……魚拓ならぬ人拓を取れないのが、残念で仕方がないが。

「……っつぅぅっ!!」
「…………士郎、久しぶりだねぇ?元気そうで何よりだよぉ……?」

 多分今のボクは、さっき桃子さんと会った時とは違う顔をしている。
 どれくらい違うかと言うと、五百四十度位違う。
 つまり正反対。般若とか羅刹とか、呼び方は色々あると思うけどね……?

「や、やぁ……静香さ……君。元気そうで何よりだ……」

 様とか付けたら、メンチ切り。
 外見上ソレは不味いからね?
 昔徹底させたハズなのに……忘れてたな?

「……それでぇ?今日ならボクに、勝てると思ったのぉ……?思ったから、仕掛けてきたんだよねぇ……?」
「い、いや!その……仕事が忙しいらしいから、鍛錬する暇がないんじゃないかと思って……!!」
「……確かに仕事は忙しいよぉ?……でもね?忙しすぎて、常に神速使わないとやってられないんだよぉ……!!」

 常に神速。
 普通は無理だ。
 神経的にも肉体的にも、無理に決まっている。

 だが人間は。
 必要に迫られれば、何でも出来るようになってしまうのだ。
 通常の食堂の仕事。リンディはウェイトレスだから、調理はしない。

 調理スタッフは途中まで……ボク一人だけだった。確かに六課は小さな組織だ。人員も少ないだろう。
 でもだよ?それでもあんな人数、一人で捌けるワケがないだろうに!!
 今は【お残しを許さない食堂のおばちゃん】が、追加で入ってくれたから良かったものの……。
 
 そして本業。
 秘密基地でのマシン&デバイス作成。
 コレもスタッフはボク一人。

 コレはアレか?
 【ジェバン2が一晩でやってくれました……】の真似をしろと!?
 明らかにイジメだろう!?

 それでも時は過ぎて行く。
 無常にも刻はその針を進め、ボクの時間を奪っていく。
 闘わなければ生き残れない!!まさにそんな状況だった。

「な、何だって~~~~!!ま、まさか……普段から神速状態になることによって、戦闘移行時での身体の負担を極小にしたっていうのか……!!」
「……まぁ、結果的には」
「…………クッ!完敗だ…………だが!!」

 目をクワっと見開き、再起動する士郎。
 どうしよう。コレが当代最強の御神の剣士だなんて、とても思えない。
 下手をすると、最盛期の最強軍団にも匹敵するんじゃないか?

「だが負けられない!!桃子は渡さん…………渡さんぞぉぉぉぉぉぉっ!!」

 凄い気迫だ。
 思わず一歩、後ろに下がってしまいそうになる。
 このオヤジも、何時の間にかヒトの壁を超越しようとしたのだ。

 ……喜ばしい。
 先達の剣士としては、後進の成長振りを見るのが一番楽しい時なのだ。
 だけど……ソコには誤解があるのだから、ソレは解いておかないとねぇ……?

「……士郎。盛り上がってるところ悪いんだけどさぁ?ボクは別に、桃子さんを恋愛対象として見てるワケじゃないからね……?」
「…………エ?そうなの……?」

 やっぱり誤解してやがったか。
 ボクの桃子さんに対する気持ちは、尊敬とかだ。
 後は……まぁ、母性に飢えてたんだよ。

 はやくに両親を亡くし、姉はあの通りの存在。
 如何に幾度もの転生の記憶があろうとも、やはり魂は肉体に引きずられるモノ。
 ボクもその例に漏れなかった、というワケさ。

「だからさ、とりあえず…………席に案内してくれ」
「…………畏まりました。お客様方、どうぞコチラへェェ……ッ!?」

 士郎の言葉が、変な所で驚愕のモノへと変化する。
 彼が見ているのは扉の向こう。
 一体何があったという……………………グハッ!!

「…………お兄ちゃぁぁぁぁん、見ぃぃぃぃつけたぁぁぁぁ?」

 ソコに居たのは……長く美しい髪を蛇のように逆立てた少女。
 紫がかった髪はボクとお揃いで、顔も瓜二つ。
 そう…………我が妹、【月村すずか】という名のモンスターが、ソコには存在していたのだ。













 大将日記V



 ソコには修羅が居た。
 それは比喩でも何でもなく、本当に修羅と見まごうばかりの猛者がいたのだ。
 その漢の名前は、【高町士郎】。

 あのエースオブエース・高町なのはの父親であり、自分と同じく魔法の才がないモノ。
 だが世界は広い。
 己の肉体と刀剣類だけで、あそこまでの領域に行けるとは……!!

 ココは管理外世界。
 故にガトックなどの使用は、緊急事態以外は避けなければならない。
 しかし挑んでみたい。異世界の技術によって支えられし、究極の戦闘。

 ……機会があれば、この漢とも闘ってみたいモノだな……。






 ゲイズさんちのオーリスちゃん【捨】



 あの不思議な現象が止んだ。
 ティーダの病室で起こっていた怪奇現象。
 ソレが今日、まだ一度も起きていないのだ。

 本来は喜ばしいこと。
 だが再び無反応になってしまったティーダを見ると、そうも言えなくなる。
 どうすれば良いのだろうか?

 何も考えられずにいると、ソコには今日持ってきた【ユリの花】が。
 気分を紛らわせるために活けようとするが……上手く位置が決まらない。
 何度もやり直す内に、気が付けば両手が花粉だらけに。

 もしやと思って鏡を見ると、やはりソコには花粉まみれの自分の姿が。
 我がことながら、笑ってしまう事態。
 仕方無しに、洗面室で花粉を洗い落としに行く。

 帰ってきた時、ソコには一枚の写真があった。
 ティアナの私服写真。
 それも、六課のメンバーと一緒に写っているモノだった。

 不思議に思いつつも、ソレ以上に心が温かくなる。
 オーリスはそう感じつつ、再びユリの花に挑むのだった。











 あとがき

 >誤字……というか、勘違いの訂正

 俊さん。毎度ご指摘いただき、本当にありがとうございます!!
 どうも、名前と実物が一致してなかったみたいでした。
 以後気を付けますです。





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