前回のあらすじ:ジュエルシードが宿主を変えたようです。 八神はやてが行方不明になった。 この報せをヴォルヴォッグから受けた時、ボクたちには嫌な予感しか感じ取れなかった。 幾らお祭り騒ぎやおふざけが過ぎる性格であったとしても、今の彼女は一部隊の長。そんな軽率な行動を取ることはない。 つまりソコから導き出されるモノは、何らかのアクシデントに巻き込まれたということ。 ソレが【地球独特のモノ】か【ロストロギア関連のモノ】かで対応が変わるが、出来れば前者でない方が助かる。 というのも、HGSや退魔関係のことが管理局に知られるのは、出来るだけ避けたいからだ。 もちろん、ボクの夜の一族関係もダメ。 この地球独自の【コト】は、管理局の興味を引いてしまう可能性が高いのだ。 ……いや。この場合は、最高評議会とスカリエッティと言い換えるべきか。 【魔法】というテクノロジー以外の未知の存在。 彼らからすればソレは、咽から手が出る程のモノ。 故にそうならないことを祈る。そんな願いが叶ったのか、発見されたはやての変化の原因はロストロギアによるモノだった。 地球に戻ってきて二日目。 本来は一日、または日帰りで帰る予定だった六課の面々は、思わぬ理由で二日目を迎えることになった。 部隊長の反応ロスト。 この予想外の非常事態。 事態を重く見たスターズ・ライトニング両隊長によって、六課から【ヴァイス・グランセニック】が呼び寄せられる。 彼の役目は、部隊長不在時の魔力リミッターの解除。 本来ははやての副官である【グリフィス・ロウラン】の仕事だが、彼ははやて不在の六課を預かる身。 故に運ぶべき人間の居なくなったヘリパイロット、つまりヴァイスにそのお鉢が回ってきたのだ。 もっとも他の理由としては、現在は返納しているものの、ヴァイスが元武装局員だったというのも大きい。 六課内には既に魔導師はいない。 もし何らかの異常事態になった時、新人と隊長陣だけでははやての穴埋めは難しい。 だからこそのヴァイスの派遣。 そのことは本人も理解しているらしく、本当に有事には止むなしと考えているようだ。 ただトラウマ持ちでかつ、昼行灯な彼のこと。 そうならないことを祈るしかなかった。「……という事態なんだ」「……由々しき事態だな」「はやて……」 状況説明ボク。 状況分析レジアス。 身内的心配カリム。 そう。レジアスの言うとおり、コレは由々しき事態だ。 【アノ】ジュエルシードが何かしたとは思えないとなると、別のロストロギアがあったのか。 それとも地球独自のトラブルか。 分からないことだらけだが、たった一つだけ分かっていることがある。 ソレは、【絶対に厄介なコトが起こる】ということ。 これはもう、経験則だ。「……とりあえずさ、ヴォルヴォッグに警戒させているから…………今のボクたちに出来ることはないね……?」「……悔しいがその通りだ」「……ココの監視設備を使わせてもらっても、未だに発見出来ていませんからねぇ……?」 ボクの確認に、ザフィーラとリンディもそう返すしかなかった。 ならばとボクは席を立つ。 自分にしか出来ないこと。ソレを実行中だからだ。「……シズカさん、どちらに……?」「……昨日からやってるのが、もうすぐ終わるんでね?あんま必要になって欲しくないんだけど…………もしかしたら使うかもしれないし……」 昨日輸血を終えたボクは、すぐに【ココ】に来た目的を思い出した。 【ココ】に置いてある零号Cストーンと四号ロボの試作型の回収。 長い時間放置……というか生成期間あったからか、どちらも完成済み。嬉しい誤算だった。 持ってきた四号Cストーンを試作四号ロボに組み込み、零号Cストーンを【左腕】手甲型のデバイスに填め込む。 マッチングは……徹夜のバグ取りのお陰で、オールOK。 後は……【本人】を交えた最終調整と、ロボのプログラム組みだけだ。 プログラムはあと一つ。 このあと一つがクセモノで、尚且つ一番重要なモノ。 だが完成させないといけない。コレがあるのとないのとでは、文字通り戦局が左右されるからだ。『シズカ博士!』「ん~?ヴォルヴォッグかぁ…………何か動きでもあったのぉ……?」 緊急通信。 ソレも六課監視中のヤツから。 明らかにヤバ気な事態っぽいね……。『ハイ。八神隊長を発見しました…………ですが』「……ロストロギアにでも取り付かれてました……とかじゃないよね……?」『……流石ですね。その通りです……』 ……半ば冗談半分で言った期待は、あえなく打ち砕かれましたとさ。 ココまで予想通りだと、かえって悲しいよ。 でもまぁ、悲しんでる場合じゃないよね?「とりあえず、現地の映像を出して……!」『了解です……!』 ヴォルヴォッグのアイカメラを通して伝わってくる、現地の様子。 ソコには大きなモノが居た。 はやての帽子を被り、シュベルトクロイツを持った…………大きなタヌキ。 身の丈はビル程の高さで、森林を薙ぎ払いながら進行するその様は、何処からどう見ても怪獣のようだった。 はやての願い通り大きくなったバストは、百を超えて千はゆうにありそうである。……ちなみに、人間のソレの場所にはない。 ただ比例して、ウェストがタヌキのように肥大化しているため、トップとアンダーの差が壊滅的になくなっていたが。「…………ねぇ、カリム……?」「…………シズカさん……」『……【アレ】がはやてぇぇっ!?』 ユニゾン率百パーセント。 今なら分裂した神の使いも、普通に撃破出来そうです。 でもソレくらい信じられなかったのだ。【アレ】がはやてだなんて……。「……リンカーコア・魔力光・ソレにランクS以上の魔力量…………間違いないわね。【アレ】ははやてさんよ……!!」 自分の手元のコンソールで一つずつ確認していき、【アレ】をはやてだと断定するリンディ。 恐らくヴォルヴォッグもそうしたのだろう。 そして判断に困ったから、コチラに連絡を取ってきたのだろうなぁ……。「…………あ~、分かった分かった!!現時刻をもって、【アレ】を八神はやてと認定!!…………そんで、機動六課の連中は?」『現在彼女たちは、ヴァイス陸曹の到着待ちです……』「ヴァイス待ち……?あぁ、そうか……リミッターの問題か……」 機動六課は今回の出張任務のために、全員魔力リミッターを掛けている。 皆がDランク以下に落ちるような強固なソレは、緊急時において部隊長の許可によってのみ解除される。 ただ現在、部隊長様は大タヌキになっている。 故に次の責任者からその立場を預かってきた、ヴァイス待ち……ということなのだ。 お役所仕事的だが、ある意味仕方がないところもある。 だってボクが作った【ココ】も、そういうシステムを使ってるしね……? ――ギュォォォォォォォォンッ!! そんなことを思ってると、漸く一台のバイクがやって来た。 ライダーは当然、我らが【ヴァイス・グランセニック】陸曹。 バイクを止めて六課メンバーの下へ走って行き……そしてジャケットの内ポケットから、紅いケータイらしきモノを取り出す。『皆さん、お待たせしました……!!』『ヴァイス君!!』『それじゃあ、行きますよぉ……!!』 右手に持った紅いケータイ。 ソレを天高く掲げ、中心部にある黒いボタンに指を添える。 何だか知らんが、今の彼は輝いているな。……どうせコレが終わったら、再びライトの当たらない生活だろうが……。『特務エス……じゃなかった!高ランク魔導師、【THE 機動六課】解禁!!』 結論から言おう。 機動六課の連中では、タヌキはやてには勝てませんでした。 もっと正確に言うのなら、【無力化】することが出来なかったということだが。 殺しても良いというのなら話は別なのだろうが、アレの中身ははやてだ。 【元に戻す&ジュエルシードの封印】が、管理局員としての仕事になる。 ただ素体が超が付く高ランク魔導師なだけあって、新人どころか隊長陣の魔法すら【腹】で弾き返す始末。 スターライトブレーカーやプラズマザンバー。 ソレらの同時攻撃を、【ポンッ!】という間抜けな音と共に弾いた時のなのはとフェイトの顔は…………忘れることが出来ない。 ちゃんと録画したので、後で鑑賞会をやろう。 ともあれ、市街地に行かないようにする足止めなら出来るものの、それ以外は不可能。 ジリ貧というのが、一番シックリくる表現だ。 ……そろそろ潮時だな。「……みんな、今から【スバル】をコッチに転送させるけど…………良いよね?」 周囲を見渡す。 皆頷く。 というか、ソレしか出来なかった。「良ぉし……。それじゃみんなぁ、配置に就いて…………!!」 中央一番奥。ソコにある一際偉そうな席に、レジアス。 右手前。様々な安全装置の集うデスクには、リンディ。 右手奥。所謂【参謀席】と呼ばれる場所は、ザフィーラ。 左手前。オペレートシートに着席したのは、カリム。 左手奥。ドクターズデスクと勝手に命名した所には、ボクが座った。 コレで……準備は完了だ。「ヴォルヴォッグ!スバルに強制転送マーカーを射出!スバル転送後は、好きにしろ!!妹の身を護ってやっても良いぞぉ……!!」『!?……了解しました…………!』 向こうからの合意ではない上に、かなりの速度で移動しているスバル。 確実にコトを運ぶためには、ズレないマーカーが必要だ。 ヴォルヴォッグにソレを射出させて、あとはコチラがコントロール。 ただ向こうの意思を無視してやるから、多分抵抗するだろうなぁ……。 ……あ、突然の出来事に混乱してる。 丁度良いや。今の内に転送……っと!「…………エ?エ!?何、ココ!?何であたし、こんなトコロに……!?」 一瞬後。 光と共に現れたのは、つい今しがたまで地球で闘っていたスバル。 到着。そして混乱。ムリもないことなのだが、コチラには時間がないのだ。「スバル・ナカジマ二等陸士!」「ハ、ハイ!!…………って、レジアスおじさんっ!?」「……今は仕事中だから、階級で呼んでおくれ……」「あ、スミマセン!……レジアス大将……」 二人は顔見知り……っていうレベルではありません。 家族ぐるみでの付き合いがある二人。 特にスバルにとってレジアスは、美味しい料理を作ってくれる優しいオジサンだから、すぐに分かって当然なのだ。「ナカジマ二等陸士、先程まで戦闘中だったアレは……八神はやて部隊長だと分かっているか……?」「……ハイ。だからあたしたち、一刻もはやく部隊長を元の姿に……って!!」「……だが現状、君たちだけでは難しい……そうだな?」 悔しそうに頷くスバル。 ムリもない。スバルにとってはやてという存在は、憧れの【なのはさん】と引き合わせてくれたヒトなのだ。 だからその恩に報いたいと思うのは、当然のことなのである。「それなら、その為の力を得れば良い!!」「…………エッ?ソレって一体……?」 意味不明。 というか、あれはフリーズだな。 あまりにワケ分からん情報が増えすぎて、頭の回転が止まったのだろう。「オレたちには、その【力】がある。だがソレを扱えるのは…………君だけだ!!スバル・ナカジマ!!」「あ、あたしぃぃぃぃっ!?何で!?どうしてあたしが……!!」「……適正がある……としか言いようがないな……」 そう。本当に動かせるかどうかは、やってみないと分からないのだ。 ただ現在は、【適正がある】という状態。 あとは本当に、根性とかで乗り切らないとなぁ……。「月村博士ぇぇっ!!彼女に説明をぉぉっ!!」 あ。勢いで押し切りやがった。 それに、ボクに問題を投げつけやがったな? ……ハァ。仕方ない。手早く行こうか……?「ハイ、ハイ。スバル・ナカジマ……まずはコレを左腕に付けて……?」「わ、わかりました……!」 昔何度も会ったことがあるのだが、今の彼女はボクを認識出来ていないようだ。 ……助かる。その方が、余計な時間を取られずに済むからな。 本当に忘れていてくれても、ボクは一向に構わない。……むしろ、そうあってくれ。「次は、コレ……」 コンソールをいじり、中央スクリーンの表示画面を変える。 ソコに出現したのは獅子型マシンと、その支援メカが三体。 五百系新幹線型。ステルス戦闘機型。そして最後に、ツインドリル搭載の戦車……としか言いようがない機体。「コレって……」「そ。今からキミには、コイツらと合体して闘ってもらう……」 獅子型マシンが変形し、人型のマシンへと変化。 その上で他の三体と合体し、一体の勇者ロボになる。 ココの場所が場所だけにステルスには改修が施されており、両翼の先端に円柱状のパーツが追加されている。「コレ。このコアとなっているロボットに、キミが融合することになるんだよ……」「……出来るんですか……?」「なに、心配は無用。成功確率はほぼ百パーセントだから……」 ……コアロボットへの融合確率は、だがね……? 他のロボット……つまりサポートマシンとの合体。その成功確率は……。 多分言わない方が良い。その方が、彼女の身のためだ。「……そんで左腕に付けたのが、インターフェースを兼ねたデバイス。大事にしてね……?」「ハ、ハイ……!!」 準備完了。 目配せすると、鷹揚に頷くオッサン。 後はソッチの仕事だよ……?「良しっ!ならば、ナカジマ二等陸士!…………【出撃】せよっ!!」 いつの間に着替えたのやら。 黒いロングコートを纏ったレジアスが、声高らかにそう言った。 ……おかしいなぁ……?ボクはあんなコート、用意してないんだけど……?「了解っ!!…………って、一体ドコから……って、ひゃぁぁぁぁ……………………っ!!」 ポチっとな。 そんな擬音を言いながら、ボクは紅くて丸いボタンを押した。 するとスバルの立っていた場所の床が抜け、奈落の底へご案なぁい♪ってなもんよ。 ――ガォォォォンッ!! あ。どうやら獅子型マシン【ニャレオン】と接触したみたいだ。 様子をスクリーンに映して……と。 ……何かスゴク懐かれてるな。獅子型ロボが『ゴロ、ゴロ、ゴロ……』とか言って嬉しそうなのは、とってもシュールだよ。「良ぉしっ!!【融合】承ぉぉ認っ!!」『ハイッ!!…………【融合】!!』 レジアスの承認を受けて、スバルがニャレオンに喰われ始め……じゃなくて融合を始める。 純白の獅子。本来は色々と塗装するつもりだったんだけど、流石に間に合わなかったその機体。 ……帰ったら、その辺から始めないとな……。 ライオンヘッドが前に倒れて、元の位置からはヒトの頭が。 前脚の爪が折れ曲がり、ソコから出てきたのはヒトの掌。 動物的な後脚がシャンとまっすぐになり、ヒトのソレのようになる。 【ギャイガー】。 ソレがこのロボットの名前であり、今のスバルの身体の名前でもあるのだ。 あとの合体は、この基地の中じゃムリ。なので、ギャイガーとサポートマシンを外に出そう。 マメ知識的なモノを一つ。 一番最初だけは、ただの【融合】にも承認が必要なのだよ。 ……っていうか、ボクもソレ忘れてたんだけど……良く覚えてたな、レジアスのヤツ……? 「スバル・ナカジマ。このあとの合体は外でやるんだ。今ハッチを開けるから、ソコから外へ出てくり……?」『わ、わかりましたけど……スゴイですねぇ!!このロボット……!!』 うん。 分かってはいたけど、ヒトの話を聞かない娘だよね? ……面倒だから、さっさと次に行こう。 ――ウィィィィィィィィンッ!! 巨大なハッチが開き、ソコから一面真っ暗な世界が広がる。 不思議がりつつも、言われた通りに外に出るスバル。 そして知ることになる。ココがどんな場所だったのかを。『アレ……?何か、身体が上手く動かないっていうか…………地面がないっ!?』「……いや、それよりさぁ………もっとおかしなことが、有るでしょうに……?」『他に……?そういえばアレって……もしかして地球?……ということは……………………ココ、もしかして宇宙!?』 一面に広がるのは漆黒の海。 キラキラと光り輝く星々が、ココを宇宙だと教えてくれる。 地球はやっぱり丸くて蒼い。とても美しい惑星だと思うよ……今暴れ回っている大タヌキさえ居なければ。「そだよ。あと、今オマエさんが出てきた建物を見てみぃ……?どうよ……!!」『…………スゴイ。金色のタワーが、宇宙に浮かんでる…………!!』 地球の衛星軌道上に位置する場所に、【ココ】はあった。 下方に二つの円柱を付けた、金色のタワー。 残念ながら、本来四方に位置するハズの四つのパーツは付いていないが……その辺は察してくれ。「【ココ】がボクの地球での拠点――――【ノーヒットベース】……だよ?」 一塁・二塁・三塁・本塁が、本来のカタチから抜け落ちたモノ。 故に【ノーヒット】。 ……誰が上手いことを言えと……ゴメン。ちょっと調子に乗ったみたいだ。「……今さら何だけどさぁ……【最終融合】の確率は…………」 一応事実は伝えないといけないだろう。 ソレが開発者としての責務であり、矜持だ。 だがその台詞を片手で遮ったのはレジアス。……一体、どういうつもりだ……?「……成功率なんていうモノは、あくまで目安……あとは【根性】で補えば良い……!!」 ……根性バカ、ココに極まり。 オヤジーズならいざ知らず、実際にやるのはスバルだぞ? どうすっかなぁ……今なら止められるけど……。「……それにオレは、あの娘を――――【スバル】を信じているっ!!」「…………ヘイ、ヘイ……」 相変わらずクサいというか、熱いというか。 どっちも当て嵌まるだけに、一概に分けることは出来ないか……。 とりあえず熱血オヤジさん、お疲れ~……って感じで。「【最終融合】承ぉぉ認っ!!」 何処を指差しているのかは知らないが、大声でシャウトしながら【ビシィィッ!!】と決めるレジアス。 その様子はどう見ても熱血司令官にしか見えない。 その承認を受けてプロテクトを解除するのは……これまた何処かで見たことあるような、【制服】に身を包んだリンディ。「了解……!!【最終融合】プログラム…………ドラァァァァイヴッ!!」 ガラスの上からグーパンチで、安全装置を解除するリンディ。 ……ちなみに、彼女の制服もボクは用意していない。 というか、何時の間にか皆が【制服】を纏っているせいで、ボクだけが空気読まない子みたいになってるじゃないか……!?『了解ッ!!』 安全装置が解除されたことを確認すると、スバルが復唱する。 ……うん。実に管理局……というか軍隊らしい態度だね? ソレで良いんだ。ソレで良いハズなんだよ……本来の場合はね?「違ぁぁぁぁうっ!!そこは、『よっしゃぁぁぁぁっ!!』というのだっ!!」 ……レジアスよ。 男らしいとは言え、一応スバルは女の子だぞ? 流石にソレはないんじゃ……?『わ、わかりましたぁぁぁぁっ!!…………よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 ……ゴメン。 あの娘、【アホの子】かもしれない。 今度クイントに会ったら、何て言えば良いんだろうか……? ドリル戦車が脚に。 新幹線型のマシンが肩を。 最後にステルス機が翼・腕・兜を構成し、ココに合体は成功する。『ギャオ、ギャイ、ガァァァァァァァァァァッ!!』 ……何か大泥棒三代目のパートナーである、渋いオジさまの声が聞こえたような気が……。 多分気のせい。 気にしたら負け。……最近、こんなんバッカだねぇ……? あとは圧倒的だった。 如何に高ランク魔導師が素体であろうとも、物理的なダメージには弱い。 隊長陣で物理ダメージを結構与えられる両副隊長は、己の主に牙を向けるのを良しとせず、最小限度の迎撃しかしなかった。 故にその特性に気付くことがなかったと思われる。 全て己の拳で攻撃し、最後も両の拳を併せた技【天国と地獄】で粉砕。 同時に中のコアを抉り出す。ソコから先は両隊長の出番だ。 かつてはソレが元で、争い合ったこともあるモノだ。 その封印などの扱いはお手のモノ。 ……ただ、はやてが元に戻った時、元々風呂場の脱衣所に居たこともあってか…………まぁ、察してやってくれ。 ソレを見てしまったヴァイスは、両副隊長によるフルボッコ。 同じく見ていたハズのエリオは、何故か全面スルー。 その時のヴァイス陸曹殿のコメントは、『り、理不尽な…………』だったとか。 大将日記∀ 昨日から徹夜していたのは、何もシズカだけではない。 今までのパターンから推察して、鑑賞させられたアニメの内容と似たようなことをさせられるのは明白。 ならば、やらなくてはならないことがある。 創造の理念を鑑定し(デザイナーのイメージを鑑定) 基本となる骨子を想定し(型紙を起こす) 構成された材質を複製し(同じ材料を探す。ない場合は代用品を探す) 製作に及ぶ技術を模倣し(裁断、縫製はお手の物) 成長に至る経験に共感し(作中での作画誤差も修正範囲に入れる) 蓄積された年月を再現する(正味一年。だが熱い魂に月日は関係ない) ココに幻想を結び、【服】と為す……!! ……完璧だ。 コレならばシズカも、そう文句は言うまい。 次はザフィーラの分。その次は……とやっていたら、気が付くと今日になっていた。 ゲイズさんちのオーリスちゃん【捨四】 一つ目の目覚まし時計が鳴った。 神速の如きスピードでソレは停止し、ソコは再び静寂な空間に巻き戻る。 ちなみこの時のオーリスの台詞は、『……う~ん…………あと五ふぅん……」だった。 二つ目。 これまた超スピードで停止、ソコには静かな空間が。 『…………あと、十……ぷん、まってぇ~……」とか聞こえたのは、この際無視しよう。 三つ目。 ……敢えて語るまい。 時間が三十分に増えたこと以外は、先程までと同じなのだから……。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ……三十個目。 現在六時五十五分。 家を出る本来の時間は七時五分。 ……目が覚める。 時計を見る。 トーストを焼いている内にシャワーをし、速攻で服を着る。 一工程に三動作は当たり前。 先程までとは別の意味で神速となり、この日彼女は定刻通りに家を出る。 ソコに居たのはキャリアーウーマン【オーリス・ゲイズ】。 ……こうして彼女の一日は始まるのだ。 補論:最寄の駅まで【バターを塗ったトースト】を咥えて走るのが、オーリスクォリティ。 あとがき >誤字訂正 俊さん。毎度ご指摘頂き、本当にありがとうございます!!