<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

とらハSS投稿掲示板


[広告]


No.8085の一覧
[0] リリカル・とらいあんぐる転生日記  【完結しました】[satuki](2009/11/06 10:47)
[1] リリカル・とらいあんぐる転生日記 00[satuki](2009/06/19 17:02)
[2] リリカル・とらいあんぐる転生日記 01[satuki](2009/06/19 17:02)
[3] リリカル・とらいあんぐる転生日記 02[satuki](2009/06/19 17:02)
[4] リリカル・とらいあんぐる転生日記 03[satuki](2009/06/19 17:02)
[5] リリカル・とらいあんぐる転生日記 04[satuki](2009/06/19 17:02)
[6] リリカル・とらいあんぐる転生日記 05[satuki](2009/06/19 17:02)
[7] リリカル・とらいあんぐる転生日記 06[satuki](2009/06/19 17:03)
[8] リリカル・とらいあんぐる転生日記 07[satuki](2009/06/19 17:03)
[9] リリカル・とらいあんぐる転生日記 08[satuki](2009/06/19 17:03)
[10] リリカル・とらいあんぐる転生日記 09[satuki](2009/06/19 17:01)
[11] リリカル・とらいあんぐる転生日記 10[satuki](2009/06/19 17:01)
[12] リリカル・とらいあんぐる転生日記 11[satuki](2009/06/19 17:01)
[13] リリカル・とらいあんぐる転生日記 12[satuki](2009/06/19 17:01)
[14] リリカル・とらいあんぐる転生日記 13[satuki](2009/06/19 17:01)
[15] リリカル・とらいあんぐる転生日記 14[satuki](2009/06/19 17:00)
[16] 元ネタ帳(00~14)[satuki](2009/04/30 21:34)
[17] リリカル・とらいあんぐる転生日記 15【前編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[18] リリカル・とらいあんぐる転生日記 16【後編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[19] リリカル・とらいあんぐる転生日記 17[satuki](2009/06/19 00:04)
[20] リリカル・とらいあんぐる転生日記 18[satuki](2009/06/19 00:03)
[21] リリカル・とらいあんぐる転生日記 19[satuki](2009/06/19 00:03)
[22] リリカル・とらいあんぐる転生日記 20[satuki](2009/06/19 00:03)
[23] リリカル・とらいあんぐる転生日記 21[satuki](2009/06/19 00:02)
[24] リリカル・とらいあんぐる転生日記 22[satuki](2009/06/19 00:02)
[25] リリカル・とらいあんぐる転生日記 23[satuki](2009/06/19 00:02)
[26] リリカル・とらいあんぐる転生日記 24[satuki](2009/06/19 00:01)
[27] リリカル・とらいあんぐる転生日記 25[satuki](2009/06/19 00:01)
[28] リリカル・とらいあんぐる転生日記 26[satuki](2009/06/19 00:01)
[29] リリカル・とらいあんぐる転生日記 27[satuki](2009/06/19 00:01)
[30] リリカル・とらいあんぐる転生日記 28[satuki](2009/06/19 00:00)
[31] リリカル・とらいあんぐる転生日記 29[satuki](2009/06/19 00:00)
[32] リリカル・とらいあんぐる転生日記 30[satuki](2009/06/19 00:00)
[33] リリカル・とらいあんぐる転生日記 31[satuki](2009/06/19 00:00)
[34] リリカル・とらいあんぐる転生日記 32【注:糖分過多】[satuki](2009/06/18 23:59)
[35] リリカル・とらいあんぐる転生日記 33[satuki](2009/06/18 23:59)
[36] リリカル・とらいあんぐる転生日記 34[satuki](2009/06/18 23:59)
[37] リリカル・とらいあんぐる転生日記 35[satuki](2009/06/18 23:59)
[38] リリカル・とらいあんぐる転生日記 36[satuki](2009/06/18 23:59)
[39] リリカル・とらいあんぐる転生日記 37[satuki](2009/06/18 23:58)
[40] リリカル・とらいあんぐる転生日記 38【少年編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[41] リリカル・とらいあんぐる転生日記 39【歯車戦士編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[42] リリカル・とらいあんぐる転生日記 40【大将と愉快な仲間たち①】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[43] リリカル・とらいあんぐる転生日記 41【大将と愉快な仲間たち②】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[44] リリカル・とらいあんぐる転生日記 42【歪んだ物語・その修正方法】[satuki](2009/06/18 23:57)
[45] 【オヤジ】狩り[satuki](2009/06/05 17:07)
[46] 【オヤジ】狩り-01  【続いた。続いてしまった】[satuki](2009/05/18 23:29)
[47] 【オヤジ】狩り-02  【また続いてしまった】[satuki](2009/05/26 20:02)
[48] 【オヤジ】狩り-03  【またまた、続いてしまった……】[satuki](2009/06/02 01:26)
[49] 【オヤジ】狩り-04  【狩るべきオヤジは、まだまだ存在するのだ!!】[satuki](2009/06/07 19:31)
[50] 【オヤジ】狩り-05  【アンリミティッド・オヤジワークス……ソレは地獄絵図でしかないな……?】[satuki](2009/06/29 21:16)
[51] 【オヤジ】狩り-06  【覇王少女のファンには、彼女が女神に見えるらしい……視力検査したら?】[satuki](2009/06/09 18:10)
[52] 【オヤジ】狩り-07  【イロモノはイロモノを呼ぶ…………奇跡の開幕!?】[satuki](2009/06/11 20:03)
[53] 【オヤジ】狩り-08  【奇跡は続く!?遅れてきた漢……!!】[satuki](2009/06/18 23:39)
[54] 【オヤジ】狩り-09  【漢女と乙女……オトメ同士の決闘!】[satuki](2009/06/19 17:00)
[55] 【オヤジ】狩り-10  【死亡フラグをブチ折ったモノ……!】[satuki](2009/06/20 00:19)
[56] 妖精00 【良く考えたら、コレが全ての始まりなのかもしれないなぁ……?】[satuki](2009/06/05 16:52)
[57] 妖精01 【妖精爆弾……じゃなかった。爆誕!!】[satuki](2009/06/05 16:52)
[58] 妖精02 【やって来たのは運命にかぶれたロリジャイと、その家族】[satuki](2009/06/05 16:53)
[59] 妖精03 【蝶人になった日】[satuki](2009/06/07 19:32)
[60] 妖精04 【淫獣殲滅作戦――全ては清い【なのちゃん】のために】[satuki](2009/06/10 00:10)
[61] 妖精05 【遠足。それは至上最強の闘い!?】[satuki](2009/06/20 00:20)
[62] 妖精06 【掟破り!?……覇王の蘇る日!】[satuki](2009/06/27 20:12)
[63] 真・転生日記【オヤジ】風味 ――『妖精は覇王の夢を見る!』 01[satuki](2009/06/29 21:17)
[64] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 02  【復活したイレギュラー】[satuki](2009/06/29 21:25)
[65] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 03  【お約束は突然に】[satuki](2009/07/03 18:58)
[66] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 04  【突撃、となりの小学校!?】[satuki](2009/07/12 18:30)
[67] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 05  【誕生!?養護教諭プレシあ!?】[satuki](2009/07/14 20:13)
[68] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 06  【予定とは、乱される為にあるのだ!】[satuki](2009/07/16 21:43)
[69] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 07  【イレギュラー戦隊、参る!!】[satuki](2009/07/24 16:48)
[70] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 08  【仮面対仮面(オマケ付き)】[satuki](2009/07/27 16:53)
[71] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 09  【隣の市は危険がいっぱい!?】[satuki](2009/07/31 21:08)
[72] デザイア!?[satuki](2009/08/02 16:08)
[73] リリカル・とらいあんぐる転生日記 43【本筋は、忘れた頃にやって来る】[satuki](2009/08/04 23:55)
[74] デザイア!? 02[satuki](2009/09/04 19:03)
[75] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 10  【近付いてくる真相!?】[satuki](2009/09/04 19:04)
[76] デザイア!? 03 【女(装)王、誕生】[satuki](2009/09/07 02:14)
[77] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 11  【混沌の始まり】[satuki](2009/09/13 12:20)
[78] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 12  【長い伏線(その一)】[satuki](2009/09/18 00:37)
[79] リリカル・とらいあんぐる転生日記 44【長い伏線(そのニ)】[satuki](2009/09/19 19:34)
[80] リリカル・とらいあんぐる転生日記 45【アインヘリアル?何それ、美味しいの?】[satuki](2009/09/25 21:50)
[81] リリカル・とらいあんぐる転生日記 46【少しだけ本気を出した。後悔はしている】[satuki](2009/09/27 21:52)
[82] リリカル・とらいあんぐる転生日記 47【もう少し本気を出してみた。さらに後悔している】[satuki](2009/10/02 21:46)
[83] リリカル・とらいあんぐる転生日記 48【ついに登場、最高評議会!?】[satuki](2009/10/09 11:11)
[84] リリカル・とらいあんぐる転生日記 49【三人目は…・・・グハッ!?】[satuki](2009/10/11 22:41)
[85] リリカル・とらいあんぐる転生日記 50【歯車戦士、愛の決闘】[satuki](2009/10/16 18:38)
[86] リリカル・とらいあんぐる転生日記 51【人生は闘いだ!!】[satuki](2009/10/17 21:59)
[87] リリカル・とらいあんぐる転生日記 52【魔神の生まれちゃった日】[satuki](2009/10/22 22:08)
[88] リリカル・とらいあんぐる転生日記 53【アニキ+ナイスミドル=???】[satuki](2009/10/27 16:33)
[89] リリカル・とらいあんぐる転生日記 54【変形する揺り籠!?至上最悪の悪魔の登場!!】[satuki](2009/11/06 10:46)
[90] リリカル・とらいあんぐる転生日記 55【ラスト・ラストをキミに……】[satuki](2009/11/06 10:47)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[8085] リリカル・とらいあんぐる転生日記 25
Name: satuki◆b147bc52 ID:6024de10 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/19 00:01


 前回のあらすじ:容疑者【月村すずか】⇒逃亡者【月村静香】⇒交渉人?【カリム・グラシア】。



 走る。走る。
 心臓が張り裂けんばかりに。
 自分の持てる全てを用いて、少しでも遠くへ逃げる。

 ココは海鳴温泉。
 つまりは翠屋から【相当な】距離を取ったことになる。
 神速まで用いての逃亡は、今ボクの身体に異常な程の負担を与えている。

 いつもの神速使用状態と違った、まさに命がかかった闘い……という名の逃亡劇。
 何回か後ろを振り返ったがウチの妹、どう考えても人間の理論限界値を超えて動いていました。
 多分、アドレナリンの異常分泌とかも入ってるんだろうね?じゃなかったら、おかしいだろう!?

「…………ハァッ、ハァッ、ハァッ…………!!」

 そういえば、ボクも妹も【夜の一族】。
 普通の人間に比べれば身体が丈夫で、その能力は通常のソレを大きく上回る。
 ならばすずかの異常な速度にも、一応の説明が付く……と思いたい。

「シ、シズカさん……コレは一体、どういうことなんですか!?」
「……あ。ゴメン。まだ抱えたままだったっけ……?」

 必死に逃げてきたから、カリムを抱えたままだった。
 だって途中で降ろそうにも、彼女の脚では妹にすぐ捕まってしまうだろう。
 その様子が容易に想像出来てしまうだけに、そんなことは出来なかった。

「よっと……!とりあえずココまでくれば、少しは大丈夫だろう……」

 カリムを地面に下ろして、ボクは一息付いた。
 滝のように流れる汗。
 拍動の勢いが治まらない、この身体。

 でも説明しないと。
 今の内じゃないと、多分妹はすぐに追いついてくる。
 ココからはカリムの協力も必要だ。仮に協力が取り付けられなくても、事情を知っているのと知らないのとでは、全くと言って良い程違うのだから。

「それでシズカさん……何故……あのようなことを……?」

 【あのようなこと】。
 ソレは明らかに、お姫様抱っこ&逃亡劇のことを指しているのだろう。
 ……今になって考えてみると、確かにアレはない。普通だったら、ソレをやった人間の神経を疑う。

「あー、あのね?カリムはウチの妹……すずかについて、どう思った……?」
「どう……とは?」
「…………オカシなトコロがあったでしょう……!?」
「そうですね~…………少し人見知りするようでしたが、素直な良い子だと思いますよ……?」

 ……そうか。カリムにはすずかの変化が見えなかったのか。
 ならその穏やかな反応にも、納得がいく。
 ……弱った。ソレなら彼女に、何て説明すれば良いんだ……?

「……あのね、カリム……?」

 仕方がない。包み隠さず話すしかない。
 だが、それでも理解は出来ないかもしれない。
 何故なら【アノ現象】は、普通人の考えの範疇外にあるモノ。常識の中には居ないモノなのだから。

「……ウチの妹――――すずかはその……ボクのことになると、周りが見えなくなるんだ……」
「まぁ……」
「……それでね?ボクに近付くヤツは、サーチ&デストロイにしちゃうんだよ……」

 前に会った時は、ココまで暴走するようなヤツじゃなかった。
 せいぜいボクに対してのみ発動される暴走で、人様に迷惑を掛けるようなことはしなかった。
 八年の月日というのは、予想以上に重かったのか。それとも何か、別の要因があるのだろうか……?

「ソレは…………まるでシャッハと義弟のようですね……?」

 カリムが何を想像したのかは不明だが、多分ソレは違う。
 確かにヴェロッサが女性に近付こうとする度に、シャッハはサーチ&デストロイになる。
 だがその対象は、ヴェロッサ本人だ。シャッハが【ヤンデレて】いるワケではない。

 ソレを説明すると、カリムは【ワケが分からん】というような顔になった。
 まぁ、仕方がないことだ。
 ソレが普通の反応というモノなのだから。

「……本当にそのようなことが……?にわかに信じがたいのですが……」
「…………ボクもね?どれだけ勘違いであれば良かったと思ったか、数え切れないよ……」
「……しかし。妹に慕われるのに、何か問題でもあるのですか……?」
「……良薬も過ぎれば、ただの毒……てね?想像してごらんよ?カリムのストーキングをするヴェロッサ。入浴中に乱入してこようとする義弟……」
「……………………!?」

 漸く分かって頂けたらしい。
 兄妹でそんな事態になるなんて、どう考えても異常事態だ。
 あ。何か両手を胸の前で抱えて、ブルブルと震えてる。

「……な、なるほど…………異常な事態であることは、【とても】良くわかりました…………!!」

 お分かり頂けて、恐悦至極。
 さて、あとは対策を練らないとねぇ?
 ……アカン。肝心の解決方法が浮かばないや。























「でしたら、こういうのはどうでしょう……?」
「……お。何か浮かんだの……?」

 流石は騎士カリム様。
 その明晰なる頭脳から弾き出された、素晴らしい答えってヤツを伺いましょう。
 もしかしたら、本当に救いになるかもしれないしね?

「今のすずかさんは、兄離れ出来ていない女の子です。つまり、兄離れが出来れば良いのです……」
「……そりゃあ、ソレが出来れば苦労はないけど……具体的なアイディアでもあるの?」

 ソレが出来ないから苦労しているのだ。
 そう言外に込めると、カリムは目を伏せて黙り込んだ。
 この流れは、あんまり良い感じがしない。というか、ヤバイフラグを立ててしまった気がしてならない。

「カンタンなことです。兄……つまりシズカさんに、恋人が出来れば良いのですよ……?」



 …………!!



 何か今、バックで雷鳴が響き渡った。
 多分彼女からしたら、何て名案なんでしょう!という感じの雷なのだろう。
 でもボクには違う。ボクからすれば、ソレは何つーことを考えやがって!と言った感じの稲妻だった。

 彼女居ない暦……百五十年以上。
 そのボクにこの方法は、敷居が高すぎる。
 もう一つ。兄に彼女が出来ましたというのは…………どう考えても死亡フラグだ。

 彼女になった方と、彼女にした方。
 その双方に死亡フラグが並び立つ、究極の選択。
 ソレが【兄に恋人が出来ました】だ。

「いや、カリムさ……その方法には穴があるよ……?」

 折角考えてもらったところ悪いのだけど、カリムには無理だと言わなければ。
 一つには【ヤンデレ】の危険性から。もう一つは根本的な問題から。
 でも何とかオブラートに包んで説明しよう。ソレがせめてもの優しさだと信じて。

「……何故ですか……?」
「いや、そのぉ…………だってボクには、彼女になってくれるようなヒトは…………居ないんだから……」

 途端に雰囲気が重くなった。
 でもしょうがない。
 コレが避けられない事実というモノなのだから。

「ソレは、その…………ゴメンなさい……」

 何か告白して振られたみたいで、ヤな感じだなぁ。
 だが事実からは目を背けられない。
 ボクに好意を寄せるオンナのコなんて、小さかった時のスバルやギンガ、あとは…………ウチの姉妹くらいしか考え付かん。

「……気にすんな……」

 コレでこの方法は潰えたのだ。
 別の方法を考えよう。
 やっぱ、例の隠れ家にまで逃げて、引き篭もれば良いかなぁ?

 アソコなら、ふつぅぅぅぅぅぅぅに考えたら追って来られない。
 でもさ?ヤンデレには常識が通用しないしなぁ……。
 脳内会議が進む中、遠くの方から地響きが聞こえてきた。



 ド、ド、ド、ド、ド、ド……………………!!
 


 どうやらタイムアップらしい。
 どう逃げたら良いか考えつつ、再び逃走劇の幕が開ける。
 ……と思ったのだが、聖母のような騎士カリム様が、ソレに待ったを掛けた。…………史上稀に見る、究極の悪手を以って。

「あの……それでしたら私が…………私がなりますよ……?」
「…………ゴメン。一体、何の話……?」
「いえ、ですから……………………シズカさんの彼女【役】を、私が引き受けましょうか?…………という意味なのですが……」

 ……騎士カリムどん。
 ソレは【一番やってはいけない手】の、上から十位までにランクインする程のモノだよ。
 多分彼女からしたら、困っているヒトを放っておけないとか、そんな感じなのだろう。

 でもその博愛精神と自己犠牲の志は、別の機会に取っておいてくださいな。
 ソレをココで使っちゃったら、貴女アボーンされちゃいますよ?
 ドンドン音が迫ってくる。本当にカウントダウン開始のようだ。



 三



 二



 一



 ゼロ……って、アレ?
 もしかしてボク、カリムへの返答を…………してないじゃないかぁぁぁぁっ!?
 ヤバイ。ヤバイ……。もうソコに居るよ。ムリだよ。この状況じゃあ、どうすることも出来ないよ……!?



「……フフ。オニゴッコは、もうオシマイなの…………オニイチャン……………………?」




 ソコに居たのは、やっぱりモンスターだった。
 左手に鉈。右手に包丁。
 ……二刀流ですね?すずかったら、そんなトコロまでボクのマネをしなくても…………なんて言ってる場合じゃねぇぇぇぇっ!!

「……すずかさん。実は貴女に、大切なお話があるのです……」
「…………ナニカシラ……?」

 マテ、マテ、マテ、マテェェェェッ!!
 ヤメロ!
 ヨセ!!引き返して来いっ!!

「…………実は貴女のお兄さん、シズカさんと私は……………………既に結婚の約束までしているんです!!」

 ブゥゥゥゥゥゥゥゥッ!?
 アリエナイ。有り得ないよ!?
 騎士カリム様の中では、【恋人=将来を約束したパートナー】になるのかぁぁぁぁっ!?

 ……良く考えたら、そういう考え方をしていても、なんら不思議はなかった。
 良いトコの御嬢様なカリム。
 ならばそういった世間ズレした箱入り御嬢な考え方でも、ある意味仕方がない。

「…………ウソですね……?お兄ちゃんの奥手具合は、妹である私が一番良く知ってるんですよ…………?」

 若干現実に戻ってきてくれたようだけど、まだまだヤンな妹。
 頼むからその瞳に、光を差させてあげて下さい。
 ハイライトのない目って、どう考えても怖いから!?

「…………私がお風呂上りに裸で会ってもすぐに逃げるし、偶然を装ってお風呂に乱入してもすぐに追い出すし…………」

 当たり前だ。
 相手は妹なんだぞ?
 義妹とかいう特殊なシチュエーションじゃなくて、純粋培養の妹なんだぞ!?

 そんな相手に反応したら、人間失格じゃないか!?
 ……とは言いつつも、おねーたまやノエルと昔風呂に一緒に入っていたのは内緒の話だ。
 ただあの時も欲情はおろか、気後れすらしたボクのこと。…………確かに妹に誤解されても仕方ないかも。

「…………とにかく。そんなお兄ちゃんが、恋人はおろか婚約者なんて……………………」
「…………ゴメンなさい。本当はもっと、はやくにお話すれば良かったのですが…………私も彼も、仕事が忙しくて……」

 まだその設定でいくつもりか。
 すずかじゃないがそんな話、ボクを良く知るモノなら絶対にウソだとばれるぞ?
 どうするつもりだ?……というか、この御嬢騎士。一体何を考えとるんだ?

「本当です!私と彼は、既に【婚前交渉】まで済ませているのですよ!?」
「……………………ウソだ」

 ハイ、ウソです。
 というか、騎士カリムどんよ。
 何だそのテンプレは?お前さんまで、【お約束】を護る騎士になっちまったのかよ!?

「だって、私のお腹には……………………彼との子どもが……………」
「ウソだ……っ!!」

 もうやだ。
 何この、カオス空間パートⅡは?
 もう誰もがボクの意思なんて、無関係に話を進めていくよ。

「……本当です。確かめる術がないのが心苦しいのですが……」



 ――カチッ!



 ヤバイ。
 ヤバイ!
 ヤバ過ぎるよぉぉぉぉっ!?

 何か今、手榴弾のピンが外れたようなヴィジョンが!!
 見える。ボクにも見えるぞ!!
 新しいタイプの人類じゃないハズのボクにも、この危険性が見えてしまうぞ!?

「……………………なら…………確かめてあげますよ…………?」
「…………エ?」

 一瞬にして風になるすずか。
 当然カリムが反応出来るハズもなく、弾丸となったすずかに建物の壁に叩きつけられる。
 こえぇぇよ。スゲェ怖いよぉ……!

「…………サァ、【コレ】デタシカメテアゲマスカラネ…………?」
 
 不味い!
 すずかのヤツ、鉈でカリムをかっさばくつもりだっ!!
 間に合え!間に合ってくれぇぇぇぇっ!!




 ――ザシュッ!!




「…………オニイチャン、ドウシテジャマスルノ…………?」

 切り裂かれたのはボクの左腕。
 丁度肘から先が無くなり、出血が止まりません。
 でも間に合った。それだけでボクは、救われた気持ちになる。

「……ボクが相手なら、最悪兄妹ゲンカで済む……じゃないか……」

 冷や汗ポタポタ。
 でも心はとってもホット。
 冷静になる思考と、熱くなる身体。今のボクは、結構スゴイかもしれないな。

「……ドいて、オニイチャン…………ソノオンナをシマツできないよ……?」
「シズカさん!しっかりして下さい!!」

 二人が何か言ってるけど、今のボクの耳には入ってこない。
 考えろ。考えるんだ。
 どうしてすずかが、アソコまで強いのか?

 いかにヤンデレても、あんな風に強くなるモノではないハズだ……!
 頭。顔。胴体。腕。脚。……何処にもおかしな要素は見つからない。
 だとすれば、あとは身に着けてるモノ以外には…………!?
 
「…………すずか。その、首から掛けてる、蒼い石……ソレ、一体どうしたんだ…………?」

 あった。
 菱形の蒼い石。
 アレはどう見てもヤバイモノだ。

 アレが原因と見て、まず間違いはないだろう。
 だが何なんだ……?
 何でそんなブツが、妹の手にあるんだ……?

「…………コレですか……?コレは【ジュエルシード】ってイって、ミチバタで会った【白衣のオジサン】がくれたんですよぉ……?」

 ……白衣のおじさんか。
 どう聞いても、アイツしか該当者がいないな。
 余計なことしやがって……!

「コレは願いを叶える石なんだっテ…………だから私は願ったノ。【オ兄ちゃんニ会いたい】。【オニチャンをヒトリ占めしたい】…………っテ」

 歪んだカタチで叶えられた願い。
 ボクを独り占めする為に必要な、邪魔な存在を排除するための力。
 どう考えても妹の本意じゃない。

 いくらヤンデレちっくだったとは言え、他人を傷付けてまで……とかは思わなかった、優しい妹。
 ソレはなのはたちなら、良く分かっているハズだ。
 少なくとも、ボクはそう信じている。

 今のボクには、抵抗する術がない。
 ならいっそのこと、一時撤退して状況を立て直すか。
 己の左腕を見る。コレは早急な治療が必要。だが【あの場所】までの超長距離転送には、身体が付いてこない。

 何処だ。
 何処なら処置出来る?
 一体この海鳴の土地の、何処でなら治療と立て直しが出来るんだ……!

「……サァ、お兄ちゃん……?はやくソンナオンナを始末して、一緒にウチにカエロウ……?」

 ……。
 ……そうだ。
 その手があったじゃないか!!

「……すずか。やっぱりお前は、最高の妹だよ…………!!」
「エッ!?ちょ、ちょっと!?シズカさん……!?」

 斬られた左腕を小脇に抱え、無事な右手でカリムをホールド。
 マーカーが既にある転送魔法は、異常な程のはやさで現地に飛ぶ。
 郊外にあって、いかにジュエルシードの力を使っても、すぐには来れないそんな場所。

 治療も出来て、体勢も立て直せるそんな理想的な場所。
 ソレはあった。
 そこの名前は【月村邸】。……つまりは現在、すずかとファリンが住んでいる【我が家】だ。

 一瞬の燐光と共に、高速で移動するボクとカリム。
 自室にマーカーがあるボクらの行き先は、当然ボクの部屋。
 あと一時間ぐらい。……ソレまでにケリをつけないとなぁ……。













 大将日記W




 シズカの言っていた、【地球での秘密基地】。
 ソコはこれまたトンでもない場所で、一言では言い表せない程に常識ハズレなモノだった。
 広大なスペース。整い過ぎている設備。

 そして何より……。
 いや、ソレはまた後ほどにしよう。
 今はシズカから出された、この課題をこなさなければならないからな……。

 シズカからの課題。
 ソレは【ある】テレビアニメの鑑賞だった。
 最初はバカなと思いながら、何気なく見ていた程度。

 だが途中で気が付いた。
 コレは何とも、熱い物語なのだろうか。
 勇者とソレをサポートする人々。そして他のロボットの存在。

 組織という異例の中での勇者の活躍は、意外なほどにマッチしていて、それでいて凄かった。
 中でも興味を引いたのは、勇者……ではなく、その司令官の存在。
 常に部下を信頼し、有事には自らも危険を被る。

 同じ司令官としては、このような存在になってみたい。
 部下に慕われ、自らの信念を突き通し、最後には若者に路を譲ることが出来る。
 ……最高だ。後でシズカには、この映像媒体のコピーを貰おう。そしてソレを、自分の道標しよう。



 …………ところで。ココがそのアニメに出てくる場所に似ているのは、一体どういうことなのだろうか……?






 ゲイズさんちのオーリスちゃん【捨弐】



 現在、自棄酒用のアルコール類を調達中。
 ただその様子を見ていたドゥー子さん(仮)の証言では、

「金髪にして、アルコールを大量購入している彼女の姿は……まるで大人になってからの不良デビューみたいだったわ……」

 とのこと。












 あとがき

 >誤字訂正?

 くろがねさん。コレは誤字ではなかったのですが……確かに分かりにくかったかもしれませんね?
 【人間の真剣という行為】を突き詰めると……に修正しましたので、コレで少しは分かりやすいかも……。


 俊さん。毎度ご指摘頂き、ありがとうございます!





前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.028493881225586