前回のあらすじ:機動六課、様々な問題点を抱えて発足。 機動六課の隊舎から、こんにんちは。 現在食堂のチーフをやってる、月村静香……一応准将です。 結構な問題点を抱えたまま発進した機動六課ですが、今のところは順調です。 何でバレないんだよ!?と、突っ込みを入れたいヤツら数名。 彼らは極々普通に仕事をし、周囲からの評価も高いようです。 男性職員たちには金髪の寮母が癒しになるらしく、女性事務員たちには頼れるダンディな事務員が人気の模様。 ……何か間違っている。 でも現実には、ソレはスルーどころか歓迎されているのだ。 何だよ。このカオスフィールドは? あぁ、一つだけ順調とも言えない事態があったっけ? 六課の開課式の前日、飛び入りで参加が決定した人物が居たのだ。 その名は【リンディ・ハラオウン】。 ライトニング分隊のフェイト・T・ハラオウン隊長の母親で、本人も時空管理局の提督様。 次元航行艦【アースラ】の艦長を務めていた歴戦の猛者で、現在は孫までいらっしゃる方。 ……どう見てもそんな歳には見えません。桃子さんとも良い勝負だ。 そんな御方が、何故ココに配属することになったのか。 最初はまともな理由だった。 自分が後見人を務める部隊の、事前査察。というか様子見。 だったのだが、何時の間にかカリムやレジアスと話が弾み、ならば自分もと言い出す始末。 初めは不審なヤツらの監視かとも思ったのだが……このヒト、ノリノリで止められません。 ココでオッサンが止めれば良いものの、「是非一緒に頑張りたいモノですな……」とか言い出した。 ソコで話は終了。 後に残ったのは、美人のウェイトレスさんです。 ……管理局の食堂なのにメイドの格好をしているのは、ひとえに本人の趣味だ。断じてボクのせいではない。 ボクが料理を作り、翠色の髪のポニーテールがソレを運ぶ。 ……確認するよ?アレは殆ど変装してない、リンディ・ハラオウン。 なのにだよ?どうして、娘にすら気が付かれないんだよ!?おかしいだろ!? 一つ。また一つと、訓練場から花火が上がっていく。 否。アレはそんな生易しいモンじゃない。 高町なのは一等空尉による、【キラッ!高町なのはの残虐デストロイショー♪】の残照だ。 ……ここ数日(六課が成立してから毎日)のことだが、フォワード陣の訓練を見るのが日課になっている。 隊舎の屋上にテーブルを置き、提督ズが集まっての鑑賞。 というか、お茶会モードだ。ボクの作ったクッキーに、カリムの淹れてくれたお茶。……良いねぇ。心が癒されるよぉ。 ――ボォンッ! あ、また一つ花火が上がった。 なのはの訓練方法に口を出すようなことはしないが、コレも内偵の一つなのだ。 悪く思わんでくれよ? ――ボォォンッ!! 最後の花火が上がったところで、訓練は終了。 あとは反省会を行うのだ。 ソレが彼女の特訓方法であり、ここ数日で見慣れた光景。「(……さすがは魔王だねぇ?あの圧倒的なスペック。とても一回撃墜されたとは思えないよ……?)」 数年前になのはは一度、【堕ちた】のだ。 原因はガジェット四型の攻撃を受けたかららしいが、ソレだけが原因ではない。 蓄積された疲労……その他云々。 医者的見地からすれば、ベッドに括り付けてでも拘束したい相手。 ちなみに、この時彼女の思考パターンを研究するために【あるコト】をした。 ソレはティーダに施したモノと同じ、スーパーAIへの人格コピー。 二体作成し、別の観点から彼女の性格を分析しようとしたのだが……。 一体は、素直で無邪気な性格に。 もう一体は、冷静でややリアリストの性格になってしまった。 現在は、この二体にヴォルヴォッグのように身体を与えるか考え中。 もし身体を与えるのなら、第二・第三の勇者ロボとし、合体機能を加える予定。 元々一つのモノを二つに分けたので、性格の融合は難しくない。しかし……。「(第二の魔王……残虐性を考慮すると、コッチは冥王とでも言っておくか……)」 シミュレートの結果、合体後の性格は【非常にクール且つ冷酷、無慈悲に敵を倒す性格】になってしまった。 ……何故だ?もしかしてコレが、高町なのはの本性なのか……? 多分違うと思うので、取り敢えずこの計画は中止。現状維持だ。 とにかく諸説色々とある【高町なのは式訓練法】だが、別にそんなに問題があるようには見えない。 ……だって御神の剣士の鍛錬はあんなのの比じゃないし、レジアスたちの模擬戦から見てもアレは生温い。 現に横で見ているレジアスやザフィーラは、ちゃんと見てはいるモノの、何処か退屈そうだ。「……ま、訓練は問題なし……にしても良いね。レジアス、事務の方はどうだった?」「特に問題はない。ただ若干気になるのは、若者言葉が書類に混じっていることがあるくらいだ……勿論訂正させてはいるが」「……許容範囲だね。カリム、みんなの部屋には不審物とかはないよね?」 寮母として活動しているカリム。 その仕事には、部屋の掃除や洗濯なども含まれる。 勿論自分でやると言う人間もいるが、忙しくて頼む人間が多数の模様。「……そうですね。危険物の類はありませんでした。ですが……」 仕事モードな彼女は丁寧語。 なのに語尾が強くなっているところを見ると、何かしらの問題がある様子。 一体どんな問題があったのだろうか?「……ヴァイス陸曹・グリフィス陸准尉の部屋から……いかがわしい書物や電子媒体を発見。きちんと机の上に置いておきました……」 所謂【母の愛】が発生したワケですね? 潔癖……というのとはちょっと違うが、騎士カリムと言えば教会の箱入り娘だ。 あまりそういうことには、免疫がないのだろう。「……ですが、その二人はまだましな方でした……」 マテ。 その二人がマシって、他にどんな猛者が居るって言うんだ!? まさか実はエリオが超早熟で、その二人を上回るコレクションを……ないない。「…………はやての部屋から……殿方同士で……その……な本の原稿が……」 ……うん。 ソレは泣きたいよね? 大切な妹分がそんなモノを生産しているなんて知ったら、普通はそんな反応をするよ。「……良し。八神はやての評価項目に、記念すべき一回目の×を……っと」 六課内での初めての×が部隊長。 ……色々な意味で、新機軸な部隊だな。 斬新過ぎる。「そんで、食堂は概ね問題なし。ただ一点……スバルとエリオが食い過ぎで、予想よりも食費がかさみそうだけど……」 スバル・ナカジマ。 ゲンヤの下の娘で、【アノ】究極怒濤のウェディングケーキを食べ尽くした、三人の内の一人。 つまり大食い。 彼女が六課に配属されると聞いて、食費の充当もしたのだが……思わぬ伏兵がいた。 エリオ・モンディアル。フェイトの被保護者で、将来有望そうな少年。 実は彼も、スバルには及ばないものの大食いだったのだ。「……子どもたちは成長途上。身体が欲しているのだろう……追加予算を組むとしよう……」 そう言うと、端末を取り出して操作するレジアス。 恐らくメールで、地上本部に伝えているのだろう。 ご苦労なこって。 大将日記エクステンド 機動六課の一日が終わり、皆が寮に帰っていく。 だがまだだ。 我々の仕事は、ココからが本番なのだ。 殆ど人が来ない資材搬入用のエレベーター。 そのタッチパネルに掌をのせ、次に網膜パターンを照合。 最後に、声紋と暗号チェックを兼ねたモノ。 コレが最終関門だ。 このチェックさえ通れば、後は地下の【秘密基地】に自動でエレベーターが移動する。 さて……暗号だ。ソレさえあれば、その扉は開くのだ。「……我ら勇気あるモノ!その拠り所とするモノは、【気合】・【根性】・【努力】なり……!」 エレベーターの機動音が変わり、高速エレベーターモードに移行する。 地下二十階。 ソコこそが、我々の真の仕事場である。 ゲイズさんちのオーリスちゃん【陸】 レジアスが機動六課に出向してから数日。 ゲイズ家は腐界と化していた。 理由は勿論、オーリスが散らかしたため。 いつもはレジアスが片付けてくれる。 だが彼は……今は居ないのだ。 そう思い出し、一念発起して片付けようとするオーリス。 しかし何処から手をつけたら良いのか迷い、明日にしようと考え直す。 ……さて。いつになったら、この家は片付くのだろうか?