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No.8085の一覧
[0] リリカル・とらいあんぐる転生日記  【完結しました】[satuki](2009/11/06 10:47)
[1] リリカル・とらいあんぐる転生日記 00[satuki](2009/06/19 17:02)
[2] リリカル・とらいあんぐる転生日記 01[satuki](2009/06/19 17:02)
[3] リリカル・とらいあんぐる転生日記 02[satuki](2009/06/19 17:02)
[4] リリカル・とらいあんぐる転生日記 03[satuki](2009/06/19 17:02)
[5] リリカル・とらいあんぐる転生日記 04[satuki](2009/06/19 17:02)
[6] リリカル・とらいあんぐる転生日記 05[satuki](2009/06/19 17:02)
[7] リリカル・とらいあんぐる転生日記 06[satuki](2009/06/19 17:03)
[8] リリカル・とらいあんぐる転生日記 07[satuki](2009/06/19 17:03)
[9] リリカル・とらいあんぐる転生日記 08[satuki](2009/06/19 17:03)
[10] リリカル・とらいあんぐる転生日記 09[satuki](2009/06/19 17:01)
[11] リリカル・とらいあんぐる転生日記 10[satuki](2009/06/19 17:01)
[12] リリカル・とらいあんぐる転生日記 11[satuki](2009/06/19 17:01)
[13] リリカル・とらいあんぐる転生日記 12[satuki](2009/06/19 17:01)
[14] リリカル・とらいあんぐる転生日記 13[satuki](2009/06/19 17:01)
[15] リリカル・とらいあんぐる転生日記 14[satuki](2009/06/19 17:00)
[16] 元ネタ帳(00~14)[satuki](2009/04/30 21:34)
[17] リリカル・とらいあんぐる転生日記 15【前編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[18] リリカル・とらいあんぐる転生日記 16【後編】[satuki](2009/06/19 00:04)
[19] リリカル・とらいあんぐる転生日記 17[satuki](2009/06/19 00:04)
[20] リリカル・とらいあんぐる転生日記 18[satuki](2009/06/19 00:03)
[21] リリカル・とらいあんぐる転生日記 19[satuki](2009/06/19 00:03)
[22] リリカル・とらいあんぐる転生日記 20[satuki](2009/06/19 00:03)
[23] リリカル・とらいあんぐる転生日記 21[satuki](2009/06/19 00:02)
[24] リリカル・とらいあんぐる転生日記 22[satuki](2009/06/19 00:02)
[25] リリカル・とらいあんぐる転生日記 23[satuki](2009/06/19 00:02)
[26] リリカル・とらいあんぐる転生日記 24[satuki](2009/06/19 00:01)
[27] リリカル・とらいあんぐる転生日記 25[satuki](2009/06/19 00:01)
[28] リリカル・とらいあんぐる転生日記 26[satuki](2009/06/19 00:01)
[29] リリカル・とらいあんぐる転生日記 27[satuki](2009/06/19 00:01)
[30] リリカル・とらいあんぐる転生日記 28[satuki](2009/06/19 00:00)
[31] リリカル・とらいあんぐる転生日記 29[satuki](2009/06/19 00:00)
[32] リリカル・とらいあんぐる転生日記 30[satuki](2009/06/19 00:00)
[33] リリカル・とらいあんぐる転生日記 31[satuki](2009/06/19 00:00)
[34] リリカル・とらいあんぐる転生日記 32【注:糖分過多】[satuki](2009/06/18 23:59)
[35] リリカル・とらいあんぐる転生日記 33[satuki](2009/06/18 23:59)
[36] リリカル・とらいあんぐる転生日記 34[satuki](2009/06/18 23:59)
[37] リリカル・とらいあんぐる転生日記 35[satuki](2009/06/18 23:59)
[38] リリカル・とらいあんぐる転生日記 36[satuki](2009/06/18 23:59)
[39] リリカル・とらいあんぐる転生日記 37[satuki](2009/06/18 23:58)
[40] リリカル・とらいあんぐる転生日記 38【少年編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[41] リリカル・とらいあんぐる転生日記 39【歯車戦士編】[satuki](2009/06/18 23:58)
[42] リリカル・とらいあんぐる転生日記 40【大将と愉快な仲間たち①】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[43] リリカル・とらいあんぐる転生日記 41【大将と愉快な仲間たち②】(分割しました)[satuki](2009/06/18 23:58)
[44] リリカル・とらいあんぐる転生日記 42【歪んだ物語・その修正方法】[satuki](2009/06/18 23:57)
[45] 【オヤジ】狩り[satuki](2009/06/05 17:07)
[46] 【オヤジ】狩り-01  【続いた。続いてしまった】[satuki](2009/05/18 23:29)
[47] 【オヤジ】狩り-02  【また続いてしまった】[satuki](2009/05/26 20:02)
[48] 【オヤジ】狩り-03  【またまた、続いてしまった……】[satuki](2009/06/02 01:26)
[49] 【オヤジ】狩り-04  【狩るべきオヤジは、まだまだ存在するのだ!!】[satuki](2009/06/07 19:31)
[50] 【オヤジ】狩り-05  【アンリミティッド・オヤジワークス……ソレは地獄絵図でしかないな……?】[satuki](2009/06/29 21:16)
[51] 【オヤジ】狩り-06  【覇王少女のファンには、彼女が女神に見えるらしい……視力検査したら?】[satuki](2009/06/09 18:10)
[52] 【オヤジ】狩り-07  【イロモノはイロモノを呼ぶ…………奇跡の開幕!?】[satuki](2009/06/11 20:03)
[53] 【オヤジ】狩り-08  【奇跡は続く!?遅れてきた漢……!!】[satuki](2009/06/18 23:39)
[54] 【オヤジ】狩り-09  【漢女と乙女……オトメ同士の決闘!】[satuki](2009/06/19 17:00)
[55] 【オヤジ】狩り-10  【死亡フラグをブチ折ったモノ……!】[satuki](2009/06/20 00:19)
[56] 妖精00 【良く考えたら、コレが全ての始まりなのかもしれないなぁ……?】[satuki](2009/06/05 16:52)
[57] 妖精01 【妖精爆弾……じゃなかった。爆誕!!】[satuki](2009/06/05 16:52)
[58] 妖精02 【やって来たのは運命にかぶれたロリジャイと、その家族】[satuki](2009/06/05 16:53)
[59] 妖精03 【蝶人になった日】[satuki](2009/06/07 19:32)
[60] 妖精04 【淫獣殲滅作戦――全ては清い【なのちゃん】のために】[satuki](2009/06/10 00:10)
[61] 妖精05 【遠足。それは至上最強の闘い!?】[satuki](2009/06/20 00:20)
[62] 妖精06 【掟破り!?……覇王の蘇る日!】[satuki](2009/06/27 20:12)
[63] 真・転生日記【オヤジ】風味 ――『妖精は覇王の夢を見る!』 01[satuki](2009/06/29 21:17)
[64] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 02  【復活したイレギュラー】[satuki](2009/06/29 21:25)
[65] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 03  【お約束は突然に】[satuki](2009/07/03 18:58)
[66] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 04  【突撃、となりの小学校!?】[satuki](2009/07/12 18:30)
[67] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 05  【誕生!?養護教諭プレシあ!?】[satuki](2009/07/14 20:13)
[68] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 06  【予定とは、乱される為にあるのだ!】[satuki](2009/07/16 21:43)
[69] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 07  【イレギュラー戦隊、参る!!】[satuki](2009/07/24 16:48)
[70] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 08  【仮面対仮面(オマケ付き)】[satuki](2009/07/27 16:53)
[71] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 09  【隣の市は危険がいっぱい!?】[satuki](2009/07/31 21:08)
[72] デザイア!?[satuki](2009/08/02 16:08)
[73] リリカル・とらいあんぐる転生日記 43【本筋は、忘れた頃にやって来る】[satuki](2009/08/04 23:55)
[74] デザイア!? 02[satuki](2009/09/04 19:03)
[75] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 10  【近付いてくる真相!?】[satuki](2009/09/04 19:04)
[76] デザイア!? 03 【女(装)王、誕生】[satuki](2009/09/07 02:14)
[77] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 11  【混沌の始まり】[satuki](2009/09/13 12:20)
[78] 真・転生日記【オヤジ】風味 (以下略) 12  【長い伏線(その一)】[satuki](2009/09/18 00:37)
[79] リリカル・とらいあんぐる転生日記 44【長い伏線(そのニ)】[satuki](2009/09/19 19:34)
[80] リリカル・とらいあんぐる転生日記 45【アインヘリアル?何それ、美味しいの?】[satuki](2009/09/25 21:50)
[81] リリカル・とらいあんぐる転生日記 46【少しだけ本気を出した。後悔はしている】[satuki](2009/09/27 21:52)
[82] リリカル・とらいあんぐる転生日記 47【もう少し本気を出してみた。さらに後悔している】[satuki](2009/10/02 21:46)
[83] リリカル・とらいあんぐる転生日記 48【ついに登場、最高評議会!?】[satuki](2009/10/09 11:11)
[84] リリカル・とらいあんぐる転生日記 49【三人目は…・・・グハッ!?】[satuki](2009/10/11 22:41)
[85] リリカル・とらいあんぐる転生日記 50【歯車戦士、愛の決闘】[satuki](2009/10/16 18:38)
[86] リリカル・とらいあんぐる転生日記 51【人生は闘いだ!!】[satuki](2009/10/17 21:59)
[87] リリカル・とらいあんぐる転生日記 52【魔神の生まれちゃった日】[satuki](2009/10/22 22:08)
[88] リリカル・とらいあんぐる転生日記 53【アニキ+ナイスミドル=???】[satuki](2009/10/27 16:33)
[89] リリカル・とらいあんぐる転生日記 54【変形する揺り籠!?至上最悪の悪魔の登場!!】[satuki](2009/11/06 10:46)
[90] リリカル・とらいあんぐる転生日記 55【ラスト・ラストをキミに……】[satuki](2009/11/06 10:47)
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[8085] リリカル・とらいあんぐる転生日記 55【ラスト・ラストをキミに……】
Name: satuki◆f87da826 ID:8181284b 前を表示する
Date: 2009/11/06 10:47



 前回のあらすじ:遂に登場、超根性最強ロボ。



 終わった。
 ようやく終わった。
 え?前回の冒頭とそっくりだって?

 大丈夫!今回の【終わった】は、安心的な意味での【終わった】だから♪
 決して【○○終了のお知らせ】とかではないので、どうぞご安心下さいませ。

「(これで……あとはボクだけか)」

 クイーンは居ない。
 そして他の【最初の】シャッフルも、既にこの世には存在しない。
 だから――あとは本当に、自分だけという状況なのである。

「(いつ、【堕ち】ようかなぁ……?)」

 三次元人の二次元人化。
 既に手段は出来ている。
 異物は排除されなければならない。

 強すぎる力は、災いを呼ぶ。
 それは今回のクイーン暴走事件で、イヤと言う程証明された。
 もう人間は――人間【たち】は、自分たちの手を離れた。

 良い機会だ。
 これを【最後】にしよう。
 もう【三次元人】は終わりだ。次からは――今回の【途中】からは、ただの二次元人として生きて……そして死のう。

 未練がない訳ではない。
 しかしそれ以上に、妹や仲間との日々が大切だった。
 だから生きる。自らを【堕として】。

「……シズカ。本局がデビルギャンダムを回収するそうだ……」

 現在地は地上本部の会議室。
 そして今の発言は、議長であるレジアスから漏れたモノ。

「ハァ!?ちょ、ちょっと待って!?いくらもう壊れたと言っても、【アレ】は危険すぎる代物なんだよ!?」
「あぁ、それはオレも分かっている。しかし【アレ】の構造やデータは、これからの発展に必要不可欠とか言って、開発部門が煩いらしい」

 レジアスの説明を、ボクは呆れながら聞いていた。
 確かに科学者というモノは、得てしてそういうトコロがある。
 それは知識欲にも似ている。

 しかし大抵の場合、未知のテクノロジーを解析しようすると――待っているのは【暴走】か【大失敗】だ。
 そしてそれが引き金になり、さらなる異常事態が……って考えたくなぁぁい!

「つまりアレか?ボクに監督として付いて行けと?」
「……妹さんがあんな状況で、お前には申し訳ないと思うのだが……」

 すずかの側にいてやりたい。
 それは心からの願いだった。
 今度こそ新たなスタートを切る為に、妹の目覚めに立ち会う。そんで一番に【おはよう】と言ってやる。

 ちっぽけだけと、とても大切なこと。
 でもそれは……どうやら今回も、出来そうにない。

「わかってるよ。ボク以外に、【アレ】を理解出来るモノは居ないからねぇ……?」
「…………済まない」

 これはボクにしか出来ない。
 だから自分がやるしかない。
 わかってる。わかってはいるのだが……それでも悔しい。

「カリム」

 この会議には、現役将校は殆ど揃っている。
 だからボクの隣にカリムが居るのは、ある意味当然のこと。

「すずかのこと、頼んだよ?」
「……ハイ。お任せ下さい」

 【あんなこと】があったばかりだというのに、カリムはコチラのお願いを聞いてくれた。
 責任感が強いのも確かだろう。
 しかし今のカリムは、何かそれ以上の感情が感じられるような。

「うん。悪いけど……頼むね?」

 だけど聞けない。
 分からないけど、聞いてはいけない気がする。
 何かこう、ボクには理解出来ていない感情な気がするから。

「あ、そうだ。カリム、帰ってきたら話があるとか言ってたけど……何のこと?」

 ずっとシリアスムードが続いたせいか、カリムに言われてたことをすっかり忘れていた。
 もう帰ってきたんだし、何の話か聞かせてもらっても良いだろう。

「エ……!?そ、それはそのぉ……」

 何だ、この生物は?
 騎士カリムが、まるで【思春期御嬢】みたいに変態しているではないか。
 何を思ったのかは不明だが、身体をくねらせて頬を紅く染めている姿は……正直別の生き物に見える。

「……シズカ、察してやれ」
「鈍いわねぇ、シズカさんは?」
「執務官長……鈍いと言われた、自分でも分かりますよ?」

 レジアス、リンディ。そしてクライド。
 三人の波状攻撃が、ボクに――【静香】に突き刺さる。
 ジェットストリーム的な攻撃ですか。なら……踏み台にしてやる!!

「やかまし。散々リンディ嬢を梃子摺らせて泣かせた、クライド少年には言われたくないよねぇ?」
「……申し訳ありません!調子に乗りすぎましたー!!」

 ドーンと黒い影を背負うクライド少年。
 キミたちの仲を取り持ってやったの、誰だか忘れてないよね?

「な、何でもないんです!?後日でも良い用件なので!!」
「そう?なら別に良いんだけど……」

 珍しく慌てた様子のカリム。
 最近、【東方腐敗なカリム】や、今のように取り乱したカリムを見るが……何か、今までの印象が変わってきているなぁ。
 悪い訳ではないんだけど、純粋に驚く。ただそんな感じ。

「まぁ、なるべくはやく用事を済ませてくるから、すずかをヨロシクねぇ?」

 こうしてボクは、本局の艦船と共に本局へ向かった。
 デビルギャンダムの残骸という、厄介なおまけ付きで。
 そしてコレが、新たな――本当の意味での【最後の事件】になるとは、想像もしないで。






















「はじめまして、月村提督!自分は【マリエル・アテンザ】技術主任であります!」
「どもども。はじめまして、【月村静香】です」

 元祖メガネっ子が出現した。
 MAD。MADだ。
 酢飯娘を越えるマッドが、今目の前に存在している。

「……で。キミたちが、【アレ】を研究したいと言い出したのかい?」
「ハイ!確かに危険な兵器だとは思います。しかしそこからフィードバック出来ることは、きっと今後の為にも……」

 予想通り。
 全く予想通りなだけに、却ってつまらない。
 まぁこういうのに、【オモシロさ】を求めてはいけないんだけどね?

「本当は許可したくない。【アレ】は人の手に負える代物じゃ、ないからねぇ……?」

 ロストロギアの危険度が、マックス【以上】の危険度。
 下手をすれば次元震では済まないだろう。
 まさしく【ミッド崩壊のお報せ】に為りかねない。

「しかし。既に許可が下りている以上、そうも言ってられない。だからキミたちは、ボクの指示に従うこと」

 だが危険を恐れて、【別の危険】を呼び出す可能性も高い。
 だったら自分が管理し、その下で作業をした方が百倍マシなのだ。

「ハ、ハイ!!」

 流石に常に上官が監視する中、余計なことはしないだろう。
 結果的にボクの目論見は成功した。
 しかし、それ以外の【アクシデント】を見抜けなかったのは、やはり自分の責任なのだろう。

「それじゃあ、作業を開始する!」
「「「「了解!」」」」

 マリー嬢の部下数名と、彼女自身が動き出す。

「先ずはケーブルを接続。でも絶対に、電力ケーブルは繋がないこと!」
「ハイ!」

 電力はもっとも都合の良いエネルギー源だ。
 逆に言えば、それだけ危険を孕んでいるとも言える。
 だから、絶対に繋がない。

「次にデータの吸出し。この時微量だけど電力が流れるから、内部の熱反応に気を配って!」
「分かりました!!」

 次々と収集されていくデータ。
 確かにこれらのデータには、危険を冒しても手に入れる価値があるだろう。
 次世代はおろか、数世代は先の技術。

 これがあれば、ヒトはさらに先に進める。
 今までは救えなかった人たちが、救えるようにもなる。
 だけど……それは同時に、傷付かなくて良かった人たちが傷付くことにもなる。

「(わかってるさ。矛盾だってことは……)」

 この段階に人間が【自ら】来たのなら、文句はない。
 だが今回は、そうではない。
 だから……何かが起こる。すぐ先かもしれないし、数年後……もしかしたら数十年後かもしれないが。

 ヒトは罰を受ける。
 自らの手に余るものを【借りた】ことで。
 それは虎の威を借る狐であり、その報いはいつか受けることになるだろう。

「(……ま。そうならないように、ボクが気を配らないとね……?)」

 クイーンの残した痕は、兄である自分が背負い、そして癒していく。
 兄妹って、そういうモンだしね?

「(……って、イカンイカン。どうも真面目すぎるよなぁ……?)」

 こんなの、ボクのキャラじゃない。
 もっとかる~く。そして飄々と。
 これがボクの本性でしょうに?

「提督!これより最終フェーズに入ります!!」
「了解、了解。始めちゃってー」

 最後まで油断は出来ないけど、これなら大丈夫そうだ。
 九十八、九十九……百パーセント。
 作業は終了した。さーて、とりあえず一服しますかぁ。



 ――バンッ!!



「停電!?」

 作業が終了した、その瞬間。全ての電子機器がストップした。
 照明は非常灯を残して全滅。
 PCも全てディスプレイがブラックアウトし、本体の方も停止する。
 
「……イヤ~な、予感がする……」

 どう見てもコレは、良い感じがしない。
 むしろ嫌なことが起きる前兆にしか思えない。
 それ以外に思える奴が居るのなら、そいつの脳みそはさぞかし幸せな構造をしているのだろう。



 ――ブゥゥゥゥン



 何かが起動した。
 その駆動音が聞こえる。
 最初は極小さく。しかし次第に大きくなっていき……最後には騒音となっていた。

「まさか!?ラインから電力を吸い上げてるのか!?」

 最悪が起きた。
 在り得ないなんてことは、在り得ない。
 この言葉を考えた奴は、きっと天才だったのだろう。

 万難を排しても、在り得ないことは在り得たのだ。
 その実例が今――ボクたちの目の前に居る。

「デビルギャンダム、再起動……ってか?」

 ロボットの頭部アイカメラに光が灯り、どう考えても暴走フラグが入りました。
 こぇぇぇ!?
 生物的な感じが、尚恐怖心を増長させるではないか。

 すっかり忘れていたが、コイツには【自己増殖】や【自己進化】という、恐ろしい機能があったのだ。
 それは使い、状況に対応。
 【死んだフリ】をして機会を窺い、そして好機を逃さないと。……我が妹ながら、何てトンでもないモノを創ってくれたんだよ、クイーンさん!?

「皆、急いで避難して!!あと館内に避難警報を!!急いで!時間がないんだ!!」
「「「「……りょ、了解!!」」」」

 皆を避難させる。
 この復元――いや。【進化】の具合なら、あと三十分は保つ。
 その間に自分は――ボクは少しでも、その時間を遅らせるように頑張らなければ。

「提督もはやく避難してください!!」
「ムリムリ!責任者は、最後に逃げるものだし……ボクにはやらなければならないことが、あるんだから……!!」

 マリー嬢の言葉は聞けない。
 だってこれは、ボクの責任だから。
 だから彼女たちには、【強制的】に退出してもらう。

「て、転送魔法!?提督、お止め下さい!!」
「良いの、良いの。責任者は責任を取る為に存在するの。それに簡単にやられるつもりはないから……ボクが無事な内に、はやく助けにきておくれよ?」
「て、提督――――!?」

 転送魔法の光を残し、ボクを除いた全ての人間がココから消えた。
 扉を内側からロックする。
 これで外からは、誰も通れなくなった。

「さぁて……ガマン比べと、いきますかぁ♪」

 ウィルスを作成したり、ロジックモードを変更したり。
 やってみたいことは、山ほど存在する。
 往くぞ、悪魔王よ。エネルギーの貯蔵は十分か?――――なんつって。







 二時間後。

「……パチラッシュ、もうボクは眠いよ……?」

 限界が訪れた。
 全ての局員が避難し、そして結構距離を離すまでは頑張れたけど、根本の解決は無理だった。
 ゴメンね、クイーン。不甲斐無い兄を許しておくれ……?



 ギュオォォォォン!!



 あ、ぶっといケーブルが。
 数え切れない程無数の太すぎるケーブルが、ボクを捕らえにやって来ました。
 おーい、ボクは美味しくないぞぉ?

 それにこういうのは、本来美少女ヒロインがやるもんでしょう?
 何コレ?最後の最後に来て、まさかのどんでん返し?
 実は【月村静香】は、ヒロインだったのですか!?

 驚愕過ぎるぞ、その新事実は!?
 ……在り得ない。
 まじありえなぁぁぁぁい!?

《オレサマ、オマエ、マルカジリ……》

 悪魔がコミュニケーションをとってきました。
 しかしその内容は、どう考えても友好的ではありません。

《イタダキ、マス……》

 ここまで来たら、言うコトは一つしかない。

「……優しく、してね……?」

 そう言い終わると、ボクの意識はそこでプッツリと落ちた。













 場面は変わり、そして主役も変わる。
 ここから先の主演は、【三次元人:月村静香】ではない。
 【二次元人:カリム・グラシア】。彼女が、彼女こそが【主役】となるのだ。

「すずかさん……まだ目が覚めないんですね」

 場所は時空管理局地上本部――内の医療棟。
 そこに収容されたすずかの病室に、カリム・グアラシアは居た。
 時折花を活けたりする以外は、ずっとベッドサイドの椅子に座り続けている彼女。

 ベッドに横たわる少女――月村すずかが目覚めるまで、彼女はそうし続けるつもりなのだろう。
 それは約束だから。
 そして――約束がなくても、最初からそのつもりだったから。

「……フゥ」

 この少女があの【クイーン】と同一の存在だとは、未だに理解しきれない。
 例え以前、【ヤンデレ】モードのすずかを見ていたとしても。
 それが騎士カリムの偽らざる本音だった。


 ――バン!



 病室の扉が、勢い良く開け放たれる。
 次いで入ってきたのは、カリムが良く知る少女だった。

「カリム、あかん!!マズイ事態になってもうた!!」

 八神はやて二等陸佐。
 カリムにとっては妹のような存在にして、つい先日までカリムたちが居た【機動六課】の長である。

「どうしたの、はやて?ココは病室よ?そんなに騒ぐ程のことが「あったんや!!」……わかったわ、外に出ましょう」

 病室を出る。
 はやての言う【マズイ事態】とやらの、詳細を聞く為に。
 そこに居たのは、既に【上に立つもの】としてのカリム・グラシアだった。

「…………ぁれ、ココは……ドコ……?」

 だから彼女は気が付かなかった。
 眠り姫の目覚めの声を。
 カリム自身に喝を入れる、眠り姫の覚醒の瞬間を。



「それで?何が起きたと言うの……?」
「説明するより、見た方がはやいわ!!」
「ちょ、ちょっと!はやて!?」

 はやてに引き摺られるようにして、カリムは同フロアのパブリックスペースに連れて来られる。
 そこにはソファーやTVがあり、入院患者と見舞いの客が談話出来るようになっていた。
 その中央に位置する場所で――件のTVが、大音量で臨時ニュースを伝えていた。

《……の予定を変更して、【時空管理局本局】の事件について報道致します!!》

 TVから聞こえた単語、【時空管理局本局】。
 それは今まさに、【静香】がいる場所ではないか。
 何が起きたというのだ?一体、どんな【マズイ事態】が起きたと言うのだ?



《現在判明していることは、先日ミッドチルダに出現した巨大ロボットを回収・収容した本局が数時間後、突如としてその姿を変貌させていったことです!!》



「!?」



《ご存知の通り、本局は次元空間に浮かぶ【超巨大次元航行艦】です。しかしその姿は今、別の【生物】のように変化しています!》



「はやて……これって、まさか……」
「……たぶんな」



《尚殆どの人間は避難が終了していますが、ロボット回収任務の責任者【月村静香】准将のみ、内部に残っている状態です……》



「……ウソ」



《准将の下で作業をしていた局員の話では、異常事態が起こると准将は皆を早急に避難させ、そして自分は避難時間を稼ぐ為に中に残ったそうです……」



「ウソ、でしょう……?」



《あ!!御覧下さい!!本局がさらに変形していきます!!コレは……まるで超巨大な【ロボット】のようだぁぁぁぁ!?》



 変形。
 ……いや。ココまで来ると、変貌や【進化】という方が相応しくなっていく。
 本局サイズのロボット。羽のようなモノが付き、巨大な顔の上には更に小型のロボットの上半身があった。

 色は違う。
 デザインだって全然違う。
 悪魔というより天使的なリファインが加えられているので、その差は歴然だ。

 ……でも。
 それでも変わらない事実がある。
 【アレ】は知っている存在だ。そうとしか思えない。

「デビル……ギャンダム」

 悪魔の再来、であった。













「……落ち着いたか、カリム?」
「……えぇ。もう、大丈夫よ……」

 顔面は蒼白。
 手の震えは健在。
 しかし本人ははやてからの問いに、気丈にも大丈夫だと言う。

 これは彼女の責任感の強さの表れだろう。
 教会の上位騎士として。そして管理局では中将として、人の上に立ってきた彼女。
 それは逆を返せば、そんな立場がなければ――本来のカリム・グラシアは、非常に脆い存在だということだ。

「本当に大丈夫なんか……?」
「……えぇ」
「……なら管理局側の対策を伝えるわ。変貌した本局――仮に【デビル本局】と命名するけど、そのデビル本局を数十発の【アルカンシェル】で殲滅する予定や……」
「せん、めつ……?」
「ちなみ発案者は――――三提督や」

 目の前が真っ暗になった。
 後日カリム・グラシアは、この時の様子をそう語る。
 まさに光が消えた瞬間だと。彼女にはそう感じられたと。

「……カリム・グラシアです!三提督の方々に、すぐに繋いで!!」
「カ、カリム……!?」

 しかし光がなくなっても、彼女はすぐに先に進んだ。
 強い……訳ではない。
 ただ一秒でも、ジッとしていられなくなっただけだ。

《……そろそろ、連絡が来ると思っていたわ》

 接続された先は、三提督の一人【ミゼット・クローベル】本局統幕議長の端末。
 そこには人の良い婆ではなく、老獪な提督の姿があった。

「お久しぶりです、ミゼット・クローベル統幕議長……」
《無駄なやり取りは止めましょう。それで貴女は……何を聞きにきたの?》
「……では率直にお聞きします。アルカンシェル数十発を使い、変貌した本局を滅するというのは……」
《本当よ》

 アッサリと。
 本当にあっさりと、その疑問は肯定されてしまった。

「そんな!?あの中には、まだシズカさんが残っているんですよ!?」
《冷静になりなさい、グラシア中将。一人の命とそれ以外の数多の命。優先するのならどちらか――――簡単な答えです》
「ですが!!」

 分かっている。
 理解している。
 だが。だが……感情が納得出来ていない!

《これは決定事項です。本日二十三時、整備を終えた艦船は順次本局に向かい……そして任務を実行します》
「「!!?」」

 はやい。
 予想よりもはやい動きだ。
 確かに一刻を争う事態だけど、はやくても明日になると思っていたのに!

《なお、この任務にはゲイズ・ハラオウン・グラシア・ナカジマが関わることを禁止します。意味は……言わなくても分かりますよね……?》

 その意味は、任務妨害を防ぐ為。
 ……やられた。
 これでは、本当に……為す術がない。

《そもそも、貴女が彼を救おうとするのは何故ですか?彼が創ったモノたちが素晴らしいから?彼という頭脳が惜しいから?それとも……?》
「…………それ、は……」

 言いたいことがある。
 まだ言っていないことがある。
 だから、いなくなられたら困る。まだ……想いを伝えていないのだから。

《ストップ。それを言う相手は、私ではないでしょう?》
「……ミゼット、提督……」

 もうそこに居たのは、いつもの人の好い老婆だった。
 本当に【狸】であることも含めて、いつものミゼット・クローベルだった。

《……実行は、今日の二十三時から。この意味……分かるわよね?》
「!?…………ハイッ!!」
《それじゃ今度会う時は【みんな】でお茶会をしましょうね♪》
「ハイ!!」

 通信が途切れる。
 今度こそ真意を悟った。
 ならば次は、動く番だ。

「すずかさんにも報告、していかないと……」

 未だ眠る姫君にも、一応報告していく。
 そこには親愛なる兄を略奪するからか、それともライバルとしての宣戦布告か。
 その内容は、カリム自身にもイマイチ分かっていなかった。

「……その必要は、ありませんよ?」

 振り返る。
 するとそこに居たのは、カリムが想いを伝えに行く相手――に瓜二つの少女が居た。
 白と翠が交じり合ったような色の入院着。しかし中身は、今目覚めたばかりとは思えない程凛とした状態だった。

「すずかさん……目が覚めたんですね!?すぐに医師を手配し「違うでしょう?カリムさんは、私に何か言いたいことがあったんでしょう?」そ、それは……」

 遮られた。
 そして言われてしまった。

「私なら大丈夫です。だから貴女は、言いたいことを言って下さい。時間……無いんでしょう?」

 その通りだ。
 こうしている間にも、砂時計の砂は落ち続ける。
 無駄には出来ない。この一瞬すらも、無駄には出来ないのだ。

「……わかりました。ですが、ショックで倒れたりしないで下さいよ?」
「心配ありません。こう見えて私、結構強いんですよ?それは……カリムさんなら、一番理解していると思うんですけど」
「……そうですね。そう、でしたよね……?」

 一息入れる。
 そして……宣言する。

「すずかさん。私【カリム・グラシア】は、貴女のお兄さんを――【月村静香】さんに告白してきます!」
「はい」
「上手く行けば、私は貴女は義姉ですよ?それでも良いのですか……?」
「……仕方がありません。そうなった場合は、貴女で【妥協】してあげますよ」

 強かだ。
 本当に女性というのは、誰もが強い存在なのだ。

「【妥協】、感謝しますね?」
「まだ決まった訳じゃありませんから。感謝するのは、ちゃんと決まってからにしてくれません?」
「……残念です。貴女となら、きっと良い友人関係が築けると思ったのに……」
「そうですね。お兄ちゃんが貴女を振ったら、きっと残念会で仲良くなれると思いますよ?」

 残念だ。
 こんなにも会話が弾むのに……。
 本当に残念だ。

「……言ってきます」
「言ってらっしゃい」

 【行ってきます】ではなく、【言ってきます】。
 中々に洒落た言い回しだ。

「では……」
「あ、カリムさん。ちょっと……」
「え……?」



 ――パァァァァン!



 スナップの効いた、良い音が炸裂する。
 それを生み出したのは、すずかの【右手】。
 それがヒットしたのは、カリムの【左頬】。

「……気合を入れました。これで全部チャラですよ?」
「……確かに。気合、入れてもらいました」

 すずかの脚から力が抜ける。
 その場に膝から倒れ、立膝の状態になってしまう。

「はやて!すずかさんをお願い!!」
「了解や。すずかちゃんのことは、【親友】に任せとき♪」

 素早くすずかの脇に回り、支えるはやて。
 流石に【親友】と名乗るだけのことはある。

「あと貴女の【隊舎】……借りるわね?」

 【隊舎】とは文字通りだ。
 より正確に言うのなら、隊舎が【変形】したものを借りるという意味だが。

「ハァ……。出来るだけ無傷で返して欲しいんやけど……ま、しゃーないか」
「ありがとう!それじゃ!!」

 妹分からのOKを貰い、カリムは駆ける。
 彼女も務めていた妹分の城――機動六課へと。
 切り札の眠る、自分にとっても大事な場所へと。






「……遅かったではないか、騎士カリム」
「皆さん……どうして?」

 機動六課の司令室。
 カリムがそこに辿り着いた時には、既に【全員】が集結していた。

「アイツには借りばかりだからな。ここらで返しておかないと、利子が膨らむばかりだ」

 ゼスト・グランガイツ。

「不本意だけど、今の私が在るのは【シズカ】のお陰だし……」

 プレシア・テスタロッサ。

「右に同じ。主はやての成長を見守れるのは、【不本意】だが奴のお陰だ」

 リインフォース。

「ウチの家族にとってシズカは、大事な友人だ。結婚式のこと然り、クイントとギンガのこと然りな?」

 ゲンヤ・ナカジマ。

「文字通り【命の恩人】ですから、執務官長は。ですから今度は、コチラが助けになる番なんですよ」
「そうよ?クライドを私の許へ帰してくれたお礼は、まだ出来てませんから♪」

 クライド、リンディの両ハラオウン。

「……決まっている。我々の目指す平和とは、シズカを犠牲にしたモノではないからだ!」

 そして……レジアス・ゲイズ。

「皆さん……!!」

 目頭が熱い。
 カリム・グラシアは、階級や部署を超えた友人たちの心遣いに、感謝するしかなかった。

「さぁ騎士カリム、出発の号令を……!」
「……ハイ!!」

 涙を拭う。
 そして自分に喝を入れ直す。
 気合は十分。あとは――宣言するのみだ。

「これより我々【ダイノーズ】は、本局を乗っ取ったデビルギャンダムを破壊し……そして【月村静香】の救助活動を行います!!」
「「「「「「「了解!!」」」」」」」



 ――ヴィィィィン、ドォォォォンッ!!



 ジェット機二機が隊舎直上に舞い上がり、そして空中で合体する。
 最初から合体しておくことで、総合的な推力を高める計算なのだ。

「……アラ?コレ、何かしら?」

 リンディのコンソールに、光るボタンが一つ。
 今までの経験則からすると、新たな【何か】が起動する合図だ。
 こんな場面で起動するモノとは、一体何なんだろうか?

「……押しましょう」

 好奇心に負けた。
 そしてどんなネタが仕掛けてあるかが、明かされる。



 ――ヴォォォォォォン!!



「「「「「「「ハァァァァァァァァ!?」」」」」」」

 流石に度肝を抜かれた。
 それは様々な非常事態に慣れている、この面子ですら予想も出来なかった【非常事態】。

 既に予備パーツが出ていた隊舎。
 それらに分割線が入っていき、そして宙に浮かんでいく。
 これで正真正銘、隊舎のあとは更地となった。



 ――キィィィィン!ガッキィィィィン!!



 腕に。
 脚に。
 胴体に。

 そして……頭に。
 隊舎予備パーツは、全てキングゴウダイノーの鎧へと変化した。



 【超根性最強ロボ:キドウロッカー】



 コンソールに出た文字が、全てを物語っていた。
 つまりこれはアレだ。
 はやての隊舎を全て使った、文字通り【機動六課】なのである。

「それでは【キドウロッカー】、全員まとめて――発進!!」

 あらゆる事態を乗り越えてきた面子は、不測の事態であろうとノリで越えていく。
 実に素晴らしい環境適応だ。【進化】とも言えるが。
 なお、この時【全員】に含まれなかった部隊長は、この時の映像を生で見ながらこう叫んだそうだ。

「あわわわ……!?わたしの隊舎は、一体どうなってしまうんやぁぁ!?」

 御後が宜しいようで。



































 エピローグ



「何処へ……行くんですか?」

 管理局をあとにして、自分の世界に帰ろうとする紫色の長髪。
 そんな【彼】に、後ろから声が掛かる。

「おや?天下の【大将】閣下が、こんなトコロで油を売ってて良いのかな?」

 あれから、ちょっとした騒動があって。
 独断専行した提督ズ+αは、全員が一階級降格。
 しかし直後に二階級の特進を果たし、カリム自身は【大将】となった。

 余談だがレジアス【元帥】は、崩壊した本局を地上本部と統合して再編した為、【今まで以上に】忙しい日々を送っているらしい。

「一応教会側からの出向組が、【あんなこと】を起こしてはダメでしょう?ですから責任を取って、管理局も聖王教会も辞めてきました」
「……もったいない。これからだって時に……」

 勿体無いと言いながらも、その声にそんな色は籠もっていない。
 どちらかと言えば、【あぁ、やっぱり……】という色が強く見られた。

「それで、質問には答えて貰えないんですか?」
「……妹を連れて、地球に【帰る】んだよ。今度こそ、間違わないように……ってね?」
「やっぱり、そうなんですね……」

 カリムから蒸気のようなモノが立ち昇る。
 最近すっかり見慣れたその光景は、彼女が体温が急激に上昇している証だった。

「どうして、言ってくれなかったんですか……?」
「……?何を?」

 不思議がる男。
 そんな男の様子に苛立ち、声を荒げるカリム。

「どうして、【自分に付いて来い!】って言ってくれなかったんですか!?」
「いや!それは、そのぉ……」

 男は言い淀む。
 「そんな恥ずかしいこと、言えるかよ……」とか漏れているが、そんなことは今更過ぎる。

「そんなこと、今更過ぎますよ。ほら、先日の【大告白大会】のことを思い返せば……」

 カリムはそう言うと、手元に持っていた端末から先日の記録映像を立ち上げる。






 次元空間に浮かぶ、デビル本局。
 その異様さと巨大さは、まさに神か悪魔かと言ったところ。
 射出される機動兵器を【キドウロッカー】が破壊・破壊・破壊していき、そして突貫していく。

 斬って、斬って、また斬って。
 デビル本局の内部に突入してから数時間後。
 まさに【ラスボスの間】らしき部屋に出た時、本当にラスボスが出現した。



 ――ヴォォォォォォォォンッ!!



 進化の最終型。
 デッカイロボットの顔の上に、小さなロボットの上半身がくっ付いたモノ。
 デビルギャンダムの中に、更に進化したデビルギャンダム。……まるでマトリョーシカのようだ。

「シズカさぁぁぁぁん!!お願い、話を聞いてぇぇぇぇぇ!!」

 ピタ。
 そんな擬音が聞こえてきそうな、デビルギャンダムの静止。
 ラスボスながら、実に律儀な奴だ。それさえしなければ、負けることもなかっただろうに。

「シズカさん、私言いましたよね……?帰ったら【言いたいこと】が有るって……」
《……》

 悪魔は静止し続ける。
 どう見ても突っ込みどころ満載なのだが、お約束を護っているのだろうか?

「私はご存知の通り、キング・オブ・ハートだったことを隠していたり、肉弾戦が出来ることを隠して【オンナらしい】ことに拘った、卑怯な人間です……」

 いや、あれは隠したくなるだろう。
 普通の感性をしていれば、それは当然の選択だと思うが。

「でも、今だけは感謝しているんです。いちいち【恥ずかしいこと】を絶叫出来る流派をやってきた事に――これから言う【恥ずかしいこと】を、絶叫出来る事に!!」
《……》

 絵図としては、デビルギャンダムを真正面に見据えたキングゴウダイノー。
 その掌には、騎士カリムの姿が。
 なお、この時点で【キドウロッカー】の装甲は全て破壊され尽くしており、ノーマルのキングゴウダイノーに戻っていた。

「私は、私は……!」
《……、……》

 徐々に。徐々に開いていく、デビルギャンダムの胸部ハッチ。
 空気読みすぎだ。
 ラスボスながら……。いや、ラスボス【だからこそ】、空気を読んでいるのかもしれない。

「貴方が好きでぇぇぇぇす!!貴方が欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 恥ずかしい。
 確かにコレは、恥ずかしい。
 管理世界【三大恥ずかしい告白】の、ぶっちぎりのトップにランクインしたというだけある――その恥ずかしさ。

「シズカさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 カリムの大告白。
 それを聞いたデビルギャンダムは、まるで【静香】を吐き出すように射出する。
 糖尿病はゴメンだと。これ以上の砂糖は要らないと、そう言わんばかりに。

「シズカさん!シズカさん!!」

 吐き出された【静香】を、宙に飛んでキャッチするカリム。
 身体能力が異常すぎる。
 流石は流派東方腐敗。

「……カリムさんや。これってもしかして……やらないとダメですか?」
「ハイ♪やらないとダメですよ♪」

 【静香】の意識が戻った時、前門にはカリム・グラシア。
 そして後門には、デビルギャンダムがいらっしゃった。
 これはアレか?空気を読むと……砂糖を吐くような展開に殉じろと?

「……わかった。やるよ、やれば良いんだろ!?」
「ご理解頂けて、嬉しいですわ♪」
 
 周囲が言っている。
 ラスボスですらも、その目が言っている。
 【空気を読め!!】――と。

「「二人のこの手が真っ赤に萌える!」」
「幸せ掴めと!」
「轟き叫ぶ!!」

 騎士カリムと両掌を合わせ、まるでダンスを踊っているかのような【静香】。
 ……男女逆転しているような気がするのは、きっと気のせいではない。

「「ばぁく熱!ゴッデス、フィンガァァァァ!!」」

 もしもココに冥王さまが居れば、「チャージなどさせるものか!」と突っ込んでくれただろう。
 だが生憎彼は居ない。
 よって、砂糖垂れ流しシーンは続く。

「責」
「破」
「「ラァヴラヴ――――天、驚ぉ、けぇぇぇぇぇぇん!!」」

 何か出た。
 二人の掌から、何かハート型の怪光線が出た。
 そしてその光線の上には、何故か初代キング・オブ・ハートが腕組んで乗っかっているではないか。

「「ヒート、エンド……」」

 ハート型の穴が空き、そしてデビルギャンダムは爆散した。
 ちなみこの一部始終は、キングゴウダイノーの外部カメラによって生中継されており……その視聴率は、歴史上最高の数値だったらしい。
 ……これじゃあ、ミッドに居づらくなる訳だ。






「思い、出して貰えましたか?」
「……忘れたくても、忘れられないよ。アレから、ミッドを歩く度に言われるんだよ?「告白のヒトだー!」って!?」
「フフ……。これでもう、全管理世界公認の恋人同士ですよ?」

 黒い。
 何か【既成事実】並に黒いよ!
 コレ、本当にカリム・グラシアなの!?

「……違うよ」
「え?」

 【静香】は否定する。
 カリムの言った【恋人】発言を。

「ボクたちは、【恋人同士】なんかじゃあ、ないんだよ……」
「……」

 だって【静香】はまだ、【返事】をしていない。
 なのに【恋人同士】はないだろう?
 当人を置いてけぼりにするのは、ダメでしょうに?

「……【今は】、ね?」
「エ……?」

 不意打ち。
 それは本来、【静香】のようなジョーカーがやることだ。
 正統派であるカリムにやらせることでは、断じてない。

「今度はコッチから言わせてもらうよ?……カリム・グラシアさん。ボクとの【婚約】を解消し――――【コレ】を受け取って下さい」
「コレって……?指、輪……?」

 ちゃんと給料三か月分ですよ?
 准将の給料なので、その凄さは押して知るべし。

「ボクと……【結婚】して下さい、カリムさんや?」
「ッ、……ッ!ハイ……ハイッ!!」

 ボロボロと涙を流しながら、カリムは了承する。【静香】からの【プロポーズ】を。

「そんじゃ、さっさと地球に「シズカァァァァ!!これから式だぞ!!準備は良いだろうなぁぁぁ!!」……って、何ですとぉぉぉぉ!?」

 【静香】のセリフは、突如乱入したレジアスによって遮られた。
 つーか今、レジアス元帥殿は何と言った?

「…………やられた」
「♪」

 全ては策士【カリム・グラシア】の掌だったということか。
 彼女は正統派【策士】だったようだ。

「(……でも良いか。コレだけ清々しいやられ方は、他にはあるだろうしね?)」

 【静香】の胸中は穏やかだった。
 まるで雲一つない、快晴のように。

「しゃーない。これからもヨロシク頼むね?……【ボクの】カリムさんや?」
「……ハイッ!!」

 この日。世界から一人の三次元人は消滅し、新たに二人の二次元人が誕生した。
 その名は【月村静香】と【月村カリム】。
 そして物語は、大人数を巻き込んだ【超恥ずかしい結婚式】に移行するのだった。




















               了



















 あとがき


 コレで終了です。
 本当に終了なんです。
 延々と九十話もお付き合いして方々、誠にありがとうございました!!

 特に殆どの話に誤字訂正&感想を付けて下さった【俊さん】には、感謝の言葉しかありません!
 本当にありがとうございます!!



 この物語の発想について>

 元々はネタでした。
 それも、ただの実験作のつもりだったんです。
 ですがレジアス中将(当時)を出したところから、変化が訪れました。

 みんな大好き、熱血オヤジ。
 サツキも最初は受け狙いに書いていただけでしたが、今は一番書くのが楽なくらいに愛着が湧いています(笑)。
 
 出来るだけネタを仕込んで、仕込んで。
 いくつか回収できなかったモノもありますが、これ以上にネタを放り込んだSSはないでしょう。多分ないと思います(苦笑)。
 全部のネタがわかる人は……多分satukiと友人になれます。嬉しくは、ないと思いますが(マテ)。


 最後になりましたが、今一度感謝の言葉を言わせて頂きたいと思います。



「本当に、ありがとうございました!!」



































「馬鹿者!!事件は会議室で起きているのではない!現場で起きているのだぁぁぁぁ!!」

 主演:レジアス・ゲイズ大将。

「レジアス……オレはこれから、現場に向かう。あとのことは……頼んだぞ」

 助演:ゼスト・グランガイツ。

「この事件は……また随分と【きな臭い】ことだなぁ……?」

 同じく助演:ゲンヤ・ナカジマ。

「このミッドチルダは――この次元世界は、【あのヒト】が護ったものです!!」

 客演:月村カリム(旧姓:カリム・グラシア)。

「さぁ……ゲームの始まりだぁ♪」

 謎の敵:????

「そんな!?オマエは……!?」
「久しぶりだねぇ、レジアス……?」

 物語は、かつて出会った二人が【再び】出会うことから始まる――。



 映画【真レジアス・ゲイズ――ミッドチルダ最期の日】



 新暦七十七年十二月二十四日、全次元【一億五千万】のシアターで、みんなのレジアス元帥が帰ってくる!!



「オレの正義は……オマエと共に在ったというのに!!」



 Coming soon!












 あとがきのあとがき

 ……済みません。調子にのって書いてしまいました(オイ)。
 どうかお許しを……(逃)。





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