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No.8085の一覧
[0] リリカル・とらいあんぐる転生日記  【完結しました】[satuki](2009/11/06 10:47)
[1] リリカル・とらいあんぐる転生日記 00[satuki](2009/06/19 17:02)
[2] リリカル・とらいあんぐる転生日記 01[satuki](2009/06/19 17:02)
[3] リリカル・とらいあんぐる転生日記 02[satuki](2009/06/19 17:02)
[4] リリカル・とらいあんぐる転生日記 03[satuki](2009/06/19 17:02)
[5] リリカル・とらいあんぐる転生日記 04[satuki](2009/06/19 17:02)
[6] リリカル・とらいあんぐる転生日記 05[satuki](2009/06/19 17:02)
[7] リリカル・とらいあんぐる転生日記 06[satuki](2009/06/19 17:03)
[8] リリカル・とらいあんぐる転生日記 07[satuki](2009/06/19 17:03)
[9] リリカル・とらいあんぐる転生日記 08[satuki](2009/06/19 17:03)
[10] リリカル・とらいあんぐる転生日記 09[satuki](2009/06/19 17:01)
[11] リリカル・とらいあんぐる転生日記 10[satuki](2009/06/19 17:01)
[12] リリカル・とらいあんぐる転生日記 11[satuki](2009/06/19 17:01)
[13] リリカル・とらいあんぐる転生日記 12[satuki](2009/06/19 17:01)
[14] リリカル・とらいあんぐる転生日記 13[satuki](2009/06/19 17:01)
[15] リリカル・とらいあんぐる転生日記 14[satuki](2009/06/19 17:00)
[16] 元ネタ帳(00~14)[satuki](2009/04/30 21:34)
[17] リリカル・とらいあんぐる転生日記 15【前編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[18] リリカル・とらいあんぐる転生日記 16【後編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[19] リリカル・とらいあんぐる転生日記 17[satuki](2009/06/19 00:04)
[20] リリカル・とらいあんぐる転生日記 18[satuki](2009/06/19 00:03)
[21] リリカル・とらいあんぐる転生日記 19[satuki](2009/06/19 00:03)
[22] リリカル・とらいあんぐる転生日記 20[satuki](2009/06/19 00:03)
[23] リリカル・とらいあんぐる転生日記 21[satuki](2009/06/19 00:02)
[24] リリカル・とらいあんぐる転生日記 22[satuki](2009/06/19 00:02)
[25] リリカル・とらいあんぐる転生日記 23[satuki](2009/06/19 00:02)
[26] リリカル・とらいあんぐる転生日記 24[satuki](2009/06/19 00:01)
[27] リリカル・とらいあんぐる転生日記 25[satuki](2009/06/19 00:01)
[28] リリカル・とらいあんぐる転生日記 26[satuki](2009/06/19 00:01)
[29] リリカル・とらいあんぐる転生日記 27[satuki](2009/06/19 00:01)
[30] リリカル・とらいあんぐる転生日記 28[satuki](2009/06/19 00:00)
[31] リリカル・とらいあんぐる転生日記 29[satuki](2009/06/19 00:00)
[32] リリカル・とらいあんぐる転生日記 30[satuki](2009/06/19 00:00)
[33] リリカル・とらいあんぐる転生日記 31[satuki](2009/06/19 00:00)
[34] リリカル・とらいあんぐる転生日記 32【注:糖分過多】[satuki](2009/06/18 23:59)
[35] リリカル・とらいあんぐる転生日記 33[satuki](2009/06/18 23:59)
[36] リリカル・とらいあんぐる転生日記 34[satuki](2009/06/18 23:59)
[37] リリカル・とらいあんぐる転生日記 35[satuki](2009/06/18 23:59)
[38] リリカル・とらいあんぐる転生日記 36[satuki](2009/06/18 23:59)
[39] リリカル・とらいあんぐる転生日記 37[satuki](2009/06/18 23:58)
[40] リリカル・とらいあんぐる転生日記 38【少年編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[41] リリカル・とらいあんぐる転生日記 39【歯車戦士編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[42] リリカル・とらいあんぐる転生日記 40【大将と愉快な仲間たち①】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[43] リリカル・とらいあんぐる転生日記 41【大将と愉快な仲間たち②】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[44] リリカル・とらいあんぐる転生日記 42【歪んだ物語・その修正方法】[satuki](2009/06/18 23:57)
[45] 【オヤジ】狩り[satuki](2009/06/05 17:07)
[46] 【オヤジ】狩り-01  【続いた。続いてしまった】[satuki](2009/05/18 23:29)
[47] 【オヤジ】狩り-02  【また続いてしまった】[satuki](2009/05/26 20:02)
[48] 【オヤジ】狩り-03  【またまた、続いてしまった……】[satuki](2009/06/02 01:26)
[49] 【オヤジ】狩り-04  【狩るべきオヤジは、まだまだ存在するのだ!!】[satuki](2009/06/07 19:31)
[50] 【オヤジ】狩り-05  【アンリミティッド・オヤジワークス……ソレは地獄絵図でしかないな……?】[satuki](2009/06/29 21:16)
[51] 【オヤジ】狩り-06  【覇王少女のファンには、彼女が女神に見えるらしい……視力検査したら?】[satuki](2009/06/09 18:10)
[52] 【オヤジ】狩り-07  【イロモノはイロモノを呼ぶ…………奇跡の開幕!?】[satuki](2009/06/11 20:03)
[53] 【オヤジ】狩り-08  【奇跡は続く!?遅れてきた漢……!!】[satuki](2009/06/18 23:39)
[54] 【オヤジ】狩り-09  【漢女と乙女……オトメ同士の決闘!】[satuki](2009/06/19 17:00)
[55] 【オヤジ】狩り-10  【死亡フラグをブチ折ったモノ……!】[satuki](2009/06/20 00:19)
[56] 妖精00 【良く考えたら、コレが全ての始まりなのかもしれないなぁ……?】[satuki](2009/06/05 16:52)
[57] 妖精01 【妖精爆弾……じゃなかった。爆誕!!】[satuki](2009/06/05 16:52)
[58] 妖精02 【やって来たのは運命にかぶれたロリジャイと、その家族】[satuki](2009/06/05 16:53)
[59] 妖精03 【蝶人になった日】[satuki](2009/06/07 19:32)
[60] 妖精04 【淫獣殲滅作戦――全ては清い【なのちゃん】のために】[satuki](2009/06/10 00:10)
[61] 妖精05 【遠足。それは至上最強の闘い!?】[satuki](2009/06/20 00:20)
[62] 妖精06 【掟破り!?……覇王の蘇る日!】[satuki](2009/06/27 20:12)
[63] 真・転生日記【オヤジ】風味 ――『妖精は覇王の夢を見る!』 01[satuki](2009/06/29 21:17)
[64] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 02  【復活したイレギュラー】[satuki](2009/06/29 21:25)
[65] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 03  【お約束は突然に】[satuki](2009/07/03 18:58)
[66] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 04  【突撃、となりの小学校!?】[satuki](2009/07/12 18:30)
[67] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 05  【誕生!?養護教諭プレシあ!?】[satuki](2009/07/14 20:13)
[68] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 06  【予定とは、乱される為にあるのだ!】[satuki](2009/07/16 21:43)
[69] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 07  【イレギュラー戦隊、参る!!】[satuki](2009/07/24 16:48)
[70] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 08  【仮面対仮面(オマケ付き)】[satuki](2009/07/27 16:53)
[71] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 09  【隣の市は危険がいっぱい!?】[satuki](2009/07/31 21:08)
[72] デザイア!?[satuki](2009/08/02 16:08)
[73] リリカル・とらいあんぐる転生日記 43【本筋は、忘れた頃にやって来る】[satuki](2009/08/04 23:55)
[74] デザイア!? 02[satuki](2009/09/04 19:03)
[75] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 10  【近付いてくる真相!?】[satuki](2009/09/04 19:04)
[76] デザイア!? 03 【女(装)王、誕生】[satuki](2009/09/07 02:14)
[77] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 11  【混沌の始まり】[satuki](2009/09/13 12:20)
[78] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 12  【長い伏線(その一)】[satuki](2009/09/18 00:37)
[79] リリカル・とらいあんぐる転生日記 44【長い伏線(そのニ)】[satuki](2009/09/19 19:34)
[80] リリカル・とらいあんぐる転生日記 45【アインヘリアル?何それ、美味しいの?】[satuki](2009/09/25 21:50)
[81] リリカル・とらいあんぐる転生日記 46【少しだけ本気を出した。後悔はしている】[satuki](2009/09/27 21:52)
[82] リリカル・とらいあんぐる転生日記 47【もう少し本気を出してみた。さらに後悔している】[satuki](2009/10/02 21:46)
[83] リリカル・とらいあんぐる転生日記 48【ついに登場、最高評議会!?】[satuki](2009/10/09 11:11)
[84] リリカル・とらいあんぐる転生日記 49【三人目は…・・・グハッ!?】[satuki](2009/10/11 22:41)
[85] リリカル・とらいあんぐる転生日記 50【歯車戦士、愛の決闘】[satuki](2009/10/16 18:38)
[86] リリカル・とらいあんぐる転生日記 51【人生は闘いだ!!】[satuki](2009/10/17 21:59)
[87] リリカル・とらいあんぐる転生日記 52【魔神の生まれちゃった日】[satuki](2009/10/22 22:08)
[88] リリカル・とらいあんぐる転生日記 53【アニキ+ナイスミドル=???】[satuki](2009/10/27 16:33)
[89] リリカル・とらいあんぐる転生日記 54【変形する揺り籠!?至上最悪の悪魔の登場!!】[satuki](2009/11/06 10:46)
[90] リリカル・とらいあんぐる転生日記 55【ラスト・ラストをキミに……】[satuki](2009/11/06 10:47)
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[8085] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 12  【長い伏線(その一)】
Name: satuki◆b147bc52 ID:990b2e27 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/18 00:37



 前回のあらすじ:【フェアリィ・槙原】+【八神あらし】=???



 【アンリミティッド・デザイア】。それは【ジェイル・スカリエッティ】の開発コードだと言われている。
 無限の欲望。そう言い換えられたそれは、ただの人だった。
 人間。その存在の思考を有る一定の方向で固定し、ただただ、その感情の赴くままに突き進ませる。

 人はヒトである限り、その脳の力を百パーセント使いこなすことなど出来ない。
 それは本能がリミッターを掛けるため。
 天才と呼ばれる人間たちですら、そのリミッターを完全に解放している訳ではないのだ。

 だが、もしも人為的にそれを完全解放させたら?
 その被験者は、人間という枠組みを越えたことになる。
 もちろんリスクはある。

 元々施されているリミッターを外すのだ。
 そこに無理がない訳がない。
 どれ程肉体を改造しようとも。

 また如何にDNAレベルからの、根本的な見直しをしようとも。
 そこには必ず【限界】という概念が壁となって立ち塞がり、行く手を阻む。
 だから人は例え思考操作されようとも、無限に欲望を持ち続けることなど、出来るはずもないのである。

 よって【アンリミティッド・デザイア】は、単体では用を成さなかった。
 次に行われたのが、それを二つに分けるという発想。
 元々、最大限までヒトとしての可能性を引き出した者。

 一人では無理でも二人なら。
 陰と陽を分けて、対極的なアプローチをし続ければ。
 限りない【可能性】を人類から引き出し、そして同時にコントロールする。

 この相反する矛盾した考えを内包した考えが、この――【箱庭】のシステム。
 明と暗。正道と邪道。正義と悪。
 与えられた役割を続けさせられる人類。そこに……彼らの意思は存在しないに等しい。

 駒は駒らしくしていれば良い。
 何とも使い古された台詞だが、それは上位者からすれば当たり前の考え方。
 反吐が出る。同時にそう言った統治者たちは、必ず足下をすくわれる。

 人は見えない支配は嫌がらないが、それが見えた時――必ずと言って良いほど反発する。
 だから人は、神に成り得ない。
 人は何処まで行っても人であり、また神は何処まで行っても人には成れない。






 ……とまぁ、これが【アンリミティッド・デザイア】プランの概要だったのだけど……。

「…………随分とふざけたプランね……?いえ、これは【プラン】と呼ぶのもおこがましいわ……」

 黒髪ウェーブ版のフェイト――つまり久々登場の【若】プレシア。
 その彼女は、現在怒り心頭モードである。
 それも当然と言えばそうだろう。

 この次元世界の全てを、裏からコントロールしてきた存在。
 もしもそんな存在が居ると言うのなら、彼女の行動もそれによって誘導されたものだということになる。
 即ち、かつて彼女が失敗した魔力駆動炉の実験も。また、そこから始まる悲劇の全てが……その存在の介入が在ったせいだということになる。

「ということは……まさか【闇の書】事件も、全て仕組まれたものだったと!?」

 以前自分も関わり。そしてその日から、家族の運命が変わってしまった事件。
 クライドはその考えに至り、そして驚愕する。
 驚愕……せざるを得ない。



 建造から既に幾年も経た実験次元航行艦だったラグナロク。
 今その内部では、黒と蒼。そして紫が対面している。
 ジェイル・スカリエッティと月村静香に共通した色――【紫】。

 その姿は月村静香と呼ばれた存在に酷似しており、唯一の違いは服装くらいだった。
 かつて着ていた将官服や茜屋の制服とは違い、黒と紫を基調とした燕尾服風のデザインの服。
 とても美形でないと着こなせない、奇怪極まる格好である。

「じゃあ、あの事件も……全てあなたが仕組んだ事だったというんですか……?」

 クライドは問う。かつて師事し、今でも憧れている存在に対して。
 何を?
 震える声に載せられたのは、信じたくない事実。

「そうだよ。ボクの中の【ジェイル・スカリエッティ】がやったんだ」
「……っ!?」

 声に震えはない。
 淀みもない。
 それはただの事実だから。

 月村静香の――月村静香【の姿をした者】にとってそれは、ただの事実確認でしかなかった。
 知らなかった。自分ではなかった。そう言うことは簡単だ。
 しかしそれは、彼の矜持が許さなかった。

 合一。この場合は、再統合と言った方が良いだろう。
 つまり自分の分身、自分そのものと言っても良い存在の所業なのだ。
 それを無かったことには出来ないし、避けて通ることも出来ない。

「……ふぅ。止めておきます」

 今にも殴りかかりそうな気配だった、クライド少年。
 しかしため息を吐くと、その気配は一瞬にして霧散する。
 そしてそれはプレシアも同様。

「どうしてだい?ボクはキミたちにとって……」
「それでもです」

 最後まで言わせて貰えない言葉。
 遮るように言われた一言は、その言葉に全てが込められていた。
 まるで奪われた物より、貰った物の方が多いと言わんばかりに。

「……プレシアも?」
「…………えぇ。恨まないであげるわ(今はね?)」

 明らかに台詞と表情が一致していない彼女。
 だがそれは仕方のないこと。ボクは彼女から、彼女にとっての全てと言い切れるモノを奪ってしまったのだ。寧ろ当然である。
 それでもプレシアから出た言葉が剣呑なものでないということは、己の感情よりも優先すべきものが有ると理解しているからだろう。

「……分かった。ならこの話は、ここまでにしておこうか?」

 無言で頷く二人。
 さてと、それでは次の話題に移るとするか。
 思考を切り替え、話を振ろうとしたした時。クライド少年が思い出したかのように、言ってきた。

「そう言えば……今のあなたは、何者なんですか……?」

 一瞬呆気に取られるが、すぐに現実に回帰する。
 ボクが何者か……。いや、それ以前に最初の名前って、何だったっけ……?
 ……思い出せない。思い出せないなら、正直に答えるしかない。

「……もう名前も忘れてしまった…………ただの三次元人さ」

 背中に漂うのは哀愁。
 まるでターバンとマントを纏った宇宙人が見えそうな、今のボク。
 そう言えばあれも、善と悪の再融合だったよね?

「…………何というカオス!!執務官長……やはり、あなたは素晴らしい!!」

 クライド少年が、何かに取り憑かれたようです。
 前回の恭也と言い、真面目な二枚目キャラが突然暴走する現象が、最近は流行っているのかもしれない。
 そんな少年を見て――いや。少年【たち】を見て、プレシアが三白眼になってこう呟いた。

「……駄目だわ、コイツら。はやく何とかしないと……」






















 ラグナロクはルナパパ謹製の、謎の技術が満載である。
 故にタイムスリップなんてお手の物。
 とは言っても、彼の技術を以ってしても片道切符がせいぜいではあるが。

「この時代。月村静香とジェイル・スカリエッティが同時に存在する時代は、ボクたちにとって不都合極まりない」

 何せ彼ら自身がフリーダムに動き回っている時代なのである。
 当然、ボクたちが動ける幅も限定されるし、第一やることがない。
 ならばいっそのこと、彼らの居なくなった後の時代に――少なくとも【月村静香】が死亡した後の世界なら、自由度はグッと上がる。

「だからボクは提案する。刻を越え、歴史の【続き】から再び始めることを……」
「異議はありません」
「そうね。大局的に見た場合、その方が良いことは確かね…………だけど」

 プルプルと震えるプレシア姐さん。
 何やら理性と感情が闘っているらしい。
 先程の己の激情すら押さえ込んだ彼女が、一体何を気にしているというのだろうか?

「……?どうしたの、何か問題でも……?」
「有るわ。有るわよ。大有りよ!!」
「ちょっと、落ち着いて下さいよ!?一体どうしたって言うんです!?」

 激昂プレシアを、クライド少年が抑えようとする。
 結構良い組み合わせだな。
 あんま考えたことは無かったけど、【クラ×プレ】っていうカップリングも、有りなのか……?

「だって!せっかく、美人の保健の先生って評判になったのよ!?毎日可愛い子どもたちが遊びに来てくれて、一緒にお茶したり……」

 【イヤンイヤン】な状態に突入しているプレシア。
 鼻から大量の血液が流れ続けているのを見ると、そろそろ輸血パックを用意した方が良いかもしれない。
 そう思ってしまう程だった。

「このまま行けば、一緒にお昼寝とかも出来るようになりそうだったのに……!!」

 先生、大変です!
 ここに(性)犯罪者が居ます。
 しかもそれは、そもそも小学校でやるようなことではないのにねぇ?

「じゃあ良いよ。プレシアだけ、この時代に置いていくから」
「そうして貰えると助かるわ。仮にも教師たるもの、子どもたちを置いて何処かへ行くような真似は……」

 繰り返すが、彼女の鼻血は滝のように流れ続けている。
 つまり真面目ぶった台詞は、全て台無しな上に、全く以って説得力に欠ける代物。
 これで説得される奴が居るのなら、是非とも見てみたいものだ。

「ただそうすると…………今度会った時には、プレシアだけがオバハンに……」
「さぁ、行きましょう!!さっさと未来に行く準備をしなさい!!」

 一瞬の迷いも生じない程の、華麗なる転進。
 さっきまでごねていたのが、まるで嘘のようだ。
 ここまで来ると、却って清々しさすら感じる。

 結論。
 女性は、自分自身が一番大切なようです。
 プレシアお姉さんは、ボクたちに大切なことを教えてくれました。

「あぁ、ちょっと待っておくれ。まだこの時代で、一つだけやらなきゃならない事が残ってるんだよ……?」

 そう。大事な大事な、お約束を。
 この為に次元航行艦の名前を、態々自分で決めたのだ。
 これをやらないと、【A's】は終われないよねぇ……?












 十二月二十四日。
 世間ではクリスマス・イヴと呼ばれるその日。
 ただ高町なのはと愉快な仲間たちにとっては、その日は違った意味を持っていた。

 闇の書を滅し、事件に終止符を打つ大事な日。
 現在、闇の書の防衛プログラムの複層式バリアは破壊され、三人娘のトリプルブレイカーの準備中。
 既になのは・フェイトと詠唱が終わっており、残すははやてのみ。

 リインフォースによって【八神あらし】の記憶を消されたはやての胸中には、防衛プログラムへの申し訳なさしか存在しない。
 だがそれも一瞬のこと。
 気持ちを切り替え、そして最後の詠唱を始める。

「響け終焉の鐘……ラグナロク……」

 本当はこの後に三人娘の【ブレイカー】という台詞が待っているはず。
 しかし今回は台本通りにはいかなかった。
 何故ならそれは、予想外の事態が起きるからだ。

「「「ブレイ『お呼びとあらば、即参上!!』…………へ?」」」

 大音量スピーカーから放たれた、意味不明な言葉。
 それを発した主は、雲を突き抜けて上空から現れた。
 紅い、西洋龍の一種を模した体躯。その姿は何処からどう見ても、【ラグナロク】だった。

「そんな……あれは、【ラグナロク】!?」

 その声はラグナロクに乗船経験もあり、何かと縁深いリンディ・ハラオウンのものだった。
 【在り得ず】。その別名通りの感想が、彼女の脳裏を駆け巡る。
 有り得ない。だって、あの人たちはもう……。

 遺影のような白黒の風景。
 その空間の中で微笑む、夫と人生の先達。
 同時に呟かれたのは、彼女の名前。

『『リンディ(嬢)!』』



「……ハッ!?」

 現実に戻される。
 戻った彼女の前にあった光景は、ラグナロクが防衛プログラムに突っ込んでいくところだった。
 何の悪夢だ。またラグナロクが消えるのを、今度は己の目で確認せよというのか。

「エイミィ、ラグナロクに通信繋いで!!」
「ハ、ハイ!!…………駄目です!通信繋がりません!!」

 半ば予想通りの答え。
 しかしそのままには出来ない。
 次なる一手を考えないと。リンディがそう思った瞬間、ラグナロクに更なる動きがあった。



 ――ギュィィィィィィィィン!!



 次元航行艦に搭載されている、【ディストーション・フィールド】。
 それを最大限に展開した状態で、ラグナロクが突貫していく。
 しかしそれは、防衛プログラム本体に対しての攻撃ではなく。その端末たる大型触手たちのみが対象であった。

「……何を、しているというの……?」

 湧き上がる疑問。
 ラグナロク程の大質量の物体が突貫すれば、プログラム本体は一旦壊滅寸前までいくだろう。
 例えばこんな感じで。



『往けぇ!ラグナロクよ!!忌まわしき記憶と共に……!!』



 しかしあの艦船は、それをしようとはしてない。
 何故?どうして?
 その解けないはずの答えは、意外にもアッサリと解けた。

『……露払いはこれ位で良いだろう……。さぁ出番だぞぉ……【勇者翁】!!』
『…………任せたまえ』

 そう、ラグナロクは時間を稼いでいたのだ。
 この事件の当事者にして、氷結の杖を持った老提督の到着の為の時間を。
 これで真の意味での事件の決着が、漸く付いたのであった。












 おまけ



 翌日。所謂【お別れの儀式】のクライマックスにあった出来事。
 リインフォースが段々と粒子化していき、まさに光になる瞬間のこと。
 『ポンッ!』という音と共に、一枚のカードが回転しながら一直線に突っ込んでくる。

「「「……!?」」」

 その場に居た、誰もが息を呑んだ。
 カードによって【お別れの魔法陣】は破壊され、霧散していく魔力。
 そして目撃した。白いマントとシルクハット。モノクル(片眼鏡)から見えるのは、独特の紅い瞳。

「メリークリスマス、魔法使いの皆様……」
「「「誰!?」」」
「……おや。アースラ宛に予告状を出したのですが……どうやら、本気と受け取られなかったようですね」

 白い紳士は続ける。
 己の目的。
 そしてそれを実行する為に来たのだと。

「まぁ良いでしょう。私は【祝福の風】を頂きに参上した……ただの怪盗ですよ」
「「怪盗……!?」」

 怪盗という単語を聞くや否や、なのはとフェイトがガクブルし始めた。
 どうやら彼女たちにとっては、既にトラウマものの出来事らしい。
 無理もない。警視庁での事件は、ボクにとってもやり過ぎたと反省すべき点があったからな。

「えぇ。それでは早速で悪いのですが、煩いのが来る前に退散させて貰いますよ…………目的を果たしてからね?」
「な!?それは……!?」

 リインフォースの首筋に手刀を一発。
 本当なら優雅に魔法か眠り薬とかでやりたいのだが、如何せん相手はプログラムだ。
 成功しなかった場合、厄介なことこの上ない。

「……という訳で」

 慇懃に、恭しく礼をする怪盗――というか、変装したボク。
 リインフォースを片手で抱きながら、白いマントで己たちを覆う。
 やっぱ怪盗って言ったら、こうでないとねぇ……?

「それでは皆様、御機嫌よう……」

 転移魔法ではなく、ワザと白いハンググライダーを展開して逃走する。
 様式美を重視するのが、日本人の美徳なのです。
 偉い人にはそれが(以下略)。

「皆、大変だ!リインフォースが狙われて……って、既に遅かったか!?」

 一同が呆気に取られている間に、少年執務官が怪盗とタッチの差で現れた。
 大急ぎで来たのだろうが、僅かに及ばず……といったところだろう。
 歯噛みしているのが見て取れる。

「……奴はとんでもないモノを盗んでいった…………キミの、家族だ……」

 それはリインフォースと、彼女が持っていた【あらし】の記憶という、二重の意味。
 つまりクロノは、二人の家族が盗まれたと言いたかったのだ。
 しかし当人たちにとっては、あらしの記憶などなく、祝福の風が奪われたのみ。よって……。

「何、当たり前のこと言っとるんや!?さっさと追えっちゅうに!!」

 八神家の主に怒られたのは、至極当然のことだった。














 あとがき

 >誤字訂正


 俊さん。毎度ご指摘いただき、本当にありがとうございます!





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