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No.8085の一覧
[0] リリカル・とらいあんぐる転生日記  【完結しました】[satuki](2009/11/06 10:47)
[1] リリカル・とらいあんぐる転生日記 00[satuki](2009/06/19 17:02)
[2] リリカル・とらいあんぐる転生日記 01[satuki](2009/06/19 17:02)
[3] リリカル・とらいあんぐる転生日記 02[satuki](2009/06/19 17:02)
[4] リリカル・とらいあんぐる転生日記 03[satuki](2009/06/19 17:02)
[5] リリカル・とらいあんぐる転生日記 04[satuki](2009/06/19 17:02)
[6] リリカル・とらいあんぐる転生日記 05[satuki](2009/06/19 17:02)
[7] リリカル・とらいあんぐる転生日記 06[satuki](2009/06/19 17:03)
[8] リリカル・とらいあんぐる転生日記 07[satuki](2009/06/19 17:03)
[9] リリカル・とらいあんぐる転生日記 08[satuki](2009/06/19 17:03)
[10] リリカル・とらいあんぐる転生日記 09[satuki](2009/06/19 17:01)
[11] リリカル・とらいあんぐる転生日記 10[satuki](2009/06/19 17:01)
[12] リリカル・とらいあんぐる転生日記 11[satuki](2009/06/19 17:01)
[13] リリカル・とらいあんぐる転生日記 12[satuki](2009/06/19 17:01)
[14] リリカル・とらいあんぐる転生日記 13[satuki](2009/06/19 17:01)
[15] リリカル・とらいあんぐる転生日記 14[satuki](2009/06/19 17:00)
[16] 元ネタ帳(00~14)[satuki](2009/04/30 21:34)
[17] リリカル・とらいあんぐる転生日記 15【前編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[18] リリカル・とらいあんぐる転生日記 16【後編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[19] リリカル・とらいあんぐる転生日記 17[satuki](2009/06/19 00:04)
[20] リリカル・とらいあんぐる転生日記 18[satuki](2009/06/19 00:03)
[21] リリカル・とらいあんぐる転生日記 19[satuki](2009/06/19 00:03)
[22] リリカル・とらいあんぐる転生日記 20[satuki](2009/06/19 00:03)
[23] リリカル・とらいあんぐる転生日記 21[satuki](2009/06/19 00:02)
[24] リリカル・とらいあんぐる転生日記 22[satuki](2009/06/19 00:02)
[25] リリカル・とらいあんぐる転生日記 23[satuki](2009/06/19 00:02)
[26] リリカル・とらいあんぐる転生日記 24[satuki](2009/06/19 00:01)
[27] リリカル・とらいあんぐる転生日記 25[satuki](2009/06/19 00:01)
[28] リリカル・とらいあんぐる転生日記 26[satuki](2009/06/19 00:01)
[29] リリカル・とらいあんぐる転生日記 27[satuki](2009/06/19 00:01)
[30] リリカル・とらいあんぐる転生日記 28[satuki](2009/06/19 00:00)
[31] リリカル・とらいあんぐる転生日記 29[satuki](2009/06/19 00:00)
[32] リリカル・とらいあんぐる転生日記 30[satuki](2009/06/19 00:00)
[33] リリカル・とらいあんぐる転生日記 31[satuki](2009/06/19 00:00)
[34] リリカル・とらいあんぐる転生日記 32【注:糖分過多】[satuki](2009/06/18 23:59)
[35] リリカル・とらいあんぐる転生日記 33[satuki](2009/06/18 23:59)
[36] リリカル・とらいあんぐる転生日記 34[satuki](2009/06/18 23:59)
[37] リリカル・とらいあんぐる転生日記 35[satuki](2009/06/18 23:59)
[38] リリカル・とらいあんぐる転生日記 36[satuki](2009/06/18 23:59)
[39] リリカル・とらいあんぐる転生日記 37[satuki](2009/06/18 23:58)
[40] リリカル・とらいあんぐる転生日記 38【少年編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[41] リリカル・とらいあんぐる転生日記 39【歯車戦士編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[42] リリカル・とらいあんぐる転生日記 40【大将と愉快な仲間たち①】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[43] リリカル・とらいあんぐる転生日記 41【大将と愉快な仲間たち②】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[44] リリカル・とらいあんぐる転生日記 42【歪んだ物語・その修正方法】[satuki](2009/06/18 23:57)
[45] 【オヤジ】狩り[satuki](2009/06/05 17:07)
[46] 【オヤジ】狩り-01  【続いた。続いてしまった】[satuki](2009/05/18 23:29)
[47] 【オヤジ】狩り-02  【また続いてしまった】[satuki](2009/05/26 20:02)
[48] 【オヤジ】狩り-03  【またまた、続いてしまった……】[satuki](2009/06/02 01:26)
[49] 【オヤジ】狩り-04  【狩るべきオヤジは、まだまだ存在するのだ!!】[satuki](2009/06/07 19:31)
[50] 【オヤジ】狩り-05  【アンリミティッド・オヤジワークス……ソレは地獄絵図でしかないな……?】[satuki](2009/06/29 21:16)
[51] 【オヤジ】狩り-06  【覇王少女のファンには、彼女が女神に見えるらしい……視力検査したら?】[satuki](2009/06/09 18:10)
[52] 【オヤジ】狩り-07  【イロモノはイロモノを呼ぶ…………奇跡の開幕!?】[satuki](2009/06/11 20:03)
[53] 【オヤジ】狩り-08  【奇跡は続く!?遅れてきた漢……!!】[satuki](2009/06/18 23:39)
[54] 【オヤジ】狩り-09  【漢女と乙女……オトメ同士の決闘!】[satuki](2009/06/19 17:00)
[55] 【オヤジ】狩り-10  【死亡フラグをブチ折ったモノ……!】[satuki](2009/06/20 00:19)
[56] 妖精00 【良く考えたら、コレが全ての始まりなのかもしれないなぁ……?】[satuki](2009/06/05 16:52)
[57] 妖精01 【妖精爆弾……じゃなかった。爆誕!!】[satuki](2009/06/05 16:52)
[58] 妖精02 【やって来たのは運命にかぶれたロリジャイと、その家族】[satuki](2009/06/05 16:53)
[59] 妖精03 【蝶人になった日】[satuki](2009/06/07 19:32)
[60] 妖精04 【淫獣殲滅作戦――全ては清い【なのちゃん】のために】[satuki](2009/06/10 00:10)
[61] 妖精05 【遠足。それは至上最強の闘い!?】[satuki](2009/06/20 00:20)
[62] 妖精06 【掟破り!?……覇王の蘇る日!】[satuki](2009/06/27 20:12)
[63] 真・転生日記【オヤジ】風味 ――『妖精は覇王の夢を見る!』 01[satuki](2009/06/29 21:17)
[64] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 02  【復活したイレギュラー】[satuki](2009/06/29 21:25)
[65] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 03  【お約束は突然に】[satuki](2009/07/03 18:58)
[66] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 04  【突撃、となりの小学校!?】[satuki](2009/07/12 18:30)
[67] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 05  【誕生!?養護教諭プレシあ!?】[satuki](2009/07/14 20:13)
[68] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 06  【予定とは、乱される為にあるのだ!】[satuki](2009/07/16 21:43)
[69] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 07  【イレギュラー戦隊、参る!!】[satuki](2009/07/24 16:48)
[70] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 08  【仮面対仮面(オマケ付き)】[satuki](2009/07/27 16:53)
[71] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 09  【隣の市は危険がいっぱい!?】[satuki](2009/07/31 21:08)
[72] デザイア!?[satuki](2009/08/02 16:08)
[73] リリカル・とらいあんぐる転生日記 43【本筋は、忘れた頃にやって来る】[satuki](2009/08/04 23:55)
[74] デザイア!? 02[satuki](2009/09/04 19:03)
[75] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 10  【近付いてくる真相!?】[satuki](2009/09/04 19:04)
[76] デザイア!? 03 【女(装)王、誕生】[satuki](2009/09/07 02:14)
[77] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 11  【混沌の始まり】[satuki](2009/09/13 12:20)
[78] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 12  【長い伏線(その一)】[satuki](2009/09/18 00:37)
[79] リリカル・とらいあんぐる転生日記 44【長い伏線(そのニ)】[satuki](2009/09/19 19:34)
[80] リリカル・とらいあんぐる転生日記 45【アインヘリアル?何それ、美味しいの?】[satuki](2009/09/25 21:50)
[81] リリカル・とらいあんぐる転生日記 46【少しだけ本気を出した。後悔はしている】[satuki](2009/09/27 21:52)
[82] リリカル・とらいあんぐる転生日記 47【もう少し本気を出してみた。さらに後悔している】[satuki](2009/10/02 21:46)
[83] リリカル・とらいあんぐる転生日記 48【ついに登場、最高評議会!?】[satuki](2009/10/09 11:11)
[84] リリカル・とらいあんぐる転生日記 49【三人目は…・・・グハッ!?】[satuki](2009/10/11 22:41)
[85] リリカル・とらいあんぐる転生日記 50【歯車戦士、愛の決闘】[satuki](2009/10/16 18:38)
[86] リリカル・とらいあんぐる転生日記 51【人生は闘いだ!!】[satuki](2009/10/17 21:59)
[87] リリカル・とらいあんぐる転生日記 52【魔神の生まれちゃった日】[satuki](2009/10/22 22:08)
[88] リリカル・とらいあんぐる転生日記 53【アニキ+ナイスミドル=???】[satuki](2009/10/27 16:33)
[89] リリカル・とらいあんぐる転生日記 54【変形する揺り籠!?至上最悪の悪魔の登場!!】[satuki](2009/11/06 10:46)
[90] リリカル・とらいあんぐる転生日記 55【ラスト・ラストをキミに……】[satuki](2009/11/06 10:47)
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[8085] リリカル・とらいあんぐる転生日記 32【注:糖分過多】
Name: satuki◆b147bc52 ID:b0c74dcd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/18 23:59



 前回のあらすじ:【なのちゃん】、襲来。



 コチラ茜屋のカウンター。
 提督ズが全員集合で【ある人間】の到着を、今か今かと待っていた。
 恐らく今回の事件の切り札になるであろう、その人物を。



 ――プシューッ!!



「…………来たね?」

 六課内の扉からではなく、外の勝手口から入ってきた男。
 十四歳の頃から比べると、信じられないくらい大きくなった身長。
 高かった声は落ち着いた大人の男のモノへと変化し、それでも変わらない優しい瞳。

「……話は通信で聞かせてもらった。それで、なのは…………?」

 肩に銀のモールが付いた、着慣れぬ黒の制服。
 白いスラックスに同色の手袋をはめた姿は、まさしく将官のモノ。
 自前の黒髪と併せて、ソレはとても映えていた。

「良く来てくれたね?正直、忙しいから来ないかと思ったのに……?」

 そう。艦船を預かる身分のモノとしては、コレは些事。
 幾らロストロギアが出張って来ているからと言っても、提督が艦を放って来なければならない状況ではない。
 ましてや、彼は重度のワーカーホリック。来た方が奇跡だ。

「……良く言う。地上本部の将官連名の命令に、ハラオウンの家から根回し。……来ない方がおかしいだろう……?」

 レジアス・リンディ・カリム・ザ○ィー○……そしてボク。
 大将から准将までフルコンプ出来る、この連名。
 それにリンディとフェイトのそれぞれのルートを使っての、エイミィへの説明。

 ……うん。どう見てもコレは【脅迫】だ。
 全てコチラの掌で踊ってもらうようで心苦しいが、この際ソレは甘受してもらおう。
 なにせ冗談抜きの、【非常事態】なのだから。

「ソッチこそ良く言うよ……?【こんなこと】をしなくったって、オマエさんは来ただろうに……?」
「…………さてな」

 不器用だが本当は心優しい青年。
 故に妹の友人(ということにしておく)の危機には、必ず助けようとするハズだ。
 ましてや、【ジュエルシード】とは因縁浅からぬ仲。来ない方がおかしい。

「ま、そういうことにしておきましょう……?そんなことより、【コレ】を…………」

 手渡したのは【青玉】と【台本】。
 彼の場合は、外見は小さくすれば良いだけだし、性格も根底では変化ない。
 だがなのはとの距離が違えば、その表に出るモノも変わる。そして今求められるのは……。

「……待て。コレは何の冗談だ……?僕に…………僕になのはの、【恋人】役をやれというのか……!?」

 現在のなのはの精神は、【リリカルなトイボックス】の本編終了後。
 つまり【クロノ・ハーヴェイ】と恋仲になり、彼の再来を待ち続けている状態だ。
 そしてたぶん、その【クロノ】になら【なのちゃん】は心を開き、大人しくジュエルシードを封印させてくれる……と思う。

 出たトコ勝負。
 分の悪い賭け。
 だが……分の悪い賭けは嫌いじゃない……とか言ってみる。

「そ。コレが唯一の突破口。キミじゃないと出来ない、【クロノ】という存在にしか出来ない策…………やってくれるね?」
「…………分かった。やるしかないようだな……?」

 そう、そう。残念なことに、【この】物語の主役はキミだ。
 主役が上がらない舞台は成り立たない。
 さぁ……幕を開けるとしようか……?























「……なのは。久しぶりだね……?」
「……ク、クロノくん…………!!」

 目の前では【ハーヴェイ】少年と、【なのちゃん】の感動の対面が行われている。
 泣きじゃくって少年に抱きつく【なのちゃん】。
 何処か儚いイメージを漂わす、【ハーヴェイ】少年。

 フェイトの性格の原案となったとも言われる、その物静かで儚い存在。
 演技とか苦手な感じの【ハラオウン】少年は、何時の間にか腹芸が出来るようになったらしい。
 ……歳月は人を変える。それでも変わらないモノも、有るんだけどねぇ……?

「クロノくん!クロノくぅぅん!!」
「……大丈夫。僕はココに居るよ……」

 台本書いたのはボク。……なのだが、やはり目の前でソレをやられるのは赤面モノだ。
 ましてや【この二人】のソレは、少し見ただけで糖尿病になりそうなモノ。
 つまり、少女漫画を初めて見た時の恥ずかしさ。

「……せっかく、ミッドチルダに来てくれたんだ。少し遊びに行こうか……?」
「……うんっ!!」

 手に手を取ってのランデブー。
 ……古いか。この言い方は……?
 ともかく、子ども同士のお出かけ……という名のデート。

 何時の間にか用意されたバスケットに、クロノ手製のおにぎり。
 水筒にはお茶を入れ、敷物にするシートもお忘れなく。
 由緒正しい、小学生デート。ココに準備完了!!






 その手にしたのは、デジタルカメラ。
 写し出すのは二人の思い出。場所は草原。【かつて】一緒に行った、【あの】草原を思わせる場所。
 今度はいつ会えるか分からない。だからこそ、いっぱい記録を残したい。

 小学生の頃の記憶というのは、思い出すと恥ずかしくて、それでいて甘酸っぱいモノ。
 ソレを現在進行形で追体験している二人。
 特に思考が大人のままソレを体験しているクロノは、何とも言えない気分になっているのだろう。

「(……そうか。なのはと恋人になっていたら、こうなっていたのかもしれないのか……)」

 十四の時に感じ、暫くして置いて来た気持ち。
 特に現在は二児の父親になったぐらい月日は経過しており、当時を思い出すことは少なくなった。
 でも、なくなってはいなかった。その小さく小さくなっていた火の種が、今はハッキリと感じ取れる。

「(……気付かなかった。いや、気が付かないフリをしていた。もし彼女の笑顔が崩れるかと思うと、僕は一歩を出す勇気が持てなかったんだ……)」

 少年の心は臆病である。
 現在の関係を壊すことを恐れ、そうこうしている内に事態が変わってしまう。
 忙しくなり、環境が変わり、そして自分も何時の間にか変わっている。

 ソレが成長。
 そして忘却。
 つまり思春期の思い出……というワケだ。

「……?どうしたの、クロノくん……?」

 心底心配そうな顔の【なのちゃん】。
 ズキリと、心が痛む。
 このあどけない少女をコレ以上騙すことは…………したくない。

 だが現実に何が出来る?
 コレからするのは、少女を騙したままジュエルシードを封印することだ。
 【ハーヴェイ】少年の仮面を被り、何も知らない【なのちゃん】を騙す。

 大儀のため。ミッドのため。次元世界全体のため。
 言い繕うことは幾らでも可能だ。
 そしてソレは嘘ではない。嘘ではない…………のだが。
 
「(……大人の割り切り。十を救うために一を捨てる。ソレが上に立つモノの役割……)」

 彼は提督。
 何百人・何千人もの部下の命を預かり、大きなモノを護るためには小さなものを捨てる。
 取捨選択を強いられる立場。ソレが今の【ハラオウン】提督なのだ。

 覚悟したハズだ。
 ソレは管理局に入った時から。執務官になった日から。
 そして……提督の制服に袖を通した、その日から……。

「…………なのは、少し話を聞いてもらえるかな…………?」

 良いじゃないか。
 今の己は、【ハーヴェイ】少年なんだ。
 ココに【ハラオウン】提督は居ない。ならば、自分の心に素直になっても良いハズだ。

「なぁに?クロノくん……?」

 小首を傾げて聞き返すなのは。
 瞑目し、深呼吸をする少年。
 ……大丈夫。言うべきことは、もう決まっているのだから。

「……なのは、驚かないで聞いてね……?今の君は…………【ジュエルシード】っていうモノに、寄生されてるんだ……」
「……【ジュエルシード】……?それって、イデアシードみたいなモノ……?」

 その名前は、【ハーヴェイ】少年と【なのちゃん】を繋ぐモノだった。
 【かつて】ソレを巡って争い、そして仲良くなった。
 そう。まるで【なのはちゃん】と【フェイト】のように……。

「……うん。【ジュエルシード】の特徴は、生物の願いを叶えること…………。ただし、必ずしも想った通りにはならないんだけど……」

 かつてのP・T事件。
 その詳細を知るモノなら、ソレは嫌という程理解している。
 捻じ曲げられた願い。ソレは願ったモノの想像の範疇を超えて、異常な事態を引き起こす。

「だから…………ソレは封印しないと、いけないんだ…………」
「…………ねぇ、クロノくん……?ソレを封印したら、わたしは…………どうなっちゃうの……?」
「それは…………」

 言葉に詰まる。
 嘘を言って騙すのはカンタンだ。
 だがソレは出来ない。したくない。するワケにはいかないのだ。

「…………今【ココ】での記憶を失って…………元の世界に【戻る】ことになる…………」

 搾り出した声。
 悲しそうな瞳。
 ソコに演技の色は微塵もない。

「…………………………………………やだ」
「…………エ?」

 何かの聞き間違いだと思った。
 【なのはちゃん】は頑固だが、それでも聞き分けの良い子だった。
 ……というよりも、ハイと返事して後で命令違反するタイプである。

 だが今、目の前の少女は何と言った?
 長い沈黙の後に、搾り出すように言った【わがまま】。
 ソレは、彼女【たち】を明確に分ける、重要なラインだった。

「やだ、いやだよぉぉぉぉっ!!もう、クロノくんと【離れ離れ】は、いや…………!!絶対に、いやっ!!」
「…………なのは……………………」

 このままでは、【なのちゃん】の精神状態は危険域。
 気絶させるなりして、ジュエルシードを封印。
 上手くいくかは別として、今の彼女の精神の揺らぎによる暴走よりはマシだろう。

 だがソレよりも。
 何よりも彼自身が。
 【クロノ】という存在がソレを許さなかった。

「…………なのは。君が【この】記憶を無くしても、魔法を失っても…………僕は……………………ずっと【キミ】の【側】に居るから…………!」
「…………!?」

 なのはが成りたかったのは、【魔法少女らしい】存在。
 それと、【魔法がなくなっても居てくれる大切な存在】。
 ソレらが、今回の【なのちゃん】の記憶を引き寄せてしまったのだ。

 【魔法】というフィルターを通してでしか、自分には存在価値がないと思い込んでしまっている、その精神。
 幼い頃の孤独と、満たされなかったモノを満たす道具になってくれた、【魔法】という存在。
 【依存】。【執着】。

 それ故味わった、事故後の【喪失感】。
 この【なのはちゃん】は、そうして出来上がったのだ。
 ならば今することは…………【魔法】を介さない、【約束】による【絆】の構築。

 【隣】には居られない。
 【今回】の彼女の【隣】には、もう居る資格がない。
 ……でも。今度巡り会えたら…………その時は……!!

「…………絶対だよ……?【約束】やぶっちゃ…………いやだからねぇ……?」
「……【約束】する。必ず僕は…………【キミ】の【側】にいるから…………」

 大きな瞳に、いっぱいの涙が溢れる。
 悲しい瞳。でも希望を宿した瞳でもある。
 【なのちゃん】は二つに結わっていた緑のリボンをほどき、その内の一つをクロノに手渡した。

「…………」
「…………」

 互いに言葉はない。
 これ以上の約束は出来ないし、何より伝えたいことはもう…………分かっているから。
 緑のリボン。クロノはそれを黙って受け取り、【S2U】を展開する。

「……レイデン・イリカル・クロルフル…………【なのは】の心を…………在るべき場所に……………………居るべき場所に…………!!」

 信頼の表情。
 ソレを浮かべながら、【なのちゃん】は穏やかに目蓋を閉じていく。
 光が凝縮していく。蒼い光。ソレが結集した先には…………蒼い菱形の宝石、【ジュエルシード】があった。

「…………ジュエルシード…………封印…………」

 ソコに居たのは、既に【ハーヴェイ】少年ではなかった。
 大きくなった身体で正座し、【なのはちゃん】を膝枕した青年。
 優しい眼差しでその女性を見守るその姿は、紛れもなく【ハラオウン】提督だった。






「…………クロノ君……」
「……なんだ、なのは……?」

 草原には優しい風が吹き、それが茶色のサイドポニーを揺らす。
 ソレが顔に当たり、目覚める【なのは】。
 すぐ目の前にある顔――クロノに向かって、なのははこう言った。

「夢を……夢を見ていたの…………」
「…………」
「……夢の中の私は、私がなりたい【わたし】だったの……」
「…………そうか」

 今ココで言えることはない。
 ただなのはの言うことに、己の耳を傾けるだけ。
 それだけしか、今のクロノには出来ないのだ。

「…………クロノ君。その…………ありがとね…………?」
「……なに、大したことはしていない。それよりもなのは。君は、みんなに言うことがあるんじゃないのか……?」
「…………そうだね。帰ったら、みんなに謝って…………お礼を言わなきゃね……?」

 身を起こして立ち上がり、なのははスカートに付いた草を手で叩く。
 その様子を苦笑しながらも、クロノも同様に立ち上がる。
 彼のその手には、既にS2Uは存在しなかった。

 ソレは、今は別の所に在る。
 その場所は秘密。
 だが、誰かの白色のジャケットのポケットにある……とだけ言っておこう。



 こうして、機動六課の…………いや。【高町なのは】と【クロノ】の長い一日は終了した。













 大将日記 クウガ



 今回、高町なのは教導官に訪れたコト。
 ソレは、誰しもが抱える可能性があるモノだった。
 此度は【たまたま】彼女に寄生されたが、もしかすると自分であった可能性もある。

 ……いや。もしかしてジュエルシードは…………現在の持ち主は、ターゲットを絞っているのかもしれない。
 だがソレは、我々には判別出来ない。
 後手後手に回ってしまうが、寄生されてからでしか分からないのだから……。

 とはいうものの……それでも彼女に落ち度があったことは確か。
 怒りに身を任せた故の結果であるので、自業自得と言ってしまっても……。
 ……難しいな。このあたりの処遇は、部隊長である八神ニ佐に任せるとしよう……。



 ところで……後になって知ったのだが、今日の一部始終を録画したモノを、ノンフィクション映画として、放映したらしい。
 ソレを見た若者たちが、こぞって時空管理局を進路希望にしたらしいが…………ソレで良いのだろうか……?
 更に余談だが、その映画の放映後のクロノ提督は…………ゲッソリやつれたようだ。

 ……良し。元気の出る料理を作ろう。そうと決まれば、早速仕込みしなければ……。






 ゲイズさんちのオーリスちゃん【拾九】



 メイド害とマスター乙女の闘い。
 ソレは人知を超えたモノ同士の【死合】だった。
 乙女の巨大モーニングスターのようなモノが壁を打ち砕き、メイド害の針金のような髪がソファーを破る。

 最初はメイド害の最後の日か?と喜んでいたが、次第に被害が看過出来ない状態に。
 それでもあと少しの辛抱と耐えてきたが、乙女……つまりシャマルが、トンでもない行動に出たのだ。
 「根性ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」と言って、巨大鉄球で二階の床をブチ抜く。

 それに対して、メイド害はメイド服の裾の部分を鋭利な刃物のようにし、チェーンソーのように一階の壁を斬っていく。
 ……もう我慢の限界だ。
 そう思った時、何処からともなくサイレンが聞こえてきた。

 フェラーリ型の覆面パトカーが突如現れ、更に小型ヘリと大型バイクも姿を現す。
 『三身一体』の掛け声と共に合体していき、ソレらは巨大なロボットになった。
 その名は【ラージヴォルヴォッグ】。勇者ロボ一号の、戦闘形態である。







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