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No.8085の一覧
[0] リリカル・とらいあんぐる転生日記  【完結しました】[satuki](2009/11/06 10:47)
[1] リリカル・とらいあんぐる転生日記 00[satuki](2009/06/19 17:02)
[2] リリカル・とらいあんぐる転生日記 01[satuki](2009/06/19 17:02)
[3] リリカル・とらいあんぐる転生日記 02[satuki](2009/06/19 17:02)
[4] リリカル・とらいあんぐる転生日記 03[satuki](2009/06/19 17:02)
[5] リリカル・とらいあんぐる転生日記 04[satuki](2009/06/19 17:02)
[6] リリカル・とらいあんぐる転生日記 05[satuki](2009/06/19 17:02)
[7] リリカル・とらいあんぐる転生日記 06[satuki](2009/06/19 17:03)
[8] リリカル・とらいあんぐる転生日記 07[satuki](2009/06/19 17:03)
[9] リリカル・とらいあんぐる転生日記 08[satuki](2009/06/19 17:03)
[10] リリカル・とらいあんぐる転生日記 09[satuki](2009/06/19 17:01)
[11] リリカル・とらいあんぐる転生日記 10[satuki](2009/06/19 17:01)
[12] リリカル・とらいあんぐる転生日記 11[satuki](2009/06/19 17:01)
[13] リリカル・とらいあんぐる転生日記 12[satuki](2009/06/19 17:01)
[14] リリカル・とらいあんぐる転生日記 13[satuki](2009/06/19 17:01)
[15] リリカル・とらいあんぐる転生日記 14[satuki](2009/06/19 17:00)
[16] 元ネタ帳(00~14)[satuki](2009/04/30 21:34)
[17] リリカル・とらいあんぐる転生日記 15【前編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[18] リリカル・とらいあんぐる転生日記 16【後編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[19] リリカル・とらいあんぐる転生日記 17[satuki](2009/06/19 00:04)
[20] リリカル・とらいあんぐる転生日記 18[satuki](2009/06/19 00:03)
[21] リリカル・とらいあんぐる転生日記 19[satuki](2009/06/19 00:03)
[22] リリカル・とらいあんぐる転生日記 20[satuki](2009/06/19 00:03)
[23] リリカル・とらいあんぐる転生日記 21[satuki](2009/06/19 00:02)
[24] リリカル・とらいあんぐる転生日記 22[satuki](2009/06/19 00:02)
[25] リリカル・とらいあんぐる転生日記 23[satuki](2009/06/19 00:02)
[26] リリカル・とらいあんぐる転生日記 24[satuki](2009/06/19 00:01)
[27] リリカル・とらいあんぐる転生日記 25[satuki](2009/06/19 00:01)
[28] リリカル・とらいあんぐる転生日記 26[satuki](2009/06/19 00:01)
[29] リリカル・とらいあんぐる転生日記 27[satuki](2009/06/19 00:01)
[30] リリカル・とらいあんぐる転生日記 28[satuki](2009/06/19 00:00)
[31] リリカル・とらいあんぐる転生日記 29[satuki](2009/06/19 00:00)
[32] リリカル・とらいあんぐる転生日記 30[satuki](2009/06/19 00:00)
[33] リリカル・とらいあんぐる転生日記 31[satuki](2009/06/19 00:00)
[34] リリカル・とらいあんぐる転生日記 32【注:糖分過多】[satuki](2009/06/18 23:59)
[35] リリカル・とらいあんぐる転生日記 33[satuki](2009/06/18 23:59)
[36] リリカル・とらいあんぐる転生日記 34[satuki](2009/06/18 23:59)
[37] リリカル・とらいあんぐる転生日記 35[satuki](2009/06/18 23:59)
[38] リリカル・とらいあんぐる転生日記 36[satuki](2009/06/18 23:59)
[39] リリカル・とらいあんぐる転生日記 37[satuki](2009/06/18 23:58)
[40] リリカル・とらいあんぐる転生日記 38【少年編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[41] リリカル・とらいあんぐる転生日記 39【歯車戦士編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[42] リリカル・とらいあんぐる転生日記 40【大将と愉快な仲間たち①】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[43] リリカル・とらいあんぐる転生日記 41【大将と愉快な仲間たち②】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[44] リリカル・とらいあんぐる転生日記 42【歪んだ物語・その修正方法】[satuki](2009/06/18 23:57)
[45] 【オヤジ】狩り[satuki](2009/06/05 17:07)
[46] 【オヤジ】狩り-01  【続いた。続いてしまった】[satuki](2009/05/18 23:29)
[47] 【オヤジ】狩り-02  【また続いてしまった】[satuki](2009/05/26 20:02)
[48] 【オヤジ】狩り-03  【またまた、続いてしまった……】[satuki](2009/06/02 01:26)
[49] 【オヤジ】狩り-04  【狩るべきオヤジは、まだまだ存在するのだ!!】[satuki](2009/06/07 19:31)
[50] 【オヤジ】狩り-05  【アンリミティッド・オヤジワークス……ソレは地獄絵図でしかないな……?】[satuki](2009/06/29 21:16)
[51] 【オヤジ】狩り-06  【覇王少女のファンには、彼女が女神に見えるらしい……視力検査したら?】[satuki](2009/06/09 18:10)
[52] 【オヤジ】狩り-07  【イロモノはイロモノを呼ぶ…………奇跡の開幕!?】[satuki](2009/06/11 20:03)
[53] 【オヤジ】狩り-08  【奇跡は続く!?遅れてきた漢……!!】[satuki](2009/06/18 23:39)
[54] 【オヤジ】狩り-09  【漢女と乙女……オトメ同士の決闘!】[satuki](2009/06/19 17:00)
[55] 【オヤジ】狩り-10  【死亡フラグをブチ折ったモノ……!】[satuki](2009/06/20 00:19)
[56] 妖精00 【良く考えたら、コレが全ての始まりなのかもしれないなぁ……?】[satuki](2009/06/05 16:52)
[57] 妖精01 【妖精爆弾……じゃなかった。爆誕!!】[satuki](2009/06/05 16:52)
[58] 妖精02 【やって来たのは運命にかぶれたロリジャイと、その家族】[satuki](2009/06/05 16:53)
[59] 妖精03 【蝶人になった日】[satuki](2009/06/07 19:32)
[60] 妖精04 【淫獣殲滅作戦――全ては清い【なのちゃん】のために】[satuki](2009/06/10 00:10)
[61] 妖精05 【遠足。それは至上最強の闘い!?】[satuki](2009/06/20 00:20)
[62] 妖精06 【掟破り!?……覇王の蘇る日!】[satuki](2009/06/27 20:12)
[63] 真・転生日記【オヤジ】風味 ――『妖精は覇王の夢を見る!』 01[satuki](2009/06/29 21:17)
[64] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 02  【復活したイレギュラー】[satuki](2009/06/29 21:25)
[65] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 03  【お約束は突然に】[satuki](2009/07/03 18:58)
[66] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 04  【突撃、となりの小学校!?】[satuki](2009/07/12 18:30)
[67] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 05  【誕生!?養護教諭プレシあ!?】[satuki](2009/07/14 20:13)
[68] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 06  【予定とは、乱される為にあるのだ!】[satuki](2009/07/16 21:43)
[69] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 07  【イレギュラー戦隊、参る!!】[satuki](2009/07/24 16:48)
[70] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 08  【仮面対仮面(オマケ付き)】[satuki](2009/07/27 16:53)
[71] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 09  【隣の市は危険がいっぱい!?】[satuki](2009/07/31 21:08)
[72] デザイア!?[satuki](2009/08/02 16:08)
[73] リリカル・とらいあんぐる転生日記 43【本筋は、忘れた頃にやって来る】[satuki](2009/08/04 23:55)
[74] デザイア!? 02[satuki](2009/09/04 19:03)
[75] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 10  【近付いてくる真相!?】[satuki](2009/09/04 19:04)
[76] デザイア!? 03 【女(装)王、誕生】[satuki](2009/09/07 02:14)
[77] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 11  【混沌の始まり】[satuki](2009/09/13 12:20)
[78] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 12  【長い伏線(その一)】[satuki](2009/09/18 00:37)
[79] リリカル・とらいあんぐる転生日記 44【長い伏線(そのニ)】[satuki](2009/09/19 19:34)
[80] リリカル・とらいあんぐる転生日記 45【アインヘリアル?何それ、美味しいの?】[satuki](2009/09/25 21:50)
[81] リリカル・とらいあんぐる転生日記 46【少しだけ本気を出した。後悔はしている】[satuki](2009/09/27 21:52)
[82] リリカル・とらいあんぐる転生日記 47【もう少し本気を出してみた。さらに後悔している】[satuki](2009/10/02 21:46)
[83] リリカル・とらいあんぐる転生日記 48【ついに登場、最高評議会!?】[satuki](2009/10/09 11:11)
[84] リリカル・とらいあんぐる転生日記 49【三人目は…・・・グハッ!?】[satuki](2009/10/11 22:41)
[85] リリカル・とらいあんぐる転生日記 50【歯車戦士、愛の決闘】[satuki](2009/10/16 18:38)
[86] リリカル・とらいあんぐる転生日記 51【人生は闘いだ!!】[satuki](2009/10/17 21:59)
[87] リリカル・とらいあんぐる転生日記 52【魔神の生まれちゃった日】[satuki](2009/10/22 22:08)
[88] リリカル・とらいあんぐる転生日記 53【アニキ+ナイスミドル=???】[satuki](2009/10/27 16:33)
[89] リリカル・とらいあんぐる転生日記 54【変形する揺り籠!?至上最悪の悪魔の登場!!】[satuki](2009/11/06 10:46)
[90] リリカル・とらいあんぐる転生日記 55【ラスト・ラストをキミに……】[satuki](2009/11/06 10:47)
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[8085] 【オヤジ】狩り-01  【続いた。続いてしまった】
Name: satuki◆b147bc52 ID:e2b4a002 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/18 23:29



 前回のあらすじ:【覇王少女】、爆現。



 意外なことに、一週間が過ぎようとしていた。
 エッ?何の期間がって?
 ソレは当然、クライド少年がボクの下へ来てからの話に、決まってるじゃないか?

 初日の気絶回数:一時間に一回。
 ただし、それぞれの気絶時間は五十分ずつだ。
 つまり実働、十分かける七回。

 よって、初日は七十分位しか働いていないことになる。
 ……どう考えても給料泥棒だ。
 評価に記念すべき一回目の×を入れる。

 二日目。
 気絶回数:一時間半に一回。
 気絶平均時間、約三十分。

 ……大した進歩だ。
 正直、ココまで喰らい付いて来たヤツは初めてだ。
 だから、ちょっとだけ褒めてやろうと肩を叩いたら…………いきなり壁に吹っ飛んでいった。

 うーむ。やっぱり、少し柔すぎるなぁ……。
 コレは訓練を付ける必要があると、備考に入れた。
 ちなみにこの時の彼は、壁を突き抜けて隣の部屋に行ってしまったと、付け加えておく。

 三日目。
 昨日の怪我がたたり、急遽お休みに。
 仕方ないと、就業後にお見舞いに行ったら…………会った瞬間に狸寝入りを始めやがった。

 ペチペチと頬を叩いても、起きる素振りを見せない。
 ……大した演技力だ。
 コレなら、明日は復活してくるだろう。

 四日目。
 昨日の様子から、きっと出勤してくると思ったのだが、この日も彼は来なかった。
 サボりか……?どうも、【克】を入れてやらないといけないらしい。

 そう思ってクライド少年の家を訪れると…………ソコに少年の姿はなかった。
 何でも昨日ボクが見舞ったすぐ後に、近くの病院に運ばれたらしい。
 理由は心肺停止。…………一体、何が原因なのだろうか?

 五日目。
 昨日入院したというのに、朝には復活してきた彼。
 素晴らしい。流石は後のクロノの父親なだけはある。

 そのガッツに敬意を表し、今日は軽めの仕事だけにさせた。
 本日の気絶回数:十五回。
 ただし、平均気絶時間は二十分。

 六日目。
 気絶回数:八回。
 平均気絶時間:五分。

 七日目……つまり、今日。
 今就業のベルが、響き渡った。
 気絶回数:三回。
 平均気絶時間…………一分。

「クライド少年。正直、君には驚かされた……今までのボクの部下は、ボクのあまりの恐ろしさに、一週間と持たなかった」
「…………」
「だがキミは、不可能を可能にした…………一体、どうしてそんなコトが出来たのかい……?」
「…………」

 返事がない。
 ただの屍のようだ。
 ……どうやら、立ったまま気絶しているらしい。

 面と向かいすぎたようだ。
 魂が抜けかかっているのが見える程に。
 ……やっぱり、明日からは肉体鍛錬も並行させよう。そう思った。






















 新米執務官【クライド・ハラオウン】の業務日誌【2】



 自慢ではないが、精神力には自信があった。
 ソレは体力や体術。もちろん、魔法に関してもそうだった。
 だがソレらが、とてもちっぽけな……風が吹いたら飛んでしまうようなモノだと気付いたのは、つい最近のことである。

 上司になったヒトは、凡そ普通の上司とはかけ離れた存在だった。
 その巨体も、大迫力な顔も。
 恵まれ【過ぎた】体躯から繰り出されるモノは、結構な数の物理現象を否定した。

 アレは何だ?
 あれは人間ではないだろう?
 そうだ。アレは…………化け物だ。

 そう思ってしまった自分は、きっと悪くない。
 みんなそう感じたから、一週間も持たなかったのだろう。
 だが自分は、そんな人外魔境を前にそのジンクスを破った。

 コレなら、皆が一目置く存在として見てくれるだろう。
 この先、いつ【化け物】の下を去ろうとも、評価が悪くなることはない。
 それどころか、尊敬すらされるだろう。

 コレが、一週間経過後の感想だ。
 人間慣れだ。
 慣れればどうということはない。

 まだ多少気絶することはあるが、それも時間の問題だろう。
 そう思い、ボクは浮かれていた。
 だが現実は、そんなに甘くはない。

 甘いハズがなかったのだ。
 気絶しなくなったら、次に待っていたのは地獄の行軍……のような訓練だった。
 上司曰く、【肉体の鍛錬も足りないから、鍛えるからな……?】とか。

 朝は夜明け前に起床し、二十キロの全力疾走。
 次に指一本での指立て伏せを、五指×百回ずつ。
 ヒンズースクワット二百回。

 腹筋、背筋…………エトセトラ。
 【今日は鍛錬初日だし、軽めだっただろう……?】とか言われた瞬間、ボクの意識はブラックアウト。
 生物学上、【オンナ】である上司にお姫様抱っこをされ、医務室に運ばれる。

 既に医務室の住人のようになっているボクは、専用のベッドすら存在した。
 目蓋を押し上げる。
 すると外の景色は、既に夕焼けを映し出していた。

 不味い。
 急いで上司の下へ行かなければ。
 そう思い医務室のドアを開けて、勢い良く飛び出した。

「…………でもよぉ~、あの【クライド】とか言うヤツも、良く続くよなぁ……?」

 曲がり角の先から聞こえた、ボクの噂話。
 きっと、自分の評価が良い話なのだろう。
 そう思うと少し嬉しい。もっと話を聞いていたくて、壁に張り付いて聞き耳を立てた。

「あぁ、信じらないな。ってかさぁ~、アイツって、もしかしてブス専……いや。【人外専】なんじゃないの!?」
「あ~。だから耐えられるのか…………そうだよな?それ以外、大丈夫なハズないもんなぁ……!!」
「それにMのヒトなんじゃない!?きっと、そうに違いないって…………!!」

 ……聞くんじゃなかった。
 この時ボクは、心の底からそう思った。
 酷い勘違いに、全然評価されていない現状。

 知らず知らずの内に、涙が零れ出す。
 悔しい。悲しい。
 もう、全てを投げ出してしまいたい。

 良いじゃないか。
 もう十分耐えたじゃないか。
 そうだよ。辞めるには良いキッカケじゃないか……。

 泣き崩れた顔でその場にへたり込む。
 ソコに居たのは、ただの負け犬だった。
 もうココに一秒でも居たくない。だから走り去ろう。はやくこの場を去るんだ。



 ――駄々駄々駄々駄々駄々駄々駄々駄々駄々駄々駄々駄々!!



 マシンガンのような轟音。
 ソレは壁にヒトが突き刺さる音だった。
 壁にめり込んだ人影は、先程まで自分を罵倒していたヤツら。

 何が起こったのだ。
 この一瞬の内に、何が起こったというのだ!?
 ボクはその場から立ち上がれなかったので、耳からだけでも情報を仕入れようとした。

「……貴様ら、ウチの部下を馬鹿にするとは良い度胸だ……」

 その声は、ココ一週間で嫌と言うほど聞きなれた声だった。
 ドスの聞いた渋い声。
 ソレは鋼のような意思を貫く、鋼鉄の【漢女】の…………【シズカ・ホクト】の声だった。

「……自慢ではないが、ボクの顔は人間凶器みたいなモノでねぇ……?ほとんどの部下は一週間と持たずに辞めていったのだよ……?」

 気絶することは許さんとばかりに、強烈なプレッシャーを浴びせる。
 その余波はコチラにも来ており、その一言一言が胸に突き刺さる。
 あぁ。このヒトは、非常に怒っているのだな。

「一週間。貴様らは興味本位や、ヒトに馬鹿にされるのに怯えつつも、ボクの部下をやり続けることが出来るか……?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「……そうか。ならばやって貰おう。もしやり遂げられたら、この件も含めて謝罪しようではないか……?」

 一段と重くなる重圧。
 悲鳴にならない悲鳴は、既に沈黙してしまった。
 発狂寸前なのかもしれない。

「どうしたぁ……?出来るのか!出来ないのか!!」

 戒めが解ける。
 ドンという音と共にボクを馬鹿にしたモノたちが地に落ち、口が利けるようになる。
 ソレは最終確認のため。彼らの意思の確認のためなのだ。

「ハッキリ言わんか!!」
『す、すみませェェェェェェェェェェェェェェェンっ!!』

 落ちた。
 ソレは意識がなくなったことを意味する。
 彼らは反省させられたのと同時に、恐怖が頂点に達し、自らの意識を手放したのだ。

 上司を怒らせた彼らは、その日の内に退職願を出したらしい。
 完全にトラウマになってしまったのだ。
 それも無理からぬ話。

 だがボクは、ソレを手放しで喜べなかった。
 確かに悪口を言っていた彼らも悪かった。
 だが口にこそ出さないものの、ボクの方がある意味狡賢いコトを考えていたのだ。

 彼らが罰を受けたのに、それ以上のコトを考えていたボクが受けないのはおかしい。
 ……というよりも、その状況に耐えられない。
 悩んだ結果、ボクはあの会話を立ち聞きし、その上でのボクの考えを上司に打ち明けた。

「あぁ、ソレくらい分かってたさ」

 彼女は何でもお見通しだった。
 でも咎められなかった。
 何故。どうして。

「あのなぁ……?ただ噂をしてるヤツと、実際に歯を食いしばって頑張ってるヤツ。同じようにバカにするのなら、実際にやってるヤツの方が百万倍マシだろうに……?」

 涙が頬を伝った。
 ソレは悲しかったからか。それとも嬉しかったからか。
 多分様々な感情が入り混じっていたのだろうと思う。

 違う。ボクはマシなヤツなんかじゃない。
 そんなに良いモノではないのだ。
 なのに、どうしてそんなコトを言うのですか!?

「いや実際、オマエさんは大したモノだよ?気絶する回数も殆ど無くなったし、今日みたいな鍛錬も付いて来られる。精神的にも肉体的にも、若手ではトップクラスだろうなぁ……」

 違う。
 ソレは全て、貴女がそう導いてくれたからだ。
 ボクは一人では、何もやっていない。

「…………この分なら、何処へ行ってもやっていけるだろう。希望を言いな?ソコに配属させてあげるから……?」
「!?な、何故です!?何でそんなコトを…………!?」
「いやだって、さっきみたいな誤解はイヤだろう?それにオマエさんは、元々良い経歴を手に入れたかっただけだ」
「…………で、でも……」
「ボクの下に居れば、嫌でもさっきみたいなコトになる。ソレが分かったら、遠慮なく希望を言いなさいな……?」

 頭の中で、大きな鐘の音が聞こえた。
 このヒトは自分も馬鹿にされたというのに、ボクのことだけを心配してくれているのだ。
 凄い。そして自分が情けない。このヒトの本質を、全くといって良いほど見抜けなかった自分が、心底情けない

「……辞退します。その転属は辞退します!!」
「オイ!?本気か!?折角この【化け物】から逃げられるんだぞ!?」
「ホクト執務官長は、化け物ではありません!!ボクが全身全霊を以って、追いつくべき目標です!!」

 直立不動。
 最敬礼をしての、意思表示。
 コレが今のボクの素直な気持ちだ。

「…………大丈夫か?悪いモノでも食べたんじゃないか……?」
「いいえ!!何処までもお供させて頂きます、ホクト執務官長!!」

 こうしてボクの新たな人生の一ページがスタートした。
 第一の目標は、彼女に追いつくこと。
 酷く険しい大山脈だが、必ず登頂してみせる。

 そのボクの意思表示を、彼女は目を丸くして見ていた。





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